星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

番外らぶっす

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番外らぶっす・15

               15

「ランランラン、おべんと、おべんと、たのしいなぁ」
 ううーっ、なんじゃぁ、この調子ぱずれのこの歌声は。
 なんと、まぁ、リツ子さまが、お台所でお弁当を作りながら、ご機嫌で歌っているじゃないですか。
 お台所といっても、さすが、麻布の大邸宅。そんじょそこいらのレストランよりも、はるかに立派。調理器具だって、外国製の最高級品がずらっと揃っている。
 もちろん、リツ子に使いこなせるわけがない。というより、普段、リツ子がお台所なんかに立ったためしがない。
セレブのお嬢様たるもの、お料理はお手伝いさんがこさえるもの。あたし、食べる人。あなた、作る人。その言葉に徹底しているわけ。ちなみに、リツ子のママも、右同じ。そんな暇があったら、エステにいくか、デパートでビップクラスのカードを使ってのお買い物だ。
 でも、そんなリツ子さんに愛妻弁当が作れるのかって。ご心配なく。前の晩に、家族で行きつけの三ツ星レストランに頼んで、特別料理を届けてもらっている。あとは、お弁当箱に詰めるだけ。
 そして、仕上げに、チェリーとミニトマトとイチゴで、ハートマーク、そして、リツ子のキスマーク。
「チュッ、愛してるわぁ、宙太サマ」
 キスしてお弁当の蓋を閉じると、
「はい、愛妻弁当の出来上がりデース。星子なんかには絶対に作れない、愛情たっぷりのお弁当でございます」
 優越感にうっとりの、リツ子さんだ。
 バカバカしい。お弁当箱に詰めるだけで、なに、威張ってるのよ。
 え? あんたんちに三ツ星レストランと付き合いがあるかって? 
 それをいっちゃ、おしまいよっ。
さて、リツ子さん、お部屋へ戻ってオシャレすると、お弁当を大事そうに抱えて、いざ、お出かけだ。玄関先には、父が呼んでくれたハイヤーが、丁重なご挨拶でお出迎え。
なぜ、そこまでと思うでしょうね。じつは、エリート刑事の宙太さんを、リツ子のパパとママ、いたくお気に入りなんです。
じつは、以前、リツ子のパパの会社が、とある恐喝事件に巻き込まれた時、捜査を担当した宙太が鮮やかな手腕を見せて犯人を逮捕した。
以来、リツ子のパパとママは、ぜひ、宙太を可愛い娘の婿に迎えたい、と、熱望。それにも増して、リツ子のほうが、宙太に熱烈ラブコール、というか、当然、結婚出来るものと思い込んでしまったわけ。
ま、そんなわけで、本人だけでなく、親から親戚、さらに、パパと親しい政財界の大物まで巻き込んで、総がかりで宙太婿取り作戦を展開中、といっても、過言ではない。
そのあたりは、いずれ、お見苦しいところをお目にかけるやもしれませんが、取りあえず、今朝のリツ子さん、「御苦労さま」なんて、いつなく運転手さんにごあいさつ。普段は、目もくれないヒトなのにね。
 あ、申し遅れましたが、本日は土曜日でして、学校はお休み。
「オチコボレの誰かさんは、試験前のお勉強で大変でしょうねぇ」
