星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

新星子一人旅「長崎恋旅は魔女特急

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星子、大急ぎでその方向へ走った。でも、丁度、改札口から大勢の乗客が出てきて、思うように進めない。
「どいて! どいてったら、このぉ!」
 必死になって通り抜けたけど、すでに、涼くんらしい人影は消えていた。
「んもぅ!」
 星子が、歯噛みした時だ。足もとで、フニャーゴとゴンベエの鳴き声がする。
 いつのまにやら、ゴンベエ、リュックから飛び出していたらしい。
「なによっ、どうせ、また、ハンバーガーでもねだるつもりでしょっ」
 すぐ近くにはハンバーガー・ショップもあるし、そうに決まっている、と思ったら、ゴンベエ、別方向へ走り出した。
「ん?……」
 どこへいくつもりだ。ゴンベエ、途中で振り向いて、しきりと星子をこっちへこいと促している。
 星子、けげん顔でついていくと、ゴンベエ、駅構内の裏手へ向かった。職員用らしい駐車場を通り抜けると、線路が何本も並び、電気機関車や回送列車、電車、貨物なんかが並んでいる。
 もちろん、関係者以外はお断りだろうけど、ゴンベエ、お構いなしだ。でもって、星子も、あたりに目を配りながらついていった。
 じきに、積まれたコンクリートの枕木のそばまでくると、ゴンベエ、ミャオと鳴いた。星子が覗き込むと、人影がうずくまっている。
 涼だった。
 襟を立てたコートの右肩あたりには、生乾きの血がこびりつき、涼はぐったりと目を閉じている。生きづかいは短く、かなり、具合が悪そうだ。
 とても、殺し屋なんてイメージじゃない。傷ついた若い牡鹿といった感じだった。
「……涼くん……」
 星子、恐る恐る、声をかけた。
 だが、涼はぐったりとしたままだ。かなり、体の具合が悪いらしい。
「涼くんっ」
 星子、不安にかられて、涼の肩をつかんだ。
 瞬間、涼、ハッと目を開けると、体を起こした。同時に、星子の胸もとにはナイフがピタッと突きつけられた。グラバー邸の時とは違う、小型のジャックナイフだ。
「涼くん!……」
 星子、体の血が凍りついた。
 刺されるかと思ったけど、涼、ハッと我にかえったように目を見開いた。
「星子さんか……すまない……」
「う、ううん、いいのよ……それより、ひどい怪我じゃない。早く、お医者様に見せないと……」
「大丈夫だ、もう、血は止まっているから……」
「でも……」
「それより、君、どうして……」
「え?」
「どうして、僕の本当の名前を知っているんだい?」
「だって、わたし……」
 あなたは、わたしの高校時代の初恋の人なんだ、って、いおうとしたけど、そんなこと、ムリ。いくら、人生を積極的に生きる星子でも、こういうことって、いいづらいんだ。
 ほんとは、涼くんのほうで気がついて欲しいのに。でも、当時は星子のほうが一方的に熱を上げていただけで、涼には星子の印象はないはずだ。
 悲しいけど、仕方がない。
 でもって、星子、
「だって、さっき、グラバー邸で……茜さんって人が、あなたのことを、涼さんって呼んでいたから……」
「!……じゃ、君、グラバー邸にいたのか?……」
「ええ、いたわ。全部、見ていたのよ……」
「君っ」
 涼、愕然となった。
「じゃ、おれのことを……」
 星子、小さくうなずいたあと、真っ直ぐ、涼を見つめた。
「ね、自首して、お願い」
「いや、出来ない」
「そんな! 茜さんのためにも、お願いよ! ね、涼くん!」
「うるさい! 俺に構うな!」
 涼、恐い顔で星子を睨み上げた。


                            (つづく)




追記  「肉体の悪魔」。スゴイ題名ですよね。たしかに、男も女も肉体、つまり、異性の体にとりつかれ、溺れて、堕ちていく、という、おぞましいものを秘めている。まさに、肉欲、性愛というものは、悪魔だと思う。悪魔だからこそ、魅力があるわけかもね。僕もかっては、いや、出来れば、今だって……ムニャムニャ……。
 え? なんで、肉体の悪魔の話かって? 
 じつは、DVDに録って置いた『肉体の悪魔』を、見終わったんです。なんと、五十五年ほど前のフランス映画で、NHKBS2で放映されましてね。いやぁ、久し振りにホンモノの映画を観たって感じ。学生時代に、手弁当を持って「肉体の悪魔」を観にいったことを思い出した。 
 映画の内容は、えーと、イジワルしちゃう、また、明日!

