星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

星子とパパの恋旅ガイド

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                 4

「キ、君が……宙太クン?……」
 わたしは、思わず目をこすりながら、宙太を見つめた。
「イメージ、合いませんか、センセ?」
 宙太は、軽い笑顔でわたしを見返した。
「ま、無理もないか。星子さんや他のレギュラー達もそうだけど、三人の挿絵画家サンによって、それぞれ、顔や髪型、スタイルが違いますからね。本人の俺達も戸惑ったまんまでして。んな、ハニィ?」
「まぁね。それより、ハニィっていいかた、やめてって、いってるでしょ。わたし、そんなんじゃないんだから」
 星子が唇を尖らせたが、宙太はニヤリとウインクで応えた。
「好きな人には、本心を隠す。いいなぁ、そういうカマトトぶりがたまらないっす、ハイ」
「ちょっと!」
「ま、ま、ま……」
 わたしは、なだめるように星子を手で制した。
 二人のやり取りを聞いていると、確かに、わたしが作った二人のキャラにほぼ一致している。どうやら、宙太もわたしの本の中から抜け出てきたようだ。
 星子といい、宙太といい、コバルト本の三者三様の挿絵キャラとどこか似ているようで違っているような……ま、あるがままを受け入れるしかないようだ。
「だけど、なによっ」
 星子は、ふくれっ面のままで宙太にいった。
「どうして、いちいち、わたしの前にあらわれるわけ?」
「申すまでもないこと」
 宙太は、左手を胸に当てると、片膝をついて、頭を下げた。
「姫をお守りするのは、ナイトの使命にございます。命ある限り、旅のお供を仕りまする」
「また、それをいう!」
 星子の眉が、きりりっと吊り上がった。
「わたしにはゴンベエがいるし、ガードマンなんかいらないの。それにね、今回の旅はパパと一緒だし、危ないことはないから」
「とんでもない! そのパパが一番キケン、真っ赤っかの赤信号なんじゃ」
 宙太は、わたしをピタッと指差した。
「ボ、僕が?」
 唖然となったわたしをかばうように、
「パパのどこがキケンなのよっ。デタラメいわないで!」
 すかさず、星子がいった。
「パパは、わたしを作ってくれた人よっ。ヘンなことするわけないじゃん」
「ところがどっこい! 作者っていうのは、自分の憧れる女性を主人公にする。つまり、星子さんはセンセの好みのタイプの女子高生ってわけ。昔、ロリコン趣味なんて言葉がはやったらしいけど、もしかして……」
 とたんに、バシッ。
 星子の平手打ちが、宙太の頬に飛んだ。
「パパを侮辱する気なの! これ以上いったら、タダじゃおかないから!」
「チョー気持ちいい! 好きな子にぶたれるのって、サイコウ!」
「ゴンベエ、スタンバイよ!」
 その声に、ゴンベエくん、フーッとうなりながら、リュックの中から宙太を睨みつけた。
「わ、わかった。わかりました」
 宙太は、あわてて後ずさりした。
「ま、とにかく、一応、忠告だけは……」
「うるさーい! 早く消えて!」
「ハイハイっ」
 宙太は、デッキから隣りの車両へ走った。
「たくもぅ!」
 星子は、憤然と見送ったあとで、わたしに頭を下げた。
「ごめんなさい、パパ。宙太さんを許してあげてね。悪気はないんだから」
「わかってるよ。多分、君が僕に優しくしているんで、ヤキモチでも妬いたんだろう。それだけ、君に惚れてるってことさ」
「やだ、お呼びじゃないよ。ね、シチュエーションを変えてくれない? 宙太さんが好きなのは春ちゃんだとか……」
「それは無理な注文だな。あきらめなさい」
「ケチ」
 星子は、唇を尖らせたあとで、チラッとわたしを見上げた。
「ね、パパ……」
「ん?」
「さっき、宙太さんがいったこと、ほんと?」
「なにが?」
「作家さんって、自分の好きなタイプの女の子を主人公にするって……」
「まぁ、当たらずといえども、遠からずかな」
「じゃ、わたしを主人公にしたのも、パパが、もしかして……」
「……」
 わたしは、答えに詰まった。
「ね、どうなの、パパ?」
「今、いったろう、当たらずといえども、遠からずって」
「パパ……」
 なんとか、ごまかしたあとで、
「さ、もう遅いから、休んだ方がいいな」
「函館には、何時に着くわけ?」
「えーと……」
 わたしは、ポケットから取り出した時刻表をめくった。
「今、僕等が乗っているのは、青森を22時42分に発車した急行『はまなす』だ。函館には深夜の一時丁度に着く」
「わぁ、真夜中じゃん。爆睡のお時間でーす。パパ、起こしてくれる?」
「ああ」
「きっとよ」
 星子は、私の小指に自分の小指をからめてきた。
「心配ないよ。ボディガードの君を置いていくわけがないだろう」
「そうか、そうよね」
 肩をすくめた姿が、なんとも、可愛い。
 デレッとなってしまう。わたしである。まったく、歳甲斐もない男だ。ハンセイ。
「で、パパの切符、指定席?」
「うん、そうだけど」
「隣の席、あいてるかな」
 ということで、車掌に聞いてみたところ、残念ながら、今夜は週末で団体客も乗っていて、万席とのこと。
 ザンネン。
 といって、自由席に乗ると、宙太がまた、すり寄って来る可能性もある。幸いというか、この列車には女性専用車が連結しているので、星子はそちらのほうに乗ることになった。
 しばし、星子とはお別れだ。
 ホッとしたというか、でも、ちょっぴりさびしい気分で、わたしは指定席の車両に移って、シートに体を沈めた。
 失った恋の想い出をたどる旅が、こんな展開になるとは。はたして、この先、どういうことになるのか。わたしの作品が生み出した主人公だし、このまま、無事に旅が続けられるとは思えない。
 やれやれ、まいったな。
 そう思いながらも、星子と一緒に旅が出来ることに、なんだか、気持ちがわくわくしてくるわたしであった。あとで、命が狙われるような事件に巻き込まれるとも知らずに……。


