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成瀬巳喜男「芝居道」

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芝居道
2010年11月6日、神保町シアター「成瀬巳喜男と女優たち」にて。

1944年度作品
監督:成瀬巳喜男
脚本:八住利雄
出演:古川緑波、長谷川一夫、山田五十鈴、進藤英太郎、阪東橘之助、花井蘭子、志村喬

国家総動員体制という時局の中で撮られた芸道もの
大阪で役者をしている新蔵は、連日の大入りに慢心して東京に出ていくが自分の未熟さに気づき芸道に精進、一人前になってふたたび大阪へもどる。物語は非常にオーソドックスだが、単なる娯楽映画に終わらない秀作。(ラピュタ阿佐ヶ谷解説より)
人気に慢心した役者を立ち直らせる興行師の物語。戦争末期とは思えない豪華なキャストと美術が見ものの芸道もの。(映画解説より)

戦争末期の映画。
冒頭、「撃ちてし止まん」(インターネットで調べました)のテロップが入る。
その時代のただならぬ雰囲気がする。

成瀬巳喜男監督作品を久しぶりに観た。
こんな時代であっても、プロの職人芸ですね。見事な出来栄えです。

長谷川一夫と山田五十鈴の芸道ものと言われている。
確かに芸道ものには違いないが、主役は興行師でしょう。
興行師の信念を貫いた「芸道もの」と言えます。

大阪道頓堀の角座と中座が出てきます。
大阪人なので、入ったことはないが名前はよく知っているので懐かしかった。
明治時代、角座の興行師大栄(古川緑波)は、日清戦争?ものを舞台にかけていた。人気は抜群。
他の芝居小屋は、歌舞伎がほとんど。

興行師大栄(古川緑波)の考え方がすごい。
「今人気のあるものをやっても意味がない。一歩先のことをやらねば」
割引してでも、大衆に観てもらいたいと。

そんな中、大栄(古川緑波)が気になるのは、看板役者中村新蔵(長谷川一夫)が鼻高々になっていること。
さらに、娘浄瑠璃の竹本花籠(山田五十鈴)に入れ込んでいて、芝居も上の空。
大栄(古川緑波)は花籠(山田五十鈴)に新蔵(長谷川一夫)を一人前にするために別れてくれと頼んだ。
新蔵(長谷川一夫)は、何もかも嫌になり、一人立ちすると言って、大栄(古川緑波)と大喧嘩して東京の芝居小屋に誘われて行った。

世間は、日露戦争で勝利に沸いていた。
周りの芝居小屋は戦争高揚の芝居を興行したが、大栄(古川緑波)は、敢えて喜びを慎む地味な忍耐する芝居を興行した。
観客は少なく閑古鳥状態。
そんな折り、苦しい中でも大栄(古川緑波)は花籠(山田五十鈴)に仕送りをしていた。
花籠(山田五十鈴)は浄瑠璃を辞め、縫物で生計をたてていた。
花籠(山田五十鈴)は大栄(古川緑波)を励ますため、大栄(古川緑波)の前で浄瑠璃を演じた。
グッときて涙が出ます。

それでも大栄(古川緑波)、次から次と、浮かれていない質素な慎む芝居をかけた。
収入は激減、下人も解雇していく。
これこそ興行師の「芝居道」。
小屋主もついに小屋を貸さないと言いだした。
もう、これまでか。

そこに、新蔵(長谷川一夫)が成長して、戻ってきた。
当初、東京に行った新蔵(長谷川一夫)は、小さい役しかもらえず、生意気で、興行主に文句を言ったが、「芝居も下手なのに、偉そうなことを言うな、いやだったら大阪に帰れ」と言われた。
それから、彼は一身努力して、周りも認める一人前の役者に成長したのだ。
そんな彼に興行主は「大栄(古川緑波)に頼まれて、厳しい事をいったが、許しておくれ、立派な役者になったな」と裏話も含めて褒めてくれたのだった。
新蔵(長谷川一夫)は「まだまだ未熟な私ですが、どんな小さな役でも少しでもお役に立てればと思い帰ってきました」と。
また、ここで思わず、涙ぐんでしまいます。
花籠(山田五十鈴)とも縁りを取り戻した。
大栄(古川緑波)は、「次はこういう芝居をしようと思うのだけど」と2人に説明するのだった。

古川緑波、長谷川一夫、山田五十鈴の素晴らしい俳優の演技に支えられ、成瀬巳喜男監督の堅実な演出が際立った映画でした。

戦争高揚時代にあって、おのれの芸道を貫き通す大栄(古川緑波)の姿は、成瀬巳喜男監督の心意気を反映した強い反骨心のあらわれと見たのは自分だけでしょうか。
「一歩先を」という言葉が印象的。

花井蘭子が古川緑波の娘役で出ていた。
若い頃の花井蘭子はいいんですよね〜。「むかしの歌」は最高でした。機会があれば是非観てみてください。

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神保町シアターも一度行ってみなければなりませんね。こういう珍しい作品を上映してくれんですから。戦時中に成瀬監督は芸道ものなどに逃避していますね。それがかえって潤いを社会に与えていたのかもしれません。

そういえば、古本屋街の裏に廻ると「東洋キネマ」と書かれた建物があり、かつてここに映画館があったのかなと思ったことがありました。

2010/11/10(水) 午前 0:13 [ SL-Mania ]

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SL-Maniaさん
ちょっと料金が高いめですが、クセのない昔懐かし古きよき時代の映画が多いです。この次は「小津安二郎監督特集36本」があります。楽しみです♪ 成瀬巳喜男監督は大好きで感想だけでも36本書いています。こんな時代であっても、ちゃんとした映画にしていることが凄いです。よくできた映画です。満足です♪

2010/11/10(水) 午後 11:14 シーラカンス


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