                 3

 ――長崎駅……ここが、長崎駅か……。
 星子、茫然と立ち尽くしていた。もう、異邦人そのもの。
 だって、当然でしょ。星子が覚えている長崎駅とは、まるで、違っているんだもの。
 昔の長崎駅は、あの恐ろしい原爆で全滅したあとに再建された、三角屋根にステンドグラスをあしらった教会風のエキゾチックな、そして、いかにも、終着駅らしい雰囲気がある駅舎だった。でも、今の駅舎は、大きなテナントビルの中に組み込まれた、都会のターミナル・ステーションだ。スーパーやホテル、シネコン、専門店等など、そりゃ、便利になったでしょうけど、旅情はなくなったかも……。
 考えてみると、星子がはじめての一人旅でブルトレ「さくら」に乗って長崎駅に降り立ったのは、なんと、約二十数年前。JRが国鉄といわれていた時代ですよ。
 ということは、星子、現在の年齢は……わ、わ、わ、わっ……。
 ま、待って。深く考えないっ。
 だって、今の星子、女子高生のまま。ん十年という時空を超えて、そのままの姿で、今の時代にタイム・スリップしてきたわけだ。だから、ぜんぜん、年なんか取っていない。十七歳のままなんだ。
 今度の新しい一人旅のはじめに、ブルトレ「さくら」に乗ったつもりが、いつの間にか、ブルトレ「はやぶさ」に代わっていたのが、なによりの証拠。
 ただ、時代は変わっても、めぐり会う人たち、宙太やマサルたちは、そっくりさんというか、今の時代に生きているヒトだってこと。
 でも、涼くんのことはどうなんだろう。涼くんは、ラストラン、つまり、最後の運転になるブルトレ「さくら」で、茜さんと二人で遠い所へ旅立つ予定で、下りのラストラン「さくら」に乗った。
 下りのラストラン「さくら」が走ったのは、2005年2月28日。そして、翌日の3月1日の夕方、上りのラストラン「さくら」が、東京へ向けて旅立った。
 ということはですよ、整理すると、こういうことになる。
 星子、今度の一人旅のはじめは、タイムスリップして、二十数年前のブルトレ「さくら」に乗った、つもりが、途中で、その「さくら」が、ラストラン「さくら」になっていた。その「さくら」には、涼が乗っていた。
 ところが、その「さくら」は、途中で「はやぶさ」に変わり、涼が茜との待ち合わせ場所に
ついた時には、二年もの歳月が流れていた。つまり、涼も星子より時間はずっと短いけれど、列車の中で、タイムスリップしたわけ。
 ちょっと、待って。涼は、星子の高校時代の二歳年上の初恋の人だ。その涼が若いままで、二年前、ラストラン「さくら」に乗ったってことは、涼は、二度、タイムスリップを体験したことになるんじゃ……。
 つまり、一度目は、数年前だ。その時、長崎へ旅をして茜と出逢い、恋におちた。そして、二年前、上りのラストラン「さくら」で駆け落ちするために長崎へ向かった。ところが、途中で、二度目のタイムスリップをして、星子と同じ列車「はやぶさ」に乗った……。
 かなり、複雑だけど、こういうことなんじゃないかしらね。
 もし、茜さんのことがなかったら、すっごく、劇的な再会だったのに。だって、今の宙太さんと違って、時空を共用しているわけだから。
 でも、涼くんの心は茜さん一筋だ。とても、星子のことを思い出す余裕なんかない。
 悲しいけど、仕方がない。それより、自分としては、なんとか、涼くんを助けてあげたい。
それしかないんだ。
 星子、どうにか、気合いを入れ直すと、あたりへ目をやった。
 涼くんは、きっと、この長崎駅にくる。きっと!
 その思いながら、駅の構内へ目を走らせた、その瞬間、雑踏の中に、涼くんらしい男の姿がチラッと流れた。
「!……」
 



追記  いよいよというか、舞台は長崎駅へ。でも、時空とやらで、説明しなきゃならないことがありまして、タイヘンでした。もし、おかしいことがあったら、教えて下さい。でも、ま、あまり深く考えないようにしています。本来、あまり得意なじゃんるじゃない世界に挑戦しているわけで……とにかく、オモシロイ、そして、感動的な作品にしたいのです!
 よろしく、お引き立てのほどを!

