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十三人の刺客
2010年10月1日、船堀シネパル。

2010年度作品
監督:三池崇史
原作:池上金男
脚本:天願大介
出演:役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、市村正親、稲垣吾郎、谷村美月、伊原剛志、松本幸四郎

片岡千恵蔵主演、工藤栄一監督による集団抗争時代劇の傑作を役所広司主演、三池崇史監督でリメイク。江戸時代末期、罪なき民衆に不条理な殺戮を繰り返していた明石藩主・松平斉韶の暴政を訴えるため明石藩江戸家老・間宮が切腹自害する。この事件を受け、幕府内では極秘裏に斉韶暗殺が画策され、御目付役・島田新左衛門(役所)がその命を受ける。新左衛門は早速刺客集めにとりかかるが、彼の前に斉韶の腹心・鬼頭半兵衛が立ちはだかる。(eiga.com解説より)

ネタバレあります。
面白かったです。
それはオリジナルの工藤栄一監督の名作「十三人の刺客」との比較しての面白かったということです。

オリジナルでの島田新左衛門(役所広司)と鬼頭半兵衛(市村正親)の情報戦略戦の丁々発止のやりとりは、娯楽映画の最高レベルだと今でも思っている。工藤栄一監督には悪いが、池上金男の脚本が新しい発想で素晴らしい出来栄えです。そして、娯楽映画の味付けとして敵、味方であっても主君に仕える「侍」の虚しさをスパイスで効かせています。自分は日本映画の中でも傑作中の傑作だと思う。

さて、このリメイクはどうかというと、島田新左衛門と鬼頭半兵衛の駆け引きはあるが、さして重要視されてはいない。袋小路での明石藩主・松平斉韶殺害も迫力はあるものの死にぎわを一人一人にスポットを当てたため、昔の時代劇の「見栄」を切る風であまりリアルティを感じない。
島田新左衛門(役所広司)と鬼頭半兵衛(市村正親)の対決での、島田新左衛門の足払いは面白い。
綺麗ごとの勝負ではなく、勝つことにこだわった戦いがいい。
伊原剛志は刀を数十本も土に刺しておいて、敵を殺しては、刀を抜いてはまた敵を殺す。
「七人の侍」の三船敏郎を思い出した。

オリジナルと異なるのは、島田新左衛門(役所広司)は、世のため民衆のためという大義を持って明石藩の残忍な藩主を暗殺しようと企てるところ。ようやく侍として役に立てる時がきたと。
オリジナルの敵、味方であっても主君に仕える「侍」の虚しさは、この映画では鬼頭半兵衛(市村正親)側にしかない。
「世のため」VS「主君のため」という構図からすると、明らかに「主君のため」が弱い。
それも、名君であれば、この構図も崩壊するが、この主君があまりにすごい暴君。
オリジナルの藩主もひどかったが、何倍もレベルアップして群を抜いてすざましいほどの残忍さ。
飾りものだけに納まっていればいいものを自分の存在感を間違って示すがごとく、上訴し切腹した主の家族を弓矢で撃ち殺し、参勤途中の宿場の嫁を手籠めにし、その旦那も惨殺する。
見るに堪えなかったのが、反抗した侍の娘の四肢を切断し、舌を切り、慰み者にしたこと。
主君に従うのが侍だという思想で、やりたい放題で、誰も止められない。
徳川将軍の腹違いの弟だからだ。まさに権力そのもの。悪の権化。
だから、観客も勧善懲悪の「世のため」>「主君のため」の構図で、島田新左衛門(役所広司)を応援する。
しかし、ここでちょっと様子が変わってきた。
島田新左衛門(役所広司)が殺した明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)が、今まで生きてきて、こんなに楽しいことはなかったと言い残したからだ。
飾り物の藩主が退屈で仕方がなかったのだ。
こんなやつに楽しかったと言われ、暗殺したことの価値が薄れてしまう。
悪を懲らしめるストーリーが虚しく見えるのは私だけ。

島田新左衛門(役所広司)も観客もどうすればいいのか。
勧善懲悪の構図がここで崩れた。成し遂げた達成感がない。
結局、オリジナルの主君に仕える「侍」の虚しさに戻ってくる。
侍と対極にある不死身の野生人(伊勢谷友介)の奔放な自由さに誘われるように、生き残った山田孝之も侍を捨て、イギリスにわたり好きな女と自由に過ごしているかもしれない。そんなことを考えたラストの含み笑いに見えた。

ストレートなオリジナル版がやっぱり好きですね。
こういう捻くった形でしか映画にできないのも、今のこの時代の特性かもしれない。

閉じる コメント(26)

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俳優陣が豪華でしたね。エンタメ性のある映画になっていました。