 余裕の笑顔のリツ子さん、ちなみに、誰かさんとは、もちろん、星子のことだ。
 いちいち、いうなっつうの。
 で、リツ子を乗せたハイヤーは首都高速道路に乗って、レインボーブリッジを渡り、お台場へ。さすが、土曜日ということで、かなりの賑わいだ。
 お台場に隣接する有明地区には、有明のテニスコートとかオリンピックの選手村候補地があるし、その先には、今、注目されているスポット・豊洲もある。最近は超高層のマンション群が続々と建てられ、エネルギッシュに発展するトウキョウの新しいシンボルのような所だ。
「このあたりのどこかに、宙太さんはマサルさんと二人で張り込んでいるんだわ。きっと、探し出して、愛妻弁当を渡してあげなきゃ!」
 リツ子、膝の愛妻弁当を抱えながら、車窓へ目をやった。
 丁度、近くのグラウンドでは野球の試合が行われている。どこのチームが試合をしているのか、愛妻弁当でアタマがいっぱいのリツ子には、どうでもいいことだった。
 でも、ほんとは、どうでもよくない。じつは、花太郎の天女学園が相手校と試合の真っ最中だった。そして、詰めかけた観衆の中には、なんと、星子がいた。
 その星子の目の前で、
 ガキーン!
 花太郎が今日二発目の場外ホームランをかっとばして、ベースを一周しながら、星子に「どんなもんだい!」と、得意満面、 指を立てて見せた。
 ベンチでは、細井たちが大騒ぎだ。でも、星子はぶぜんとした顔で、
「よしてよっ、わたし、あなたの活躍ぶりを見にきたんじゃないの。リツ子が宙太さんの邪魔をしないか、心配できただけよっ」
 と、唇をとがらせた。
 そんな星子の気持ちも知らずに、花太郎、
「おい、星子ォ! ケータイで写真取れや!」
 と、大声で叫んだ。 
 なんじゃぁ!
「お前」と呼ばれるだけで腹が立つのに、「星子」って呼び捨てかよっ。わたしにはたくさん男友達がいるけど、みんな、「さん」とか「ちゃん」づけで呼んでくれるよ! 
いったい、わたしを何だと思ってるのさ!
 憮然となった星子の気持ちをさらに逆立てるように、花太郎、
「あ、とった写真はリツ子さんに送るんだぜ! ヒーローの姿を見れば、愛はさらに高まるってもんだ。ダハハハッ」
 だって。
 リツ子といい、花太郎といい、どこまでノーテンキなんだろ。ほんと、こんな二人のキューピット役は、やめたい。もう、おしまいよ!
 星子、怒り心頭の顔で立ち上がりかけた。
 その時、ふいに隣から手が伸びて、星子の肩を押さえた。
 振り仰ぐと、なんと、宙太だ。
「宙太さんっ」
「ワリイ、僕とカップルのふりをしてくれ」
宙太、そういいながら、星子の隣に座ると、肩に手を回して、グイッと引き寄せた。
「ちょっとォ」
「だから、カップルのふり」
 なんて、そのわりには、やけに、強く抱き寄せている。品のいいオーデコロンの香りが、すっごく、シゲキ的だ。
うふーん、と、なりかけたけど、なんとか、我にかえって、
「でも、どうして?」
「じつはね…」
 宙太、真顔で星子に耳打ちした。
「ホシが、観客席のどこかにいるらしいんだ。それも、拳銃を持ったまま…」
「!…」
 星子の顔から、サッと血の気が引いた。

