星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

星丸の結婚

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 ――僕が結婚しないと、杏奈さんは自殺する……。
 星丸、困った時の癖で、指先を綾取りのようにちょこちょことからませた。
「結婚」という言葉と「自殺」という言葉が、結びつかない。
「君には理解できるわけないよな、リアリティのない話だし」
古賀、すまなさそうにいった。「つまり、こういうことなんだ。じつは、杏奈にはフィアンセがいてね……」
「えっ」
 その話も、聞いていない。
「親同士がいいかわした、ま、いってみれば政略結婚のようなものかな。相手は大手銀行の頭取の息子で、名前は西園寺和也。歳は29歳。大学時代はアメフトで鍛えたナイスガイで、頭取の秘書を務めるやり手なんだ。僕の父は病院の事業をもっと大きくしたいし、それには、どうしても金がいる。銀行のほうでも、融資すれば儲かるしね。で、今年の春、杏奈が卒業するのと同時に二人を結婚させて、提携を強めようってわけさ」
 よくある話だろう。地位や財産のある階層には。
「でも、杏奈は絶対に承知しないんだ。ま、当然だよな、GLの恋人までいるわけだし」
 そのGLの相手がどういう女か、そこまでは教えてくれない。
「父も母もうすうすそのことには気がついていたんだが、結婚すれば何とかなるだろうと思っていたんだ。ところが、思いつめた杏奈が自殺まではかってね……」
「……」
「それで、仕方なく婚約を解消しようって話になったんだが、西園寺さんのほうが承知しないんだ。理由をはっきりいえって。うちとしては、杏奈がBLだなんていえないしね」
「構わないでしょう。近頃はマスコミなんかでかなり認知されているし」
「いや、芸能界とかじゃないから。世間一般はまだまださ。あることないこと吹聴されたら、父の立場がね……議員という肩書きもあるし……」
 そう、古賀の父親は医療法人理事長の傍ら国会議員も務めていた。
「ま、そんなわけで、考えたのが、君の助けを借りるってことさ。つまり、杏奈と君を結婚させれば、西園寺さんも諦めざるを得ないだろう」
「理由になりませんよ。相手にも、面子ってもんが……」
「いや、既成事実があれば、話は別さ」
「はぁ?」
「ほら、いうだろ、出来ちゃった婚って」
「えっ」
 出来ちゃった婚、ですか。星丸、唖然となった。
「君と杏奈は以前からいい関係だった。そして、杏奈は君の子を……」
「古賀さんっ」
 星丸、ムッとなった。「ふざけるにも、程が……いい加減にして下さい! 帰らせて貰いますから!」
「あ、君!」
 古賀、立ち上がりかけた星丸の腕を掴んだ。「すまん! 謝る! 勝手なことをいって、ほんとに申し訳ないと思ってるんだ。でも、杏奈を救うには、他に方法が……君に助けて貰うしかないんだよ! この通りだ!」
 古賀、テーブルに手をついた。ふだんはプライドの高い男が、後輩の星丸に手を突き、頭を下げている。古賀にとっては、杏奈は大事な妹だし、自殺させるわけにはいかない。
 その気持ちは、星丸にもよくわかる。自分にも宙美という妹がいるし、立場が逆なら、多分、同じように手を突き、頭を下げたはずだ。
「……」
 星丸、座りなおすと、冷めたコーヒーをすすった。