 

                2

 マサルの腕に巻かれたハンカチには血がにじみ、顔色は蒼ざめていた。
「大丈夫、マサルさん!」
 星子、声をかけながら、涙があふれそうになった。
 こんなふうに、マサルさんと再開するなんて……どうして、宙太さんの時のように、明るく、楽しく、面白く再会させてくれないんだろう。カミサマは、マサルと自分には、悲しくて、つらくて、せつない思い出しか作らせてくらないわけ?
 星子、涙を押さえたけど、マサルのほうは、痛みに顔をしかめながら、けげんそうに星子を見た。
「君、オレを……知っているのか?」
「!……」
 そうか、マサルにとっては、星子は初対面なんだ。
 すると、宙太がいった。
「そうなんだ、オタクを知っているらしいぜ。どかで、会っているんじゃないのか?」
「いや、はじめてだ。名前は?……」
「星子……流星子っていいます……」
 なんで、いまさら、自己紹介なんか……星子、泣きそうになって、あわてて、顔をそむけた。
「それで、涼クンは?……」
「うん、見失ったらしいぜ」
 宙太、手当てを終えて立ち上がった。
「マサルくんがあいつらと撃ち合っている隙に、姿をくらましたんだってさ。気になるのは、カレ、怪我をしているってことだぜ」
「怪我を!」
「拳銃で肩のあたりを撃たれたらしいんだ。そうだな、マサルくん?」
「ああ、左の肩のあたりだ。コートに血が……」
「!……」
 星子、愕然となった。
「とにかく、オレ、急いで探すから。マサルくん、おたくは応援を要請してくれ!」
「了解!」
 マサル、携帯電話を取り出した。
「宙太さん、待って! わたしも、一緒に探すわ!」
「ダメダメ、相手は手負いの殺し屋だぜ。姫はここで大人しく待っていること。オーケー?」
「でも……」
「マサルくん、姫を頼む!」
 宙太、ひらりと体を翻した。
 でも、待っていろといわれて、はい、そうですかってなわけにはいかない。
「マサルさん! わたしも、いくわ!」
「キミ!」
 マサル、星子をとめようとしたけど、すでに、星子は走り出していた。
 もう一度、「キミ!」と呼ぶマサルの声が聞こえた。「星子さん」って呼んでくれないのが、悲しかった。
 それにしても、涼はどっちへ逃げたんだろう。肩に怪我をしているとなると、人目に付きやすい。それに、マサルの連絡で警察も一斉に捜索をはじめるだろうし、賑やかな街には出ないだろう。
 そうなると、このあたりの森の中かも。大浦天主堂の一帯は山の斜面になっていて、木立ちは多いけど、住宅もたくさん建っている。涼くんが隠れられるような場所はあるのかな。それに、怪我のほうも心配だ。出血がひどいと、命にもかかわる。
 ほんとは、早く宙太さんが逮捕して病院で手当をしてもらったほうがいいけど、涼くんが素直に捕まるとも思えない。必死になって抵抗するだろうし、そうなると、宙太さんの身にも万一ってことも……。
 いやだ、そんなこと、ゼッタイにいやだ!
 そのためにも、わたしが宙太さんよりも先に涼くんを見つけないと。でも、どこへいったのか、わからない。
 どこ? どこにいるの、涼くん?
 星子、焦った。
 その時、どこからか、ピーッと汽笛が……機関車の汽笛にも似ている音だ。
……機関車……瞬間、星子の脳裏に、涼のいったことがひらめいた。
「二人で、ブルトレ『さくら』に乗って遠いところへいこう……そう約束したんだ……」
 たしか、涼はそんなことをいっていた。
 もしかすると、涼は長崎駅へいこうと……きっと、そうよ!
 星子、ドーンと背中を押されたように走り出した。


                           (つづく)


追記  気晴らしのドライブで、観音崎までいってきました。僕、京急ホテルのロビーやレストランがお気に入りでして。なんせ、海が目の前。それも、東京湾の入口なので、船がたくさん見られるし、対岸には内房の景色が……とくに、今日は風が強くて、灰色の空の下に波頭が一面に立ち、嵐っぽい風景。目にはいい保養となりました。出来たら、ご招待したいところですが……。
 目の保養といえば、京急ホテルのすぐ近くに、なんと、真新しい美術館が出来ていたんですよね。今年の春にオープンした「横須賀美術館」でして、素晴らしいミュージアムです。しかも、特別企画として「澁澤龍彦・幻想美術館」展を、さらに、常設館では「谷内六郎」展をやっていた! 二人とも、僕の大好きな芸術家だ。まさに、至福の時を過ごしてきました。
 ということで、今夜はなんとか、熟睡できるかも……オヤスミ、ハニィ……。

