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たそがれ酒場 2010年8月28日、神保町シアター「映画と酒場と男と女」にて。 1955年度作品。 監督:内田吐夢 脚本:灘千造 撮影:西垣六郎 出演:小杉勇、小野比呂志、宮原卓也、野添ひとみ、津島恵子、多々良純、高田稔、東野英治郎、加東大介、丹波哲郎、宇津井健、天知茂、有馬是馬、江川宇礼雄、榎木兵衛 “たそがれ酒場”と呼ばれる大衆酒場は、薄幸の老ピアニスト(小野比呂志)、その愛弟子のバリトン歌手(宮原卓也)、戦時中に描いた戦争画で名をなしたことに責任を感じている老画家(小杉勇)、旧軍人(東野英治郎と加東大介)、サルトルを論ずる大学講師や学生たちで今日もにぎわっていた。この酒場随一の出し物はエミー・ローザ(津島恵子)のストリップ・ショー。ショーが始まって間もなく、エミーの元パトロンがエミーを切りつける事件が起こる……。おのおの異なる職業を持つ人物の出入りする大衆酒場を舞台にして、ある日の夕刻から深夜までの7時間ほどの間に起こる、様々な事件や人の出会いを“グランド・ホテル形式”で描く内田吐夢の佳編。脚本の灘は、新聞記者で初めてシナリオを書いた無名の新人であった。(eiga.com解説より) しみじみとした味わいのある、いい映画でした。 斬新な切り口があるわけでもなく、強いテーマ性があるわけでもない。 ごく普通の色んな人たちが酒場に集まり、それぞれの人間模様をちらっと見せ、酒場が閉まると、また帰っていく。 舞台劇のような酒場だけの1シーン。カメラは外には一切出ない。 酒場と言っても、今でいうビアホールのような酒場。 懐かしい歌のコーナーがあったり、ストリップまであるサービス満点?の酒場。 この時代らしく戦争の傷跡がまだ残っている。 軍人時代の上官(東野英治郎)と部下(加東大介)が、久しぶりに出会い、懐かしく大声で軍歌を歌ったり、学生たちに文句を垂れたりして、懐かしく飲んでいる。 元上官はお金がないのか、卵丼だけ頼んで、元部下と飲むだけ飲んで、自分のレシートにお酒が付いていないのをちらっと確認して、さっさと帰っていく。皮肉たっぷりな描写。 白服の傷痍軍人が酒を飲んでいる姿も見える。 ストリップ・ショーの謳い文句も「原爆的衝撃のショー」とか今からすると問題発言になるような表現も。 画家(小杉勇)も戦争で傷つき、今はパチプロで生活している。 戦争高揚の絵を描いたことで、死んでいった人がいることを悔み、絵を描くことを止めたのだ。 外ではデモ、酒場では学生たちが哲学論、ハイエナのように見知らぬ人の横にすわり人の酒をタダ酒するヤツ(多々良純)(笑い担当)、ストリップダンサーと元パトロンの傷害事件、ヤクザ同志(丹波哲郎と宇津井健)の争い、ヤクザ(宇津井健)と女店員(野添ひとみ)の逃避行もある。 専属老ピアニストと弟子の声楽歌手。 昔、老ピアニストが妻を取られ刃傷沙汰を起こした原因の歌劇団の中小路(高田稔)が店にやってきた。 中小路は弟子の歌手に歌劇団に入ることを薦める。明日歌劇団に来てくれと。 老ピアニストは自分のエゴのため、弟子に反対する。 弟子は「理由を教えてください」と言うが、老ピアニストは説明できない。 そのことを知っている老画家(小杉勇)が、酒を酌み交わしながら老ピアニストを説得する。 「年寄りは、ただ老いるだけ。若い人の将来を摘んではいけないのでは」 そして老ピアニストは、弟子に「最後の歌を梅田さん(小杉勇)に聴かせてあげよう」とピアノを弾く。 酒場が開くところから始まり、小杉勇が酒場を後にするシーンで終る粋な映画。 1カットの長いシーンを移動撮影で見せたり、俯瞰ショット、仰視カットを駆使して、狭い酒場を広がりのある空間に見せた内田吐夢監督の手腕、テクニックはさすがです。 盟友小杉勇を主役(群衆劇ではありますが)にした最後の映画。 小杉勇が老ピアニストに酒を注ぐカットには、2人の構図はなく、小杉勇が持つ酒がコップに注がれるシーンだけが。 内田吐夢が小杉勇に注いでいるようにも見える。 小杉勇が老ピアニストを説得するシーンは、少ししつこい気もしますけど、戦争の傷を引きずりながら、戦後のとまどいを見せる内田吐夢監督の投影が小杉勇だと思うと納得できます。 あ、それと榎木兵衛がチンピラヤクザで出演していた。息の長い俳優さんですね。
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いわゆるグランドホテル形式という手法ですね。前作の「血槍富士」も同様な形式です。新東宝とはスポット契約でこの映画を撮ったようですが、内田監督はやはり現代劇の監督だなと思いました。ピアニストと歌手は本物の音楽家のようですね。小杉勇は内田作品はこれ以降出演していません。しかし、「飢餓海峡」で藤田進が扮した警察幹部は当初小杉勇を想定していたそうです。天知茂はほんのちょっとしか出ておらず注意しないと見落としてしまうかもしれません。この後「自分の穴の中で」を日活で撮って、それからは1968年まで東映で撮り続けたのは御存知の通りです。
2010/9/4(土) 午後 2:23 [ SL-Mania ]
SL-Maniaさん
時代のせいかもしれませんが、吐夢作品には「戦争」をどこか引きずっている映画が多いような気がします。そうですか、「飢餓海峡」は残念でした。天知茂はわかりませんでした。
2010/9/5(日) 午前 9:31
内田監督は、長い抑留性格があったので、まだまだ戦争を引きずっていましたね。
「堕ちた女」津島が良かったです。
TBします。
2012/4/21(土) 午前 10:58 [ ひろちゃん2001 ]
ひろちゃんさん
映画をみるたびに、それぞれの監督の個性が感じられて面白いですね。監督も人の子、弱い点、強い点、色んな面も含めて、映画を観ることの楽しみでもあります。津島恵子のこんな役を観るのは初めてです。
2012/4/23(月) 午後 11:37