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小津安二郎「晩春」

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晩春
2009年5月29日、神保町シアター「日本映画★近大文学全集」にて。

1949年度作品。
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
出演:原節子、笠置衆、月丘夢路、三島雅夫、杉村春子、三宅邦子

小津監督と原節子の初顔合わせの映画。
あまりにも有名な映画ですが、自分なりの感想を・・・。

話はいたって単純。
鎌倉に住む大学教授(笠置衆)は、妻を亡くし、娘紀子(原節子)と2人暮らし。
紀子は父親と一緒に暮らすことに満足しており、特に結婚に興味がない。
父をそのことを心配して、結婚しない娘を嫁がせるため、見合した相手(三宅邦子)と結婚すると嘘をつく。いわゆるホームドラマ。

そんな単純な映画だが、とても恐ろしく感じる。
前半は父親と一緒に生活することに心からうれしさを滲ませて、原節子はいつも微笑む。
原節子は笑顔がよく似合うなあ。
打って変わって後半は、見合した相手と結婚するという父親に対して「不潔だ」と言って蔑んだ表情をする。また、能を観にいった席で見合した相手にも嫉妬のような睨む表情をみせる。このアップの顔がすこぶる恐ろしかった。
そして、京都へ旅行に出かけ、「お父さんと一緒に暮らしたい」というシーン、こんなに父親が好きというのも、ちょっと行き過ぎた怖さを感じる。

小津監督は、自分の理想の女性の象徴として紀子という女性を考え、原節子にその女性を演じさせたんではないだろうか。
それぐらいこの映画の原節子は、すばらしく輝いている。
笑顔が美しく、それに怖い。
原節子の喜怒哀楽すべての表情を見ることができる。
さらに「一緒にいたい」と言うセリフまで言わしめている。
小津監督の紀子を通して、原節子への愛情をまざまざと感じ取ることができる。

笠置衆の妹役の杉村春子がいつもながらに楽しませてくれる。
大笑いしたセリフがある。
原節子の結婚相手の名前が熊五郎?というので、何て呼べばいいのか困っていると。
「クマちゃん」も変だし、「熊さん」も落語みたいだし、それで決めたの。
「くーちゃん」って呼ぶことにしたの。

<追記>
大事な箇所を忘れていました。
ラスト、笠置衆が、たぶん初めてりんごを剝いているんだろう。
これから一人で生きていくための象徴的なりんご剥き。
そのりんご剥きも途中で愕然ととめてしまう。あまりの孤独感に耐えられない。
圧巻のラストでした。

閉じる コメント(12)

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大学のビデオライブラリーに小津さんの作品がたくさん収蔵されているので、見るのをとても楽しみにしています。
その他にも独・仏・米・英・伊の名作がずらり。いつもどれを見るか悩みに悩んだ上で鑑賞作品を決定しています。
この作品も必ず見ようと思っていますので、鑑賞後にまたお邪魔します。

2009/6/17(水) 午前 0:08 alf's mom

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確かに、単純な話であり、突飛な映像手法も取らない。
でも・・・ですよね。
真似出来そうで決して真似出来ない物凄さがありますね。
「変わらないものが、新しい」「奇抜で単純であるからこそ、無限の空間がある」

2009/6/17(水) 午前 0:10 [ ひろちゃん2001 ]

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実はこの映画が私のブログの初投稿記事なんですよね(たった3行ですけど)。原節子を美しく撮った作品でした。たしかに怖いという表情も見せますね。小津の思いが伝わってきます。

2009/6/17(水) 午前 6:32 ヒッチさん

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alfmomさん
この映画を観るのは2回目です。昔若い頃に観た時より色んなものを感じることができました。感謝です。

2009/6/17(水) 午後 11:12 シーラカンス

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ひろちゃんさん
戦前の小津監督を4本観て、まずは〆にこの映画を観ました。
単純な話でありながら、この緊張感はすごいです。

2009/6/17(水) 午後 11:18 シーラカンス

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ヒッチさん
そうだったんですか。初投稿記事だったんですね。この映画はまさに原節子の魅力が満載でした。

2009/6/17(水) 午後 11:21 シーラカンス

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先週、作品を鑑賞しました。
落ち着いた美しい映画ですね。
色々な表情を見せる原節子の美しさと、娘を一心に思う父親の優しさ。追記されていますが、ラストの場面は本当に印象的でした。

ただ、この作品は男性と女性では、受け止め方にやや差があるのでは、と言う気がしました。
(お詫び:先日コメントした際、公開とすべきを後悔としていました。お恥かしい限りです。夜中に睡魔と闘いながらPCに向かっていると時々こうなります。スミマセン)

2009/6/26(金) 午前 0:43 alf's mom

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alfmomさん
緊張感あふれる見事な映画でした。人それぞれ性別も年齢も違うので感じ方もそれぞれですね。あとでオジャマします。
間違いは気にされずにしてください。ちゃんと伝わっていますから。自分も普段でもうち間違いはするは、酒が入っているとそれはもうどうなっているか(笑)。

2009/6/27(土) 午前 11:21 シーラカンス

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映画という虚構の世界で、恋愛にまで発展できない原節子に「一緒にいたい」と言わせる小津安二郎、
痛々しい屈曲した心情を感じました。

その後の映画でもこの「父と娘」のテーマは度々出て来たように記憶していますが、この映画が最も輝いているように思います。

記事を書いてみましたので、TBさせて下さいませ

2009/7/10(金) 午後 10:20 [ 8 1/2 ]

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8 1/2さん
小津監督の原節子への愛情をまざまざと感じます。
原節子の笑い、悲しみ、嫉妬といった色んな表情を見せることでも、そう思います。

2009/7/11(土) 午後 9:32 シーラカンス

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記事を読ませていただきました。
娘が父親の再婚相手に嫉妬することは有り得ます。
また、相手によって仲良しになることも有り得ます。
母親が父親を捨てて別の男と家出し、母を憎むドラマもあります。
家族の愛憎は、さまざまな様相をもちますが、小津作品は淡々としたなかにじわりと刺さるものがあります。
監督と女優さんの関係はよく分りませんが、お互いが尊敬し合っていてこそ、よい作品が生み出されるものだ感じました。
TBさせていただきます。

2012/4/19(木) 午前 8:10 ギャラさん

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ギャラさん
娘への愛情、父親への愛情、こんなに深い絆で繋がっている物語を淡々と静かに描かれていましたね。小津作品の中でも好きな映画です。

2012/4/20(金) 午後 10:53 シーラカンス

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