                             (つづく)


追記  ボクも、リツ子の愛妻弁当を食べてみたい、といったら、思いっきり、蹴飛ばされた。それにしても、この先、どういうことになるのやら。ま、楽しみながら、書いていきます。よろしく!

番外らぶっす・14

             14

「ハンセイ?」
 いきなり、リツ子にいわれて、星子、キョトンとなった。
「そりゃ、わたし、日々反省の毎日だけど…」
 そうです、反省にかけては、トラサンなみだよね。
「でも、あらたまって、なにを反省しろっていうの?」
「んもぅ、早合点しないで。反省するのは、このあたしよ」
「あ、ひっ?」
 一瞬、息がつまってむせてしまう。
 だって、リツ子、およそ、反省なんて言葉は縁がない生き方をしているからだ。
「オドロキ、あなたの辞書には『反省』なんて言葉はないと思ってたのに」
「改訂版が出ました」
 リツ子、にっこりとほほ笑んだ。
 またもや、あひっ! 
おかしい! いつものリツ子なら、こんな冗談は絶対にいわない。
 もしかして、宙太さんとケータイで話してから、おかしくなっちゃったのかもね。
 じつは、テレビ電話の一件、今さっき、宙太からメールをもらっていた。張り込みの交代時間に、知らせてくれたわけ。
「途中で電話を切っちゃったんで、リツ子サンのこと、ちょっと、気になってさ」
 そういわれて、「じゃ、様子をみてくるわ」と、その夜、リツ子とファミレスで落ち合った。そこで、いきなり、反省という言葉がリツ子の口からとびだしたってわけ。
「で、あなたのはじめての反省はどんなことでしょうか?」
「もちろん、きまってるでしょ、宙太さんのこと」
「え?」
 宙太さんのことで、反省とは、まさに、予想外の言葉だ。
「あたしね、宙太さんに少し甘え過ぎているんじゃないかって」
「うんうん」
少しどころじゃないだろっ。
「今日もね、あいつのことで、宙太さんに無理いっちゃって。そりゃ、宙太さん、あたしを愛してくれてるし、きっと、助けてくれるはずよ」
「うんうん」
 もう、軽く受け流すしかない。
「でもね、ケータイを切ったあとで、あたし、ふと、考えたの。こんなに愛されてばかりでいいのかしら。あたしからも、愛情のお返しをしてあげないと、不公平よね。宙太さん、可哀そうだわ」
「うんうん」
 余計な心配だけどね。
「それで、どんなお返しをプレゼントするわけ?」
「うふっ」
「もったいぶらないで、いいなさいよっ」
 ほんと、イラつくヤツ。
「愛妻弁当」
「はん? 愛妻…弁当?」
「そうよ」
 リツ子、こっくんとうなずいた。
「あたしの愛情をいっぱい詰めた、おいしい、おいしい、お弁当よ。ハートのマークとあたしのキスマークもしっかりと入ってるんだから」
 ゲッ、宙太さんが食えるか、そんなもの。
「でも、リツ子、まだ、結婚もしていないのに、愛妻弁当なんておかしくない?」
「あらぁ、あたしと宙太さん、もう、夫婦も同然よォ」