「でも、杏奈さんは……肝心の杏奈さんが、承知しないんじゃないんですか」
「僕もはじめはそう思っていたんだが、意外とすんなり……」
「え? すんなりと?」
「うん、星丸さんならいいってね。やさしいし、わたしのこともわかってくれる、きっと……」
「そういったんですか、杏奈さんが。ほんとに?」
「ああ」と、古賀は頷いた。「あいつは、もともと、君のことを好きだしね。GLなんかじゃなかったら、きっと、君と恋仲になっていたと思うよ。あ、君のほうで相手にしないかも知れないが……」
「あ、いや、そんな……」
 星丸、顔を赤らめた。「僕だって、杏奈さんのことは、その……つまり……」
「好きだ、ってことかな」
「あ、はい、ま……そういうことです……」
 星丸の声が、上ずった。
「そうか、それなら、この話、なんとか、受けて貰えないかな。頼む! 美空君!」
 古賀、あらためて頭を下げた。
「でも、僕の父や母が、それに、妹の宙美がなんていうか……」
 そう、そこが一番の問題だ。
「そりゃ、もちろん、絶対に駄目だっていうだろうな」と、古賀は吐息をついた。「君のご両親も宙美さんも、君のことを愛してるし、とっても大事にしているしね……こんな偽装結婚みたいな、いや、そのものだけど、片棒を担がされるなんて、とても耐えられないと思うよ……」
「……」
 その通りだろう。星子ママや宙太パパ、宙美をどんなに傷つけるか、考えただけでつらくなる。
 やっぱり、断ろう。そのほうがいい。そうしよう。
 でも、断ったら、杏奈はどうなる。もし自殺でもしたら……。
「……あのぅ……」
 星丸、古賀にいった。「その前に、杏奈さんに会わせてくれませんか。二人でよく話し合ってからでないと……」
 一呼吸、置いたほうがいい。事態が、変わるかも知れない。
「もちろん、それが当然だよ。そう思って、ここに呼んであるから」
「えっ」
 時間を取りたかったのに、ここにきているとは。
 古賀、「杏奈」と呼びながら、奥へ手招きした。
 すると、奥の席から立ち上がった人影が、静かな、というよりも、おずおずとした足取りで近づいた・
 杏奈、だった。
 目立たない服装だが、清楚で気品ある美しさがあふれている。でも、顔色は蒼ざめ、憔悴しきっている感じだった。
「……杏奈さん……」
 星丸が腰を浮かせると、
「……星丸さん……」と、杏奈、小声を震わせた。でも、それ以上はいえずに、古賀の隣りに座ると、うなだれた。
「……ごめんなさい……」
「あ、いや……」
 どう話していいのか、言葉がつながらない。指先をちょこちょこ動かしていると、杏奈が、
「ほんとに、ごめんなさい……ほんとに……」
 そうつぶやきながら、星丸を見つめた。瞳から涙があふれている。透明な宝石のような涙だった。
 瞬間、星丸の胸に熱いものが走った。
<……弱いんだよね、こういうのに……>
女の子の涙に弱いのは、宙太パパゆずりかな。でも、宙太パパはそれで幸せになったらしい。以前、そんな話を聞いたことがある。たぶん、ママの涙と思うけど。
ま、しょうがないか。
「いいんだ、いいんだよ、杏奈さん」
 杏奈を見つめながら、星丸はやさしく微笑んだ。
「え? ほんとに?」
「うん、ほんと」
 もう一度、微笑んで見せた。
 でも、心の中で、星丸、そっと呟いていた。
<――ごめん、ママ。とんだ誕生日プレゼントになったみたいだね……>


