星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

新星子一人旅「長崎恋旅は魔女特急

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               4

 ――本当に愛しているのなら、信じて待っているはずだ。それが、愛というものだから……。
 星子、自分にいい聞かせるように、心の中でくり返した。
 わたしは、もとの時空へ帰れると思って、この長崎へきた。もとの時空では、みんながわたしを待っている。また、みんなに会える、いとしい人にも逢える……そう思って、長崎へきたんだ。それだけを信じて……それだけを……。
「君……」
 乙女、顔を上げて星子を見た。
「ありがとう、君のいうとおりだ。茜さんは、きっと、僕を待っていてくれている。きっと……」
「ええ、もちろんよ」
 星子、しっかりと頷いた。
でも、牧師さんの話じゃ、茜さん、近頃はあの待ち合わせ場所にはきていないという。病気でもしたのか、それとも、何か、事情があるのかもね。
「ね、茜さんと連絡を取れないの? 電話かけるとか……」
「うん」
 うなづいた乙女、車を道路わきにとめると、携帯電話を取り出してキイを押した。
 でも、じきに歯噛みして、携帯電話を握りしめた。
「どうしたの?」
「ダメだ、茜さんのケータイ、番号が使われていないってさ」
「うそっ、じゃ、住んでいる家に電話は?」
「いや、茜さんがどこに住んでいるのか、ご主人がどういう人なのか、僕にはまるでわかっていないんだ」
「え?」
「僕も茜さんも、お互い、プライバシーにはなるべく触れないようにしていたし……そのほうが、逢っている時もつらくないからね……」
「……」
 たしかに、それはいえる。デイトは、恋人達にとって、現実とはかけ離れた別世界だから。その時、二人はドラマのヒロインでありヒーローなんだ。
「じゃ、茜さんとは連絡の取りようがないわけ」
「うん……」
 乙女、顔を曇らせた。
 星子にも、乙女のつらい気持ちが痛いくらい伝わってくる。でも、どうにもならない。
 その時だ。乙女の携帯電話が鳴り出した。
 誰からだろう。もしかして、茜さんからの電話かも……そんな予感がする。
 星子、一瞬、期待を込めて見つめた。
 でも、応答する乙女の表情は、暗くこわばっていた。
「あ、どうも……ええ、今、長崎です……え? ターゲットが?……」
 乙女、星子を気にしているように声をひそめて電話している。どうやら、星子に聞かれては都合が悪い内容らしい。
「わかりました、今からそっちへ向かいます」
 通話を終えた乙女、こわばったままの顔を星子に向けた。
「星子さん、悪いけど、ここで車を降りてくれないか」
「えっ、どうして?」
「急用が出来てね、今からいかなきゃならないんだ」
「用事って、どんな?」
「うん、ちょっとね……」
 乙女、口を濁したけど、どうも、おかしい。
「わたし、やっぱり、一緒にいきたいな。こんな所で降ろされても、困るし、あなたのそばにいたいから……ね、いいでしょ?」
 星子、甘えるようにいった。ほんとは、乙女のことが心配になったからだけどね。
 でも、乙女の顔、別人のように冷ややかだった。


                          (つづく)



追記  本日と明日、二回にわたって続けます。よろしく!

