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2010年6月18日、新文芸坐「巨匠・溝口健二−受難を生きる悲劇の女たち−」にて。 1955年度作品。 製作:永田雅一、ランラン・ショウ 脚本:川口松太郎、依田義賢、成沢昌茂、陶泰 音楽: 早坂文雄 出演:京マチ子、森雅之、山村聰、杉村春子、南田洋子、進藤英太郎、小沢栄 国際映画祭で日本映画が賞を取るようになったこともあり、“これからは合作の時代”と語っていた溝口健二の思いは、この「楊貴妃」での香港との合作によって実現した。玄宗皇帝(森雅之)の妃となった楊貴妃(京マチ子)の悲劇的な半生を描くゴージャスなメロドラマ。新しもの好きの溝口の初の総天然色作品。(eiga.com解説より) 唐王朝の玄宗皇帝(森雅之)は、深く愛していた妃を亡くし失意の中にいた。側近は再び皇帝の心をとらえる女性を探すが、どんな美女でも皇帝の目には留まらない。 そんな折、地方から京での立身出世を企む安祿山(山村聰)は、楊家の台所で真っ黒になって働く娘玉環(京マチ子)を見初め、太真と変えさせて皇帝に推薦する。前の妃によく似たその娘に興味を持った皇帝。玉環もまた、悲嘆にくれる皇帝の気を慮り、年に一度の祭りで賑わう長安の市井へと連れ出す。(角川映画解説より) この映画、あまり評判はよろしくない。 確かに、感情に訴えるものが希薄です。 これは脚本が面白くないからだと思います。 年取った玄宗(森雅之)の皇帝だった頃の回想シーンから物語は始まります。(「折鶴お千」以外にも回想から始まる映画がありました。) 男と女のドラマです。 楊貴妃の兄弟一族が私利私欲に走ることに我慢ならない民衆が反乱を起こし、 楊貴妃の一族を殺し、楊貴妃も殺されます。 玄宗皇帝(森雅之)は嘆き悲しみます。 その後、息子に皇帝を追われ、今は年老いた老人。 彼には、悲しい音を奏でる楽器がよりどころだけです。 真っ黒な顔をして下僕のように働かされていた玉環(京マチ子)は貧しくても、満足していました。 その彼女を玄宗皇帝に近づけたのは兄弟一族。 玉環(楊貴妃)は、素直に玄宗皇帝を慕っていました。 この玉環(楊貴妃)の描き方が、あまりに普通で、ただ単に「玄宗皇帝を慕っていました」というだけなのです。 どん底から這い上がってきた女でもなく、欲望に駆られた女でもないのです。 楊貴妃の兄貴の小沢栄と武漢の山村聰だけが、野望に燃えた男で、いつも溝口映画では一癖も二癖もある進藤英太郎も影が薄い。 杉村春子も1、2シーンだけの登場。 玄宗皇帝も人がいいだけで、癖がないのです。 年老いた玄宗が亡くなった楊貴妃を忘れられない。 楊貴妃を思いながら、亡くなります。 「迎えに来てくれたんだ」と話す玄宗のナレーションで終ります。 「雨月物語」のシーンを思いだしますが、悪霊にとりつかれて我が家に戻ってきた主人公の気持ちの揺らぎが、この玄宗には感じられないのです。 だから、薄っぺらな玄宗に感情移入もできませんでした。 そういう意味で、やはり脚本段階で、すべての人物に対して、性格づけが甘いと感じるのです。
川口松太郎、依田義賢、成沢昌茂といったゴールデントリオでありながら、残念です。 そういえば、この映画は溝口監督の初めてで最後のカラー映画です。(間違っていました。その後「新・平家物語」がありました。) 贅沢できらびやかな衣装やセットは、観る価値が充分あります。 |

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大昔、深夜のテレビで見たことがありました。
<楊貴妃>という題材が良かったとは思えない時代。。。
それと中国といえば、台湾・香港といった時代背景もあるんでしょうう。。。
テレビで見たという記憶だけが鮮明。
この頃の日本作品の秀作はやはりモノクロなんだろうか?
2010/6/22(火) 午後 11:05
こんばんは。
以前に見ましたが、何だかほとんど忘れています。
ただ、豪傑な山村聰と、いつもながら狡くてネチッコイ(?)小沢栄は少し記憶にあります。
楊貴妃が殺されるシーンとかはあったんでしたっけ?
溝口作品では「新・平家物語」もカラーでしたね。
2010/6/23(水) 午前 0:31 [ - ]
私は2年ほど前に日本映画専門チャンネルで見ました。京マチ子がハマり役でそれなりに結構楽しめましたけど、溝口の他の作品とくらべるとたしかに脚本が甘いかもしれないですね。
2010/6/23(水) 午前 6:28
この映画は溝口監督特集をやっていた映画館などで数回観ていますし、DVDも所持しています。一般には溝口作品の中では評価の低いものです。何かやっつけ仕事みたいなところがあります。近衛兵が皇帝に要求をつきつける部分はしかし迫力はありました。かつて傾向映画を撮った時の名残でしょうか。
2010/6/23(水) 午前 7:26 [ SL-Mania ]
もすもすさん
大映永田雅一社長の世界戦略の1本ですよね。経営者に名を連ねた溝口監督が同調して作った野望に満ちた作品のようです。でも、大作映画に溝口監督は似合わないことが明確になりました。
2010/6/23(水) 午後 9:11
bigflyさん
楊貴妃は首つりをさせられるようなシーンがありました。
実際、その場面はありませんでしたけど。すいません、「新・平家物語」(未見)もカラー映画だったんですね、失礼しました。
2010/6/23(水) 午後 9:23
ヒッチさん
ねちっこさがなく、非常にあっさりしていました。それは、世界を目指した演出方法なのかもしれませんが、日本では結局は評判がよろしくない結果に。
2010/6/23(水) 午後 9:27
SL-Maniaさん
感情のうねりのようなものが感じられませんでした。大作映画は、溝口監督には無理というか、似合わないように思いましたけど。
2010/6/23(水) 午後 9:31
この映画の世界は溝口監督には未知のものだからだと思います。杉村春子の役は当初入江たか子が当てられいました。溝口はいびり倒して辞退に追い込んだというトラブルもありました。裏返せば演出に集中していなかったということと思っております。
2010/6/23(水) 午後 10:58 [ SL-Mania ]
Sl-Maniaさん
溝口監督は映画職人ではなく不器用な方ですね。知らない世界は混乱して、表面的な映画に終わってしまったという気がします。入江たか子の件は聞いたことがあります。昔、入江プロで「滝の白糸」とか撮っていて、その反発から辞退に追いこんだという話ですよね。演出に集中できないいらだちが、そうさせたとも言われていますね。
2010/6/23(水) 午後 11:40