2010/10/16(土) 午前 0:36 mossan

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もっさんさん
稲垣吾郎もすごかったですが、お歯黒の谷村美月にゾクっとしました。

2010/10/16(土) 午前 9:50 シーラカンス

平成の代でも、世のためより主君のためを尊重し、結局は滅びていく企業や人が多い気がし、武士社会を描いているのに現代にも当てはまるなぁ…と感慨深く見ました。
吾朗ちゃんの怪演、見事でしたよね♪
トラバさせてくださいね(*^^*)

2010/10/18(月) 午前 9:24 金平糖

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金平糖さん
結局、主君を殺すのも守るのも馬鹿馬鹿しいことなんですね。みんな退屈だけなんだと。野生人が一番自由だと。でも世の中なかなかそう単純でないから厄介なんですよね。

2010/10/18(月) 午後 9:32 シーラカンス

私も虚しさを感じました。侍としての虚しさも、もしかしてもっといえば人間が生きることの虚しさも。
それをこのエンタメ作品に盛り込んだ三池監督は凄いですねえ。。
トラバさせて下さいませ♪

2010/10/23(土) 午後 10:07 恋

迫力あるバトル・・・豪華キャスト
三池監督らしい娯楽と・・・とても見応えのある時代劇でした。
トラバ・・・宜しくお願いします<m(__)m>

2010/10/24(日) 午後 3:21 くるみ

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恋さん
大義名分で人を殺すために大勢の人が死ぬことさえも馬鹿馬鹿しいと思える野生人(伊勢谷友介)の存在が際立っています。残酷な面も含めて三池監督らしいですね。

2010/10/24(日) 午後 6:24 シーラカンス

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くるみさん
悲しいかな、どうしてもオリジナルと比較してしまうんですよね〜。
素直に面白い娯楽映画だと思います。ハイ。ちょっと残酷ですが。

2010/10/24(日) 午後 6:55 シーラカンス

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これだけのキャストがそろったのは豪華ですね!
なかなか見ごたえがありました!
TBさせてください!

2010/12/15(水) 午後 10:35 かず

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かずさん
コメントありがとうございます♪ 豪華ですね、色々書きましたが、面白い時代劇です。アクションと侍の情けなさと。

2010/12/17(金) 午前 0:57 シーラカンス

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ちょいと一休み♪さん
TBありがとうございます♪ またお暇な時に覗いてやってください。

2010/12/31(金) 午後 8:48 シーラカンス

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これだけの記事を読んだら、オリジナル版を観なくてはなりませんね。評価は高い邦画ですね。
TBさせてください。

2011/8/29(月) 午前 7:56 [ あきりん ]

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あきりんさん
オリジナル、是非観てほしいです。損はないと思いますよ。霧もやの馬のシーンにはゾクゾクです。

2011/8/29(月) 午後 11:38 シーラカンス

現代のエンタテイメントとして、そして、リメイクと言うこともあってちょっと加えられたひねりで、映画としてはわかりにくくなってるかもしれないですね。
オリジナルも見たいです。

2011/9/20(火) 午後 0:25 ちいず

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ちいずさん
最近の時代劇では、過激なエンタテイメント映画で面白かったです。侍の肩苦しさを蹴散らかす伊勢谷友介が痛快でした。オリジナルお薦めです。

2011/9/20(火) 午後 11:54 シーラカンス

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そうですね、勧善懲悪のストーリー自体は虚しいですね。
なので、役所が勝手も、爽快感はありませんね。
1シーンの迫力と、悲惨なシーンの陰惨な輝きと、大杉のおかま演技は凄いですね。

2011/11/2(水) 午前 1:39 [ ひろちゃん2001 ]

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ひろちゃんさん
そうなんですよね、爽快感がないですよね。意図してでしょう。群衆の戦闘シーンはなかなか迫力ありましたね。

2011/11/3(木) 午前 10:16 シーラカンス

あんなバカ殿に仕え、闘わなければならない侍というのも虚しいものですよね。
でもそれはきっと今の時代もどの国でも抱えていることかもしれません。
オリジナルは未見ですが、このリメイクに関しては、三池監督らしいエンタメ作品として観るのが正解かなと思います。
足払いにするところなどにも、普通の時代劇ではないですよとの監督からの警告を感じました。
TBさせてくださいね。

2011/12/9(金) 午前 6:27 pu-ko

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すみません。なぜかTBできませんでした。m(_ _)m

2011/12/9(金) 午前 6:29 pu-ko

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Pu-ko さん
そうなんですが、ついオリジナルを観ているんで、比較してしまうんですよね。カマほりのシーンとか笑いましたね。TBは自分の設定の問題かもしれません。

2011/12/10(土) 午後 0:29 シーラカンス

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