追記  わたし、を、書くというのは、難しいものです。それだけ、わたしは偽装していることかもしれませんね。もっとも、恋ほど自分を偽装する時はないでしょうね。

  

                3

「うっ」
 ……熱い……。
星子にキッスされた右の頬が、ジーンとしびれるように熱い。
なんて、やわらかくて、暖かい唇だろう。恥ずかしいが、一瞬、頭の中がボーッとなってしまった。
キッスなんて、本当に久し振りだ。それも、星子のような若い女の子のほうからキッスされたことは、自慢じゃないが、一度もない。
 若い頃からもてなかったこともあるが、昔の女の子は、自分の方からキッスすることは、滅多になかった……と、思いたい。いいわけとしては、ちょっと、苦しいかな……。
 ま、それはともかく、
 ポイントを渡る列車の振動で、やっと、我にかえったわたしは、
「キ、キミッ、やめてくれ。誰かに見られたら、どうするんだ」
 と、少し強い調子でいった。
 陶然となった自分の姿を、何とかごまかそうとする大人のずるい計算も働いていた。
 でも、星子は、
「わーい、パパ、赤くなってるぅ」
 と、微笑んだ。
「いいじゃない、親子なんだもん。あ、恋人同士に見られても、わたしは平気だよ。この広い世界には、親子、ううん、孫とおじいちゃんぐらいの歳の差の恋人関係って、結構アリらしいし」
「う、うん……」
 たしかに、それはある。かの文豪ゲーテは、74歳の時、確か、18歳の少女ベアトリーチェと熱愛関係になったとか。
 羨ましい。だが、大半の老人にとっては、願望はあっても、夢のまた夢であろう。わたしも、すでに、前期高齢者、後期ではありませんぞ。前期も後期もじつに嫌な言葉だが、その部類に入っており、恋という字には無縁の存在だ、と、自分にいい聞かせていた。でも、まだ、可能性がある、かも……。
「あ、パパ、また、顔が赤くなった」
 すかさず、星子がわたしの顔を覗き込んで、ニヤッと笑った。
「こ、こらっ、人をからかうんじゃないっ」
 再び、語気を強めたものの、迫力がない。下心を見透かされると、人間、弱いのである。
「とにかく、とにかくだ……」
 わたしは、邪念を払いのけるようにいった。
「僕のことを心配してくれるのは有難いが、大丈夫だから。人間、この歳になるとね、ほとんどの人がリタイアして、小さな世界に閉じ篭りがちになるんだ。体力は衰え、頭の働きは悪くなり、感性も衰え、些細なことでイラつくようなる。夫婦関係も難しくなるし、友達もほとんどいないし、親兄弟とも疎遠になるし、その上、人生のゴールも見えてきて、焦りも強くなる。つらいが、耐えなくてはならない。ちょっとキザないいかたをすると、孤独との戦いかな。今度の旅も、その戦いにどこまで自分が耐えられるか、自分を試すことでもあるんだ」
「……ふーん……」
「あ、君には難しすぎる話かな。高校生ぐらいじゃ、まだまだ、縁がないからな」
「まぁね」
 星子は、肩をすくめた。
「でも、もし、もしもよ……」
「ん?」
「その戦いとかに耐えられなくなったら、どうするわけ?」
「その時は、芭蕉の心境かな」
「芭蕉って、俳人の?」
「うん、『旅に病で 夢は枯野を かけ廻る』、そんな句があるんだ。旅半ばで倒れようとも、夢を追いかけながら朽ち果てるのも一興ってことかな」
 自嘲気味にいったわたしに、
「バカ!」
 星子は、大きな瞳で睨みつけた。
「そんな悲しいことをいうパパなんて、キライ! それに、パパ、肝心なことを忘れてる!」
「肝心なことって?」
「パパにもしものことがあったら、わたしもオシマイってこと。ううん、ゴンベエもよ」