 ギャーッ!
「でね、あたし、その愛妻弁当を、明日から毎日、宙太さんのところへ届けるの」
「でも、でもよ、宙太さん、どこにいるのか、捜査で飛び回っているんだし」
「ご心配なく。たしか、お台場よ」
「台場に?」
「宙太さんがね、部下のマサルさんって人と話しているのが、ケータイから聞こえてきたのよ」
「!…」
 まさに、地獄耳だ。
「でもよ、お台場といっても、エリアは広いし…」
「大丈夫、愛のレーダーで探して見せるから。愛妻弁当を食べて、元気一杯、しっかりがんばってもらわなきゃ。じゃ、あたし、レシピ買いにいくから、さよならね」
 リツ子、席を立つと、いそいそと出口へ向かった。
 もう、開いた口がふさがらない、とは、このことだ。星子、しばし呆然と座っていた。
 でも、冷静になって考えれば、リツ子にはわるいけど、宙太さんはリツ子に見つかるような場所にはいないはずだ。手配中の恐ろしい連続強盗殺人犯は、台場のアジトに潜伏しているらしい。そうなると、宙太さんとマサルさんも、目立たない場所で張り込んでいるに違いない。
 そうよ、絶対、リツ子には見つけられないわ。愛妻弁当も、哀れ、ごみ箱行きね。
 ちょっと可哀そうだけど、リツ子にはいいクスリかもね。
 これで、宙太さんへの思い込みが少しでもやわらげば、それも、結構なことです。思い込みといえば、花太郎さんも同じだよね。予選で負けて甲子園行きの夢が消えれば、リツ子のことも消えていくかも。きっとね。
ふーっ、そうなってよ、お願いだから。もう、キューピット役はたくさん。早く、いい恋さがしの一人旅に出かけたいんだから。
そう思いながら、星子、我が家へと向かった。
 ところが、とんでもないことが…。
 我が家のあるマンションに入りかけた時だ。
 グォーンとバイクの音がしたと思うと、目の前に、キキーッ、なんと、花太郎のナナハンが急停車した。
「待ってたぜ、星子さん!」
 そういいながら、グイッと突き出されたのは、一輪の真っ赤なバラの花だ。
「な、なによっ」
「花束ってわけにはいかないけどよ、お前にもプレゼントしようと思ってさ」
「どうして?」
「きまってるだろ、勝利のしるしさ」
「勝利?」
「そ、勝ったんだよ、今日の試合」
「ウ、ウソッ」
「ピッチャーの俺が完封して、四番バッターの俺が、ホームランを三本打って、楽勝さ! 
次の試合も、これで、ドーンといけるぜ!」
「!…」
 当てが、外れたじゃないですか。でも、マグレってこともある。次の試合は、きっと、負けるから。
「な、星子さん、次の試合、応援にきてくれるか?」
「さぁ、試験も近いし…」
「ムダムダ、勉強したって、同じだぜ。俺もそうだしさ」
「ちょっと、あんたと一緒にしないでよっ」
「いいから、いいから。じゃ、よろしくな。次の試合は、台場近くのグランドだからな」
「だ、台場近く?」
 ちょっと、ヤバくない?
「待ってるぜ、星子さん!」
 花太郎、バラの花をポンと星子に投げて、ナナハンをダッシュさせた。