 ということで、星丸くん、杏奈さんと、仮想の出来ちゃった婚をするはめになったわけで。星子ママや宙太パパ、それに宙美、さらに、春之介をはじめとするファミリー達の反応やいかに。
 はじめはエッチぽいスタートでしたが、だんだんと雰囲気が変わってまいります。この先、どういう展開になることやら。あらためて、また、お目にかかりましょう。


追記  今日は、星子さんの誕生日。ファミリー達もイチゴケーキでさぞかし盛り上がっていることと思います。よろしければ、御参加下さい。

 

                  1

「ママ、ほんと?」
 宙美が、真っ赤なイチゴを水でそっと洗いながらいった。
「え、なにが?」
 星子ママ、キッチンテーブルでイチゴのヘタを取りながら振り向いた。
「ママはね、イチゴから生まれたって」と、宙美。
「うん、そうよ」と、星子ママ。
「おいおい、お二人さん」
 宙太が、スポンジケーキの下地を作りながら、苦笑いした。
「んなわけないだろ、まったく」
「でも、パパ、昔、いってたじゃん。ママはイチゴから生まれたんだ。だから、イチゴみたいに、甘酸っぱくてカワイイ女の子だったって。ね、お兄ちゃん? そういったよね?」
「うん、いったいった」
 星丸、生クリームをこねながら軽くウインクした。
「だから、ママの顔を見ると、いつも、ペロッと一口で食べたくなったって」
「あ、それはだな」と、宙太。
「ママってどんな人って、お前たちが聞くから。分かりやすくいっただけさ」
 ――そう、ずっと以前、星子が幼い星丸と宙美を置いてしばらく家を空けた時、ママを慕う二人を慰めようと、宙太がいって聞かせたお話だった……。
家族みんな、あの頃のことには触れないでいる。つらくて悲しいことには蓋をして、今の時間を大事にしようと心がけてきた。
歳月が、心のしこりを溶かすともいう。今ではもう星丸も宙美も大人になったし、星子ママのことも自分なりに理解しようとしていた。
――やさしい家族……。
もし、そんな言葉あれば、星子&宙太の家族もその一つだろう。
で、その家族の中心で光り輝く星子ママ、小さい頃からイチゴが大好きだ。だから、自分から「私は、イチゴの子供よ」といって、星丸と宙美を笑わせてきた。
いってみれば、イチゴは家族をつなぎとめる甘酸っぱいキイワード。
星子の誕生日に、家族みんなでイチゴケーキを作ることになったのも、そんなキイワードのお陰かもしれない。それも、一つや二つじゃない。5号の大きさで、十個。
なんせ、甘党のお客さんが大いし、しかも、皆さん、星子びいきということもあって、お義理でもイチゴケーキに付き合ってくれる。
そのゲストの面々は、もちろん、星子ファミリーの御一同様。マサル、ゲンジロウ、春之介、右京と左京、小次郎、タケル。
そして、準ファミリーともいうべきマサルの奥さんの早苗、息子のマサルjr。今も右京と恋人関係の亜利沙、春之介の養子の春太郎、独身のリツ子、そして、今では国立医大の外科主任教授を務める早乙女先生などだ。
左京と小次郎、タケルの三人は今も独身だったが、自称ジュニァの甥っ子や後輩たちがいた。
 もちろん、みんなが星子の誕生会にくるわけじゃないが、毎年、かなりの人数になる。準備のほうも、大変だった。
「さぁ、頑張らないと、間に合わないぞ」
 宙太が気合を入れた時だった。星丸の携帯電話が鳴りだした。
「カノジョからよ」
 すかさず、宙美がいった。
「ん、いるのかい、恋人が」と、宙太。
「やるじゃないの、さすがは俺の子。でかしたぜ!」
「宙太さんったら」と、星子、軽く睨んだ。
「いたら、ちゃんと紹介してるわよ。お兄ちゃんって、そういう子だし。ね、星丸?」
「もちろん」