 ゴンベエくん、リュックの中でうなずいた。
「他にも、宙太さんとか、マサルさんとか、春ちゃんとか、右京さんとか、リツ子とか、星子シリーズのレギュラーみんながよっ」
「そんなことはないさ。たとえ、僕が死んだって、君達は本の中で生きているじゃないか」
「それは、過去のわたし達よ。未来のわたし達じゃない」
「未来の…」
「そうよ、わたし達、もっともっと、旅をしたいし、もっともっと、恋をしたいの! それをかなえてくれるのは、山浦さんしかいないのよ!」
 星子の瞳には、いつの間にか、涙が浮かんでいた。キラキラと光る透明な涙だった。
「ね、パパ、お願い、元気を出して。パパが元気になってくれれば、わたし達も新しい素敵な旅ができるし、素敵な恋にも出会えるんだ。だから、お願い!」
「……」
 わたしの胸に、熱いものが込み上げてきた。
 今、目の前にいる少女が、小説の世界からこの世にあらわれた主人公・流星子なのか。それとも、星子に扮しただけの別人なのか。その判断は、まだ、つきかねている。だが、どういう星子にしろ、作者であるこのわたしを励ましてくれているのだ。かって、星子シリーズをこの世に送り出したわたしとしては、星子の願いにこたえなくてはいけない。
 ずっと、澱んでいた暗い沼に、一条の光が差し込んだような気分だ。
「わかった」
 わたしは、星子にうなずいてみせた。
「二人で、旅をしよう」
「ほんとに!」
「ああ、もちろん。君と二人で気の向くまま、広い北海道を旅しようじゃないか。きっと、素敵な出会いがあるかもしれないよ」
「うん!」
 星子は、涙をぬぐうと、うれしそうに微笑んだ。
「で、最初にどこへいくわけ?」
「わたしとしては、函館にいくつもりだが…」
 星子には理由をいわなかったが、函館は昔、わたしが愛した女性と二人で北海道を旅した時、最初に訪れた街だった。
その人は、わけありのまま、わたしのもとを去り、数年後、病いでこの世を去った。私にはつらい思い出しか残っていないが、人生最後の旅に、今一度、あの人との思い出をたどってみたかった。
 そこで、かって二人で待ち合わせた青森駅を起点に、夜汽車に乗ってまず函館を訪ねてみることにしたが、接続列車のダイヤが乱れて、危うく乗りそこなうところを、星子のおかげでどうにか乗れたのだった。
「ふーん、函館ですかぁ」
 星子は、軽く首をかしげた。
「ちょっと、定番過ぎるかな」
「ううん、そんなことない。パパがいきたいとこへ、わたし、しっかりとついていくもん」
「そうか」
 うれしいことをいってくれる。
「でも、途中で素敵な恋にめぐり逢えたら、私に遠慮なくカレと…」
「モチロン」
 星子は、ニヤッと笑った。
「って、いいたいけど、パパを一人にしても大丈夫ってわかるまでは、パパから離れませ〜ん」
 そういいながら、星子はわたしの首に抱きついてきた。
「君…」
「んもぅ、星子って呼んで」
「…星子…」
「うれしい! もう一度、キッスしちゃおっと」
 星子が再び唇を近付けた時だった。
「そのキス、待ったぁ!」
 ふいに、若い男の声が聞こえた。
 同時に、隣の車両から、サングラスをかけた男が派手なクリーム色のコートをヒラリと翻しながら飛び込んだ。
「な、なんだ、君は!」
 たじろいだわたしをかばうように、星子が若い男をじろりと見上げた。
「宙太さんったら! また、余計な所にあらわれるんだから!」
「宙太クン?」
 わたしが呆気に取られた顔で見ると、若い男はやおらサングラスを取った。
 一見、きざっぽいが、ちょっとタレメ気味の、ハンサムボーイがにっこりと微笑んでいる。
 美空宙太、そのご本人だった。


