星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

星子とパパの恋旅ガイド

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                29

 <呼んでいる、まりも姫がわたしを呼んでいる!>
 星子の胸の中に、熱いものが広がっていった。
 まりも姫の声は、悲しみに打ちひしがれながらも、必死に助けを求めている。その気持ちは、星子にしか伝わらないものだった。
星子は、その声に導かれるように歩きかけた。目の前に広がる地獄谷の恐ろしい景色も、鼻を突く有毒ガスの匂いも気にならなくなっていた。
「ちょ、ちょっと、星子ちゃんっ」
 瞬間、春之助が星子の腕を強く掴んで引き戻した。
「駄目よ! この谷には火山の有毒ガスが充満しているのよ! じきに、あの羆たちのように死んでしまうわ!」
「でも、早くまりも姫のところへいかないと…早く…」
「なにいってるの! ただの幻聴よ! こんなところに、まりも姫がいるわけないでしょ!」
「ううん、いるわ! きっと、いる! この谷の奥で、わたしを待っているのよ!」
「だったら、他のルートをさがせばいいわ! とにかく、これから先は、絶対に入ってはだめよ!」
「でも、まりも姫のところへ行くには、この道しかないの。きっと、そうよ」
「星子ちゃん…」
「ね、春ちゃんはここにいて。わたし一人でいくから、ここで待っていて。お願い」
 そういって歩きかけたが、春之助は手を離そうとしなかった。
「あなた一人では、いかせないわ」
「でも…」
「絶対に、いかせないから! 絶対にね!」
 春之助の顔が、まるで、般若のようになった。
「あなたに、今、死んでもらっては困るの。あなたは、大事なガイドよ。黄金の山へ案内してくれるガイドなんだからね」
 春之助の目は、妖しく光った。
「え? 春ちゃん、あなた、わたしのために一緒にきてくれたんじゃないの?」
「それは、表向きの理由よ」
「表向き?」
「そうさ」
 春之助は、冷笑した。声の調子もしわがれて、言葉使いも、乱暴になった。
「ほんとはね、まりも姫の財宝をいただくつもりで、あんたに道案内させたってわけさ」
「春ちゃんっ」
 星子は、愕然となった。春之助がそんなことを考えていたとは。
「あなた、どうしちゃったの? いつもの春ちゃんじゃない。違うヒトみたい」
「うふっ、人間、誰だって黄金には目がくらむものさ。あんたみたいな恋の夢ばかり追いかけているお人よしには、この世の中、とても生きていけないよ。恋もお金次第。愛もお金次第ってわけさ!」
 春之助は、顔を歪めながら笑った。
「春ちゃん…」
 星子の目から、涙があふれてきた。
 春之助がこんな情けない人間だったなんて。これほどひどい裏切りはないだろう。
「これでわかったろ、星子ちゃん」
 春之助は、凄みをきかせた顔で星子の腕を引っ張った。
「あんたには、別のルートを見つけて案内してもらうよ。素直にいうことをきかないと、痛い目にあわせるからね。いいかい!」
「……」
 もう、いい返す気力もない。星子は、悄然と肩を落とした。
 その時だった。
 春之助がキッとなると、星子の腕を掴んだまま身構えた。
「誰だい! 出てこい!」
 その声に、前方の岩陰から、すっと現れた人影、それは、圭一だった。
「圭一さんっ」
「こいつ! 性懲りもなくまたあらわれたのかい!」
 睨みつけた春之助の目は、鋭い刃物のようにギラッと光った。
 対照的に、圭一の目は静かだった。
「やっぱりだったな」
「なにがさ!」
「あんたは、春之助君じゃない」
「えっ」
 唖然となった星子に、圭一はいった。
「正確にいえば、春之助君の体を借りた異界の人間ってわけさ」
「春ちゃんの体を!」
「そう、俺の目を誤魔化し、さらに、星子さんをまりも姫のところへ案内させるには、春之助君にのりうつるのが一番の方法だったんだ」
「!…」
「こいつはね、俺が列車の中で始末した男の仲間で、その昔、コタンの王の部下だったが、王の財宝に目がくらみ、盗み出そうとして捕まり処刑され、異界に落ちたんだ。異界は、罪を犯したものが落ちる裁きのゾーンでもあるからね」
「!…」
「しかし、こいつらは、異界にいったあとも財宝のことが忘れられず、財宝がまりも姫のもとにあると知って異界から脱走すると、今回の事件を引き起こしたってわけさ」
「!…」
「でも、異界にはこの世にいってはならないという掟がある。その掟を破った者は、処刑されねばならない。俺は、その処刑人として、異界から派遣されたんだ」
「処刑人…」
 そういうことだったのか。それにしても、あまりにも突拍子もない話に、星子は呆然となった。
「さぁ、いい加減に正体を現したらどうだ。おい!」
圭一は、鋭い顔でいった。
だが、「ふふふっ」と、 春之助は、目をぎらつかせながら笑った。次の瞬間、体が異様に光り始めたと思うと、その光るものが春之助の体から離れて、じきに、一人の男になった。長い髪は逆立ち、目は吊り上って、まさに,幽鬼のような姿だった。ほぼ同時に、春之助は崩れるように倒れた。

