星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

星子コスプレ編

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恋してスッチー探偵
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「ああ、マイハニィ、愛しの君……星子……」
 彼の甘い声が、私の耳元でやさしくささやく。
「君は、僕の命。僕の愛も永遠だ」
 うん、うん、もっといって。
「もう、我慢できない。君を食べたい。マシュマロのように柔らかく、蜂蜜のように甘く、プリンのようにすべすべした肌、そして薔薇のように香しい君を……一口で丸かじりしたい……」
 彼の息が耳の穴の中をくすぐる。
 気持ち、いい。
<……うーん、いい……感じ、るぅ……いいわ……食べて、思いっきり、丸かじりして、右京サマ……>
 そうなんです、お相手は右京サマ。
 ワタクシ流星子のあこがれの人。外資系メジャー航空GOLDのトップ・パイロットの肩書きに、超の字がつく美形プリンス。もう、わたしらスッチー、つまり、客室乗務員たちの憧れの君。
 光源氏サマ。十文字右京様ーっ。
 その右京サマが、わたしを抱いて下さり、愛撫して下さっている。
<……早く、早くきて……右京サマ……もう、ガマンできないっ……>
「思いっきり、丸かじりして……早くぅ……」
 目を閉じ、唇をなめながら、ぎゅっと抱き寄せたとたん、だった。
「なにやってんの!」
 いきなり、近くで金切り声が。
「うるさいなぁ、気分こわすな」
「なんですって!」
 もう一度、金切り声がとんで、肩を叩かれた。
 おんどりゃ、なにするんじゃ、と、目を開けると、
「キャッ」
 スッチーの制服を着たゾンビが、ものすごい形相でわたしを……と思ったら、あらら、ゾンビじゃなくて、相手はパーサー、つまり、上司の黒山松枝さんじゃないの。
 ま、わたしにとってはゾンビと変わらないけどね。あ、雷さまかな。クスッ。
「なにがおかしいの!」
 とたんに、カミナリが落ちた。
「このボケッ! 昼寝なんかして!」
「あ、違います」
 星子、口をとがらせながら立ち上がった。「昼寝じゃなくて、空想してだけです」
「空想?」
「はい」
 そう、すぐにあれこれ空想してしまうのよね、わたしって。それも、ほとんどが恋の空想ですの、オホホッ。
「ちょっと、ね、あんた、自分の立場、わかってるの?」と、黒山チーフ。
「いっとくけど、あんたはね、お情けでスッチーになれたの。それも、うちの会社が出来たてほやほやの格安航空で、安く使える乗務員がなかなか集まらなかったからよッ」
 それはいえる。労働条件は、最低最悪。雇用の身分はパート扱いで時給も格安。コンビニにも負けそう。その癖、仕事の内容はものすごくキツイ。
 スッチーになりたい希望者はゴマンといるけど、さすがに二の足を踏む人が多かった。それでも星子が採用試験を受けたのは、
 はい! 空を飛んでみたかったからです!
 雲の彼方には、きっと、ステキな恋が待っている。そんな予感がするわけ。
 恋が命の星子サン、がんばってなんとか試験にパス、そのあと、やっとこさ、訓練を卒業して、今日が初フライトの本番。
さぞかし緊張するかと思ったら、まるで関係ナイ。ブリーフィング(客室乗務員クルーの打ち合わせ)が終わって一息入れたところで、お得意の恋の空想が。はっきりいえば、妄想かもネ。
「とにかく、真面目にやらないと、明日から出社及ばずってことになるから。わかった?」
「はぁ」
「さ、早く! ミーティングよっ」
 黒山チーフ、もう一度、こわい顔で睨むと星子を促した。 
<まさに、飛ぶゾンビだよね。>
 あ、空飛ぶゾンビって、星子がつけたあだ名じゃない。先輩スッチー達が、手厳しくて情け容赦なくメンバーをこき使うチーフに敬意?を表してつけたわけ。たしかに、チーフって、性格も悪いけど、お化粧厚塗りのオバケみたいだし、空飛ぶゾンビとはうまいこというよね。