追記  宙太クン、最後に登場。さて、どういうことになりますか。今日は一日中、カラッとしていい気分でしたね。明日もそう願いたいところですが。

               2

「そ、そんな……」
 何度か深呼吸したが、まだ、声が少しうわずっている。
「キ、キミね、人をからかってはいけないな……流星子というのは、あくまで、小説の主人公だ。実在している人間じゃないんだ」
 わたしは、星子と名乗った少女に諭すようにいった。
「そうか、もしかして、君、なりきり症候群にかかっているんじゃないかな」
「なりきり……ショウコウグン?」
「ほら、よくあるじゃないか。小説とか映画とかテレビの登場人物に惚れ込んで、その主人公と同化というか、一体化というか……僕も、若い頃はよくあったな。高倉健サンに惚れ込んで、映画館を出てくる時は、すっかり健さんになりきっているとかさ……君も、星子さんに惚れ込んで、自分が星子に……」
「うふっ」
 星子は、クスッと笑った。
「なにが、おかしいんだ?」
「だって、パパが高倉健さんになりきるなんて。その顔とルックスで? いくら、若い頃でもネ。それこそ、ウッソーッだ」
「お、おいっ」
 不愉快な小娘だ。でも、ま、いってることは正しいかな。
「そりゃ、パパが戸惑うのは無理ないけど、わたしは、本物の流星子。パパがコバルト文庫で書いてくれた、あの伝説のカットビ女子高生・星子チャンですっ。おっと、自分で伝説だなんて、ちと、図々しいかな」
 星子は、ペロッと可愛い舌を出した。
「とにかく、ここに、証人もいますから」
 そういながら、背中に背負ったリュックサックをポンと叩くと、
「ゴンベエ、ゴンベエ挨拶だよっ」
 すると、リュックの中から、一匹の大きなドラネコが面倒くさそうに、のっそりと顔を出した。
「ゴ、ゴンベエ!」
「ハイ、星子さんの一人旅の頼もしい、かどうか、とにかく、いつも、お伴してくれるドラネコのゴンベエくん。カレも、パパの頭の中から産まれたわけよね。ほら、パパにご挨拶だよっ、ゴンベエ」
 すると、ゴンベエは、なかばふてくされた顔でフニャーゴと鳴いた。
「……」
 たしかに、わたしが小説に書いたゴンベエと、ほぼそっくりのイメージだ。
 星子と名乗ったこの少女だって、まさに、わたしが作り上げた流星子のイメージと同じだ。
 しかし、顔やルックスはどうなんだろう。コバルト文庫はイラストつきだったし、星子シリーズも当然、イラストが大きな比重を占めていた。
 最初、星子シリーズのイラストを描いてくれたのは、「服部あゆみ」さんだ。僕が、当時の編集長だったイシハラさんに「誰か、イラストライターの知り合いはいませんか」といわれて、アニメのツテで紹介して貰ったのが、服部さんだった。
 大胆なタッチのイラストに、はじめは戸惑ったけど、星子や宙太のイメージがぴたりと合ったのか、お陰様で星子シリーズの人気を押し上げてくれた。つぎに、イラストを描いてくれたのは、「浦川佳弥」さんだ。頑張ってくださったけど、服部さんのイラストとイメージが違いすぎて、ファンの皆さんには戸惑いを与えてしまった。そして、そのあと、イラストを描いてくれたのは、「若松みどり」さんだった。でも、その頃はもう、星子シリーズもファンに飽きられたのか、発行部数も減り、尻つぼみのまま、途切れてしまった。
 コバルト編集部から正式に打ち切りの連絡を貰ったわけじゃないが、当時の編集担当からのコンタクトも途絶えて、僕なりに星子シリーズの終了を決めたわけだ。
 今思えば、悲しいし、口惜しいが、ま、これも、物書きの宿命かなと思って諦めたわけだ。モチロン、それなりに時間がかかったけどね。
でも、まだ、星子シリーズを応援してくれているファンの人達がいると知って、その暖かい気持ちに何とか応えようと、ブログで星子シリーズを書いている。これが、私の近況である。
 ま、それはともかく、
 イラストレーターが三人も代わったわけで、星子のイメージが今一つはっきりしない。
 はたして、今、私の前にいるこの少女が、本当の流星子なのかどうか。
 いや、そもそも、自分の書いた小説の主人公が現実に現れるという事態が、どうしても、
納得がゆかない。もしかして、夢でも見ているのか。それとも、何か、たちの悪い冗談とかではないのか。
 私は、頭の中が混乱したまま、星子を見た。
「ま、君が誰かはともかく、なぜ、僕と同じ列車に……」
「きまってるでしょ。パパと二人で旅をしたかったから」
「僕と? しかしね、僕は今回、秋の北海道を一人旅しようと……」
 そう、終わりの見えてきた人生を、旅をしながら、もう一度、振り返ってみようかな、との思いから、旅立ったわけだ。
「わかってまーす! でも、近頃のパパって、どこかさびしそうだし、元気がないし。だから、わたしが……なぐさめてあげようと思ったわけ」
 そういいながら、星子は私の首にかじりつくと、私の頬にギュッと唇を押しつけた。


