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風の中の牝雞 2010年12月5日、神保町シアター、「小津安二郎の世界」にて。 1948年度作品 監督:小津安二郎 脚本:斎藤良輔、小津安二郎 出演:佐野周二、田中絹代、村田知栄子、坂本武、笠智衆、小野田房子 雨宮時子(田中絹代)は、夫・修一(佐野周二)が外地へ赴いているため、健気にミシンを踏んで生計を立てていた。苦しい毎日ではあるが、息子・浩の成長ぶりを夫に見てもらう日を心の支えにした生活であった。ある時、浩が病に倒れ入院、まとまった金が必要になり途方に暮れた時子は、いかがわしい安宿で見知らぬ男に身体を売ってしまう・・・。そして、やっと戻った夫は、留守中の妻の真実を知ることになる。(amazon解説より) 「雌鶏(めんどり)」ではなく「牝雞(めんどり)」のようです。 この漢字は読めないですね。 厳しい辛いストーリーです。 ネタバレあります。 妻(田中絹代)はすべてを告白するのです。 友人は黙っていた方がいいよ、旦那が苦しむだけだからと言いに来てくれたが、その時はすでに遅く、妻は子供の入院費が払えず、体を売ったことを戦争から帰った夫(佐野周二)に告げてしまっていました。 今まで、夫婦の間で隠しごとをしたことがないから、黙っていることはできないと。 それから、夫は苦しみます。 夫は、日々、妻を非難し罵倒します。 夫は妻が体を売った店に行きます。 そこで、女と話をします。 女は家族を養うために今の商売をしていると。 「仕事を捜してやるから」 夫は妻を許しているはずなのに、妻を見るとイライラして、腹が立つんだと友人に漏らす。 人の気持ちの複雑さがよく表れているセリフです。素晴らしい本音のセリフです。 夫は家に帰っても、すぐ家を出ていこうとする。 感情がまだ納得できていないのだ。 せめて子供のために家にいてほしいという妻、言い争いの中、妻が2階から転落する。 夫は、目が覚めたように言う。 「すべて忘れろ。もう二度とそのことは言うな」と2人は泣きながら抱き合う。 感動的なラスト。 過ちを犯したものを果たして許すことができるのか。 妻は告白したことで、精神的な苦しみからは逃れられている。いやらしい考え方かな。 女の苦しみより、男の苦しみに焦点が当たっている。 苦しみ悩んだ末、2人は救われた。・・・と思いたい。 終わり方が奇麗ごとすぎると思えるかもしれないが、結局、このエンドでよかったのではと思います。 絶望のまま終るとあまりに辛すぎます。 小津作品には、心象風景がよくインサートされます。 特にこの映画では、夫婦が住む家の近所の石油タンクみたいな建造物が何度となく登場します。 また、夫が夜の女と話をした後、穴のあいたドラム缶が何回も写されます。 こんなに登場する理由はどこにあるのか。 戦後の復興のイメージであるタンクと、まだ戦争の傷に苦しむ人々の対比でしょうか。 人の心に穴があいたということでしょうか。 もしそうなら、ちょっと単純な発想でちょっと小津監督らしくないですね。 また夜の女の描き方も表面的で、どこか現実味がないように感じました。 階段落ちを見た時は田中絹代は体を張ってすごいと思いました。 後で調べると、スタントマンがいたとのこと。 それはそうでしょうね。あまりに危険すぎます。 溝口監督ならやらせていたかも。 笠智衆は佐野周二の仕事仲間役で、佐野周二にいいアドバイスをします。
会社の隣がダンスホールでいつも人が踊って賑やかです。佐野周二と笠智衆が辛い話をしているのに、それがとても不快に感じます。 また音声が悪くて、雑音なのか不確かですが、夫婦の家のシーンで、工場の機械音が響いていたように思います。 不愉快な音で、「一人息子」に同じような工場の不快音がしていたのを思い出しました。間違っているかもしれませんが。 |

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珍しくバイオレンスなシーンのある作品です。小津監督は編集の折何度もここのシーンのフィルムを見つめていたそうです。田中絹代のスタンドインはサーカスの女性だそうです。それにしても切ない話です。今流布しているプリントは音声に難があるようですね。SHVから出ているDVDソフトはかなり修復はされているようです。
2010/12/16(木) 午前 11:05 [ SL-Mania ]
私も終わり方はこれで良かったと思いますよ。カーテンショットや雑音にまで細かいところまで観察されてますね。DVDの方では不愉快な工場音という風には聞こえませんでした。やはり古典にありがちなノイズでしょうか。
2010/12/17(金) 午前 6:04
こんばんは。
自分の身になってみないと、自分ならどのような対応をするか分からないですが、これを観た時は、佐野周二が田中絹代にいつまでも辛く当たるので、いつまでネチネチ言ってんの?って感じになりました(笑)。
少し前に私もこのメーカーの作品を購入しましたが、画質、音質はよくありませんでした。
2010/12/17(金) 午後 6:48 [ - ]
SL-Maniaさん
バイオレンス小津ですね。最初はてっきり田中絹代だとばかり思っていました。なるほど、下まで落ちていましたからね。ストレートに辛い映画ですね。いつもの小津作品とは異質です。まああまり型にはめると監督が辛いでしょうから。でもちょっとですね。。。フィルムは悪いほうの原本ということですか。
2010/12/18(土) 午後 11:32
ヒッチさん
う〜ん、そうでしたか。違うシーンには機械音が聞こえなかったので、そうかなと思っていたんですが。いい方のDVDは今のフィルムと違う媒体からの複写なのですね。ややこしいですね。
2010/12/18(土) 午後 11:36
bigflyさん
私も同じ状況の場合、どういう反応をするかよくわからないです。しつように詰問していましたね。その店の娼婦に会って、生活苦からその仕事をやっていることで納得し、仕事を世話してやる流れがスムーズすぎてどうなのかなって思いました。高いDVDは音声もいいみたいですね。
2010/12/19(日) 午前 0:24
小津の中で、今一番みたいのですが、今回も見逃しました。
ニュ−プリントが出ないでしょうかネ。
2010/12/23(木) 午前 0:42 [ koukou ]
koukouさん
残念だったですね、一番観たい映画だったんですか。でも、東京であれば、近々にまたどこかで上映されると思います。確かに、映像はまだましですが、音声が雑音だらけでひどかったです。
2010/12/23(木) 午前 10:59
私はツタヤTVで観たんですが、音声が酷くて会話が聞き取れない。それで、ヘッドホンを付けて鑑賞しました。
男の方も、戦争中に純潔だった訳でもなかろうに、妻のたった一度の過ちにここまでこだわるもんでしょうかね?「貞操」と言う概念が生きていた時代だったのでしょうか?
それにしても、面白い映画でした。
2015/7/13(月) 午後 11:47
猫さん
音は悪かったです、小津作品でさえこういう状態で保存されていることは残念です。男の我儘か、男なりの戦争に対する傷心を表しているのかよくわかりませんが。激しかったです、小津作品では珍しい。でももう1本あったと思います。
2015/7/14(火) 午後 9:32