                             (つづく)


追記  なんだか、風雲急を告げる事態になってまいりましたね。はたして、いかなることになるやら。それはそれとして、そろそろ、星子さんに恋旅をさせたくなってきました。今度は、ファンタジー・ワールドにも挑戦したいな、と思っているのですがね。果たして、アタマと体力がついてきますかどうか。他のジャンルでも挑戦したいことがあるし。なんだか、死に急いでるのかな。

  
 

番外らぶっす・13

                  13

 こ、これは、悪夢か。
 夢なら、今すぐ、さめてくれ。頼みます、カミサマ、ホトケサマ、ダルサマ!
 宙太、目をつぶって祈った。
 でも、残念ながら、夢じゃなかった。ケータイの画面には、リツ子のメガネザルもどきの顔が大きく写っている。
 それも、取り澄ました、お高くとまった顔でなくて、でれでれ、くしゃくしゃ、うるうる状態とでもいおうか、とても、正視できない、というより、まともに正視したら、こっちが卒倒しかねないほどだ。
 そのリツ子サン、
「アハーッ」
 なんともせつない吐息をつくと、
「夢、夢ならさめないでぇ」
 冗談じゃない、こっちはさめてほしいぜ、と、宙太クン。
「そうよ、あたし、いつも夢見ていたの、宙太さんがあたしにキスしてくれる夢を…その夢が、とうとう、かなえられたのね…カンゲキ、もう、死んでもいいくらいよォ」
 そう、まさに、今にも死にそうな顔だ。
「あなただって、そうでしょ。あたしにキスする夢を、何度も何度も見たんでしょう? そうよね?」
 うはっ。
「ま、まってくれよ、リツ子さん…」
 宙太、たじたじとなりながらも、いった。
「あのね、いっておくけどさ、つまり、その、僕は直接、君にキスしたわけじゃないぜ。あくまで、ケータイの液晶画面にちょいと軽く…」
「いいえ、ホントのキスよ。あなたの唇のぬくもり、甘い吐息が、あたしのこの唇にそよかぜのように触れたのよ。あたし、はっきりと感じたんだから」
「思い込みだよ、それは。第一だよ、僕には、君にキスする理由がないし…」
「ウソ、今さっき、キスする時にいったじゃないの、愛しているって…」
「それは,物のはずみ。たまたま、君の前に電話をしていた相手と勘違いしてさ…」
「え?だぁれ?」
「誰って、つまり、その…」
 宙太、口ごもった。まともに星子の名前を出したら、どえらいことになる。
 いや、名前をいわなくても、リツ子のヤキモチ爆弾が大爆発するかもネ。
 ヤバイぞ、と、思った時、リツ子はくくくっとご機嫌な笑い声をたてた。
「宙太さんって、ほんと、シャイなかたねぇ」
「シャイ? この僕が?」
「恥ずかしくて、あたしの名前をいえないんでしょ。カワイイ!」
よ、よせっ、虫酸が走る。わかってないぜ、おたく。まるで、わかってないっ。
 まさに、天動説リツ子サンだ。
「でも、よかった、宙太さんの気持ちがあらためてわかって。星子の話だと、宙太さん、今お仕事で忙しいそうだし、助けてもらうのは、ちょっと、無理かなって思ってたの。でも、あたしのこと、こんなに愛してくれてるんだもの、命に代えても守ってくれるはずよねぇ」
 ああ、このあくなき身勝手さ。宙太、もう、反論する気力もなく、
「花太郎ってオトコのことかい。話は星子さんから、聞いてるけど」
「そう、だったら、話は早いわ。あいつに、きっちりお灸をすえてやって。もう、二度とリツ子さんには近づくな。逮捕するぞって」
 お灸とは、古臭い。やっぱり、お嬢様育ちのせいかね。
「今すぐ、やってくれるでしょ、ね、宙太さん?」
「いや、いくら、リツ子さんのためでも、今すぐはムリだよ」
「どうして?」
「手負いの猪ほど危険な奴はいないからね。一刻も早く捕まえないと」
「じゃ、あたしはどうなってもいいの? ね、宙太さんっ」
「そういうわけじゃないけどさ、とにかく、花太郎クンのことは、あとできっと…」
「あとじゃ駄目よっ、あたし、もう、限界なの。ノイローゼで死にそうなの。助けて、宙太さんっ」
 リツ子、とうとう、泣きながら訴え始めた。
 サイアク。
 こっちこそ、ノイローゼで死にそうだぜ。
 宙太が吐息をついた時だ。一台の覆面パトカーが走ってきた。
「警部!」と、叫びながら、運転席から顔を出したにのは、マサルだった。
「ホシの手がかりがあったぜ!」
「ほんとか!」
「ホシの乗った盗難車が、台場の潮風公園の近くで目撃されたんだ!」
「よし、いこう!」
 宙太、キッとなると、
「リツ子さん、緊急事態なんだ。また、あとで連絡入れるから!」
「そんな! ちょっと、宙太さん…」
「ワリイ!」
 宙太、ケータイを切ると、覆面パトカーの助手席に飛び乗った。
 ふーっ、これで少なくとも、当分、リツ子の呪縛からは解放されたわけだ。
 宙太、ほっと一息ついた。
 でも、宙太は気づいていなかった。リツ子が、ケータイで、宙太とマサルの話を聞いていたことを…。
「…潮風公園、ね…」
 リツ子、思いつめた顔でつぶやいた。