                3

 ……愛している人が、他の人の奥さんだなんて……それって、不倫……。
 不倫というと、どうしても、ちょっと、不潔っぽくてイヤラシイ感じがしてしまう。でも、乙女の物悲しそうな顔からは、そんな匂いはなかった。
 乙女、低い声でいった。
「僕は、きっぱりと別れるつもりだった。許されないことだからね……」
 やっぱり、純粋な人なんだ、乙女さんって。
「でも、出来なかった、どうしても……茜さんも、同じでね……」
「……」
 わかる、わかる、その気持ち。ほんとに人を好きなる気持ちって、もう、止められない。たとえ、カミサマに叱られようと。
(わたしだって、そうだったもん……)
 星子の脳裏を、右京の顔がかげろうのように流れた。
 ふいに、涙が目に……と、乙女、けげんそうに星子を見た。
「ん?」
「あ、な、なんでもないの」
 星子、あわてて、涙をぬぐった。話したって、乙女には信じてもらえそうにはないし、自分の胸にしまっておきたい。それにですよ、時空がこんなにずれてしまったんじゃ、右京さんとのことだって、なかったことかも……ううん、当然、そういうことになるんじゃ……。
 あの宙太さんさえ、このわたしを知らなかった。右京さんだけじゃない、マサルさんや春ちゃん達だって、このわたしを知っているはずが……。
 わぁ、やだやだ、そんなのやだ!
 思わず叫びそうになって、どうにか、呑み込む星子サンだ。
ま、それはさておいて、
「それで?……」
 星子、おずおずと乙女の横顔を見た。そのあと、どうなったのか、知りたい。人の恋路って気になる。乙女は初恋の人に似ているし、なおさらだった。
「……二人だけで遠くへいこうって……何もかも捨ててね……」
「……」
 なさぬ仲の恋の行く末は、別れるか、それとも、道行か……昔から、相場が決まっているよね。
「待ち合わせしたのは、さっきのマリア様の前さ。時間は二月二十八日の午後二時、そのあと、最終の『さくら』に乗って東京へいくつもりでいたんだ……」
「最終の『さくら』に?」
「うん、廃止になる『さくら』は、もう二度とこの長崎には戻ってこない。茜さんも二度と長崎へは戻らない。その気持ちを重ねたかったんだ……」
 そういうことだったのか。
「でも、あなた、ここへはこなかったんでしょ。どうして?……茜さんって人がそんなに強い気持ちでいたのに、どうして、これなかったの? 気持ちが変わったわけ?」
「いや、違う。僕は茜さんを迎えにいこうと、前の晩、つまり、二月二十七日、東京発の下りの『さくら』に乗ったんだ」
 乙女、真剣な眼差しで答えた。
「ところが、真夜中過ぎた頃、列車の中で、光の渦のようなものに巻き込まれてね」
「光の渦に……」
 そういえば、星子も、そんなことがあったような……やっぱり、真夜中過ぎた時間だった。今まで忘れていたけど、乙女の言葉に記憶がおぼろげだけど、よみがえってきたようだ。
「それで、気を失ったようになって、目が覚めたときには、『はやぶさ』に乗っていたってわけさ」
「……」
 そこも、星子と同じだ。
「だけど、どうして、いつの間にか時間が……それも、二年もたっているなんて……」
 乙女、混乱した顔でつぶやいた。
「これって、タイムスリップってやつかな。映画や小説の世界と思っていたのに……いったい、どうなっているんだ!」
「……」
 星子も、それが一番知りたい。原因がわからないと、もとの世界へは帰れなくなってしまう。
「……二年か……茜さん、どんな想いで僕を待っていたんだろう……」
 乙女、唇を噛み締めると、マリア像のほうへ目をやった。
「毎日、ここへきて、僕がくるのを待ち続けて……つらかったろうな、さぞかし……」
 乙女の切れ長の目に、キラッと涙が光った。
 星子も、胸の中がジーンと熱くなった。茜さんというヒトには会ったことはないけど、その時の姿を想像しただけでもつらくなってくる。
「きっと、僕を恨んでいるだろうな。裏切られたって……たぶん、そう思っているはずだ」
「そんな……」
「いや、そう思われても当然さ。おしまいだよ、もう。最悪だよっ」
 乙女の口から、呻くような声が漏れた。
「そんなことない……」
 星子、つぶやいた。
「そんなことないわ、ぜったい」
「え?」
「ほんとに愛しているんだったら、あなたを信じて待っているはずよ。それが、愛ってもんだわ」
 星子、乙女の横顔を強く見据えた。


                               (つづく)



追記  お墓参りに行ってきました。ものすごい暑さで、まいりました。ほんとに、今年の気候はおかしい。なにか、とんでもないことが起きるかも……コワイです……。

 ところで、今回で書きだめておいたぶんは終わりです。この先は、あらためて書くことになるので、時間を下さい。
 よろしく!

