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成瀬巳喜男「乱れる」

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乱れる
2009年7月28日、神保町シアター「没後40年成瀬巳喜男の世界」にて2回目鑑賞。

1964年度作品。
監督:成瀬巳喜男
脚本:松山善三
出演:高峰秀子、加山雄三、草笛光子、白川由美、三益愛子、中北千枝子、北村和夫、佐田豊、柳谷寛
浦辺粂子
解説によると・・・
戦争で夫を亡くし、嫁ぎ先の酒屋を独りで切り盛りしている未亡人・礼子(高峰秀子)は、ぐうたらな義弟・幸司(加山雄三)から想いを告白されたことから、やがて自分の居場所を失い、家を出て行くことになり……。松山善三・脚本のテレビドラマ『しぐれ』を松山自身が映画用に改稿し、名匠・成瀬巳喜男監督が演出を手がけたメロドラマの秀作。高度経済成長期、スーパーマーケットの出現で商店街が次第に先細りしていくシビアな社会的状況の中、愛とモラル、そして世代の狭間に苦しむヒロインの繊細な心理が、成瀬演出ならではの抑制の効いたタッチと効果的なモノクロ映像でリアルにつづられており、ラストの衝撃とともに成瀬映画後年のフィルモグラフィを代表する1作となっている。(増當竜也)

1回目の鑑賞は衝撃的なラストに、その印象が強すぎた。
今回は少し冷静な目で。

冗談っぽいセリフとは裏腹で一途な性格を加山雄三は柄で演じている。
ワンパターンであることでより自然な感じがぴったりのはまり役だ。
その加山雄三の告白で、内に秘める情念のような気持の昂りを徐々に表していく高峰秀子の表情、しぐさ、セリフ回し。
やっぱりすごい女優さんです。

途中、スーパーマーケットの出現で、将来の不安を感じ食料品店の主人(柳谷寛)が首をくくり自殺する。
この映画のエンドを予兆させる暗い影のようなシーン。
戦争で夫を亡くし、戦後は酒屋を切り盛りして家を守ってきた高峰秀子が、スーパーマーケットという新しい時代に押しやられる一人の妻の姿を、成瀬監督は本当は描きたかったんではないかと思う。
しかし、加山雄三の告白により妻から女を呼び醒ますことになり、ラストの衝撃的な終わり方へとなだれ込む。

不思議なもので、刺激的な出来事があると何故か余計に成瀬監督の魅力が薄れるような気がする。
「浮雲」は別格として「あにいもうと」「稲妻」「杏っ子」といった映画ではドロドロの人生でありながら、その中で日常の生活に戻る姿に心が揺さぶられた。

勝手な想像だが、ラストの加山雄三については、脚本家の松山善三と成瀬監督の間で紛糾したのではと思う。
そして最後の高峰秀子の不安で苦しげな表情から納得したかのような表情へのアップの変化は、元にはもう戻れないという諦めの表情にも見える。
私は高峰秀子の変化する表情のシーンに成瀬監督らしさを感じることができた。

刺激的な内容を取り入れることで成瀬監督も商店街のように時代に取り残されないように、その時代を意識したラスト、でも最後は自分らしさを表すことができたんではないかと思った。

閉じる コメント(15)

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成瀬に限りませんが、時代の中で失われつつあるものへの郷愁というか、新旧交代をテーマに取り入れた映画には秀作が多いように思います。

2009/8/19(水) 午前 6:26 ヒッチさん

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ヒッチさん
すいませんが、ヒッチさんなので独り言をさせてもらっていいですか。
成瀬監督の映画をずっと見続けていて、この映画は「成瀬らしい映画」とは思えません。「浮雲」もそうです。でも何が成瀬なのかも勝手な思いこみであって、黒澤監督の晩年の作品に昔の思いで観ても意味がないのと同じように、歳によってその作品は変わって当たり前だと思います。そういう意味では時代に迎合したようでかろうじて成瀬監督の思いを出した映画にしたのではと考えます。

2009/8/19(水) 午後 8:09 シーラカンス

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凄く沢山の成瀬監督の作品をスクリーンで観られていて、ただただ羨ましいです。私はDVDになっている作品、何作品かビデオで撮った作品しか観ていないので成瀬監督作品のらしさや、本領のようなものはよく分かっていないなぁと思いました。この作品は個人的にはかなり好きなメロドラマです。