第四章 さよなら恋の花「さくら」、一人旅
                  1

「おい、どこだ! マサルくん!」
 宙太、走りながら、携帯電話に怒鳴った。
 マサルからの連絡でグラバー邸をとびだしたけど、園内はかなり広い。なんせ、一口にグラバー園といっても、グラバー邸をメインに、ウォカー邸とか、オルト邸、リンガー邸、その他、いくつもの明治建造物を集めて造られた明治村だ。
 いったい、どこからマサルが連絡してきたのか、はっきりわからない。
 星子も、宙太のあとから走りながら、懸命にあたりへ目を配った。
 マサルからの連絡だと、乙女、いや、涼を追ったボディガード達と撃ち合いになったらしい。マサルは、そして、涼は無事なのか。高まる不安に、心臓が壊れそうになる。
 ……でも、茜さん、もっと心配しているかも……。
 茜がどんなに涼を愛しているか、星子には、痛いほど、わかっていた。でも、星子だって、初恋の想いがいつの間にか、よみがえっている。恋というのは、時間に関係なく、人の心を虜にする力を持っているのだ。その力に、今の星子は突き動かされていた。
 じきに、宙太の携帯電話にマサルからの連絡が入った。
「ん? 大浦の天主堂? わかった!」
 大浦天主堂は、グラバー園のすぐとなりだ。
 星子、宙太のあとを追ってヒラリと……ってなわけにはいかないけど、塀を飛び越えた。
 そこはもう、大浦天主堂が見える木立ちの中で、神学校とかマリア主道会とか貴重な明治建造物が並んでいる。なんせ、大浦天主堂は日本でも一番古い教会で、美しいステンドグラスでも知られている。
「シツレイします!」
 宙太、一応、おことわりの挨拶をして、走っていった。
 律儀、なんだよね、こういうとこ。あ、モチロン、女性にもだけど。
星子も、見習ってご挨拶。あ、ゴンベエも……かな?
 教会の敷地を突っ切ると、墓地に出た。丘の斜面にあって、ステキなところだ。星子、足には自信があるけど、宙太についていくのは大変だ。とにかく、宙太、身が軽い。性格も軽いけどね。
 星子、息を切らせて、深呼吸したとたん、ギクッとなった。
「ち、血だ!」
 そう、草の上に血痕が滴っているじゃないですか!
 恐いことが起きたに違いない。星子、ブルッとみぶるいすると、血痕を追うように急いだ。
「!……」
 じきに、星子、ハッと立ちすくんだ。
 墓石の向こうに人が倒れている。
マサル? それとも、涼?
 いや、さっき、涼を追っていった二人のボディガードだ。二人とも、後ろ手に手錠をかけられ、顔をしかめている。どうやら、マサルと撃ちあった挙句、逮捕されたらしい。
 あざやか! さすが、マサルさんだ。
 そのマサルは、どこに……あ、いた! 離れたところで、宙太がマサルの右腕にハンカチで応急手当をしている。撃ち合いで怪我をしたようだ。
「マサルさんっ」
 星子、驚いて駆け寄った。



追記  いよいよ、第四章に入りました。クライマックスへ向かって、お話は急展開していく予定です。乞う、ご期待! なんて、自分でいってりゃ、世話ないね。ま、こっちはどこかの審判に関係なく、みんなで楽しくノベル・トリップしようね。
 あ? なんのこっちゃ?
 風邪を引いているヒトが多いようですが、くれぐれもご自愛下さい。僕もやっと、微熱が治まってきたようですが……。

