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浮草 2010年11月25日、神保町シアター、「小津安二郎の世界」にて。 1959年度作品 監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:宮川一夫 出演:中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、三井弘次、田中春夫、潮万太郎、笠智衆、野添ひとみ、伊達正、浦辺粂子、花布辰男、丸井太郎 岬の上に燈台のある風光明媚な志摩半島の小さな港町。そこの相生座に何年かぶりで旅回りの嵐駒十郎一座がやってきた・・・。 一座の長である駒十郎(中村鴈治郎)が、むかしの女(杉村春子)に生ませた息子(川口浩)と再会する話を中心に、周囲の人々が織りなす温かい心の交流と愛情の厳しさを格調高く、そしてあふれるような詩情でうたいあげた文芸巨編。名匠・小津安二郎監督が初めて大映で監督。 (角川映画解説より) 戦前に小津安二郎監督が撮った「浮草物語」を自らリメイク。 「浮草物語」は観ていません。 面白いです。 1959年の作品だから、小津監督としては後期に入ると思う。 落ち着いた映画群を作り続けていた頃に、戦前の映画をわざわざリメイクする意味合いは何だったんだろうか。 何かに満足していなかったか、それとも新しい時代の映画が作られてきたことへの気持ちのあらわれでしょうか。それとも何にも思っていなくて、たまたまのなりゆきからでしょうか。 激しい感情を吐き出す映画です。 小津監督独特のオウム返しのセリフは影を潜め、汚い関西弁のセリフの応酬が繰り広げられる。 このような感情が吐露した人間模様の映画を観るのは十分楽しいんですが、逆に小津監督の個性が薄れると感じるのは私だけでしょうか。 中村鴈治郎の独断場です。 自分の息子(川口浩)と話す時のなんとも嬉しそうな表情を見せ、可愛いこと。 息子がちょっと理屈っぽいことをいうと、えらそうにと言いながら微笑ましく笑っている。 息子の成長がうれしくてしかたがない様子が伝わる。 それもそのはず、息子には父親とは言えず、おじさんと言っている。 俺みたいな旅役者の父親がいてはあかんと。 その息子が一座の若手女優(若尾文子)とねんごろになり、鴈治郎が怒りまくる。 立派な人間にと思っていたのが、こんなことに。 この時の鴈治郎は怖いですよ。本気モード全開です。 結局、俺の子やから、しゃあないわな。とあきらめのように納得する。 妻(京マチ子)に昔の女(杉村春子)のことがばれて、雨降る中、向かいあった軒下でお互い言い争う。 面白いショットです。(写真のシーンです) もしかして宮川一夫のアイデアでは。 ラスト、芸人にお金を持ち逃げされ、一文なしになり、駅に来る。 そこには、大ゲンカした妻(京マチ子)がいた。 煙草を取り出し、ひょいっと煙草を吸うそのしぐさが、見事に型にはまって素晴らしい。 気恥ずかしい気持ちを誤魔化すためのしぐさなんですね〜。 どこかユーモアを漂わせていながら、男の意地、存在感みたいなものを感じさせてくれます。 そんな鴈治郎なのです。 素晴らしい役者さんですね〜。 芸人3人組(三井弘次、田中春夫、潮万太郎)が、それぞれとぼけた味を出して楽しいですね。 田中春夫と潮万太郎が、鴈治郎のお金を盗んでとんずらしようと企てる。 三井弘次が、今までどれだけ鴈治郎にお世話になったのか考えてみろと説教する。 田中春夫と潮万太郎は、俺たちが悪かったと謝る。 そしてあくる日、三井弘次は鴈治郎のお金を盗んでとんずらしていた。笑わしよんな。 小津監督は、何てユーモアのセンスがあるんだろう。 京マチ子は、嫉妬深い妻を激しく色っぽく。 若尾文子と川口浩は、初々しい一途な男女を。 俳優を動かせ、人の生きざまをユーモア交えておかしく、あるがままに撮りあげたように見える愛すべき小津作品です。
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場面の色々な所に配置された「赤」が
とても効果的な色合いを作っていました。