                               (つづく)


追記 なにやら、ファンタジー・ホラーっぽいオハナシになってきました。ああ、しんど。ほんとは、ワタクシ、あまり得意な分野じゃないんですが、なんとか、がんばってみますよって、カンニンな、いとはん。は? なんじゃ、そのいいかたは! 
 とにかく、ヨロシクです。
 なにが、よろしくだ!

              28

「!…」
 星子は、ふと、立ち止まった。
「どうしたの、星子ちゃん?」
 振り向いた春之助が、いぶかしそうにいった。
「宙太さんの声が…」
「え?」
「聞こえたのよ、私を呼ぶ声が…」
「ほんと?」
 春之助は、鋭い視線をあたりに走らせた。周囲は、濃霧が渦を巻き、視界はまったくきかない。聞こえてくるのは、風の音ばかりだ。
「星子ちゃんの気のせいじゃないの?」
「でも、たしかに聞こえたんだ…星子さん、ハニィって…」
「おかしわね」
 春之助は、水晶玉を取り出して、掌でこすりながら、じっと見つめた。すると、水晶玉の中に透視をしたあたりの景色が薄ぼんやりと映ったが、人影らしいものは見られない。
「やっぱり、星子ちゃんの気のせいよ」
「……」
 そんなことはない、確かに、宙太の声は聞こえた。たぶん、テレパシーのようなものかもしれないけど、宙太は星子を助けようと、この大雪山にきている。絶対に、間違いない。
 だが、今の春之助は、いつもとは違う。何かにとりつかれて、異常な状態になっている。もし、宙太がここへきたら、ピストルの銃口を向けて、ためらいなく引き金を引くだろう。
 それだけは、絶対に避けたかった。
「そうね、春ちゃんのいうとおりかもね」
 星子は、肩をすくめて見せた。
「当たり前じゃないの。とにかく、天気はますます悪くなりそうだし、早くまりも姫のところへ行かないと。で、この先、どっちへ行ったらいいの?」
「うん…」
「しっかりしてよ! まりも姫の声はあなたしか聞こえないんだから。いいわね!」
 春之助は、険しい顔で星子を睨みつけた。
 眼光は鋭く光り、まるで、悪霊でものり移ったかのようだ。事実、その通りかもしれなかった。
 星子が、目をそらした時だった。
「…こっちよ…早くきて…こっちよ…」
 少女の声が、濃霧の中から聞こえてきた。
「まりも姫が呼んでいるわ!」
「ほんと! どっちからなの?」
「こっちよ」
「いきましょ! 早く!」
春之助にせつかれ、星子はまりも姫の声が聞こえてきた方向へ歩き出した。
 渦巻く濃霧のせいで、視界はまったくきかない。足元はかなり悪いし、つまずいて転びそうだ。でも、見えない力にグイグイと引き寄せられるように、星子は歩いていった。
 しばらく行くと、次第に硫黄の匂いが強くなり、息が苦しくなってきた。濃霧もよどんで、物音がまったくしない。なんだか、薄気味悪い雰囲気だ。
 ふいに何かにつまずき、危うく転びかけて何とか踏みとどまった。目をこらすと、大きな岩の塊のようなものが、目の前に立ちはだかっている。
濃霧が揺らいで、視界が少し開けてきた。そのとたん、星子はキャッと悲鳴を上げた。
 岩と思ったのは、ヒグマだ。それもかなり大きい。
「うわっ」
 春之助も驚いて、拳銃を構えた。
 ところが、ヒグマはぴくりとも動かない。
「変ね…」
 恐る恐る顔を近づけてみると、ヒグマは死んでいる。
「よかった」
 星子は、ホッとなった。
でも、こんな大きなヒグマが、どうして死んだんだろう。外傷はないし、病気とも思えない。
そう思っていると、さらに視界が開けて、あたりの景色が見えてきた。溶岩と砂礫が重なり合った狭い渓谷で、あちこちから噴煙が立ちのぼり、白骨化した動物や鳥の死骸が散らばっている。まるで、地獄のような光景だ。
ゾッとなった星子の目に、ふと、看板が見えた。その看板には、「危険! 有毒ガス地帯。立ち入るべからず」と、書いてある。
「このヒグマも、有毒ガスにやられたのね。こわっ。早く、逃げたほうがいいわ!」
 春之助は、星子を促した。
 確かに、このままじゃ、じきに有毒ガスで死んでしまう。星子は急いで逃げようとした。
 すると、有毒ガスの漂う渓谷の奥のほうから、まりも姫の声が聞こえてきた。
「早く来て…あたしは、ここよ…ここにいるわ…助けて、早く…早く…」
「!…」