 星丸、携帯電話を取り出しながら、頷いて見せた。「そもそも、僕、そういうことに興味ないから」
「第一、もてないしね、お兄ちゃん」と、宙美がクスッと肩をすぼめた。「見るのは、いつも医学書ばっかり。それじゃ、今時の女の子が寄りつかないの。分かった、お兄ちゃん?」
「うるさい」
 星丸、殴るゼスチャーで携帯電話片手にキッチンを出ていった。
「ま、そのほうがママは嬉しいかな」と、宙美、星子をニヤリと見た。
「宙美ったら、そんなわけないでしょ」
 星子、真剣な顔で宙美を見た。「お兄ちゃん、お医者様の卵になったわけだし、そろそろ、結婚のことも考えていい歳よ」
星丸、現役で医師の国家試験にも合格したし、今年の春から研修医になる。
「うふっ、ママったら無理しちゃって」
 宙美、星子の顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃんが結婚したら、ママ、泣きの涙で寝込んじゃうわ、きっとね」
「そんなわけないでしょ。せいせいするわよっ」と、星子。
「あ、ムキになるからには、ズバリ正解なんだ」と、宙美。
「宙美っ」
「なによ、ママ」
「まぁまぁ、お二人さん」と、宙太、間に入った。
 星子と宙美、仲は良いが、すぐ角突き合わせる。星丸にいわせれば、宙美は星子ママのコピーだからだそうだ。
「星丸の心配より、宙美、お前はどうなんだ?」
「なにが?」
 宙太、咳払い。
「こ・い・び・と」
「あ、もちろん、いるよ」
 宙美がさらりと答えると、宙太の顔色、すとんと落ちた。
「ど、どんな奴だ? 仕事は? ルックスは? 性格はどうなんだ! おい、答えろ!」
「やだ、もう、そんなコワイ顔して。わたしの恋人はね、お仕事でーす」
 宙美、ニタリと笑ってみせた。
 宙美、大手旅行会社でツアコンをやっている。これも、星丸にいわせると、星子ママの旅女DNAを受け継いだってわけだ。
「ふーっ、おどかすなよ」
 宙太、ホッと胸をさすった。
「でも、仕事そっちのけで、いい恋さがしの一人旅なんてことにならないようにな。頼むよ、宙美ィ」
「うふっ、心配性ね、パパも。それでよくSP隊長が勤まること」
 じつは、宙太、現在は警視庁警護課でSP担当課長の役職についている。要人警護の重職で、滅多に休めないが、星子の誕生日に合わせて、久しぶりに休暇を取っていた。
「ほんとにもう、宙太さんたら」
 星子、くすっと笑った。「その調子じゃ、宙美ちゃんがお嫁にいったりしたら、寝込んで動けなくなるわね」
「それは、ハニィのほうじゃないの」
 宙太、負けじといい返した。「宙美のいう通り、星丸がお婿さんになったら、ノックアウトだな」
「ないナイ! それは、宙太さんのほうよ!」
「いいや、ハニィのほうだ!」
「宙太さん!」
「ハニィ!」
「んもぅ、パパ、ママったら」
 宙美があきれ顔で笑ったところへ、星丸が戻ってきた。
「僕、ちょっと出かけてもいいかな」
「え?」と、星子。
「電話、古賀さんからなんだ。ちょっと話があるんで、今から会えないかって」
 古賀采女は、佐々木教授のチームで働く外科レジデントだ。医大のテニス部で先輩だったこともあって、何かと星丸に目をかけてくれていた。医師国家試験に合格できたのも、古賀がつきっきりでサポートしてくれたからともいえる。
「そう、いってらっしゃい。こっちは、大丈夫だから」
「ごめん、パパ、いいかな?」
「ああ、いってこい。クルマ、使っていいぞ」
「ありがと」 
「古賀さんかぁ。私も会いたいな、カッコいいもん、あの人」
 古賀は何回かこの家にも遊びにきているし、宙美のお気に入りだった。
 宙美だけじゃない、ハンサムで爽やかで貴公子のような古賀には、星子も宙太も好感を抱いている。