2009/8/19(水) 午後 9:03 [ - ]

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yumeniuguisuさん
東京の映画館に感謝、その一言です。
こんなことを言うのもおかしく、さしでがましいですが、「らしさ」とかは気にされない方がいいと思います。マニアックになるだけで、映画は観て自分が楽しければそれでいいのでは思います。

2009/8/19(水) 午後 10:27 シーラカンス

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高峰秀子は本当に凄い女優です。
ラストの表情の変化は見事すぎて、“恐ろしい”ほどでした。

内に秘めた熱い想いを義弟から聞かされ、もうそこに入られないと
覚悟する彼女。
18年を“未亡人”として嫁家で過ごした彼女が、最後に見せた女としての言葉と表情。悲しいくらい綺麗で、切なくて、痛いほど心情が伝わりました。
演技と脚本の素晴らしさに、圧倒されました。
もしかすると、私はこれ以上の成瀬作品には出合えないかも知れません。

2009/8/20(木) 午後 8:47 alf's mom

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alfmomさん
この特集で私が見た高峰秀子主演は8本でした。色んな役ができ柔軟性があり、汚れ役もいとわず、それでいてスターの存在感もある稀有な女優さんですね。女性の方がその心情を実感できることほど、成瀬監督、高峰秀子、松山善三へのほめ言葉はないでしょうね。

2009/8/20(木) 午後 11:54 シーラカンス

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モラルの変化で、高峰の世代には、受け入れられない恋も加山は問題にしなかった、求愛して、OKのような、高峰世代にすれば、乱れる、一瞬迷ったが、それは迷いだったことを見抜いた加山の自殺、という世代論のような感じがしますが、いかがでしょうか?

2009/8/24(月) 午前 0:37 [ koukou ]

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koukouさん
そうかもしれません。50年代後半からヌーベルバーグ、太陽族といった若い世代の登場に時代は変わりつつあったので、松山善三は若い感覚を加山に、成瀬は旧世代を高峰秀子に託したのかもしれません。

2009/8/24(月) 午後 10:35 シーラカンス

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旅行行く(高峰と)バイクを売っちゃった…加山らしからぬ、成瀬監督への溶け込み感が、まずよく出ています。
どこぞの温泉旅館で、わずかの間、2人きりの生活を送る。
とっても幸せそう。もっと続いて…と思ったらサイレンやら、担架やら出てきて、加山の”血が流れてた?”腕だけ見せて、高峰に悲劇が舞い込んでくる。
浮雲に比べれば、小品なんでしょうけれど、小津監督より、あっさりしてる感じがします。成瀬の代表作と行かなくても、成功作品ですね。

2010/12/5(日) 午後 0:09 [ moemumu ]

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moe*u*uさん
「腕だけ見せて」は、高峰秀子が加山雄三の腕にこよりを結ぶシーンが伏線になって、顔を見せずに加山雄三であることを観客に知らせる映画的な興奮を覚える素晴らしいシーンでした。好きなシーンだったので、コメントさせていただきました。衝撃的ないい映画でした。

2010/12/5(日) 午後 10:49 シーラカンス

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私も、こういった映画をスクリーンで観られるのが羨ましい。
役者さんが、非常に自然な演技をなさるのに感心致しましたが、
これは、この監督の持ち味なのでしょうか?

拙い感想文ですが、TBさせてくださいませ。

2013/9/17(火) 午前 1:36 猫

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猫さん
東京さまさまですね。あまり仰々しくない映画が多いですね。成瀬監督と高峰秀子は、映画の中では相性がいいですね。

2013/9/17(火) 午後 11:39 シーラカンス

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イヴさん
TBありがとうございます。

2016/5/12(木) 午後 10:36 シーラカンス

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高峰さんは本当に凄いし、魅力的ですね。
結局。高峰さんは加山を拒否してしまうし、森田家も混乱するでしょう。救いのないような結末ですが、見方によっては、森田家から解放された高峰さんには、新しい人生が待っているようにも想像できます。いろいろと想像できる映画でした。
TBさせてください。

2016/6/10(金) 午後 1:46 ギャラさん

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> ギャラさんさん
ラスト興奮から少しずつ落ち着いていく高峰秀子の表情が凄い。そうかも解放かも。

2016/6/13(月) 午後 11:23 シーラカンス

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