                        (つづく)



追記  天動説レディのリツ子さん、この先、どういう行動に出るか、ま、かなり、やばいことになりそうだけどね。
 ところで、今日、外出したついでに、話題の副都心線に乗ってきました。その感想。やっぱり、山手線はいいなぁ! 東京の都心の大パノラマを見ながら、走るんだからね。地下鉄はいくら便利でも窓の外が暗い。僕は光がほしい!ほんとは、窓から吹き込む風も。君の長い黒髪をなびかせる、都会の風を…。

番外らぶっす・12

             12

「ふーん、最後の花束でプロポーズね」
 宙太、ケータイの画面に映る星子の顔を見ながらいった。そうです、テレビ電話で話しているってわけ。
 時代も変わりまして、二人の関係もモバイル化したわけでして、ハイ。
「でも、それって、ボクチャンのプランの先取りだぜ」
「先取り?」
「そ、いずれ、近いうちに僕はハニィに花束を贈り、プロポーズするつもりでいたんだ」
「ちょっと! 血の雨よ、今の話がカノジョの耳に入ったら」
「カノジョって?」
「きまってるでしょ、リ・ツ・子」
「まさかぁ」
「甘いの! リツ子は宙太さんがだいすき。本気で愛してるのよ。それこそ、命かけてるわけ」
「こわーっ、カンベンしてよ」
 宙太、おどけてみせた。
「ほんとだったら。軽く考えてると、死にそうなほどこわい目にあうから」
「ハイハイ」
 それでも、まだ、宙太には実感がわかなかった。おかげで、あとで、星子のいったとおり、大変な目にあうことに…。
そうとは知らない、宙太、ちょっと、気取って、
「恋する男は、詩人になる。誰かが、そんなこといったっけ。今の花太郎クンがそのいい見本だな」
「詩人、ね」
 たしかに、それはいえてるかも…以前の一人番長、さすらいのつっぱり花太郎くんだったら、恋の切なさで泣いたり、花束を贈ったり、プロポーズするために甲子園を目指す、なんて、とても、考えられなかったはずだ。
「あ、僕も詩人だぜ。お忘れなく」
 宙太、ウインクして見せた。
「いつか、きっと、ハニィに恋の歌を捧げるからさ。しっかりと、受け止めてくれよ。オーケー?」
「ハイハイ」
 今度は、星子が軽く受け流す番だ。どうしても、マジメに捉えられない。宙太には悪いと思っているけど。そして、時々、そんな自分が悲しくなってしまう。
「それより、リツ子のこと、どうするわけ?」
「どうもこうもないよ。こっちは、今、逃亡中の連続強盗殺人犯の捜査で、それこそ、ゴンベエの手、おっと、当てにならないか、とにかく、僕もマサルくんも大忙しでさ。とても、そんな暇はないの。丁重にお断りします」
「それじゃすまないから、電話したのよっ」
「まいったな、まったく」
 宙太、吐息をついた。
「今、捜査は大詰めなんだ。心配なのは、追い詰められたホシが、あらたな犯行をしでかさないか、ってことさ」
宙太の顔、いつになく、真剣だった。
 その顔を見ているうちに、星子、なんだか、申し訳なくなってきた。もし、万一のことでもあったら、宙太やマサルの責任問題にもなりかねない。
「わかったわ、じゃ、こうしない?」
「ん?」
「宙太さんの仕事にケリがつくまで、わたし、なんとか、リツ子をなだめておくから」
「大丈夫かい?」
「まかしといて。それにね、どう考えたって、天女学園が甲子園へいけるわけないし。今度の復活戦で消えるにきまってるから。そうすれば、花太郎さんもあきらめると思うよ」
「しかし、花太郎くん、なんだか、奇跡を呼ぶような気がするな」
「心配ないから。試合にはゲンコツは通用しないわ。じゃ、お仕事、がんばってね!」
 星子の顔、ニッコリと微笑んで、液晶パネルから消えた。
「ちょ、ちょっと、星子さん…愛してるよ、ハニィって、いうつもりだったのにな…」
 宙太、残念そうにケータイを閉じようとした。
 その時、呼出し音が…ちなみに、宙太のケータイの呼出し音のメロディは「×××」です。
 ここでモンダイ。カッコの中の曲名を埋めよ。正解者には、宙太のキッスマークをプレゼント、なんちゃって。
 それはともかく、宙太、急いでケータイを開いて、
「ハーイ! 愛してるぜ、ハニィ!」
 そういいながら、チュッ、液晶画面にキスを…次の瞬間、
「ギャッ」
 宙太、悲鳴を上げながら、ロケットのように飛び上った。
 な、なんと、液晶画面には、リツ子のチャーミングなお顔がクローズアップで写っていた。

                             (つづく)


追記  東北地方の大地震、ひどい被害ですね。以前、クルマでドライブした山岳道路もメチャメチャのようです。恐ろしいです。被害にあわれた方々に、お見舞い申し上げます。
ところで、宙太くん、やっと出番が回ってきたと思ったら、ショッキングな事態に。あとのことは、ボク、知りません。
ちょっと、このパターン、多過ぎない?

