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雨月物語 2009年12月13日、フィルムセンター「生誕百年 映画女優 田中絹代」にて2回目鑑賞。 1953年度作品。 監督:溝口健二 原作:上田秋成 脚本:川口松太郎、依田義賢 出演:京マチ子、森雅之、田中絹代、水戸光子、小沢栄、香川良介、上田吉二郎、毛利菊枝 あらすじ・・・ 戦国時代、琵琶湖にほど近い村に住む源十郎(森雅之)は、戦乱に乗じ一獲千金を狙い、自らの焼いた陶器を売ろうとして、侍になることを夢見る義弟の藤兵衛(小沢栄)、そして反対するそれぞれの女房を連れて琵琶湖を渡る。その後、離れ離れになった彼らのうち、藤兵衛は大将の拾い首をして出世を果たすが、妻の阿浜(水戸光子)は娼婦に堕ちてしまう。一方、妻・宮木(田中絹代)が子とともに決死の覚悟で村へ戻ろうとする中、源十郎は死霊(京マチ子)に見そめられ悦楽の日々を送っていた……。 ネタバレあります。 金銭欲に溺れた人のものがたり。 愛欲に溺れた人のものがたり。 出世欲に溺れた人のものがたり。 家族のささやかな生活を願った女のものがたり。 そして「いくさ」に翻弄された人たちのものがたり。 すべてが幻のようで、映画を観ながら夢ごこちのような気分になりながら。 すべてが美しい。 霧の琵琶湖を舟で渡るシーン。 朽木屋敷での京マチ子の妖艶さ。 時間が止まったような緩やかな動き、露天風呂の森雅之と京マチ子のいやらしさ、侍女の毛利菊枝の薄気味悪さ。 夜明けに森雅之が倒れている湖岸の美しさ。 生きながらえた森雅之が些細な手土産をぶら下げてトボトボと我が家に帰ってきた。 家の中を一回りするが、誰もいない。 もう一回家の中に入ると、妻の田中絹代が囲炉裏のそばで縫物をしている。 謝る森雅之にやさしい言葉をかける田中絹代。 「ほんとによかった、よかった」と安らぎを得た森雅之は、子供と寝る。 このシーンは好きなシーンだ。 あくる朝、田中絹代はいない。 そこに、名主さんが来て、田中絹代はすでに野武士に殺されたことを伝える。 愕然と泣き崩れる森雅之。 昔、観た時の記憶では、ここでエンディングだと思い込んでいた。 そのあと、森雅之は仕事に精を出し、子供とつつましく暮らす。 「私が生きている時は、あなたは欲に溺れていた。人の世はこんなもので、私が死んでようやくあなたが改心してくれてよろこんでいます」という田中絹代のナレーションで終る。 ちょっと説教くさいと感じないでもないが、精霊に守られていることを伝えるためのシーンと感じた。 悪霊と精霊、怪奇と幻想、欲に溺れる人、日本的な儚さ。
素敵な映画でした。 もう一回観たくなる映画です。 |

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私が劇場で見た溝口作品はわずか3本で、そのうちの1本です。大きなスクリーンだと幻想的なシーンが一層引き立つ印象でした。美しい映画です。特に幽霊のシーンと湖のシーンが白眉でした。
2010/1/8(金) 午前 7:45
ヒッチさん
溝口映画の中ではどろどろした部分を抑えて、いかにも日本らしい民話というか怪奇幻想的な映画の中に儚さが際立った素晴らしい映画でした。
2010/1/8(金) 午後 9:37
溝口健二作品の中で一番気にいっています、今のところ(戦前の作品などは未見ですが)
監督と撮影の宮川一夫のコンビが作り出す映像は、魔術のようで素晴らしいですね
ラストで家へ帰って来た森雅之が連続撮影(長回し)の間に、いないはずの田中絹代を見つけるのは、幻想的ですね。それと夜の湖上のシーン、お化け屋敷、、、と素晴らしい映像の連続です。
以前に記事を書いたことがありますのでTBします。
2010/1/10(日) 午前 11:38 [ 8 1/2 ]
8 1/2さん
コメントありがとうございます。
どこまでが現実なのか夢なのかさえもわからないほど、すばらしい映像でした。見る側は田中絹代は死んだはずなのにと思いながら、でももしかしたら死んではいなかったかも、または森雅之の夢かもと迷わせる演出も憎いです。
2010/1/10(日) 午後 1:41
