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2009年6月19日、ラピュタ阿佐ヶ谷「西山洋市Presents!役に立つ山中貞雄」にて。 1937年度作品。 原作:三村伸太郎(河竹黙阿弥「髪結新三」を翻案) 脚色:三村伸太郎 出演:河原崎長十郎、中村翫右衛門、山岸しづ江、霧立のぼる、市川莚司(加東大介) 山中貞雄監督作品はこれで3作目(現存している映画が3作品しかない)、遺作でもある。 「百萬両の壺」と比較して、笑いの部分もなく、また笑いを入れようとした意図もなく、陰うつな映画。 「これが最後の作品になるのでは死んでも死にきれない」と山中貞雄は言い残して出征したという。 楽しく明るい「百萬両の壺」を作った同じ監督とは思えないような暗さ。 山中貞雄は2年前に作った「百萬両の壺」とは違う方向の映画作りを模索していたのだろう。 ヤクザものの髪結新三と浪人海野又十郎のそれぞれのストーリー。 髪結新三は自由奔放で好き勝手に生きている。やくざの親分に目をつけられようがお構いなし。自分が生きたいようにストレートに生きている。 どこかやけっぱちのようなやくざな男。 一方、浪人海野又十郎は、仕官の道を願ってある人に頼むが、相手にされていない。 そのことを分かっているはずだが、厳しい妻の手前もあり、妻には仕官の道が近づきつつあると嘘をつく。 しかし、仕官の道が閉ざされたことを妻は知ってしまい、妻は海野又十郎を殺し心中する。 髪結新三の派手で動きのあるエピソードとは対照的に海野又十郎は雨に濡れるシーンが多く、暗くて絶望的であまりにつらい。 髪結新三にしても、どこか刹那的。 彼に未来があるとも思えない。 寓話ではあるが希望を感じさせてくれた「百萬両の壺」を作った同じ人間とは思えないほど、この映画は深い絶望感で満ちている。2年の間に何が彼をここまで絶望させることがあったんだろうか。
戦争の影を感じたからだろうか、それとも自分の作品への苦悩だろうか。 山中貞雄28歳の作品。 |

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これで3作とも劇場鑑賞ですね。やはり東京の環境はうらやましいです。
ペシミズムというんでしょうか。渇いた物悲しさと絶望感を切々とうたいあげる手腕はこの監督ならではだと思います。ラストの紙風船が象徴的で深い余韻を残しました。
2009/6/23(火) 午前 6:41
ヒッチさん
念願の3作品を順番に観ることができました。ようやく「百萬両の壺」を引きずらずに観ることができました。しかし、この重さよりも軽い「百萬両の壺」の方がどうしても好きです。山中貞雄生誕100年なのにこの盛り上がりのなさ。戦前の映画監督のあまりの過小評価にやるせない思いです。大阪や特に生まれた京都でも上映してもいいのではと思いますけどね。
2009/6/23(火) 午後 9:46
余りにも悲しい作品だ。山中監督は、紙風船に、自分の立場、戦争状態をかぶらせてる。
名作には違いない。壷…は娯楽性ある。もっと映画製作チャンスを与えたかった。大和撫子描かれている。しかし、これが江戸時代の閉鎖性を具象化している。隠れた天才監督ですね。
2012/2/14(火) 午前 0:46 [ moemumu ]
moemumuさん
この映画の絶望的な暗さは確かに戦争の影響が出ているのでしょうね。「百萬両の壺」の優れた娯楽性は映画本来の楽しさ。ほんとにもっと映画を撮ってほしかった監督です。
2012/2/14(火) 午後 8:30
「百万両の壺」も見ていますが、たしかに暗いですね。
やはり、赤紙の来ることを感じている閉塞感が見られますね。
いずれにしても、素晴らしい作品です。
TBさせてください。
2013/6/22(土) 午前 9:10
ギャラさん
あまりに暗くて深い絶望感を感じます。山中貞雄作品で観れる映画がたった3本だけとは、ちと寂しすぎます。
2013/6/22(土) 午後 11:16
簡潔で細やかで的確なレヴューです。
この時代だから生まれた映画なのだろうと思いながら見ました。
宴会のシーンなど、明るい場面はいくつかありましたが、
「希望」はどこにもありませんでした。
演じた役者さんたち、素晴らしかったです。
若い加藤大介も出演していました。余り変わっていませんね。
短い生涯だった監督の分まで、この映画の出演者たちは長く生きて
演劇界に大きな足跡を残したようですね。
監督が残されたあとニ作品、必ず見ようと思います。
2014/3/3(月) 午前 5:33
alfmomさん
ほんと、そうかも知れません、この時代が作らせた映画かもしれませんね。すべてが暗く、陰鬱で、この先が見えてこない。「百万両の壺」は是非観てほしい映画です。この映画とは全く違い、楽しくて笑えて泣ける映画です、山中貞雄のベスト1だと思います。
2014/3/3(月) 午後 9:35