 うふっ、と、思わず口元をゆるませながら、ミィーティング・ルームへ。
 ミィーティングっていうのは、コクピット・スタッフ、つまり、操縦士と副操縦士、機関士の三人とスッチー・スタッフが集まって、本日のフライトの打ち合わせをするわけ。
 本番フライトが初のワタクシ、出来れば右京サマのようなステキな機長と組めるといいけど、右京サマはそれこそ高嶺の花。しかも、他社様のトップパイロットですもの、どうやったってスタッフに加われるわけがない。
「なんか、さえないルックスのコクピット・スタッフばかりだって。あんまし、期待出来そうもないよ」って、同じ新人スッチーの和美がいってた。
「あ、向こうもそういってるよ。ルックスのサエない新人スッチーばかしだなって」
「いえてる。とくに、星子はね」
「このぉ!」
 なんて、じゃれてるけど、心は隙間風。
「じゃ、ミィーティングをはじめます。こちらが、本日、札幌行き022便の臨時機長を務める、立川さんです」
 担当課長の紹介で、機長がのっそりと立ち上がった。なんでも、予定していたパイロットが二日前に急病で入院したので、急遽、呼ばれたらしい。
 臨時の機長か。どうせ、さえないおっさん機長だろうな、と、思ってると、隣りに座っていた和美がヒャーッと低い声でため息をつきながら腰を浮かせた。
 なんだろ、と、思いながら機長を見て、ヒャーッ、星子も思わずため息だ。
 ――機長の制服がぴったり似合ったルックス。凛とした知的なマスク。まだ若くて、すごくいいオトコ、まさに美形だっ……。
 美形に弱い星子、うっとりとなりかけたところで、ブレーキがかかった。
 仕事、仕事。
「立川です。よろしくお願いします」
 立川、愛想のない顔で会釈すると、副操縦士・前田と機関士・木田を紹介して、フライト計画の説明を始めた。
「出発は、定刻の10時35分。フライト高度8000フィート、途中の天候は快晴。風力は……」
 星子、プリントに向かってメモを取りながら、立川の顔を見た。
 ――青白くこけた頬、睫毛の長い切れ長の目、色あせた薄い唇。どことなく漂う物悲しげな、そして、寂しそうな翳……。
 何かを背負い込んでいるような、重たい、そして、人を近づけないような雰囲気がある。
 和美のような女の子なら、そこで退いてしまう。事実、そうだった。
「あたし、パスしまーす」と、星子に耳打ち。「だってさ、立川さんってミステリアスな人なんだもん、苦手だな、あたし」
 和美って、いわゆる、地獄耳。情報屋さん。
「ミステリアス?」
「うん、フルネームは立川圭一、22歳で航空自衛隊のエースパイロットになって……」
「うっそー! カッコいい!」
 空自のエースパイロットだったなんて、すごい。
「でも、急にやめてアメリカへ渡ってさ、エアラインのライセンスを取ると、あちこちの航空会社を渡り歩いて、つい最近、ウチの会社に臨時採用されたんだって。あ、独身で彼女なし」
「いいじゃん、いいじゃん!」
「あわてない。カレ、女嫌いの男嫌い。っていうか、人間嫌いなんだって」
「人間嫌い?」
「付き合いはいっさいなし。笑顔なし、愛想なし。それにね、アメリカではアブナイ仕事にも手を出していたって噂もちらほら……」
「アブナイ仕事って?」
「くわしいことはさっぱり。とにかく、あたしの恋の相手じゃないな」
「ふーん、ナルホド」
 たしかに、プレイガールの和美には向かないタイプね。でも、星子は違う。かえって、興味がわいてしまう。ミステリアス、大好きですからね。
 ――元空自のエースパイロットの圭一さん、か……。
 民空のエリートパイロットの右京さんとは違うタイプのいい男だ。チャンスがあったら、ゲットしますか。
クスッと首をすくめて、お仕事続行。ゾンビ、いえ、黒山チーフを先頭にスッチー・チーム一同、といっても、合計6人だけどね、乗務するA300型が待機する飛行場へと向かう。本日は満席でお客様の数は定員の300人。スッチー6人じゃとても手が足りないけど、会社は経費節約でケチっている。