「じゃ、花嫁候補に名乗りを上げますか?」と、星子。
「うん、そうする!」と、宙美。
「あ、おい」
 うろたえる宙太に、笑う宙美と星子だ。
 でも、星丸はぎこちなく微笑んでキッチンを出た。携帯電話の古賀の声が、かなり深刻そうな感じだったからだ。
 宙太から借りた車を運転して、待ち合わせ場所の青山のファミリーレストランへ。すでに、古賀は隅のテーブルに座っていた。
 午後の日差しを浴びた古賀の姿は、一瞬ハッとするくらい美しい。近くの席の若い女達が、ちらちらと秋波を送っている。
「すまない、呼び出したりして」
 古賀、額にかかる長い髪をかきわけながらいった。
「じつはね、どうしても君に頼みたいことがあって……いや、正直、君にしか頼めないんだ」
 古賀の表情は、かなり深刻だった。「なぁ、美空、お前、杏奈のこと……どう思ってる?」
「え?」
 いきなり、古賀の妹のことを聞かれて、星丸は戸惑った。
「どうって、どういう意味ですか」
「つまり、好きか、嫌いかって……」
「あ……」
 星丸、目を泳がせた。
 杏奈とは古賀の家に遊びに行った時に、何度か会っている。それこそ妖精のように美しく、もの静かで控えめで、お嬢様というイメージを絵にかいたような娘だった。今年の春、名門女子大を卒業したあと、医療法人理事長を務める父親の仕事の手伝いをするとのことだ。
もっとも、古賀家のテニスコートで手合わせした時には、別人のように華やかに跳び回り、弾けるように笑いながら強烈なサーブを何度も叩きこんできた。
その豹変ぶりに翻弄されたというか、女の子には滅多に心をときめかさない星丸も、すっかり心を奪われた。でも、その想いは胸の奥にしまって、医師国家試験の勉強に打ち込んできた。正直いえば、恋にはまだ慣れていないし、その分臆病だったかもしれない。
「いや、君が杏奈をどう思ってるか、僕なりに察しているつもりだ。君の性格もね。付き合い、長いからな」
「はぁ」
 いったい、古賀は何をいいたいのだ。星丸、困惑したまま、グラスを手に取った。
「じゃ、思い切っていうよ」
 古賀、切れ長の澄んだ目でまっすぐ星丸を見つめた。「杏奈と結婚してくれないか?」
「!……」
 星丸、思わずグラスを取り落としそうになった。
「……け、結婚?……って……」
「そう、杏奈とね」
「古賀さんっ……」
「いや、かたちだけでいい。結婚という形式っていうか、式を挙げて、婚姻届を出して、一緒に暮らして。それだけでいいんだ、それだけで」
「それだけって、結婚そのものじゃないですか」
 星丸、ちょっと憮然となった。
「そうじゃないさ」と、古賀はいった。「夫婦になれば、当然、一緒に寝ることになる。つまり、セックスする。それが、普通だろう」
「ええ」
「でも、その必要はない、ってことさ」
「はぁ?」
 星丸、呆気にとられた。
「必要ない?」
「というよりも、つまり、その……」
 古賀、口ごもった。
「つまり、なんです?」
「……出来ないんだ、杏奈のやつ……」
「出来ない?」
「男と寝ることがさ……」
「え?」
 よく、わからない。
 困惑している星丸に、古賀がいった。
「……あいつ、GLなんだ……」
「!……」
 からかわれているのか。
 あの妖精のような杏奈が、ひそかに想っていた人が、GL……。
 ――そんな……。
「嘘じゃない、ほんとの話なんだ……」
 古賀、沈痛な顔でいった。
「だったら……」
 星丸、なんとか気持ちを押さえながらいった。「はじめから、結婚なんて成立しないじゃないですか。杏奈さんだって、絶対に……」
「いや、杏奈には納得させる。さもないと、あいつは……自殺するはめに……」
「ええっ」
 星丸の心臓、はじけた。

