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長屋紳士録
2010年11月27日、神保町シアター、「小津安二郎の世界」にて。

1947年度作品
監督:小津安二郎
脚本:小津安二郎・池田忠雄
出演:飯田蝶子、青木放屁、河村黎吉、坂本武、笠智衆、吉川満子、殿山泰司、小沢栄太郎、谷よしの

戦後間もない東京には、戦争で親を亡くした戦災孤児がたくさん居たが、その中の一人を拾ってきた田代(笠智衆)は、その子をおたね(飯田蝶子)に預けてしまう。女はその子が疎ましくて仕方がないので、どこかに置き去りにしようとするが、なかなかうまくいかない。そのうち、その子供に情が湧いてきて、二人の間に、実の親子のような絆が生まれてくる。しかし…。段々と子供に対する気持ちが変化する経緯を小津の演出で、そして飯田蝶子の演技力で、魅せる作品。懐かしい昔の東京の風景と共に、心に残る作品である。(amazon解説より)

戦前の喜八(坂本武)ものの1作のようです。
小津監督戦後第1作。
とは言いながら、仰々しい大作ではなく、ごく普通の下町の長屋の生活を描いた作品。
ただこの映画のポイントは、捨てられた子供。
今回の主役は喜八(坂本武)ではなく、おたね(飯田蝶子)が主役。

田代(笠智衆)が九段で子供を拾ってきた。
同じ長屋の河村黎吉もおたね(飯田蝶子)もどこかに捨てておいでよと普通に言う。
犬とか猫と同じように、子供を「拾う」とか「捨てる」ということばが、ごく普通の会話の中に使われることに、戦後2年目の、その時代性を強く感じる。今からすると怖い会話だ。

最初は、「しっ」「めっ」と怖い顔を子供に見せていたおたね(飯田蝶子)。
お前の父親には愛情がないんだよ、お前は捨てられたんだよ。

子供はオネショをしたことでおたねの家を飛び出した。
帰ってこないことを心配してから子供への情が移っていく。
自分の子供にしようと思って2人で写真を撮って帰った日、子供の父親が迎えにきた。
子供の父親は、九段で子供とはぐれてしまったと言う。
お世話になり、ありがとうございましたと言い、預かってくれたお礼にと芋をおたねに渡す。
子供に別れをするおたねの姿を前からではなく斜め後ろから映す。
顔の表情がわずかに見えるショットにグっときてしまう。
小津監督のセンスを感じます。

分類すると、人情ドラマに入るのかもしれないけど、素直にそうとは思えない。
それはラストのおたね(飯田蝶子)のセリフに監督の思いが込められているからだ。
「父親はえらいよ。ちゃんと子供のことを思ってるし、礼もちゃんとしてるし。子供もえらいよ。悪口ばかり言って、悪いことをしちゃったよ。私たちよりちゃんとしてるよ」

戦争に負けて、戦後の日本は、戦災孤児たちは、子供たちの未来はこれからどうなるのか。
でも、日本人はちゃんとしている、大丈夫だと言っているようだし、大丈夫でありたいと願う気持ちがおたね(飯田蝶子)のセリフから伝わる。

いつもの小津作品に見る子供の無邪気な表情はこの映画にはない。
上野の戦災孤児を写すドキュメントのラストシーンを見ながら、小津監督には珍しいテーマ性を持った映画だと感じた。

笠智衆が歌う「のぞきカラクリの唄」が楽しい。
ユーチューブにあったので、よかったら覗いてください。
のぞきカラクリの唄 笠智衆

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所謂、喜八ものの最後の作品ですね。そして、飯田蝶子はこの作品が最後の小津作品でもあります。飯田蝶子の代わりに登場するが杉村春子になるのでしょうね。ちょうどこのあたりで出演者が交替する時期と言ってよいでしょう。飯田は頼まれて出たのに、現場では叱り飛ばされて割にあわないとこぼしていたそうです。新劇俳優を使いたがらない小津でしたが、ここでは小沢栄太郎が出ていますね。

それから映像では築地本願寺がぽつんと立っているのは、敗戦直後の風景であると改めて思い知らされます。

2010/12/4(土) 午前 1:00 [ SL-Mania ]

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「捨て子」という言葉はもはや死語になりました。今では熊本の病院の「赤ちゃんポスト」くらいでしょうか。昔は、拾った人がチャンと育ててたんですね。捨て子の映画は他にもたくさんありますし。そういう人情やコミュニティが成り立っていたよき時代なんでしょう。TBしておきますね。

2010/12/4(土) 午前 9:06 ヒッチさん

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ははー、若き日の殿山泰司さんも出ていらっしゃるんですね。

殿山さんというと大島渚監督の映画を連想しますが、小津監督の作品に出ていたなんてちょっと意外な感じがいたします。

2010/12/4(土) 午後 4:18 [ dalichoko ]

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SL-Maniaさん
そうか、飯田蝶子は最後の作品ですか。戦前の坂本武、吉川満子も出なくなっていきますね。笠智衆だけは特別扱いですね。自分の映画作りの中で取捨選択していくようですね。インド風の築地本願寺出てきますね、一度行ってみたいです。

2010/12/5(日) 午前 0:13 シーラカンス

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ヒッチさん
戦後の混乱期、人の情の厚さが子供を育てることに自然だったんでしょうね。中国日本孤児もそうですね。語弊があるかもしれませんが、貧しい時の方が、そういう傾向があるのかもしれません。

2010/12/5(日) 午前 0:25 シーラカンス

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chokoboさん
チョイ役の写真屋のおやじでした。髪の毛がまだありましたね(笑)。他の小津作品では出ていないのでは。

2010/12/5(日) 午前 0:53 シーラカンス

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殿山泰司の小津作品はカラー時代の「お早よう」がありますね。押し売りで防犯ベル売りの男おはペアだったという落ちでした。こちらの方が芝居らしい芝居をしています。

2010/12/5(日) 午後 2:34 [ SL-Mania ]

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SL-Maniaさん
失礼しました。押し売りの男がありましたね。セリフもこの映画より多いです。

2010/12/5(日) 午後 11:01 シーラカンス

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「一人息子」の飯田蝶子も印象に残っています。
本当に凄い数の作品に出演している女優さんですね…

優しい人情物語だと思って見ていましたが、
ラストの戦災孤児たちのシーンで、一気に気持ちが現実に引き戻された思いになりました。

2014/12/21(日) 午後 11:04 alf's mom

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alfmomさん
この頃の飯田蝶子は、厳しい表情が多いです。その後の「若大将」の頃はほんと人のいいお婆ちゃんでした。戦災孤児がちゃんと育ってくれることを監督は願っていたのだろうと思います。

2014/12/24(水) 午後 11:53 シーラカンス

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