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白と黒 2010年11月4日、新文芸坐『稀代の「演技者」追悼 小林桂樹』にて。 1963年度作品 監督:堀川弘通 脚本:橋本忍 出演:小林桂樹、仲代達矢、井川比佐志、千田是也、三島雅夫、淡島千景、大空眞弓、乙羽信子、西村晃、菅井きん、小沢栄太郎 弁護士・宗方治正の妻(淡島千景)が殺され、不審尋問にかかった前科4犯の脇田(井川比佐志)が殺人を自白した。死刑廃止論者である宗方(千田是也)は、若手弁護士の浜野(仲代達矢)と組んで脇田の弁護を買って出るが、真犯人は、浜野自身であった。そして捜査が進むうち、事件は意外な方向に……。(eiga.com解説より) 小林桂樹さんで、印象深い出来事は、TV「それぞれの秋」での父親役でした。 普段は温和な優しい父親が、脳の病気をして、意識がない中、家族を汚い言葉で罵倒する。 さらに、泣きながら、今まで生きてきたこと、青春を悔み、情けないほど愚痴をこぼすといった話だったかと思います。 普段の平穏な表情と病気してからの嫌らしい表情にあまりにギャップが大きく生々しくて、人格まで疑ってしまうくらい恐ろしくなった記憶があります。 その俳優が小林桂樹さんでした。 なんてすごい人なんだろうと思っていました。 小林桂樹さんが出演された映画はリアルタイムでは観ていません。 御自分でもお好きだったという「江分利満氏の優雅な生活」もよかったです。 「ここに泉あり」も好きな映画です。 群馬交響楽団のマネージャー役。 「ただ続けてきただけなんだけどなあ」と小林桂樹があっさりと言うセリフが印象に残っています。 煌めくスターでもなく、小林桂樹さんの演技者としての気持ちが現れているように思います。 調べたら、元々群馬県出身なんですね。だから独立プロであっても出演されたのかもしれません。 さて、この映画の感想です。 原作なしのオリジナル脚本を書いた橋本忍さんに脱帽ですね。見事です。 そして、その脚本を丁寧に演出した堀川弘通監督、小林桂樹さんの飄々とした演技に引き込まれます。 冒頭、宗方治正の妻(淡島千景)を殺した犯人が浜野(仲代達矢)であることが写されます。 その先入感を引きずったまま観ているため、ラストのどんでん返しに唖然とします。 途中まで、犯人は決まっていて、アリバイ崩しを中心にした映画だと思っていた。 だから、あまり緊張感もなく面白くないなと思っていた矢先のこと。 地方検事の落合(小林桂樹)が、思いこみと自供だけで強盗に入った井川比佐志を犯人と断定し、送検した。 最近、地方検事が強引な捜査をするといった話、どこかで聞いたことがありますね。 疑惑の持った落合は、もう一度徹底的に捜査します。 浜野(仲代達矢)が浮かび上がってきます。 問い詰めると、浜野(仲代達矢)は自分がやったことを自供します。 地方検事のミスを世間から非難されるかと思いきや、ミスを恐れず真犯人を見つけたことが、世間から評価されます。天狗になる落合。 今の時代性を予感しています。ミスを正直にアナウンスすることが重要なんですね。 一見落着と思っていたら、意外な事実が見つかります。
2度に亘る誤った犯人逮捕により根室に左遷が決まり、痔の手術をした落合(小林桂樹)のところに、浜野(仲代達矢)がやってきます。 「2人ともバカだったな」と落合が言う。 「うまく説明できないけどよくわからないけど、バカでよかったよ」と煙草を燻らせながら言う。 出世から見放されたけど、冤罪にしなかったことへの満足、人の良心を感じさせる素晴らしいセリフに涙ぐんでしまった。 素晴らしい映画でした。 |

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これも橋本忍らしいシナリオの緻密な映画ですね。初見は銀座並木座での上映でした。「黒い画集」ほどの恐怖感はありません。有名作家二人が特別出演していました。
2010/11/7(日) 午前 8:08 [ SL-Mania ]
SL-Maniaさん
途中までは、このまま終わるとあまり面白くないなあと思っていたら、意外な展開に。銀座並木座ってもうないんですよね。でも最近また名画座が増えてきている気がします。それも日本映画の名画座が。自分はシンプルにミステリー映画として堪能しました。大宅壮一
と松本清張でしたっけ。
2010/11/7(日) 午前 11:57
シーラカンスさんと同じような感想を持ちました。このまま終わったら悪くはないけど少々平凡かなあと。ところがやはりそうはいかない。見事な収束に唸らされましたね。TBおかえししておきます。
2010/11/24(水) 午前 5:58
ヒッチさん
見事な結末でした。原作がなく、橋本忍のオリジナルに唸ります。橋本忍の力量に脱帽です。
2010/11/24(水) 午後 11:40