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宇沢弘文氏の著書「社会的共通資本」(岩波新書)は、経済学書である。
永続可能な経済システムに関する考察が述べられている。
産業革命により発達した資本主義経済は、1929年の世界恐慌と共に修正を余儀なくされた。
1922年にソビエト社会主義共和国連邦が誕生し、社会主義計画経済の可能性が追求されたが、その壮大な実験も1991年8月のソビエト連邦自壊とともに終焉を迎えた。
ケインズ経済学は大恐慌の教訓に対して理論的なバックグラウンドを与えたが、1970年代以降、アメリカのフリードマン率いる市場原理主義とも言うべきものが世界を席巻しようとしている。
著しい格差の拡大、それは地方対中央、所得の格差、南北間の格差等を包含するものなのだが…。
共有の牧草地があり、その社会に属する誰もが自由にその牧草地にアクセス可能な場合、個人は自分の利益を最大限享受するためにその牧草地を利用する。しかし個人にとっての一見合理的な行動の集積は、全体にとっては必ずしも合理的な結果をもたらさず、共有の牧草地は荒廃する。
医療はこの共有の牧草地に例えられる。
この閉鎖系社会においては個人にとっての合理的行動が、全体にとっては合理的な結果をもたらさないという。
しかもその牧草地は総面積を抑制されている。
国は全体の牛の数をも抑制したいと考えているようで、牧草地の手入れはするつもりがない…。
わが国の、この共有の牧草地とも言うべき医療の行方はどうなるのだろうか。もう荒廃するしか道が残されていないようにも感じる。
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