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2008年度作品。 2009年2月15日、ギンレイホールにて。 脚本:マックス・マニックス、黒沢清、田中幸子 出演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、役所広司、児嶋一哉 一言でいえば「家族」の崩壊とその再生を描いた映画。 同じ「家族」のテーマであっても、監督によってそのアプローチは異なる。 黒沢清監督のアプローチは、「ぐるりのこと。」の監督橋口亮輔や是枝裕和とも違う。 その辺りが面白いですね。 黒沢清監督は、ちょっと、カリカチュアされた表現を使う。 リストラされたことを家族に伝えていない夫(香川照之)。 同じようにリストラされた同級生とたまたま出会う。 彼も家族にはリストラされたことを伝えていない。 1時間に1回携帯に電子音が鳴るように設定してある。 あたかも会社からの電話のように応対する。それを知っている観客は笑える。 また家族がリストラされていることを疑っていることが気になり、香川照之に部下の役をさせ、家に食事に招く。 家族の前で、わざとらしく香川照之の仕事のことを叱責する。それを知っている観客は笑う。 そのうち、彼を見ないことが気になって香川照之が家にいくと、彼は妻と心中していた。 あまりの落差にゾっとした。 そんな同級生は、生前「俺たち、ゆっくり沈んでいく船のようだよなあ」とつぶやく。 間違っていても一度決めたことを変えると父親の威厳が無くなると、香川照之は子供のピアノ教室は理由もなく反対する。 子供がピアノ教室に行っていることを隠していることに怒る。 自分はリストラされたことを隠しているのに。 そんな香川照之は、あることで逃げることになり、車にもぶつかり、ゴミの中で夜を過ごす。「もう一度やり直せるかなあ」とつぶやきながら。 妻の小泉今日子は泥棒に誘拐され、自発的にその泥棒と海に行く。その泥棒は夜明けとともに、車ごと海へ入り死ぬ。 「もう一度やり直せるかなあ」と小泉今日子もつぶやく。 息子は、あることで警察に捕まる。 彼は、何一つしゃべらないため、調書に母音を押し、写真まで撮られる。 そんな3人は、沈んだ船から投げ出され、海原に漂うように、 夜明けとともに、自分の家にようやくたどり着く。 そして、3人はテーブルを囲んで、何ごともなかったかのように黙々と食事をする。 そのおかしさとやるせない描写に、この映画は「すごいな」と実感する。 なにもしゃべらなくても、今までとは違う何かをそれぞれ感じている、とてもいいシーンだ。 ラスト、息子が受験のためにピアノを弾く。 息子が弾き終ると、その結果に関係なく、家族3人は肩を抱き合いながら帰っていく。 このピアノのシーンも家族がようやくたどりついたこれからの未来を予感させてくれる。 自分が救われたかのように感じさせてくれる、見事なラストシーンだった。 長男はアメリカ軍に入隊する。 家族という小社会に、それに対して日本では希薄な関係にある「戦争」とをなにかしら関わりを持たせることによって、より広がりのある世界を見せようとしたんではないかと推測する。 しかし、最後は家族4人ではなく、3人になったことで、その広がりはあまり感じることはできなかった。 あらすじ・・・
リストラされたことを家族に打ち明けられずにいる父・竜平(香川照之)。ドーナツを作っても食べてもらえない母・恵(小泉今日子)。米軍へ入隊する兄。こっそりピアノを習う弟。何もおかしいものなんてなかったはずなのに、いつの間にか深まる家族の溝。それでも、みんながみんなを思いやるとき、バラバラの不協和音が一つの旋律に変わる――。 |

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ついにご覧になりましたか。去年の映画をまだ上映されているところがあるんですね。今思い起こすと、長男の米軍入隊の意図はもうひとつ分かりにくかったですね。戦争と何らか関わりを持たせて広がりを見せるという解釈は面白いと思いました。TBしておきますね。
2009/3/5(木) 午前 6:18
ヒッチさん
こういう名画座には重宝させてもらってます。米軍入隊は違和感ありましたよね。自衛隊ならまだしも、米軍ですからね。広がらなかったこと、惜しい気がします。
2009/3/5(木) 午後 11:33
未見ですが、かなり評判の良い映画ですよね。それにしても、米軍に入隊する話というのは意外でした。
2009/3/6(金) 午前 0:52 [ user t ]
user tさん
「ぐるりのこと。」もこの映画もオススメですね。
是非とも。
2009/3/6(金) 午後 10:24
夫・妻・息子・ピアノ教師・同級生。
登場人物は皆、心に傷を持ち、隠し事をしていました。
全てが不健全な心のありよう・・・
修復のきっかけを作るのは(必ずしも共感は出来ないけれど)「夢を持って進む」という長男からの手紙と、次男の名演奏。
若いエネルギーが、老いて疲れた心に与える力の大きさを感じさせてくれた映画でした。
2009/7/12(日) 午後 3:00
alfmomさん
若いエネルギーらの力により「家族」は再生することができました。
見る観客も救われる思いでした。あのままだったら、辛すぎます。
2009/7/12(日) 午後 10:15
何事もなかったように・・・一つに戻る。いろいろあるけど、希望さえあれば・・・やり直せる。
ラストの「月の光」が印象的。良い選曲でした。キャストも文句なしかと。
2009/7/26(日) 午後 8:41
くるみさん
こんな時代だからこそ家族の大事さを感じました。食事をするために家に帰ってくるシーンが象徴的です。「月の光」のピアノは家族の再生の1歩ですね。
2009/7/26(日) 午後 11:26
私も食事のシーンは笑いながら「スゴイ!」と思いました!
あと車にはねられるシーンも、笑うところじゃないのに象徴的過ぎて思わず吹き出しました。
とても好きな映画です。TBさせてください。スミマセン、今ごろ。
2009/11/20(金) 午後 11:09
同じところで同じ感想を持てたこと、うれしいです!
この映画のちょっと誇張されたところに「おかしさ」を感じ、笑えることは普通だと思っていました。それがないと、ひどく悲惨な映画の印象です。でも、ある人はまったく笑えなかったと書いていました。人の感じ方は面白いものですね。
2009/11/22(日) 午前 7:58
今の世相を反映したかのような暗い映画でした。明日は我が身と思うのは私だけでしょうか?
2010/8/17(火) 午後 9:10
もっさんさん
津田寛治という役者がリアル風でギャグ風で怖かったです。デフォルメされた家族の再生映画ですね。光が見えたラストで安堵しました。
2010/8/17(火) 午後 11:59
この映画、とても面白くて友達に勧めたら、その友達から
「勧められたから観たけど、どこが面白いの?」と言われて
答えようが無かったのです。(何事もなかったかのような
ラストシーンの説明を求められて)
私は、その、何事も無かったようなラストが気に入ってるのに。
人さまざまですね。
それから私が一番興味を持った登場人物は主人公の少年の
担任教師でした。嫌な奴感が見事で、この俳優、誰だろ?と
思いました。児島と言うお笑いの人だと、その時知りました。
普段バラエティやお笑い番組を見ないのでアンジャッシュも
知りませんでした。この人は俳優の方が向いてると思いましたよ。
2018/10/13(土) 午後 11:02
> とらんぷさん
あまり映画を観ない人は、起承転結を求めたがることが多いですよね。そんなに大袈裟なドラマのような話ばかりあるわけがないし、ちょっと考えさせられる映画は好きですね。コジマって言ってもらえないギャグの人ですね、イヤな先生でした、俳優然としていない方がリアルの時もありますね。
2018/10/14(日) 午後 9:54