|
4
ビューイン!
東北新幹線「はやて」の車窓を、秋の色に染まり始めた北国の山々の景色が飛んでいく。
もぅ、サイコー! セイコ、しあわせーっ!
って、叫びたいところだけど、今回ばかりはそんな気分じゃない。
隣りの座席には、ほーりゅうが体をうずめている。顔色もさえないし、まだ、具合が悪そうだ。
でも、油断はならない。この子、超能力を使うし、いつまた、襲ってくるか、わからない。春之助も、向かい側の席にすわり、警戒の目で見ている。あ、ゴンベエもっていいたいけど、リュックの中で高いびきだ。ほんと、頼りにならないヤツ。
え? そんなことより、なんで、新幹線に乗っているのかって?
おっと、そうでした、肝心のことをいってなかったよね。
じつは、東京駅でほーりゅうが急におかしくなって、春之助は「こんなヤツ、ほっておこうよ」っていったけど、星子、そうもいかなくって。たとえ、不愉快な相手でも、こういう時、見捨てるわけにはいかない。ま、ようするに、損な性格なんだよね。
でもって、介抱してやろうとしたら、ほーりゅう、星子の手を払いのけ、もうじき、発車する東北新幹線「はやて」に乗ろうと……足元がよろけて、とても、それどころじゃないのに。
「は、はなして……宙太さんが……」
「宙太さんがどうしたのっ?」
「……」
ほーりゅう、あとはいわずに、必死になって乗ろうとしているのよね。
もしかして、宙太のあとを追うつもりかも……そうよ、きっと、そう。だったら、ますます、ほっておけない。
というわけで、星子と春之助、ほーりゅうを抱きかかえるようにして、「はやて」に乗り込んだわけ。ほーりゅうはっていうと、座席に座って間もなく、ぐったりと寝込んでしまった。
病気じゃないけど、何か、体にダメージを受けているようだ。
それにしても、ほーりゅう、どこへいくつもりなんだろう。聞いたところで答えそうもないし……と思っていたら、春之助、さりげなく、ほーりゅうのポケットからチケットを抜き取って調べた。
春ちゃんって、すごく、手先が器用なんだ。もしかして……おっと、そんなことはどうでもいい。それより、行き先だけど、なんと「下北」だ。
下北といえば、たしか、霊山・恐山で有名な下北半島にある最果ての駅じゃないですか。
「春ちゃんのトランプ占いじゃ、宙太さん、北海道へいったのよね」
星子に聞かれて、春之助、
「ええ、そうだけど……」
と、ちょっと自信なさそうに答えた。
じゃ、宙太さんとはカンケイないのかな。ううん、ほーりゅうって子が宙太さんを追いかけているのは間違いない。
宙太さんは、きっと、下北にいるんだ。
だけど、なぜ、宙太さんは、ほーりゅうって子のために、命を賭けているんだろう。ほーりゅうも、必死に宙太さんのもとへいこうとしている。
なぜ?
二人の間には、一体、なにがあるのよ?
今までの宙太、いつも、星子につきまとい、星子のことばかり、気にかけてくれていた。星子も、そんな状況になれて、宙太を自分の忠実な騎士のように思いこみ、甘えていた。
ところが、その宙太が他の女の子のために、命を……なぜよ?
なぜなの!
星子のほーりゅうを見る目には、嫉妬の火がちらちら……。
……こんな気分になるなんて……わたしが探し求めている人は宙太さんみたいな男じゃないのに……もっと、ステキな人なのに!
もぅ、自己嫌悪!
そう思った時、ほーりゅうが星子をみつめながら、ぽつりといった。
「……あなた、宙太さんを愛しているのね……」
「え? そ、そんな、まさかぁ……」
あわてて、首を振る星子に、
「ごまかしても、あたしには、あなたの本当の心がはっきりと見えるわ。それに、あなた、東京駅であたしにいったじゃない、宙太さんは大事な人だ、もしものことがあったらただじゃおかないって……」
「いったっけ、そんなこと……」
覚えていない。でも、春之助の顔を見ると、たしかにいったみたいだ。
まいったな、もう。
肩をすくめた星子に、ほーりゅう、
「大丈夫よ、星子さん。あたしと宙太さん、あなたの考えているような仲じゃないから」
「え?」
星子、キョトンとなった。
「でも、宙太さん、あなたのために命を賭けたわけでしょ?」
「それは、恋や愛とは関係ないわ」
「じゃ、なんのためなの?」
「あたしの超能力を、悪魔のロザリオから守るためよ」
「あなたの超能力を?」
「そうよ、もし、宙太さんが負けたら……恐ろしいことが起きるわ」
「えっ」
「大勢の人が死に、街は火に焼かれる……この世は地獄に……」
「!……」
星子、愕然とほーりゅうを見つめた。
(つづく)
|