                     (つづく)


追記1 プロローグではおどかしたけど、今回から本編です。星子&宙太のイチゴファミリー、よろしくです。

追記2 本日、web星子の第三作、第四作が新デバイス系電子図書より発信されました。さらに、今月より、毎月末にはスマートフォンでも読めるようになるとのことです。やっとですね。ありがたいことです。
 集英社デジタル出版の担当さんのお話では、web星子へのアクセスは、まぁ悪くはない、とのこと。これから、大きく伸びてくれるといいのですが。あとあとのためにもね。
 尚、担当さんの話では、ビジィにより二月分の発信はないとのこと。三月から、また正常の配信に戻るそうです。


                        (以上)

 

      プロローグ

「どう?」
「うふっ、ぴったり」
 熱い、吐息。
「ここを、こんなふうに」
「もっと、ねぇ」
「じゃ、こっちも」
「いや、じらさないで、早くぅ」
「はい、はい」
 しなやかな、指先。
「うっ、きくぅ」
「ここにも、ちょんちょんと」
「ああっ、もう、」
「とどめだ」
 一気に、せめる。
「すごーい、星丸くーん、ああっ」
 声を震わせて、のけぞる。
「そーら、できた、イチゴケーキ!」
 そうです、じつはデコレーションケーキを作ってたわけ。
 おっと、へんなこと想像させちゃったら、ゴメンナサイ。星丸、悪い子なんです。ハイ。
 生クリーム。
 甘さ控えめ。
 オープンレンジで焼き上げたスポンジケーキの土台に、たっぷりイチゴ。
 ホワイトクリームをたっぷり塗って、イチゴをちょちょんと乗せて。
 はい、出来上がりマシタ。星丸くん特製のイチゴケーキです。
「ほんとに上手ね、ケーキを作るのが」
「お褒めにあずかりまして。ママから教わったのさ」
「うそ、星子ママってお料理もケーキ作りもアウトでしょ」
「あ、ばれたか。じつは、パパからなんだ」
「あ、宙太パパなら、ナットク」
 杏奈(アンナ)、にっこりと笑った。
ローランサンの絵の少女のような、どこかメルヘンっぽい顔立ちの杏奈。右の片えくぼがすっごくカワイイ。
 星丸と杏奈。目下、新婚ほやほや中。幸せいっぱいっ。
 杏奈、白くて細い指先に生クリームをつけると、星丸の鼻の先にちょい。
「あ、こらっ」
 星丸も指先に生クリームをくっつけて、杏奈の額にちょい。
「やったな、このぉ」
 杏奈と星丸、じゃれあいながら、生クリームのくっつけっこ。
 顔から項へ、さらに、Tシャツの開いた胸元から割りこんで、可愛い蕾のような乳首に生クリームをちょちょんと。
「あ……」
 杏奈の口から、小さく喘ぐ声が。
「ご、ごめん」
 星丸、あわてて指先を引っ込めた。
「……」
 ふと、杏奈の手が星丸の指先を掴んだ。
そのまま、自分の乳首へいざなう。
「お、おい……」
「……」
 杏奈の瞳、じわりと潤んでくる。頬も染まって、息遣いが少し短くなる。
「杏奈さん……」
「……」
 答えないまま、掴んだ星丸の指先をゆっくりと滑らせ、ジーンズのショートパンツの中へいざなう。
 星丸の息遣いも、荒くなる。
 ふと、指先に……。
「あっ」
 星丸、指を引き抜こうとした。でも、杏奈は離さない。さらに、奥へと導く。
「……」
「……」
 杏奈の名を呼ぼうとしても、声にならない。
 喉がからからだ。息が出来ない。
指先の、分け入る先、この甘美な感触。
湿った花園。
頭の中が、真っ白になる。
喘ぐ。
心臓が、壊れる。腰のあたりが強くしびれ、今にもはじけそうだ。
「……いいのよ……」
 杏奈が、震える声で囁く。
「……しても、いいから……」
「……で、でも……」
「……早く……」
「……ほんとに……」
「……」
 杏奈のガラス細工のような肢体が、力を失い、ずり落ちるように床に崩れる。
 潤んだ瞳を閉じ、小刻みに震える唇を少し開いて、熱い息を短く吐く。
 どう体を開いていいのか、知らない杏奈。
 星丸も、震えている。禁断の花園に、どう体をうずめていいのか、知らない。はじめての、世界。
 それでも、震えながらも、杏奈をそっと抱きしめ、おずおずと開いていく。
 幻想、だろうか。
めくるめく、夢空間。
 あふれる渦の中へ。
「あっ」
 いきなり、杏奈が悲鳴を上げて、体をよじった。