                                  (つづく)





追記  星子シリーズのウラ話、ちょっぴり、披露しちゃいましたね。今となっては、懐かしい思いでですが……。
 それにしても、僕、このさき、どうなるんだろう。宙太クンも、次回であらわれそうだし。やれやれ。まいったね、もう。

               1

「パパ、早くぅ」
 少女が、じれったそうに叫んだ。
「乗り遅れちゃうから! ね、早く、パパ!」
「ま、待ってくれっ…」
 私は、必死に息を継ぎながら、いった。
「エスカレーターを駆け上がるのは、き、危険だよ…え、駅員さんに叱られるかも…」
「んもぅ、つまんない心配しないっ。早くったら!」
 そう叫びながら、少女は私の手を掴んで、ホームへ引っ張り上げた。丁度、発車ベルが鳴り終わって、青森始発の函館行き快速列車のドアが閉まろうとしている。
「駄目だ、もう、間に合わない…」
 万事、あきらめが早い私である。
 でも、少女は足を止めることなく、強引に閉まりかけたドアに突進した。
「あ、危ない! いけないよ、キミっ」
 私は、引きずられながら叫んだ。
 近くにいた駅員も、あわてて、ピピッと笛を吹いた。気づいた列車の車掌が、びっくり顔でドアスイッチを押したおかげで、ドアは開き、なんとか、挟まれずにデッキに飛び乗れた。
「お、お客さんっ…」
 駆け寄った駅員が、こわい顔でにらんだ。
 でも、少女はにっこりと、
「ごめんあそばせ」
 と、軽くウインク。
 セクシーではないけど、なんともチャーミングなその笑顔に、駅員は一瞬、気勢をそがれた。その眼前でドアが閉まって、列車は動き出した。
「ふーぅ、まさに、滑り込みセーフね」
 少女は、ペロッと舌を出した。
「なにが、セ、セーフ…」
 叱りつけようとしたが、息切れがひどくて、声にならない。心臓もばくばくしているし、今にも、破裂してしまいそうだ。
「大丈夫、パパ?」
 少女は、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「…ああ、大丈夫だ、近頃は運動不足でね…」
「うふっ、歳のせいじゃないの、パ・パ?」
「こ、こらっ…」
 ま、いえてるか。
「それと、パパって呼ぶのはやめてくれないかな。僕は、君のパパじゃないんだから…」
 私は、なんとか、息を整えながらいった。
 相手は、ついさっき、青森駅の構内で出会った初対面の少女だ。まだ、名前も聞いていないが、年恰好から見て、旅行中の女子高生らしい。
なかなかキュートでかわいい女の子だが、いきなり、「パパ」と呼ばれ、すっかり面喰ったまま、函館行きの列車に乗ったわけだ。
「じゃ、『オジサマ』とでも呼んでほしいわけ?」
「……」
 そう、本音をいえば。枯れた歳とはいえ、まだ、人生に未練はある。
「でもね、そうはいかないんだ。だって…」
 少女は、真顔で私を見つめた。
「あなたが、わたしを産んでくれたんだもん」
「うっ」
 私は、思わず噴き出した。
「あのね、キミ、僕は男なんだ。男の僕に、君を産めるわけがないだろう」
「やだぁ」
 少女は、クククッと笑った。
「そういう意味じゃなくて、あなたのアタマから生まれたわけ」
「アタマ?」
「創造力といってもいいかな」
「創造力?」
「作家さんのね」
「え?」
「わたしの名前は、流星子。そういえば、わかるでしょ?」
「流…星子…えっ、星子?」
 唖然となったわたしに、少女、流星子はコックンとうなずいて見せた。



追記  九月に入っても、暑いじめじめとした陽気が続きますね。本日からスタートの番外編、夏バテ防止に少しでも役に立てればいいのですが。
 それにしても、パパさんが主役に登場とは。ちょっとアブナイパパさんだし、星子さん、気をつけてね。
 連日の連載はむづかしいですが、がんばってまいります。前回同様、ご声援下さい。

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