                 4

 こ、このぉ! いわせておけば!
 星子が大爆発しかけた瞬間、宙太、すかさず、その前に立ち塞がった。
「なるほど、人形か。でも、人形にも心がある。大事にしてくれる人には、ちゃんと、あったかくなる気持ちを返してくれるもんスよ」
 宙太、おだやかな顔でいった。たしかに、こういう時って、頭に血がのぼったほうが負けだよね。でも、星子には、そんなこと無理。それだけ、純粋ってこと。
「ふっ、あったかい心か」
 黒木、せせら笑った。
「こいつには、心なんかない。命の恩人の私に、感謝の気持ちも見せないからな」
「命の恩人?」
「そうとも。自殺するところを助けてやったんだ」
「自殺!」
 星子、宙太、顔を見合わせたあと、茜へ目をやった。
 茜、こわばった顔を伏せたままだ。
「半年ほど前だ。長崎の海に身を投げようとしたところを、丁度、写生にきていた私が見つけて助けてやったんだよ」
「!……」
「自殺の理由は、いくら聞いてもいわなかった。それこそ、人形のように押し黙ったきりだ。そのあとも、自殺をくり返す恐れがあったし、私の傍に置いておくのが一番いいと思ってね、丁度、私も前の妻と別れて一人だったし、この女を妻として迎えたんだ。ま、私好みのタイプの女でもあったしな」
 黒木、薄く笑った。
 助けてやったというよりも、はじめから、自分の思い通りにしてやろうと思ったに違いない。薄く笑っている顔が、何よりの証拠だ。
 それはともかく、茜が自殺を図った時期から考えて、もしかすると、涼とのことが原因かも……オランダ坂の教会の前で、待ち続けたけど、とうとう、涼は現れなかった。絶望した茜は、死を選んだ……きっと、そうだ。
 その涼とこんなつらい状況で再開するなんて。星子、茜の気持ちを思うと、胸がキリキリと痛んだ。
 そんな茜の気持ちには関係なく、黒木は喋りつづけた。
「でも、私の気持ちは通じなかった。いくら、やさしく可愛がってやっても、相変わらず人形のままだ。その挙句、私を殺しにきた相手と顔見知りで、しかも、そいつのことは一言もいわん! そんな奴を叩いてどこが悪い!」
 よくいうよ、まったく!
 涼のことも気になるけど、今は黒木のことで怒り心頭だった。 たとえ、夫婦の間でも暴力は許されない。
その思いは宙太も同じに違いない。でも、宙太はあくまで冷静だった。
「ま、そのことは、あらためて伺いますか。それより、もっと、大事なことを聞きたいですね」
「大事なこと?」
「なぜ、あの殺し屋はあなたの命を狙ったんスかね? 心当たりはありますか?」
「いや、別に」
「ほんとかな」
「もちろんだよ、今の私はアブナイ仕事から足を洗い、この長崎でのんびりと趣味の絵を描いて暮らしているんだ。人様に命を狙われるような真似をしていないつもりだ!」
「そうですかね」
 宙太、黒木をするどく見つめた。
 星子に調子のいいことをいっている時の宙太とは、まるで別人、カッコいい刑事そのものだ。ま、だから、許しちゃうわけだけど。
「こう見えても、オレ、パソコンなみの記憶力がありましてね、この前読んだ極秘資料によると、あなたは麻薬密輸組織のウラ幹部、つまり、面の顔はリタイアした絵が趣味のフツウの市民だけど、ウラじゃ、最近、組織を離れて独立しようとしている。そこで、組織から裏切り者として命を狙われた……」
「ふふっ、面白い話だ。君は刑事としては落第だが、作家の才能はありそうだな。ただし、三流のね」
「あなたとは、逆ですね。画家としては一流だけど、犯罪者としては三流だ」
「なに!」
「ま、ほんとは警視庁のほうへご同行願いたいところですが、証拠がないんじゃ、そうもいかないな。じゃ、身辺保護ということで、デイトさせてもらいますか」
「ボディガードなら、ここにいる。君の保護は受けんよ」
「じゃ、せめて、奥さんだけでも。いろいろと伺いたいこともありますので、よろしく」
「お断りする」
「オレ、奥さんに聞いているんですがね」
「家内も同じだ。そうだな、茜?」
「……ええ……」
 茜、蒼ざめた顔で、小さくうなずいた。
「でも、奥さん……」
 宙太がいいかけた時、携帯電話が鳴った。
「もしもし、マサル君か……なに?……わかった、すぐ、応援にいく!」
 宙太、キッとなって電源を切った。
「どうしたの、宙太さん?」
 星子が小声で聞くと、宙太、
「こいつの部下と撃ちあいになったらしい」
「えっ」
「黒木さん、ちょっと、ヤバイことになったようなんで。シー・アゲイン!」
 そういって、宙太、サッと走り出した。
 星子もあとを追いながら、茜に目をやった。
 茜、今にも倒れそうなくらい、真っ青だった。


                         (第四章へつづく)





追記  北海道では、雪になるとか……いよいよ、ですね。白銀の世界のドライブ、最高です! なんて、僕の目には良くないので、控えなくてはいけないようです。ワープロの方も、騙し騙しやっています。列車到着が遅れ気味ですが、ご容赦を! 


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