第二章 初恋は悲しや、一人旅

                 1

「君、星子さん……」
 やさしくささやく声が、すっごく、心地いい。
 んもぅ、甘えちゃうから、星子ぉ……カレの肩にもたれたところで、ガタンとゆれて目が覚めた。
 星子、ハンドルを握る乙女の左の肩にもたれているじゃないですか。
「ご、ごめんなさいっ」
 あわてて、姿勢を正す。ほんとは、もうちょっと、もたれていたかったりして、コラコラ。
 だけど、カレの横顔、やっぱり、似ている……あのリョウくんに……。
 もしかして、京乙女っていうのは偽名で、ほんとの名前は、疾風涼じゃ。
 乙女の横顔をジッと見上げた星子に、
「着いたよ」
 と、乙女がいった。
「え?」
「だから、長崎」
 乙女にいわれて助手席の窓から外を見ると、丘の上にステキな教会の礼拝堂が……どこかで見たような……そうか、浦上の天主堂だ。ということは、やっぱり、ここは長崎だよね。
 熊本でレンタカーを借りて、高速道路をすっとばしてきたわけだけど、思ったよりも早く着いたってわけ。
 だけど、ほんと、なつかしい……長崎……。
 星子がはじめての一人旅で訪れた街だった。あの波乱万丈の恋物語は、ここからはじまったといっても過言じゃない。
 ま、あたしの原点ってことかしらね。
 甘酸っぱい想いがこみ上げかけた時、ググーッ……お腹が、鳴った。もう、雰囲気、ぶち壊し。
「んもぅ、ゴンベエったら、はしたないな!」
 あわてて、ゴンベエのせいにする。
 ゴンベエ、そりゃないぜ、姐御、と、リュックサックの中でフニャーゴ。
 と、乙女、
「おなかすいたな。なにか、食べようか」
「ええ、どっちでも」
 なんて、カッコつけちゃって。
「でも、その前に、ちょっと、寄りたいところがあるんだ。いいかな?」
「あ、はい、もちろん」
 ほんとは、食べてからにして欲しいのにね。
 でも、立ち寄りたいところって、どこなんだろう。
 聞いてみたいけど、乙女の顔には、どこか思いつめたような雰囲気がある。声をかけるのは、ためらってしまう。
 市電通りを走って間もなく、クルマは小高い丘へと続く石畳の坂道の途中で停まった。下のほうには港が広がり、乙女梶野の向こうには、あ、グラバー邸が見えるじゃないですか。
 坂道の途中には小さな教会や古いレンガの石塀がずーと続いていて、いかにも、ここは長崎です、っていう感じ。
 乙女、エンジンを切ると、車の外へ出て、近くの道ばたに立つマリア像の前に歩み寄った。
 かわいい花が飾られた、高さ一メートルほどの石造りのマリア様で、かなり古そうだけど、とっても慈愛にあふれたお顔をしている。
 乙女、あたりを見回したあと、肩を落として、歯噛みしながら溜息をついた。なんとも、悲しそうな顔だった。
 どうしたんだろ、すっごく、わけありってな様子だけど。
 星子が見ていると、乙女、ふと、マリア像に手をのばして、マリア様の首にかけられたネックレスのようなものを手に取った。次の瞬間、乙女の顔がハッとなった。そして、ネックレスをギュッと握りしめて、こみあげるものを懸命にこらえている。
 もう、わけありもいいとこ。星子、助手席のドアを開けて、車の外へ出ると、乙女に近づこうとした。
その時、だった。
 教会から、人が出てくる気配がした。振り向くと、外国人の年取った牧師さんだ。
「しつれいですが、ちょっと……」
 その牧師さん、流暢な日本語で乙女に話しかけた。
「もしかして、あなたのお名前は、京乙女さんとおっしゃるのではありませんか?」
「え?」
 乙女、振り返ると、まじまじと牧師を見た。
「ええ、そうです。でも、どうして、僕の名前を……」
「茜さんとおっしゃるかたから、うかがっていました」
「えっ」
「ここであなたと待ち合わせていらしたとか。毎日のように、決まった時間にここへこられましてね。雪の日も、嵐の日も、日照りの日も、毎日、毎日……でも、結局、あなたとは会えずじまいで、そのネックレスをマリア様にことづけて、もし、京乙女という人がきたら、伝えて下さい。約束どおり、待っていたと……」
「!……」
 乙女の目に、涙が光った。
「……それって、いつのことでしょうか?……」
「たしか、二月の終わりの頃では……」
「今年ですか?」
「いいえ、もう、二年前になりますが」
「えっ、そんな!」
「いや、間違いありません、寝台特急『さくら』の最終列車が発車した日でしたからね」
「!……」
 乙女、うめくように声をあげると、その場にうずくまった。