                           (つづく)



追記  いろいろあって、間が空いてしまい、申し訳ないです。あと数回ですので、何とか,ゴールまで頑張ってみます。お付き合い下さいね。
 それにしても、いよいよ今年も押し詰まってきました。何ともやりきれない年でしたね。せめて、星子シリーズのブログで、憂さ晴らしを…といっても、なるわけないか。
 こりゃまた、シツレイを!

 

              27

「ん!」
 ロープウエイの一番前に座っていた宙太が、ハッと顔を上げた。
「どうした?」
 わたしは、いぶかしそうに宙太を見た。
「星子さんの声が…」
「星子の?」
「うん、宙太さん、助けてって…」
「えっ」
「俺と星子さんは、以心伝心、惚れ合った同士のテレパシーってヤツさ。きっと、何かあったんだぜ!」
 宙太は、座っていられずに、立ち上がった。
「早く! 早く着いてくれよ!」
「宙太君…」
 わたしも、宙太と同じだった。
 すでに盛りを過ぎたとはいえ、見事な紅葉の樹海をゆっくりと登っていくロープウエイが、まだるっこい。
 やっと、終点の姿見駅に着いたあと、宙太とわたしは大急ぎで改札口を飛び出した。
 眼前に見えるはずの旭岳は、すっぽりと雲に覆われている。それも、白色と灰色の雲がもつれるように渦を巻き、なんとも不気味な光景だった。
「おかしいな、天気予報じゃ、今日の大雪山は快晴のはずなのに…」
 宙太は、不安そうにいった。
「山の天気は、変わりやすいっていうぞ」
「それだけかな、なんか、ホラーとか、カルトっぽいぜ」
 確かに、異様な感じがする。
「とにかく、急ごう」
「でも、大丈夫かい、パパ? もう若くないんだからさ。あとは俺に任せて、ロープウエイの駅で待ってたほうがいいと思うけどな」
「うるさい! 余計な心配するな。君こそ、大人しくしていたほうがいいんじゃないのか。圭一君からも、警告されているわけだし」
「ふん! そっちこそ、余計な心配しなさんな。圭一君のおどしにビビるような俺じゃないぜ! 星子さんを助けるためなら、この命、喜んでプレゼントしてやるさ!」
 啖呵を切った宙太は、急ぎ足で旭岳への登山道に向かった。
 わたしも、負けまいと歩きだした。星子を想う気持ちは、宙太に負けていないつもりだ。わたしにとって、星子は愛しながら別れた人の面影を映した少女だ。星子の身にもしものことでもあったら、わたしは生きる望みを失ってしまうだろう。それだけは、絶対に避けたかった。
 歩きだして間もなく、噴煙とも霧ともつかないもやが流れてきた。吹きつける風も、かなり冷たい。麓で登山支度をしてきたので、なんとか、耐えられそうだ。
霧は次第に濃くなり、宙太の姿も、時折、見えなくなる。風の音に混じって聞こえる熊よけの鈴の音を頼りに、宙太のあとを懸命に追った。
「パパ、こっちの方向でいいのか?」
 宙太が、コンパスと地図を見ながらいった。
伝説によると、まりも姫の住むカムイ火の海は、地獄谷から東へ向かったあたりにある。
「うむ、大丈夫だ。ただし、これから先は、地形がきびしいから十分気をつけないと」
「わかった」
 うなずいた宙太は、慎重な足取りで進んだ。
 それにしても、本当に不気味な霧だ。妖気をはらんでいる、とでもいおうか。今にも、何かが霧の中から襲いかかってくるような気がして、体がすくんでしまう。
 どれくらい登っただろう、ふいに、宙太が、
「パパ、きてくれ!」
 と、叫んだ。
 急いでいってみると、宙太の足元には、血痕が点々としたたりながら、霧の奥へ消えている。
 その血痕を指先でぬぐった宙太は、
「まだ、生暖かいな」
 と、つぶやいた。
 その血痕をたどると、何かが落ちている。黒革の手帳のようだ。
「ん!」
 拾った宙太は、ハッとなって、手帳を開いた。
「どうした、宙太君?」
「五月さんの警察手帳だぜ!」
「なに!」
 覗き込むと、確かに五月の警察手帳だ。
「でも、なぜ、こんなところに…」
「きっと、五月さんの身に、何か、トラブルがあったんだ。この血痕もきっと五月さんのだぜ!」
「!…」
「こいつは、ますます、ヤバいぞ!」
 宙太の顔が、こわばった。
「星子さん、ハニィ! 無事でいてくれよ! 頼むぜ!」


