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その十四) 五月雨
辻征夫(貨物船)
↓
五月雨
さみだれや酒屋の酒を二合ほど
(雨ってのは
見ているものだな
傘屋の軒
酒屋の土間
どこからでもいいが
黙って見ているのがいちばんいい
するとなにやらてめえのなかにも
降りしきるものがあるのがわかってくる
なんだろうこの冷たさは
なんて
……
雨がやんだら?
ばかやろう
さっさと出て行くのさ)
☆ 不遜
↓
さみだれや酒屋の酒のほろ苦さ
(「五月雨や」と・・・
「五月の雨」ではない 「五月蠅い」の
鬱陶しい 厭な雨だね
洋傘を持たない時に限って
土砂降りだ
丁度良い 酒屋で 立ち呑みしつつ
小降りになるのを待つか
だんだん 酔いが廻って来た
詩人辻征夫は
「黙って見ているのがいちばんいい
するとなにやらてめえのなかにも
降りしきるものがあるのがわかってくる
なんだろうこの冷たさは
なんて
……」
……これは ヴェルレーヌではないのか
「巷に雨の降るごとく
わが心にも涙ふる。
かくも心ににじみ入る
このかなしみは何やらん?」
詩人辻征夫は ヴェルレーヌが好きだったんだナ
「やるせなき心のために
おお、雨の歌よ !
やさしき雨の響きは
地上にも屋上にも !」
なんだか 酒が拙くなったナ
「消えも入りなん心の奥に
ゆえなきに雨は涙す。
何事ぞ ! 裏切りもなきにあらずや?
この喪そのゆえの知られず。」
まだ、外は土砂降りだ
「ゆえしれぬかなしみぞ
げにこよなくも堪えがたし。
恋もなく恨みもなきに
わが心かくもかなし。」
恋なんか関係ないナ
恨み辛みは沢山あるナ
どうにも、酒が拙くなったナ
「五月雨や」と・・・
「五月の雨」ではない 「五月蠅い」の
鬱陶しい 厭な雨だね )
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