                              (つづく)





追記
 ファンのかたから、星子の初恋の人は、他にいたはずだ、と、お叱りのコメントをいただきました。「ジョーカーは謎の旅先案内人」の第四話で、星子の初恋の相手は、小学校時代、となりのクラス委員・上杉幸次クンという子だ、とのこと。確認したところ、間違いないです。幸次クン、マサルによく似ているとも書いている。
 他にも、春之助はコバルト本では春之介じゃないのか、とか、リツ子の苗字が途中で変わったとか、宙太の母親の名前も途中から違っているとか、細かく、指摘されました。  やれやれ、そうか、そんなに違っていたか。本当に、申しわけありません。モノカキとして、一番恥ずかしいことです。読んでいて、さめてしまった、といわれても、仕方ないか。
 本当に、申しわけありません。今回登場の初恋のカレは、高校時代の初恋のヒトということで、ま、恋愛体験でいえば、思春期時代の恋が一番印象に残る恋だろうし、それを、本当の初恋と呼んでもいいのではないか、と、判断してくだされば、助かります。春チャンについては、次回から訂正しますので。


                            (以 上)

                 6

「!……」
 星子、まじまじと美少女を見つめた。
「……あ、あなた……」
「そうなんだ、僕は男だよ」
 美少女、ゆっくりとサングラスをはずして、星子を見つめた。
「!……」
 たしかに、よぉく見ると、男の顔だ。でも、弥勒菩薩サマのようなうりざね顔に切れ長の澄んだ目、かたちのいい鼻とふくよかな唇は、美少女そのものだった。
 右京も凄い美形だったけど、それに負けないぐらい美しい男の子だ。年齢は二十前後ぐらいかな、そばにいられるだけで、体の芯がじーんとしびれてくる。
 でも、ちょっと、待って。
 ……誰かに、似ている、このヒト……誰かに……。
 もやーっとしたアタマの中に、じきに、一人の男の子の姿が、おぼろげに、そして、やがて、くっきりと浮かび上がった。
 そう、恋には奥手だった星子が、はじめて恋をしたあの男の子……高校一年生の時、通学の電車の中で一目惚れしてしまった相手だった。もっとも、星子の一方的な片想いだったけどネ。
 当時、カレは都内の名門私立高校のサッカー部員で、名前は、忘れもしない、疾風(はやて)涼(りょう)。歳は星子より二歳年上の三年生で、将来を期待された選手だった。もう、取り巻きの女の子は、てんこ盛りもいいとこ。いくら元気印がウリモノの星子でも、そう簡単には近寄れない。
 ああ、いとしや、恋しや、リョウさま。
 三度のご飯も喉を通らず間食四度、夜も眠れず昼寝して、勉強にも手がつかずマンガ見て、ひたすら、想いを寄せているうちに、突然の怪我が原因で選手生命を絶たれ、学校も中途退学したとか。その後、海外転勤した父親と一緒にフランスへいったといううわさを風の便りに聞いたきり、二度と会うことはなかった。