「!……」
「ごめんなさい!」
 体を起こして、背中を向ける。
「やっぱり、駄目……出来ない……」
「……」
「ごめんなさい、ほんとに……ごめんなさいっ……」
 途中から泣き声になり、長い髪が流れる白くて細い背中が激しく震えだす。
「……杏奈さん……」
 星丸、背後からそっと抱きしめる。
「いいんだ、無理しなくても……」
「でも……」
「ほんとに、いいから……違うわけだし、ぼくたち……はじめから……」
 そうとも、違うんだ、ぼくら。
「星丸くん……許して……」
「杏奈さん……」
「あたし、死にたい! もう、サイアク。こんなあたしなんか……死んだほうが……」
「シッ」
 星丸、杏奈の唇に指先を当てた。
「僕は、そうは思わないけど。君と二人でいられるだけでも、うれしいけどな」
「え?」
「いっしょに、いたい、君と」
「ほんとに?」
「もちろん」
「一緒にいるだけで、いいの?」
「うん」
「星丸くん」
 杏奈、しがみつくように星丸の腕を掴んだ。
「ありがと、ほんとに……あなたって……」
「ん?」
「どうして、そんなにやさしいの? ね、どうして?」
「さぁ、多分、甘党だからかな」
「んもぅ」
 杏奈に、笑みが浮かぶ。
「さてっと、じゃ、ケーキ食べようか」
「え?」
「イチゴケーキ、僕の自慢」
「そうか、忘れてた。うん、食べよ」
 杏奈、涙をぬぐって微笑むと立ちあがった。
 ふいに、杏奈の携帯電話が鳴った。
「ちょっと、待って」
 手に取った杏奈の顔が、相手の番号を見て、一瞬、こわばった。星丸にちらっと気まずそうな視線を送ると、急いでリビングのほうへ。
「……ごめんなさい、連絡が遅れて……そうじゃないったら、忘れてなんかいないから」
 ――また、あいつからの電話か……。
 星丸、イチゴケーキをナイフで切りながら、吐息をついた。
「大丈夫よ、カレとは何もないから……ほんとよ。カタチだけだから、結婚……やだ、浮気だなんて、そんなこと、あたしがするわけないでしょ。信じて、お願い!」
 杏奈、必死にケータイでいいわけしている。小声で話していても、人一倍カンのいい星丸には、ちゃんと聞こえている。
「そう、それならいいけど」
 相手の女、上月万里の声が命令調でいう。
「この前もいったけど、あなたが彼と寝たりすれば、すぐわかるのよ。あなたの体が、ちゃんと教えてくれる。一度男の味を知ったら、もう、戻れない。地獄へ堕ちるだけ」
「わかってる」
「ほんとね。もし万一、裏切ったりしたら、ただじゃおかないから。いいわね」
「ええ」
「あなたは、わたしのものよ。愛してるから、杏奈。あなたを、死ぬほど愛してるから」
「あたしもよ、マリ」
「え? 聞こえない、もっと、はっきりといいいなさい、愛しているって」
「愛してる。ほんとよ」
「もう一度」
「愛してます、死ぬほど」
「ああ、杏奈、会いたい。あなたを抱きたい! いつものように、めちゃめちゃにしてやりたい! そうして欲しいかい、杏奈!」
「ええ、そうして、マリ、おしおきをして。お願い!」
 杏奈の声は喘ぎ、淫乱な血のざわめきを伝える。
 さっきの杏奈とは、別人のよう。
 ――そう、杏奈はGL。同性しか愛せない女……。
 かたちだけの、僕らの結婚。
 一度も交わったことがない、夫婦。
 <こんな僕の姿を見たら、ママ、なんていうだろう。なにも知らずに、祝福してくれたママ。そっと、涙を押さえながら送ってくれたママ……>
 イチゴケーキに、星子ママの顔が重なる。 
――そう、あの時も、星子ママのバースディのためにイチゴケーキを焼いていた。そこへかかってきた医大の先輩・古賀レジデントからの電話、それがすべてのはじまりだった……。


                      (つづく)



追記  星丸「お婿」編、今回がスタートです。いきなり、冒頭からアブナイ場面になってしまい、ほんとにすいません。近頃の宙太、どうかしちゃったみたいで。ほんとに、困った奴です。
 え? 宙太はカンケイない? じゃ、誰なんだ。責任者、出て来い!
 ま、とにかく、今回の騒動、星子や宙太、宙美、そして、ファミリーの面々が登場しての大騒ぎとなると思います。よろしく!

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