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還って来た男 2009年4月25日、神保町シアター「昭和の原風景」にて。 1944年度作品。 川島雄三監督のデビュー作。 原作・脚本:織田作之助 出演:佐野周二、田中絹代、三浦光子、文谷千代子、草島競子、小堀誠、日守新一 なんとおしゃれで、テンポがよい映画なんだろう。 改めて、川島雄三の才気を感じさせる映画だった。 終戦の1年前に作られた映画とは到底思えない。 脚本がよくできている。 珍しく作家の織田作之助が脚本を書いている。 自分の小説「清楚」「木の都」をもとにシナリオ化したらしい。 川島雄三監督とは昔から交友があったようだ。 こんな素敵な脚本を書くなら、もっと映画の脚本を書いて欲しかったな。 とても残念だ。 冒頭、大阪の夕陽丘あたり、2人の小学校の女先生(田中絹代、草島競子)が校門から出てくる。 そこは急な坂になっていて、坂の下から2人が階段を上っていくと、男の子たちが馬跳びをやっている。 そこへ新聞配達の少年がやってきて、馬跳びをして、軽い怪我をしてしまう。 女先生たちは子供の傷の手当をしてやる。そこへ先生の草島競子に恋している新聞記者の日守新一が現れる。彼は雨男でいつもレインコート姿で傘を持ち歩いている。 彼を見ると日がな商売の男が逃げていく。雨が降ると困るからだ。 すると予想どおり、雨が降り始め、先生たちに傘を貸してやり、自分は濡れて立ち去る。 その少年は、レコード店の息子で明日から名古屋の軍需工場へ働きにいく。 あくる朝、名古屋へ向かう列車から顔を出して父親が子供と自分の弁当を買おうとする。その向かいの列車でも大阪へ向かう佐野周二が弁当屋と叫んでいる。そこから、佐野周二のドラマに変わっていく。 なんともスピーディで、うまい展開の仕方だ。 列車の佐野周二の前には三浦光子が座っていて、そのあと別れても、何度となく偶然出会う。たぶん、この2人は結婚するんだろうと思ったけど、結局、佐野周二は「見合は一回しかしない。その人と結婚する」と見合相手の田中絹代と結婚しそうな雰囲気だ。 色んな人が登場し、すべてそれなりに関係があり、深い話にはせず、スマートなユーモアを基調にスマートに終わる川島雄三監督のセンスを感じさせる映画だった。 終戦の1年前ということもあり、軍需工場に働きに行くとか、小学校で竹やりの軍事教練があったりと戦争末期の雰囲気が漂う。 それでも、この映画、どこかのんびりした感じがある。 何かで見たが、戦争中、時局に鋭く反応して高揚映画を製作した東宝と、演出の伝統をついに崩さなかった松竹(この映画は松竹)との違いがあるのかもしれない。 織田作がシナリオを書いているので、大阪の夕陽丘あたりが舞台になっているが、今はどうなっているのだろうか、気になる。特に、坂の下にある小学校は、はたして今もあるのだろうか。 後年、川島雄三は「わが町」(原作は織田作之助)「貸間あり」といった大阪を舞台にした映画を作っているが、「わが町」に登場する町はこの映画の町によく似ている。もしかしたら同じ場所かもしれない。そう考えると「わが町」を織田作之助に対する追悼の映画にしたのかもしれない。
ちなみにタイトルは、佐野周二が戦地から還ってきたということだろう。 |

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そうですね。大阪の町を描いた織田作之助原作という点では「わが町」と同じですね。この時期の邦画にはよくあることですが、私は音響の悪さばかり気になって、シーラカンスさんほど脚本を堪能できなかったのが残念です。TBしておきますね。
2009/4/30(木) 午前 6:57
ヒッチさん
私は音響の悪さはそんなには気にならなかったです。ラッキーでした。川島雄三はもう観るのを止めようと思ってましたが、この映画がよかったので、もう少し観てみようと思います。
2009/4/30(木) 午後 9:28