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内田吐夢「血槍富士」

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血槍富士
2010年8月5日、新文芸坐「命一コマ 巨匠・内田吐夢の全貌」にて。

1955年度作品。
原作:井上金太郎
監督:内田吐夢
脚本:三村伸太郎、八尋不二、民門敏雄
音楽:小杉太一郎
出演:片岡千恵蔵、島田照夫(片岡栄二郎)、加東大介、月形龍之介、植木基晴、喜多川千鶴、田代百合子、進藤英太郎、渡辺篤、吉田義夫

巨匠・内田吐夢が「鳥居強右衛門」以来、13年ぶりに作った、戦後第1作。企画はマキノ雅広監督の実弟である名プロデューサー、マキノ満男で、企画協力に伊藤大輔、小津安二郎、清水宏、溝口健二というそうそうたるメンバーが並んでおり、内田監督は彼らの友情に支えられてカムバックを飾った。舞台は江戸時代。酒乱の気がある若様(島田照夫)の槍持ちとして東海道を江戸に向かった権八(片岡千恵蔵)は、途中様々な人間模様に触れ人の情を知る。ところが、若様がつまらないいさかいから殺され、槍で仇討ちをするハメに……。(eiga.com解説より)

ネタバレあります。
「人情時代劇だな」とラスト近くまで、そう思っていたら。
一転、雰囲気が変わった。

泥棒を捕まえても「家来の手柄は主人の手柄」というお上のお言葉。
主従の身分の格差に若い殿様はいきどおりを覚える。
遊郭に売られる娘を助けるためお金を工面したり、泥棒を捕まえるなど、主の若い殿様は庶民その人たちの「人情」に気持ちを揺さぶられる。
そして、飲み屋で気位が高く見栄だけの「侍」に嫌気がさした口調になり、飲み屋にいた侍に「家来と一緒に酒を飲むとは何事だ」いいがかりをつけられ、刀を抜きあう喧嘩になった。
家来の加東大介が殺され、主も殺された。
片岡千恵蔵は主人の仇を討つべく、槍を振りかざし、侍たちを殺しまくった。
この殺陣シーンは、片岡千恵蔵の槍持ちの美しくない槍の振り回しが異様に生生しく、気迫に満ち溢れた戦いで、迫力があり見応え十分です。

この映画のすごいところは、ここからなのです。

槍持ちの身分で侍たちを殺してしまったため、当然、捕まえられるはずです。
ところが、侍たちの家では、「当家には、下郎に殺されるような侍はいない」と。
このブラックユーモアに、唖然。

おとがめもなく、片岡千恵蔵は、主人と加東大介の骨壺を抱きながら、飄々と道を駆けて行くラスト。
後で調べたら、このシーンで「海ゆかば」が流れたらしいが、気がつかなかった。
人情劇から槍の大殺陣(娯楽映画的)にいきなり展開する不自然さは感じるものの、侍の誇りを重んじることへの皮肉というか風刺、おかしさは、十分伝わりました。
小杉太一郎さんの音楽はまるで、「ラプソディインブルー」のようなジャズ風のメロディ、時代劇にはとってもお洒落でした。

閉じる コメント(10)

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私も、大好きな一本です。
片岡千恵蔵の時代劇は、苦手なのですが、この映画だけは別格です。

2010/8/16(月) 午前 0:08 [ ひろちゃん2001 ]

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ひろちゃんさん
こう言う言い方するとファンに怒られるかもしれませんが、片岡千恵蔵は侍より槍持ちのような役がピッタリでは。「大菩薩峠」を観ましたが、顔が大きいのでちょっとニヒルな役はどうかなって思いました。

2010/8/16(月) 午前 0:31 シーラカンス

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この映画は何度も観ました。一番状態の良かったのはフィルムセンターのプリントでした。「海ゆかば」の音楽はジャズ風にアレンジされてましたね。帰還第1作、内田もずいぶんと変わったものだと言った評者もいました。音楽の小杉太一郎は戦前の内田作品の常連・小杉勇の子息。彼の帰還を仲間は待っていたんでしょうね。

2010/8/16(月) 午前 0:43 [ SL-Mania ]

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終盤の展開にはびっくりしましたね。武家社会への風刺もきいていて内田吐夢の名演出のひとつといっていい作品でしょう。「海ゆかば」は私も気がつかなかったですね。

2010/8/16(月) 午前 6:21 ヒッチさん

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確かに、顔でかいですね。
千恵蔵だけでなく、昔の時代劇役者は皆でかかったですね。
私も、槍持ちが見事に適役であったと思います。

2010/8/16(月) 午前 7:54 [ ひろちゃん2001 ]

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SL-Maniaさん
ほほ〜、小杉太一郎は小杉勇の息子だったんですか。音楽、よかったです。13年ぶりのブランクを感じさせない思いがこもった映画だったと思います。

2010/8/16(月) 午後 8:40 シーラカンス

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ヒッチさん
いきなりの展開にびっくりでした。侍へのブラックユーモアは切れ味抜群でした。

2010/8/16(月) 午後 8:42 シーラカンス

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ひろちゃんさん
すいません、確かに昔の俳優さんは顔でかいですね。片岡千恵蔵の代表作でしょうね。

2010/8/16(月) 午後 8:45 シーラカンス

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時代劇でありながら、モダンな音楽でしたね。小僧が天狗のお面をつけているシーンのアップなどは、内田吐夢らしさが伺えました。

2016/12/6(火) 午後 1:45 瀧野川日録

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> トリックスターさん
とても面白い映画でした。ブラックユーモア、音楽もオシャレでした。内田吐夢の映画はいつも骨太の印象です。

2016/12/6(火) 午後 10:02 シーラカンス

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