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番外らぶっす・11

                   11

 ―ああぁ、憂鬱…まいったな…。
 窓のカーテンの外がいつの間にか、薄明るくなっている。目覚し時計を見ると、朝の五時ちょっと前だ。
星子、ため息をつきながら、ベッドで寝がえりをうった。昨夜から数えて、もう、何十回目か数えきれない。
 だって、リツ子にどう説明していいのか、わからないからだ。
 ほんとは、昨日の夕方、花太郎に助け出されて魔女屋敷から逃げ出したあと、リツ子に話すつもりでいた。でも、いざ、ケータイをかける段になると、
「俺が惚れているのは、リツ子さまだけだ!」
「甲子園出場の夢を果たしたら、プロポーズするつもりだ!」
 と、叫んだ花太郎の声が、耳の中にワーンとこだまして、もう、ダメ。どうしても、電話もメールも出来ずじまい。
 一晩中、悶々と眠れない夜を過ごすはめになった。自分の恋の悩みで眠れないんなら、何日徹夜してもへっちゃらだけど、リツ子の恋のためだなんて、まったく、サイアクだよね。
 ベッドの足もとでは、ゴンベエの奴がゴロゴロと高いびきだ。普段は慣れっこだけど、今回ばかりはイラつく。
「うるさい!」と、蹴飛ばしてやったけど、効き目なし。
 とにかく、少しでも寝ないと。今日も授業があるんだから。リツ子には会いたくないけど、期末テストも近いし、サボるわけにはいかない。
 なんとか、うとうとしたと思ったら、ケータイが鳴った。リツ子からだ。
「ちょっと、今、何時だと思ってるわけ。朝の五時だよっ」
 星子が不機嫌な声でいうと、
「だから、なによ。あたし、とっくに起きて、英会話の勉強はじめたとこ。あたしのタイムテーブルに合わせなさいな」
 ですって。リツ子って、どこまで、自分勝手なんだろ。
「どうして、昨日、電話くれなかったの? ずっと、待ってたのに。おかげで、読書に集中できなかったわ」
 それが、なんじゃい! こっちは、あんたのためにひどい目にあったっていうのに。
「それで、ちゃんと、話はつけてくれたんでしょうね」
「ザンネン、失敗でした。カレ、あなたにプロポーズするってさ」って、いってやりたい。ほんとはね。でも、いったあとの騒ぎを考えると、できない。
「ごめん、ちょっとね…いろいろと、あって…」
「なにが?」
「だから、いろいろ。じつは、そう、花太郎さん、病気で寝込んじゃって…」
「病気って、どんな?」
 恋の病い、と、いいたいけど、これまた、大騒ぎになるのは、目に見えている。
 だけど、正直いうと、恋の病いにかかった男純情・花太郎さんのために、キューピット役をかってやってもいいかな、と。
だって、義理と人情にはアツい星子さんですからね。でも、今のリツ子には、だれがキューピットになろうと、絶対に、無理な話だ。
 とにかく、アタマを冷やす時間が欲しい。
 それによ、花太郎さんには悪いけど、甲子園に出場する可能性は、ゼロ。ゲンコツで何とかするっていってたけど、絶対に無理だと思う。野球はケンカとは違うんだから。
となると、つまり、プロポーズすることは出来ない。そうなれば、生一本な花太郎さんのことだ。リツ子へのラブコールもあきらめるはずだよね。
可哀そうだけど、実らない恋で苦しむより、早めに諦めてもらったほうが、お互いのためだ。
 と、いうことで、星子、
「どんな病気か、くわしいことはわからなかったけど、残念ながら、カレには会えなかったわけ…」
 星子、とっさに嘘をついた。
「でも、大丈夫、時間が解決してくれるから」
「時間が? ほんとに?」
「うん、まかしといて」
 そういって、星子、ケータイを切ると、やれやれという気分で、なんとか、一眠り。
 目覚まし時計でやっとこさ起きた時には、すでに、パパもママもお仕事でお出かけ。パパはサラリーマン、ママは看護師。二人とも中堅ということで、目一杯働かされている。それにくらべて、星子ときたら、恋夢を追いかけ自由奔放に生きている。
ごめんね、パパ、ママ。今に素敵な恋を見つけて、楽させてあげるからね。
はん? なんのカンケイがあるわけ?
ま、とにかく、寝不足もいいとこ。もうろうとした頭で、いざ、学校へ。ゴンベエ、しっかり、留守番せいや。
どうにか、遅刻せずに学校に着いた時だった。
一台の自転車が、よたよたしながら近づいてきた。
「ど、どうも! お早うございますっ」
 遠慮がちに声をかけてきたのは、なんと、細井くんじゃないですか。
 ほそっこい体にだぶついた学生服、顔も青白いお坊ちゃまふう、とくれば、なんとも、さえない姿だ。
「あら、細井くん、だったっけ」
「はい、覚えていて下さって、恐縮です」
 細井は、顔を赤くしながら、頭を下げた。
 登校してきた女の子達が、興味しんしんというか、中には、苦笑しながら、星子と細井を見比べながら、校門へ向かっていく。
