星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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添い寝びと・仮面男

「おらおらっ」
 男の手が、わたしを軽々と抱きかかえた。
「や、やめてっ」
 もがきながら逃げようとしたけど、まるで、鉄の輪に締めつけられたようで、まるで身動きが取れない。そのまま、ベッドの上に崩れていく。
 バスロープの紐がほどけて、裸身が晒される。
「あっ」
 あわてて、バスロープの襟を掴もうとしたけど動けない。
「ふふっ、綺麗な体だ。湯上りの香りがたまらないぜ」
 男のくぐもった声が、仮面の中から漏れてくる。
 そう、男は仮面をつけていた。それも、ピエロの仮面、なんとも滑稽な、でも、やってることは正反対。恐ろしい野獣。
 バスルームから出てきたところを、いきなり襲われて、そのまま、ベッドルームへ連れてこられた。
「よう、大人しくするかい? だったら、ちっとはやさしくしてやるぜ」
 男の低い声には、凄味がある。
 ――下手に逆らうと、ただじゃすまない。殺されるかも……。
「……お、お金……お金なら、引き出しに……」
 かすれ声でいうと、男はふっと嗤った。
「カネなんか、いらねぇよ」
「えっ」
 ――じゃ、わたしの体……レイプされる、わたし……。
「ゆ、許して下さい……わたしには、主人が……」
「わかってるぜ、もちろん」
 含み笑い声が、聞こえる。
「だったら、どうか……」
「ふっ、そんなに旦那が大事かい? おたくを裏切って、女のところに入り浸り、滅多に帰ってこないんだろう。え、奥さんよ?」
「!……」
 ――どうして、そのことを知っているわけ。女子会仲間は勿論、ごく身近な人にも話していないのに……。
「かわいそうにな、亭主に裏切られただけでもつらいのに、女ざかりのこのむっちりとしたやわ肌の体を……男が欲しくて、毎日でも抱かれたいのに……そうだろう、奥さん、ちゃんと、わかってるぜ、だから、奥さん、夜がつらくて、毎晩、眠れないんだよな」
「!……」
 何でも知っている、この男。わたしが、一晩中、ベッドで悶々としていることまで。
「そう、何でも分かってるぜ、俺は。だから、奥さんを安らかに眠らせてやろうと思ってさ」
「えっ」
「つまり、奥さんに添い寝をして、男欲しさで火照った体をなぐさめてやろうってこと。俺のスーパーテクニックでな、ふふふっ」
   
 仮面から、いやらしい笑い声が漏れた。
 ――ああ、やっぱり、レイプするつもりなんだ、わたしを……。
 恐ろしさと屈辱で、体が震えてくる。
「俺の添い寝のテクニックはすごいぜ。これまでも、何人、いや、何十人の女を天国へ送ってやったからな」
 仮面男の手指が、ゆっくりとわたしの髪をほぐし、舐めるような低い声で囁く。「どの女も、目が覚めた後も、俺にしがみついたまま離れやしねぇ。おくさんだって、きっとそうなるさ。もっと、もっとって、さかりのついたメス犬のように泣くことになる。ふふふっ」
「!……」
 ああ、もう、なんていやらしい男。でも、わたし、絶対にそんなことにはならない。絶対に。人妻として、それにも増して弁護士としてのプライドもある。
「じゃ、はじめるとするか」
 男は、わたしの体をうつ伏せにすると、バスロープをさっと引き剥がした。
 そのあと、男の指先がわたしの体をゆっくり這いながらながら、項から胸、背中、腰へ、そして……。
 体が、しびれていく。麻酔をかけられたように動けない。
 ――もう、ダメ、許して、あなた……ううん、どうしてあんな夫に詫びるの、もう、どうでもいい、夫への仕返し、そう思えばいい、一晩ぐっすりと眠れるのなら、この人に添い寝して貰おう、熱い抱擁を受け入れて、わたしの体をメチャメチャにして貰おう……。
 そう思うと、震えがおさまり、体の芯が次第に熱くなって、唇もしっとりと濡れくる。
 ――もう、好きなようにして、早く……お願い……。
 そう思いながら、わたしは意識が薄れて、深い霞の中へ堕ちていった。
 ――どれくらい、たっただろう。
 肩を揺すられて、わたしは目を覚ました。
「気がついたかい」
 仮面男が、ベッドのわきから声をかけた。
 ――抱かれたのね、この人に……気を失っている間に……。
 羞恥心と自己嫌悪が、入り混じる。でも、体には、この男が入ってきた感覚はない。脱がされたバスロープに代わって、ナイトガウンがかけてある。
「バスロープ、ぬれていたからな、風邪ひくといけないと思って着替えさせて貰ったんだ」
「え?……」
 レイプ魔の、やさしさだろうか。
「奥さんが寝息を立てているうちに、スープも出来上がったから」
「スープ?」
「ああ、そうさ」
 仮面男は、テーブルの上に置いてあったカップを手に取ると、私の鼻先へ持ってきた。
 すごくいい匂い。三ツ星レストランでも、こんなに素敵な香りのスープにはお目にかかったことがない。
「このスープを飲めば、一晩ぐっすりと眠れるから。まさに、オレのスーパーテクニックさ」
「?……」
 わたしは、けげんそうに男を見上げた。
「あ、あなた、わたしの体を……」
「え? おいおい、よせやい。オレ、奥さんを抱きにきたんじゃないぜ。俺の言う添い寝とは、この魔法のスープのことさ。ヘンな誤解はやめてくれよ」
「!……」
 スープが、添い寝。そんな。
「じゃ、あなたが泣かせた何十人の女の人って……」
「そう、オレの作る不眠症に効くスープに、感謝の涙を流したってこと。エッチな想像するなんて、奥さんらしくもない、いや、売れっ子の女性弁護士さんも、やっぱり人の子ってわけかな。フフフッ、ね、リツ子さん?」
「!……」
 わたしは、ハッと仮面男を見た。
「どうして、わたしの名前を……」
「おたくのことは、みんな、わかってるぜ。高校で星子さんと一緒だったこともな」
「星子さんを知ってるの? あ、あなた、一体、誰? ね、誰なの! その仮面を取って、顔を見せて! ね!」
「そうはいかないな。とにかく、このスープを飲んでゆっくりとお休みなされ。目がさめれば、きっと、バラ色の人生が開けてるぜ!んじゃな!」
 仮面男は、ひらりと体を翻すと、ベランダの外へ身を躍らせた。
「……」
 わたし――リツ子は、茫然と見送ったあとで、ふと、スープのカップに手をのばした。
 一口すすっただけで、今まで味わったことのない食感が口から体中に広がっていく。
「……し、あ、わ、せ……」
 今夜は、よく眠れそうだ。
「ピエロさん、またきて下さいね」
 リツ子は、潤んだ瞳で夜空へ目をやった。




追記  今夜の「添い寝びと」、R−12指定でしたかね。どうもどうも。さて、添い寝クン、仮面で登場です。はたして、誰なのか。星子ファミリーの一人であることは間違いない。左京くん? 小次郎? タケルくん? それとも、ゲンジロウ? 意外や、春之介くん?
 正解者には、添い寝のプレゼントを、なんちゃって。それにしても、リツ子さんが登場とは。それも、欲求不満の人妻弁護士として。
 ヤマサン、なに考えてるわけ?

 それはそうと、ゴンベエ編、やっておかないと、ゴンベエに引っ掻かれる。忘れてないぜ、ゴンベエちゃん。



 

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