 哀れ、星子の初恋もはかなく消えて、ジ・エンド。一時はがっくりと落ち込んだ星子だったが、そこは、パワーとガッツのSEIKOアネゴだ。ローストラブのマイナスエネルギーをプラスに代えて、めざせ、理想の恋人を! 
てなことで、一年後、あの恋探し、いい男探しの一人旅がはじまったわけ。
 そのきっかけともなった初恋の相手・疾風涼にそっくりの男の子に出会うとは。
 ……まさか、もしかして、ホンモノのカレかもね……。
 星子の心臓がキンキンキンと音をたてかけたところへ、
「君、名前は……たしか、星子さんだったね?」
 カレ、星子の顔をのぞきこんだ。
「流星子、流星の子って書く、そう、宙太って人にいっていた……そうだね?」
「え、ええ」
「ごめんよ、あの時、近くで話を聞いていたんだ」
 そういうことか。
「あ、僕は京(きょう)乙女(おとめ)、っていうんだ」
「……キョ、京……乙女?……」
 じゃ、涼クンじゃなかったんだ。よく似ていただけか。ちょっと、拍子抜けの星子サンだ。
 だけど、京の乙女だなんて、美形のこのヒトには、ぴったりの名前じゃないですか。それにしても、いくら、女の子のような名前だからって、なにも、女装までしなくたって。
 まさか、そっちの趣味じゃ……と、思ったら、
「いや、この格好は趣味じゃないんだ、じつは、変装ってヤツさ」
「ヘンソウ?」
「うん、ちょっと、事情があってさ」
 事情ですか。そういえば、さっき、エスカレーターのところで私服のおまわりさん達を見かけた時、いきなり、星子を抱きしめて頬をくっつけてきたっけ。もしかして、あのおまわりさん達の目をごまかすために変装したんじゃ……。
 だとすると、乙女は警察に追われている男ってことになる。こんなきれいな顔をしているのに、犯罪者だなんて……いったい、どんな罪を犯したんだろう。
 気になる顔で見た星子に、ふと、乙女がいった。
「君、『さくら』に乗ったつもりだったんだね?」
「え、ええ」
「なにか、わけでも?」
「……」
 話したって、わかってもらえそうにない。
「あ、ごめん。誰にも、いいたくないことってあるからな」
「……」
 乙女、ちょっとためらったあとで、
「じつは、僕もさ……」
 と、低い声でいった。
「え?」
「僕も、『さくら』に乗ったつもりだったんだ……」
「う、うそっ」
 星子、目を丸くした。
「でも、今朝、目が覚めたら、『さくら』は『はやぶさ』に変わっていた……君と同じように、迷子になってしまったわけさ。時間の迷子にね……」
「!……」
 そうよね、あたしは時間の迷子なんだ。
で、あなた、どうして、『さくら』に……そう聞こうと思ったけど、やめた。星子のように人にはいえない事情があるかもしれないしね。
「ね、君……」
 乙女、星子を見つめた。
「もし、よかったら、一緒に長崎へいかないか?」
「長崎に?」
「僕には、どうしても、長崎へいかなくてはいけない理由があってね。君は、どうなんだ?」
「……」
 もちろん、いきたい。星子、大きくうなづいた。
「連れてってください、お願い!」
 星子、思わず乙女の腕をしっかりと掴んだ。

