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残菊物語 2009年3月14日、神保町シアター「浪花の映画の物語」にて。 1939年度作品。 監督:溝口健二 脚本:川口松太郎、依田義賢 出演:花柳章太郎、森赫子、河原崎権十郎、梅村蓉子、高田浩吉 この映画はよかった。 ワンシーンワンカットの手法が、登場人物の気持ちをより深く伝える手段としてとても効果的だということを改めて実感した。 軍国主義への協力を嫌った溝口監督が“芸道もの”として選んだ作品。 歌舞伎界の5代目・尾上菊五郎の養子として周囲からちやほや甘やかされた菊之助が、乳母のお徳から「もっと修行されたほうが」と忠告されたことで感謝の気持ちから劇場的な恋心へと発展する。そして、父親に勘当され、親戚の親方がいる大阪の歌舞伎へと。 最初は親を見返してやると意気込んでいたが、「名門」の名前もなく、相手にされない日々の中で、序々に自分を見失っていく。 さらに、親方も死に、ドサ回りへとさらに落ちていく。 一歩間違うとどこまでも落ちていく歌舞伎界の厳しさと人間の弱さが浮き彫りとなる。 そんな菊之助をどこまでも励まし支えてやるお徳が、けなげで愛おしい。 このままでは、菊之助がだめになるとお徳は別れることを裏約束することで、菊之助は父親の東京の歌舞伎界に戻れることになる。 その後、お徳は病気にかかり、大阪に興行のために来ていた菊之助と会うが、もう危篤状態で、それでもお徳は菊之助にお客様への挨拶に行くように勧め、その間にひっそりと死ぬ。 なんとも言えず、お徳が愛おしい。
菊之助へ母親のような愛情を注ぎ、一人前の歌舞伎役者に育てようと、自己犠牲を惜しまず、そのことが報われたかのように後悔することもなく、死んでいく。 まるで、菩薩のような存在だった。 |

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これは大傑作。「芸道もの」としては溝口映画のみならず、歴代邦画の最高峰かもしれませんね。長回しが冗長でなく構図がひとつひとつ効果的で美しい。最初の川端を歩くところなどによく出ていたと思います。溝口監督はスイカの切り方にこだわったといいますが、あのシーン、その理由はよく分かりませんでした。
2009/4/9(木) 午前 6:29
ヒッチさん
同じ感想が持ててうれしいです。
「夜の女たち」とはまったく違う緊張感に満ち溢れていました。
スイカのシーンを何回も撮り直ししたらしいですね。
勝手な想像ですが、溝口監督の実生活で何か思い入れがあったのかもしれません。
2009/4/9(木) 午後 10:28
残菊物語ですか、面白いですか、初めて知りました
溝口も最近はじめてみたばかりで。。。チェックしてみます
2009/4/14(火) 午後 9:50 [ きらきらくん ]
くろさわさん
この映画はいいですよ。
溝口健二作品では「雨月物語」「西鶴一代女」がいいですよ。
2009/4/15(水) 午前 1:01
[残菊物語]「西鶴一代女」は溝口の最高傑作だと確信しています。二十歳頃に東京のフィルムセンターで初めて鑑賞して以来何回も観ていますが全然厭きません。格調高い作風と時代の雰囲気の正確な描写は溝口を措いて右に出る監督はいません。そして溝口の他の作品を観るにつけても絶対に今の監督には生み出せない、真似の出来ない映画作りの才能を感じています。
それにしても「お徳」のような犠牲的精神を持ち合わせた女性は昔の日本には多かったのでしょうか・・・・だから映画の題材にもなりうるのでしょう。今ではそんな“女”は絶滅してしまったでしょうね
日本も日本人も日本女性もスッカリ変ってしまいました。
私の溝口作品のお薦めは「お遊さま」「雪夫人絵図」「元禄忠臣蔵」「祇園囃子」などです。ただ溝口作品にはハズレが多いので要注意です。
2009/4/20(月) 午前 0:05 [ 安芸守 ]
安芸守さん
コメントありがとうございます。
この映画の溝口健二はよかったです。動きの少ないこの映画のようなゆったりとじっくりと人物とセリフを写す1シーン1カットが生きる映画には目を見張るものがあると思います。
そのあと観た「夜の女たち」にその特徴がまったく機能していないことに、愕然としてしまいました。これだけ、観る側に違う印象を与える監督もめずらしい。
2009/4/20(月) 午後 9:59
初見はフィルムセンターでの溝口健二特集の折でした。コマとびもなくほぼ完全な形で観られたのは良かったと思います。進駐軍がたまたま持ち出したので助かったという人がいて皮肉なものです。「浪花女」や「芸道一代男」もやはり未練があります。
2016/2/5(金) 午前 8:34 [ SL-Mania ]
> SL-Maniaさん
フィルムセンターには、ほんと昔の映画をずいぶん見せてもらって助かっています。「浪花女」「芸道一代男」観たいですね、ここ数年戦前の映画はあまり上映されていません。
2016/2/6(土) 午前 0:01