                         (つづく)



追記  宙太クン、やたらと張り切っているけど、大丈夫かな。先が僕にも読めません。お手柔らかに、    ですぞ、宙太クン。
    ところで、めざせ、十万回! ゲキレイ有難うです。細々ながらも、なんとか、続けてまいりま    した。もうひと踏ん張りして、有終の美とやらを飾らねば。よろしくです!

 

                  26

「五月さーん! 五月さーん!」
 星子は、流れる噴煙に向かって叫んだ。だが、五月からの返事はない。
 夢中で前に向かおうとした瞬間、足元がズルっと滑って、急斜面に体が吸い込まれかけた。
 一瞬早く、背後から春之助が星子の腕を掴んで、引っ張り上げた。
「星子ちゃんたら、危ないじゃない!」
「だって…」
「この先は、深い崖よっ。落ちたら助からないわ! 五月さんのことは、諦めなさい!」
「そんな!」
 星子は、春之助を睨み上げた。怒りで、今にも顔が張り裂けそうだ。
「どうして、五月さんを撃ったの! 信じられない、春ちゃんがそんなことするなんて…いったい、どうしちゃったの!」
「どうもしないわよ。五月さんがあなたの邪魔をしようとしたからよ」
 春之助は、冷やかに答えた。いつもの春之助とは、まるで、別人のようだった。
「だって、そうでしょ。あなたは、まりも姫を助けに行くところなのよ。早くしないと、まりも姫が殺されて、金塊を奪われてしまうわ」
「だからって、撃つなんて!…」
「他に方法は、なかったのよ。ううん、どっちにしろ、生かせてはおけなかったわ。圭一さんもね」
「!…」
 星子は、あたりへ目をやった。
 すでに、圭一の姿は噴煙の中へ消えている。
「圭一さんなら、今さっき、姿を消した見たい。でも、あとで必ず殺してやるから」
「春ちゃん! あなたの口から、そんな恐ろしい言葉が出るなんて…そんな…」
 でも、春之助の表情は変わらなかった。というより、まるで、別人のようだった。そういえば、春之助の目の輝きは異常で、何かが乗りうつったかのようだ。
「さ、星子ちゃん、早くいきましょ。まりも姫が、あなたのくるのを待っているわ」
 春之助は、星子の腕を掴んだまま、促した。
「いや! はなして!」
 星子は、春之助の手を払いのけようともがいた。
「もういいわ、まりも姫のことは! あたし、五月さんを探しにいくから!」
「いいえ、そうはさせないわ。一緒にくるのよっ」
 春之助の声は、凄みを帯びている。その上、星子の腕を掴んだ腕からは、何か得体の知れない力が流れて、星子は金縛りにあったようになった。
「大丈夫、あたしがついているから。何も心配ないわよ、星子ちゃん」
 微笑んだ春之助の顔は、まるで、夜叉のように見える。
 星子は、逆らうことも出来ないまま、春之助に腕を掴まれ、歩き出した。
 この先、一体、どうなるんだろう。
 不安と恐怖で、星子は今にも気を失いそうだ。それでも、必死に耐えていた。耐えながら、心の中で叫んでいた。
<宙太さん、助けて! 早く、助けにきて!>
 
                      (つづく)