初めまして。昔ビデオで借りて観て泣いた作品です。家族向け映画かも知れませんが、特に夫向けの映画かも?野心を抱くのはイイけど、欲に溺れると大変な末路がまってるから、常に家族の幸せも合わせて考える様にしたいと思いました。やはり折角主人公が帰ってきて、要漸く妻子とやり直そうとしてたのに、死んでたとなるからやり切れません。ただ、ラストで立ち直って真面目に生きれる様になったのは救いだと思いました。
2010/1/12(火) 午後 11:41 [ 辛抱しんちゃん ]
辛抱しんちゃんさん
帰ってきて、妻とやり直そうと思うこと自体が、まあ、男のわがままなのでしょうね。でも、金銭欲、愛欲に溺れるのが男らしいと言えば男らしいのでしょうけど。民話っぽいので教訓的なニュアンスになっているのでしょうね。男としては、気持ちはすごくわかる映画でした。
2010/1/13(水) 午後 9:45
「すべてが美しい」。
その言葉がこの映画の「全て」を物語っています。
京マチ子と田中絹代の「幻想」と「現実」の中にあるそれぞれの美しさ。
素晴らしい配役でした。
これをスクリーンで見られたのですか。ため息が出ます〜
2010/5/24(月) 午前 5:02
alfmomさん
日本人から観ても本当に美しく幻想的な映画だと思います。京マチ子と田中絹代、まさに「幻想」と「現実」のこれ以上にない適役ですね。もう一度観てもたぶん飽きない映画でしょう。
2010/5/24(月) 午後 8:56
京マチ子の役柄は、「カフェイン」などの”薬物”にも見える。幽霊じゃなくて、現実に存在する”マヒ”させる魅惑的な女役でした。
拝見していて、「森さんも、(京マチ子とともに)黄泉へいっちゃえって思えたことがあったくらい。
最後、正気の沙汰に帰った森さんを迎えた田中絹代の幽霊、これぞ大和撫子て感じで、日本にもこういう女性がいたんだなあ、と感慨しきりでした
2010/12/4(土) 午後 0:53 [ moemumu ]
moe*u*uさん
まったくそうですね、薬物ですね。愛欲に溺れるとはまさにこのこと。若い頃は誰でもありと思いますが♪ 対極にいるのが田中絹代の精霊ですね。日本のファンタジー映画の極致ですね。
2010/12/5(日) 午前 0:50
こんにちは。
最近、この映画見ました。
シーラカンスさんの感想と一緒で日本的儚さが滲んでいました。
若狭は悪霊ですが、なかなか哀愁を帯びているので魅惑的な魔性に引き寄せられてしまいます。
分相応に生きよというのは、封建時代の美徳なのでしょうか。
TBさせていただきました。
2012/3/18(日) 午前 7:26
ギャラさん
幻想的な妖艶さと真逆で清楚な安らかさ、魅惑的な魔性は一日だけならいいかなって、最近思っちゃいます。元々説話だから、そういう訓話になるのでしょうね。
2012/3/19(月) 午後 10:44
「女を描けない」黒澤映画ばかり観てきたので、(笑)
何十年かぶりに観たこの映画はとても新鮮でした。
方々で女といざこざを起こしたらしい溝口ならではの、
いい映画だったと思います。
TBさせてください。
2013/9/21(土) 午前 10:11
猫さん
昔は黒澤作品を観ていたのですが、溝口のワンシーンワンカットの個性に惹かれてかなり観ました。娼婦には優しく、逞しく強い女が魅力的です。この映画では珍しく母のような包み込むような女性が登場しますね。
2013/9/21(土) 午後 9:58
朝鮮戦争の頃に撮られた映画です.
日本は朝鮮戦争によって戦後復興を果しました.早い話、戦争に乗じてお金を儲けたのです.
そして、警察予備隊、保安隊、自衛隊と名前を変えながら再軍備をした.つまり、兵士、軍人となって出世を考える人間が登場することになりました.
話は、戦争に乗じて金儲けを企んだ陶芸師と、武士になって出世をしようとした百姓.
百姓の男は、出世に夢中になって妻のことを忘れ去っていたが、ある日、娼婦に身をおとした妻に巡り合い、やっと自分の愚かさに気がついて元の百姓に戻った.
他方、陶芸師の男は.彼は、僧侶に諭されても未だ自分の愚かさに気がつくことが出来なかった.戦争で滅ぼされた家の娘の亡霊に食い殺されそうになって、やっと自分の愚かさに気がついて戻っては来たのだが、妻は落ち武者に殺されていた.
自分の愚かさに自分で気がつけば、未だ救われるものがあるが、人に諭されても、それでも解らないようでは、救いようがないと言わざるを得ない.
2016/4/12(火) 午前 5:16 [ bego ]
> begoさん
自分は後悔ばかりです。
2016/4/21(木) 午後 11:14