 学校でも有名なやんちゃっ子の星子が、さえない男の子と一緒なので、ひときわ、注目の的になってるらしい。
 でも、好奇の目には慣れっこの星子、
「それで、なにか用かしら?」
 と、聞いた。
「じつは、キャプテンにことづてを頼まれまして…」
「キャプテン?」
「花屋敷センパイです」
「へぇ、カレ、キャプテンになったの」
「はい、自分から立候補、というか、前のキャプテンをおどして、チェンジしたわけでして…」
「あきれた! で、そのキャプテンがなんですって?」
「再試合がきまりましたので、応援よろしく!」
「再試合? でも、お宅のチーム、この前、負けて資格を失くしたはずよ」
「それがですね、あの時の相手チームが、合宿所でタバコとお酒をやらかしていたのがバレて、連盟から二回戦出場の資格をはく奪されまして。代わりに、ウチの学校が二回戦のお相手をすることになった次第です」
「んまぁ! でも、どうして、ばれたわけ?」
「それがですね、前からうわさが…で、センパイが相手チームのキャプテンをしめあげて、裏を取ったらしいです」
「そうか」
 これで、チャンスはゲンコツで作る、といったわけがわかった。
 まったく、あの図体で、抜け目のないヤツ。恋にはまだシロウトのようだけど、どうして、とんでもなく大化けするかもね。
 こわーっ!
「あ、それから、これを…」
 細井が、自転車の荷物かごから、ブーケを取り出した。
 赤や黄色、白のバラの花を素敵な包装紙で包んだブーケだ。
「わぁ、きれい! ありがと! あなた、見かけによらず、センスいいのね!」
「あ、違うんです。選んだのは、確かに僕ですが、プレゼントするようにいったのは、センパイです」
「ハナコ、ううん、花太郎さんが? やだぁ、そんなカンケイじゃないのにぃ」
 思わず星子がてれると、
「あ、それも違います」
「え?」
「プレゼントの相手は、リツ子さまです」
「はん?」
「センパイは、あなたにこう伝えろと…リツ子さまは、俺にとって勝利の女神だ。リツ子さまへの愛が、俺を勝利へと導くんだ。この花束は愛の象徴。これから、毎日、届けさせる。そして、最後の花束は、この俺が届ける。プロポーズするために、と」
「!…」
「じゃ、リツ子さまへの手渡し、よろしくお願いします」
 細井は、ぺこりと頭を下げると、自転車に乗った。
「ちょ、ちょっと!」
 星子が声をかけたけど、ダメ。細井の自転車は、たちまち、走り去った。
 まいったな。こんな花束、リツ子に渡せるわけないよ。しかも、最後には、花太郎が渡しにきて、プロポーズを…。
 その瞬間、いきなり、背後から、花束がひったくられた。
 ハッと振り向くと、リツ子が眦をつり上げて、立っている。
「り、リツ子っ」
 いつの間にか、そばで話を聞いていたらしい。
「なによ、これは! プロポーズって、どういうこと!」
「そ、それは、つまり…」
「このウソつき! 星子、あなた、あたしにウソついてたのね! よくも、このあたしを…」
 リツ子は、ブーケを叩きつけた。
「リツ子、ごめん! あやまる。でもね…」
「いいわけしないで! あなたなんか、もう、絶交よ! 赤点でも黒点でも、たっぷりと取ればいいわ!」
 リツ子の顔は、まさに、夜叉のようになった。こうなると、とても、手がつけられない。
「いいわ、こうなったら、もう、宙太さんの手を借りるしかないわね!」
「宙太さんに?」
「そうよ! これはもう、りっぱなストーカーよ! 捕まえて貰って、一生、刑務所から出られないようにしてもらうから!」
「そ、そんなこと…だいいち、宙太さんは他の捜査で。とても、手が回らないと思うけど…」
「お黙り! 愛する人が、大ピンチなのよ。何があろうと、駆けつけてくれるはずよ! きっと!」
「待って。あなたは、宙太さんを誤解しているのよ。宙太さんは、あなたのことを、別に…」
「うるさい! お黙りっていってるでしょ!」 
 リツ子は、星子に背中を向けてケータイをかけた。
「あ、もしもし、宙太さん、 あたし、リツ子よぉ」
 一転、リツ子の声は、甘える雌猫のように、うわずった。
「あたし、ストーカーに殺されそうなの。助けて、早く、助けてぇ!」
 ―ああ、今度こそ、サイアク…。
 星子、がっくりと肩を落とした。

                          (つづく)


追記  どうやら、宙太くんの出番がきたようで。でも、相手が相手だし、宙太といえども、かなり、手こずりそうだ。オレ、しらねっと。また、それかい、山浦さん。
 ま、この先をお楽しみに。ただし、ちょっと野暮用もありまして、少し間が空くかも知れません。よろしくです。

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星子&宙太yyy
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