雨の中のいい争いの場面、構図と色の美しさに惹きこまれました。
幾重にも折り重なった「人間模様」を役者たちの好演を得て
実に巧みに描き出していました。
それまでみてきた小津作品とはかなり異なっていましたが、
とても好きな映画です。
2010/12/1(水) 午後 9:28
小津作品でも会社のカラーが出ていて面白いです。劇的な作品が多い大映の雰囲気はやや小津の世界とは異なるように思います。
2010/12/1(水) 午後 10:12 [ SL-Mania ]
こんばんは。
小津作品は、ちょっと苦手な所もありますが、この作品は大映作品だからか、ちょっと雰囲気が違ってましたね。
ジャケにもなっている雨のシーンは、本当に美しかったです。
雨に濡れた京マチ子が色っぽく感じました。
2010/12/1(水) 午後 11:04 [ - ]
alfmomさん
確かに色にはこだわりを感じました。写真には出ていないですが。京マチ子の傘が「赤」でしたね。そうですね、いつもの小津作品とは違うんですが、これはこれで味わいのある映画でした♪
2010/12/2(木) 午後 10:18
SL-Maniaさん
松竹とは違う大映の色が出ているのでしょうか。戦前の映画の中でも激しい感情を出す映画がありましたが、その再現を自らしている気がします。
2010/12/2(木) 午後 10:30
bigflyさん
そうなんですね、松竹の形にこだわった映画ではなく、もっと自由度は高いように思います。雨のシーンは面白い表現方法ですね。赤い傘が色鮮やかでした。京マチ子は艶っぽいですね。
2010/12/2(木) 午後 10:45
記憶が正しければ、あの有名な土砂降りの軒下での激しい喧嘩は、宮川一夫さんご自身が提案したと、たしかテレビかYouTubeのインタビュー番組で語っていたと思います。
よく小津がOKを出したものだと思います。中村鴈治郎の力強さに反応したのでしょうか?
小津の異色作で気に入っています。
TBします。
2011/1/6(木) 午後 9:29 [ 8 1/2 ]
81/2さん
どうみても小津監督の構図ではないですよね〜。宮川一夫さんは提案好きだとか。なんか余裕で小津監督が了解したかも。この頃の小津監督はゆったりと楽しみながら映画を撮っている気がします。映画の中に変な緊張感がないです。宮川一夫さんといえば「雨月物語」、溝口監督の力なのか宮川一夫なのかよくわからないほどの力量を発揮した映画ですね。
2011/1/7(金) 午前 0:50
この作品は小津ファン以外でも退屈せず(笑)観れる楽しい作品ですね。
宮川一夫さんとのコラボもうまくいってて撮影現場はどうだったのか興味深々です。
TBさせてください♪
2011/7/23(土) 午後 3:58
marrさん
すいませ〜ん、コメント気がつきませんでした。面白い映画でした。楽しみながら観る映画もなかなかのものですね。宮川一夫さんの個性はどんな作品でも目立ちますね。
2011/10/25(火) 午前 0:27
こんにちは。
ラストの駅で、すみ子の点けてくれたマッチを無視して、懐のマッチを探すじれったいシーンは、実にいいシーンでした。
加代は芸事が好きで、清と上手くやれるかが心配になりました。
しかし、いい映画でした。
TBさせてください。
2012/8/30(木) 午前 8:31
ギャラさん
ラストのマッチもお酒を飲むシーンもいいですね。
戦前の小津作品のリメイクということで、いつもの小津映画とは違った感じでほんと楽しめました。中村鴈治郎は、うまいなあ〜。
2012/8/30(木) 午後 10:48
こんばんわー。
この映画は私も大好きです。京マチ子のマッチの付け方も粋だし、三人組のユニークなやり取り、微かな希望を覗かせる締めくくり…とても良い作品でした。
TBです。
2017/6/21(水) 午前 0:06 [ すかあふえいす ]
> すかあふえいすさん
二人の役者を観ているだけで楽しいですね。小津監督も楽しんで撮っているようにも見えます。ラストも粋なハッピーエンドで気持ちがいいですね。
2017/6/22(木) 午後 10:34