追記  今夜でなんとか7万四千回を超えたようです。命とアタマの炎が燃えているうちに、なんとか、十万回に届きたいですね。
 

              25

「!…」
 星子は、凍りついたように五月を見つめた。ショックで、心臓が今にも砕けそうなくらいだ。
 五月は、宙太と違って非情なタイプの刑事だ。当然、圭一には容赦しないだろう。
 圭一にもそのことがわかるのか、すかさず、コートの下から拳銃を引き抜いた。圭一の目は、研ぎ澄まされたナイフのように冷たく光り、殺気が全身から放たれている。
 星子は、恐怖にすくみあがった。こんな恐ろしい圭一の姿を見るのは、はじめてだった。春之助も、茫然と立ちすくんでいる。
 だが、五月は、冷静そのものだった。
「ゴーストの殺し屋か。シャレにもならないぜ」
「なにっ」
「お前さんのことは、美空警部から聞いている。俺も十年近くデカをやっているが、ゴーストに手錠をかけるのは、はじめてだ。とんだ語り草になりそうだな」
 五月の彫りの深い顔に、チラッと笑みが浮かんだ。
「それにしても、なぜ、ゴーストのお前さんが殺しを働いたんだ?」
「――」
「まりも姫伝説とやらに、関係があるわけかい?」
「――」
「ダンマリですか。じゃ、仕方ない、詳しい事情はあとでじっくりと聞かせてもらうことにしますかね」
 五月は、肩をすくめたあとで、一歩、前に出た。
「さ、おとなしくハジキを渡すんだな」
「――」
「おい、立川さんよ。俺は、面倒かける奴には容赦しない主義なんだ。手間を取らせるな」
「うるさい!」
 圭一の目が、赤みを帯びて一段と鋭く光りはじめた。長い髪も、強い風にあおられたように激しく逆立っている。
「俺には、大事な仕事がある。邪魔をする奴は、殺す!」
 圭一は、銃口を五月に向けた。
「や、やめて、圭一さんっ」
 星子は、ふるえる声で叫んだ。
 でも、圭一はそのまま引き金をしぼりかけた。
 星子がハッとなった瞬間、五月はクルッと体を回転させながら、右手を懐へ突っ込んだ。胸のホルダーから拳銃を抜くのか。圭一は急いで銃口を移動させた。
ところが、五月はさらに体を回転させながら、左手のほうでズボンのベルトに挟んでいた拳銃を抜いた。
鮮やかなフェイントだ。一瞬、圭一が戸惑ったすきに、五月の拳銃が火を噴いた。
パーン!
乾いた音がして、圭一の拳銃は弾き飛ばされた。
「くそっ」
 歯噛みした圭一に、五月は銃口を向けた。
「これで、諦めがついたかな」
「……」
「さ、おとなしく手を上げるんだ」
 五月は、手錠を取り出すと、圭一に近づいた。
 ガチャッ。
 圭一の両手に、手錠がはめられた。
「圭一さん…」
「……」
 圭一は、チラッと星子へ目をやった。だが、すぐに目を伏せてしまった。
「…圭一さん…」
星子の目に、じわっと涙があふれてきた。
 こんなみじめな姿の圭一は、見たくなかった。きれいな思い出のままの圭一であって欲しかった。
圭一も、きっと同じ気持ちに違いない。星子には顔を見せないように背を向けている。その姿が、星子には耐えられないくらい、悲しく見えた。
「さ、星子さん、君も一緒にくるんだ」
 五月が、星子を促した。
「立川君もいったように、ここは君にとってきわめて危険な場所のようだ。早く、山を降りたほうがいい」
「でも…」
「いいから、僕のいうとおりにしろ!」
 五月の言葉には、逆らえない迫力があった。
 星子が黙ったのを見て、五月は近くに落ちている圭一の拳銃を拾おうと歩きかけた。
 その時、信じられないようなことが起きた。春之助が、いきなり、走り出すと、落ちている圭一の拳銃を拾い上げたのだ。
「春ちゃん?」
 何をする気なんだろう。星子は、けげんそうに見た。
 五月も驚いた顔で、
「君、その拳銃は僕が…」
 そういいながら、近づいた瞬間だった。
 バシッ!
 春之助の拳銃が火を噴いて、五月の体はのけぞった。
「!…」
 のけぞった五月の体は、噴煙の中に崩れ、たちまち、見えなくなった。その直後、ざらざらっという斜面を滑り落ちていく音が聞こえてきた。
「さ、五月さんっ」

                           (つづく)




追記  どうしたんだ、春ちゃん! なんで、そんなことになったんだ! いつも、よき星子のサポーターだった君が、なぜなんだ!
 まったく、女心と秋の空は…おっと、もう12月でしたね。それに、春ちゃんはオトコノコでした。
 とにかく、この後の展開は、僕にも読めません。
 そこんとこ、よろしく!

 

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