 ったくぅ!
 ついでにいっておくけど、大手の航空会社は、羽田空港のメインロビーにそれぞれ立派なブースを持っている。でも、ウチのような格安航空会社は、ロビーのはじっこで肩身の狭い思いをしているわけ。
 肩身の狭い思いは、わたしらスッチーもね。大切な命を無事に運び届ける仕事に、ランクなんてあるわけない。同じスッチーじゃないの。コンプレックスなんか関係ない。
 そう自分にいい聞かせても、大手航空会社のスッチー達の華やかな姿を見ていると、どうしてもめげてしまう。
<ちょっと、星子! 晴れの初フライトなのよ。しっかり、胸を張って! 誇りと自信を持って、ファイト!>
 そう自分に気合を入れながら、何気なく前方をみると、
「あっ」
 なんと、GOLD航空の制服を着たクルーの一団がやってくる。じつに華やかでカッコ良くて、後光がさす感じ。そして、その先頭には、凛々しい機長姿の右京サマが……。
 なんてステキなの。頭の中がぐらぐら、くらくら、ボーッとなってくる。
<右京サマ、わたしよ。夢の中で抱かれた流星子よっ>
 なんていったところで、右京には通じるわけがない。そもそも、右京は星子のことをまったく知らないのだ。つまり、典型的な片想い。だから、余計に想いがつのる。
 ああ、右京サマ、右京サマ、と、心の中でつぶやくうちに、足がもつれて見事につんのめった。
 なんて、無様な。右京サマに見られたら、サイアク。生きてられない。
 そう思って、恐る恐る右京へ目をやったけど、幸い、気がつかずにコパイロットと談笑しながら通り過ぎていく。
 コパイロットも、右京サマに負けないくらいカッコいい。ちょっと、やんちゃな感じだけどね。名前は、たしか、左京さんとか。でも、わたしとしては、右京さまーっ。命ーっ。
 ――とにかく、ずっこけを見られずにすんで、ほんとによかった……。
 ホッとなった時だ。近くで「うふふっ」と嘲笑う声がした。
 ムッと振り向くと、艶やかな制服姿のGOLD航空のスッチーが、星子を見下ろすようにしている。
 どこかで見たような……まさか、そんな……。
 星子、ハッと相手を見据えた。
 そう、リツ子だ。高校で一緒だった自己ちゅう女のオバケ・リツ子じゃないですか。
「リ、リツ子っ……な、なんで、あなた、そんな恰好でいるわけ?」
 茫然と見つめる星子に、リツ子、つんと鼻を上げながらいった。
「きまってるじゃない、あたし、GOLD航空のスッチーしてるのよ」
「あなたが? う、うそーっ」
「それもね、正社員のスッチーなの。世界ナンバーワンのGOLD航空のね」
 リツ子、鼻をツンと上げて、いってのけた。
 癇に障るいいかた、高校の頃とまるで変わらない。
「あなた、格安航空で派遣スッチーやってるのね。倒産寸前の会社だっていうし、あなたのスッチー姿もこれで見おさめかしら。さびしいこと」
 もう一度せせら笑って、リツ子、右京のあとを追うように立ち去った。
 な、なんと、リツ子ったら、右京サマのチームでスッチーをやってるなんて。
 サイアク。
 し、死にてぇ、おいら。
 がっくりと肩を落として戻りかけた瞬間、またもや、足がもつれてつんのめった。
 瞬間、ヒューッと、軽い口笛が近くで聞こえた。
 星子が顔を上げると、カジュアルなジャケット姿のスリムな若い男がポーズをつけながら、星子をみている。
「カワイイぜ、そのずっこけぶり」
「失礼ね!」
「うん、その怒った顔がもっとカワイイや」
「ちょ、ちょっと!」
 キッと睨みつけた星子に、男はニタリとたれ目でウインクした。
「あ,オレ、美空宙太。君にとっては、運命の男の登場さ。よろしくな!」

                     (つづく)



追記  星子スッチー編、なんとかスタートさせました。よろしくです。

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