                        (第二章へつづく)




(追記)  連日の猛暑のまま、連休は終わり。なんたること。といっても、こっちにはカンケイない……なんて、カッコつけるな。現在、女性の65歳以上が女性人口に占める割合は、全体の四分の一とか。この調子だと、星子ファンのヒトが高齢者になるころは……わわわっ、考えるのはよそう。とにかく、いくつになっても、星子シリーズを忘れないで! 孫やひ孫にも宣伝してね!
               

           5

「おっ」
 宙太、一瞬たじろいだが、相手が美少女系とわかってニタッとなった。
「いやぁ、ついてるな。ビユーティレディがもう一人、ボクチャンとデートしてくれるなんてさ。喜んで、お相手しますよ、ハイ!」
 そういいながら、ねじり上げられた手をもとへ戻そうとしたけど、ダメ。びくとも動かない。
「あれっ」
宙太、真顔になって美少女の手を払いのけようとした。ところが、やっぱり、びくとも動かない。
「どうなってんの、たくぅ! はなせよ、こらっ、はなせったら!」
 顔を真っ赤にしながらもがいたとたん、美少女の手が離れて、勢いあまった宙太、「わわわっ」と、つんのめり、そのまま、ホームの柱にガツン。
 オホシサマがいっぱい、ぐるぐる回って、宙太、そのまま、夢の世界へ旅立った。
 うーっ、カッコイイ!
 星子、うっとりとした目で美少女を見上げた。少し年上のようだけど、まるで、タカラジェンヌみたいな女の子だ。もう、まさに、一目惚れってわけ。
 あ、断っておきますけど、星子にそっちのシュミはございませんからね。ただ、純粋な気持ちでカッコよさに惚れたってこと。
 その美少女、素早く星子の腕を掴むと、足早に歩き出した。何もいわないけど、宙太が気絶しているうちに星子を引き離そうとしてくれているらしい。
 もちろん、星子も同じ考えだ。(宙太さん、ごめんね)と、心の中で詫びながら、ついていった。
 今度宙太に会う時は、宙太に星子と同じ次元に、つまり、以前の宙太に戻ってきて欲しい。だって、今の宙太は、宙太でありながら宙太ではない、なんか、コピーみたいだから。
 そう、コピーにしか思えないんだよね。
 宙太さんが、このわたしを知らないなんて、そんなはずがない。絶対に、ありえない!
 時空のいたずらで、わたしだけが宙太さんとの想い出を引きずって、今に時代に飛んできたわけだけど、気持ち的には、どうしても、納得できないっ!
 コピーなんだ、ゼッタイに、コピーだよ、この宙太そっくりのヤツは!
 ホンモノの宙太さんなら、きっと、こういってくれる。
「ハーイ、ハニィ! おまっとうさんっ!」って。
 ……うううっ、また、泣けてきそう。
 星子、気持ちをバッサリと払ってエスカレーターに乗った。
そうそう、タカラジェンヌさんに、まだ、助けて貰ったお礼をいってなかったっけ。
「あ、あのぅ、どうも……」
 と、お礼をいいかけた時だ。星子を掴んでいた手に、一瞬、グッと力が入った。
 ん? どうしたんだろう。美少女の顔を見上げると、サングラスをかけた目が、緊張した視線をエレベーターの先に向けている。
 そこには、どこかで見た顔の二人の男が……サングラスをかけた、KIのファイターのような男たち……そうか、昨夜、まぼろしの『さくら』の車内で出会った鉄道警察隊の私服のおまわりさん達じゃないですか。
 あの様子だと、エスカレーに乗った乗客達を、一人一人チェックしているみたい。そういえば、『さくら』の車内でも、誰かを探している感じだったっけ。
 ということは、あのおまわりさん達も、星子と同じように、時空を超えて、今の時間にいるってことになる。
 どういうこと? それに、誰を探しているわけ?
 星子が首をかしげたとたん、いきなり、美少女が星子の肩を抱き寄せて、頬を押しつけてきた。
「ちょ、ちょっとォ!……」
 これじゃ、まるで、ヘンなカンケイに見えるじゃないの。やめてよ、もう。
星子、顔を離そうともがいたけど、ダメ。美少女の腕の力は凄く強くて身動きできない。
 じきに、エスカレーターのはじに立つ私服のおまわりさん達の前にきた。おまわりさん達、薄笑いを浮かべて、星子と美少女を一瞥すると、あとからくる乗客の方へ鋭い視線を移した。
「んもぅ、離して! やめてよ! ……やめて……」
 なんとか美少女の腕を払いのけようとするうちに、美少女の頬のやわらかい感触と甘い香水のような薫りに、アタマの中がぼーっとなってきた。
 なんだか、恋人にでも抱かれているような、そんな気分だ。
 うっとりとなった時、ふいに、美少女の腕が星子の肩から離れた。
 もうしばらく、そのままでいて欲しかったのにィ。
 我に返ったように目を開けると、いつのまにか、改札口を通過して、駅の広場の雑踏の中にいるじゃないですか。
 切符もないのに、どうして、改札を通過できたわけ? 星子がポカンと立ちすくんでいると、美少女、星子を抱いた腕を静かに離して、頭を下げた。
「ごめん」
「なにが、ごめんよっ。いきなり、あんな……ん?……」
 ちょっと、待って。「ごめん」とあやまった声は、男の子の声のように聞こえたけど。まさか、そんな……きっと、聞き違いよ。耳がおかしいんだよ。
 そう納得しかけた時、
「ほんとに、すまなかった。謝るから……」
 再び聞こえてきたのは、間違いなく、男の子の声だった。




(追記) またもや、熱帯夜ですね。ほんと、いい加減にしてくれ! って、叫けんだところで、どうにもならん。ま、のんびり、まったり、まいりましょう。
 ところで、今回、登場した人物、かなり、星子とわけありになりそうだ。ご注目あれ!


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