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デルス・ウザーラ 2010年12月12日、フィルムセンター、「生誕百年 映画監督 黒澤明」にて。 1975年度作品 監督:黒澤明 原作:ウラジミール・アルセーニェフ 脚本:黒澤明、ユーリー・ナギービン 出演:ユーリー・サローミン、マクシム・ムンズク シベリアのウズリ地方に、地質調査のための探検隊が入った。しかし同地の厳しい自然は、隊員たちの予想を遥かに超えていた。彼らは、たった独りで猟を営む男デルス・ウザーラ(マクシム・ムンズク)と出会い、その案内で危機を脱する。やがて、探検隊の隊長ウラジミール(ユーリー・サローミン)は、デルス・ウザーラに深い敬愛の念を抱いていく……。(allcinema解説より) ネタバレあります。 黒澤明監督の違う面を見た気がする。 私が観た黒澤明作品では、言葉で結論を出したがるイメージがある。 この映画では、あまり多くは語らない。 大自然の中で、人が生きていくさまをあるがまま淡々と描いていた。 そして、悲しい結末も静かに終わる。 特に強く印象に残ったシーンがある。 隊長ウラジミールと案内役の狩猟者デルスは、凍結した湖を渡ろうとしていた。 コンパスも狂い、強風のため足跡も消え、道に迷い、方角を失った。 日が沈み始め、彼らは焦る。 右往左往して、走る、走る。 このままでは、助からない。凍死するかも。 厳しい大自然の中で死ぬと意識した瞬間が怖い。生々しく恐ろしいのです。 「カピタン(隊長)、体を動かすものが生き延びる」とデルスは隊長に言う。 デルスがウラジミール隊長のことを自分の民族の言語でカピタン(隊長)と呼ぶその響きがとても可愛く、デルスの親しみのある人柄が出ていて好きです。 強風の中、わずかに生えた葦を、急いで刈り始めて、積み重ねていく。 「カピタン(隊長)、もっと刈る」とデルス。 息を切らしながら刈ります、どんどん刈ります。 隊長はあまりのキツイ作業のため途中で倒れてしまう。 隊長が目覚めると、葦の草むらの中にいた。 助かった! 2人は抱き合った。 デルスの知恵と行動は、瞬時に自分の体で感じ、大自然の中を生き抜いてきた証。 森の中で生きるためのたくましい力。 必死に葦を刈る2人の姿から見える「死」の恐怖から、助かった2人が喜び溢れ抱き合う「生」の姿に感動する。 やがて、デルスは老いたせいか、目を悪くする。 厳しい森の中では、もう狩猟生活はできない。 カピタン(隊長)が住む街の家に同居することに。 デルスは、自然の中での生活と街の生活の違いに戸惑いを覚える。 水にお金を払うことに怒り、公園の木を切り警察に捕まえられる。 法(人が決めた)に縛られた中で、自由を失う。 自然の中で生きた男が、街の中では生きられない。 人の生きざまの悲しさ。 森に帰ることを決意するデルス。 カピタン(隊長)は、目が悪くても大丈夫なように最新式の銃を渡してやる。 しばらくして、カピタン(隊長)に電話が入った。 街でデルスの死体が見つかったと。 強盗に銃を奪われ、殺されたのだ。 あまりに残酷な結末。 森に帰っても死ぬかもしれないが、せめて自分が生き抜いてきた森の中で、なぜ死なせてやれなかったのか。 観る側はそう思ってしまう。 理想像であった「赤ひげ」以降、自殺未遂もあり、「どですかでん」「デルス・ウザーラ」と映画に流れる現実の厳しさ、絶望感といったところに、監督の視点が移り変わっているように思う。 だからこの映画でも、自然の中でしか生きられないデルスを、あえて街で殺すという残酷さを見せる。 その後に作った「影武者」「乱」は未見なので、黒澤監督のまた違う面を確かめてみたい。
ちなみに、「どですかでん」「デルス・ウザーラ」は自分の中では好きな映画です。 |

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当時の監督の心境をこの映画に投影させているとみると、このラストの悲劇はなるほどストンと落ちますね。その後に作った「影武者」「乱」は昔に戻ろうとして戻りきれていない印象です。
2010/12/24(金) 午前 6:17
素晴らしい映画ですね。
私も一番心に残っているのは
強風吹きすさぶ凍結した湖の上でのシーンです。
私は初めて、カメラマンら、撮影スタッフの存在を強く意識しました。
極寒の中、俳優は勿論、監督と撮影陣の、極限の自然との攻防。
良くあの迫力ある映像を捉えられた、と深く深く感動しました。
この作品はマクシム・ムンズクと言う俳優との出会いがあったからこそ完成した作品でした。
カピタン(隊長)と呼ぶその響きは本当に愛らしかったです。
この作品を劇場でご覧になったのですね、
羨ましくてため息が出そうです…
TBさせて下さい。
2010/12/24(金) 午前 11:05
湖のシーンは胸に迫りますよね。
デルスを殺したのは、文明の思い上がりのような気がします。
2010/12/24(金) 午後 0:34
ヒッチさん
この映画は好きです。三船にみる強い男の映画が多かったですが、この映画では弱い面を見せて、黒澤監督の気持ちの変化を感じました。
2010/12/26(日) 午前 0:37
alfmomさん
よかったですね、この映画。ロシアの大自然の景色と厳しい寒さ。マクシム・ムンズクが本物の狩猟家のようで、自然で素晴らしかったですね。
2010/12/26(日) 午前 0:56
ちいずさん
このシーンには感動しました。大自然がリアルでした。デルスの死は文明批判の象徴でしょうね。
2010/12/26(日) 午前 1:23
クロサワ作品はあまり見てないのですが、これが一番好きです!!
あ・なるほど。他の作品は言葉で結論を出すのに
これは映像で。だから私が好きなのかもしれません。
葦のシーンとか・・もうすごい〜〜
TBさせてくださいね。
2010/12/26(日) 午前 8:44
ご訪問ありがとうございました。
このポスターも当時のものですね、懐かしいです。
この時の黒澤監督は色々あった時期だったんですね。
それが作品に反映されていたということですか・・・。
でも、これも「黒澤」と言うところを見せていただきました。(・ω・)bグッ
こちらもTBさせてもらいますね!
2010/12/26(日) 午後 1:52
Cartoucheさん
「七人の侍」を観られていなかったら是非お薦めします。結論を出すのはその時の時代性もあるかもしれません。葦のシーンは強烈でした。素晴らしい映画でした。
2010/12/26(日) 午後 8:40
Kazさん
コメントありがとうございます♪ 黒澤作品うんぬん関係なく、いい映画でした。好きな映画です。黒澤監督の作り方は以前とは明らかに変わったと思いますね。
2010/12/26(日) 午後 8:51
当時の黒澤明を投影したような主人公の描き方、それも「言葉で結論を出したがる」ところがないのがいいですね
これ以降の黒澤作品「影武者」「乱」などは、ハリウッドの資金と様式美に陥ってしまい、映画自体も緩慢ですが、「デルス・ウザーラ」 は、その前に制作されただけに、実にバランスのいい出来になっていると思います。
TBします。
2010/12/26(日) 午後 10:05 [ 8 1/2 ]
8 1/2さん
もしかして、黒澤作品の中ではマイベスト5に入るかもです。そうですね、「乱」でも「争いの虚しさ」をセリフで言っちゃいましたしね。そういう点では、この映画好きですね。大自然のなかでの人間の生きざまが面白かったです。
2010/12/27(月) 午後 11:48
イヴさん
TBありがとうございます。
2015/12/31(木) 午後 10:41