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秋刀魚の味 2010年12月27日、神保町シアター、「小津安二郎の世界」にて。 1962年度作品 監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 出演:笠智衆、岩下志麻、佐田啓二、岡田茉莉子、中村伸郎、北竜二、東野英治郎、杉村春子、三宅邦子、三上真一郎、高橋とよ、加東大介、岸田今日子、織田政雄、吉田輝雄 共に暮らす娘の婚期を気にかけながら生きる、元海軍将校のサラリーマン。やがて娘を嫁がせる彼の孤独と老いをあらわにした、名匠小津安二郎監督ならではのヒューマンコメディである。
全編ほのぼのとしたやりとりが続くなか、そこはかとない人生の厳しさや空しさなどが、達観した演出によりチラホラ見え隠れする。小津作品の常連である笠智衆の父親像も好演だが、娘役の岩下志麻の快活さも、それまでの小津作品とは違った味わいを醸しだしている。飲み屋で『軍艦マーチ』を聞きながら、ユーモラスに敬礼を交わし続ける人々のせつないシーケンスも、忘れがたい印象を残してくれる。なお、この作品は小津監督の遺作となり、翌年、60歳の誕生日に息を引きとった。(的田也寸志)
小津監督のラストフィルム。「秋日和」の母娘を父娘に設定を変更して、中年オヤジの友だちは同じパターンです。 「秋日和」は中年オヤジ3人組の会話が面白く、死んだ友人の妻と娘を結婚させようと遊び心いっぱいの楽しい映画でした。 この映画も中年オヤジ3人組(笠智衆、中村伸郎、北竜二)の会話は楽しく、割烹の女将(高橋とよ)をおちょくるところも同じです。 父親が笠智衆ということで、娘を嫁がせる「晩春」にも似ています。 笠智衆は、最初は娘(岩下志麻)を嫁にやるつもりはまったくなかった。 しかし、笠智衆の恩師のひょうたん(東野英治郎)が娘(杉村春子)を便利に使ったため嫁がせるのを遅れたことを悔むのを聞きました。 ひょうたん(東野英治郎)と娘(杉村春子)の親子のよそよそしさ、いやな感じがします。 この映画の中のユーモア溢れるアットホームな雰囲気が、この2人にはありません。 その嫌な感じを察知した笠智衆は焦って、娘の相手を捜すことになるのです。 ラスト、娘を嫁がせた夜、「ひとりぼっちか」と呟くが、「晩春」の鬼気迫る孤独感はそこにはありません。 一人ではありません。 息子が優しく声をかけてくれているのです。 小津監督はどこか余裕をもって、自分自身が楽しんで映画を作っているようにも思えるのです。 戦友の加東大介を登場させ、懐かしく軍艦マーチに合わせて敬礼したりして。 晩年の映画「お早う」「浮草」「小早川家の秋」「秋日和」。 子供を主人公にした戦前の映画のような話、昔のリメイク、死ぬことを達観したかのような映画、そして友人たちとの楽しい会話。 「晩春」や「東京物語」といった研ぎ澄まされたシビアな映画作りはここにはない、 「老い」を感じながら、それでも、楽しみながら、死ぬ時は死ぬという生き方を映画の中でも描いているように思える。 この点が晩年の黒澤監督の視点とは、まったく異なる。 いや、小津監督もこの時代からすると浮世離れした小津ワールドを楽しんでいるだけだったのかも。 岡田茉莉子のはっきり言う役柄が面白い。「秋日和」も楽しかったが、コメディエンヌの才能があったんですね。 この特集で11本を鑑賞、小津作品は26本鑑賞。
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若い頃は相も変わらずと思っていましたが、「晩春」に比べてユーモアがあり、また62年当時のモダンさもあって、これはこれでいいですね。老いにも達観したようなところがあります。かつての謹厳な漢文の先生も今やしがないラーメン屋の亭主でその娘も行かず後家でかつての魅力がないのは人間のありようを示していると思いました。
出てくる電車はどうも東急池上線のようですね。私がかつて通勤に利用した路線ですが、利用当時とあまり変わらない型式ですが、塗装は全く違いますね。
2011/1/8(土) 午前 10:18 [ SL-Mania ]
SL-Maniaさん
私も同じ感想です。若い頃はあまり小津作品(そんなに観ていなかったですが)は、あまりに温和な話ばっかりで、激しい映画の方が好きでした。この歳になり、こういう映画も味わい深いと思うようになりました。そうですね、人のありようですね。実際にはなかなか思うようにならないことも多いですが。
2011/1/8(土) 午後 1:41
シーランカスさん、なかなか思うようにならないものだということを盛んに示したのが小津作品です。「一人息子」「東京物語」などは親の嘆きや本人の苦しみがもろに出ていますね。漢文の先生の娘だって若い頃はどこへ嫁ぐかというくらいの娘だったのではないでしょうか。そう言えば「麦秋」のヒロインの母親の嘆きに繋がりますね。そういう悲哀もユーモラスなやりとりで包んでいるのが、本作ではないでしょうか。
2011/1/8(土) 午後 4:12 [ SL-Mania ]
これも好きな映画です。劇場でたくさん鑑賞できて羨ましい限りです。後期の小津作品には温もりの中にゆとりと遊び心とがありますね。晩年の黒澤を例に出されているのは非常に分かりやすい比較だと思います。
2011/1/9(日) 午前 7:58
SL-Maniaさん
親として子供に対してできることはしてあげることは大事かなと。ただ結果として何が幸せなのか、結局なるようにしかならない気がするのです。ただ小津監督はユーモラスな部分があるのでまだ希望の部分を残しているようにも感じます。よくわからないですが。
2011/1/9(日) 午後 2:01
ヒッチさん
小津作品で現存している最古の「若き日」からこのラスト映画までずいぶん一気に観ました。戦前〜戦後〜1962年までの間に監督の作風が変化しているのを見れたことが面白かったですね。
2011/1/9(日) 午後 2:54
小津の映画は、いい年のとり方をしているなあ、と思います。
ユーモアがあり、好々爺になる直前で死。
黒澤は、最晩年、小津の映画を繰り返し観て、このような余裕のあるユーモラスな作品(『まだだあよ』など)を試みたようですが、成功しませんでしたね・・・
2011/1/10(月) 午後 2:07 [ 8 1/2 ]
8 1/2さん
確かにこの映画なんか観ると、ゆったりと映画を作っている気がしますね♪ もともとユーモアが好きな親爺なんでしょうね。中井貴恵に来た年賀状に楽しいイラストが書いてあったのを見たことがあります。そうですか、黒澤監督は尊敬される父親像を根底に最後まで映画で見せようと力技で走ったのがいけなかったです。
2011/1/10(月) 午後 9:43
岡田茉莉子と佐田啓二の夫婦が面白かったです。
完全にカカア天下で。
2011/2/17(木) 午後 6:33 [ oduyasu ]
oduyasuさん
岡田茉莉子はコメディセンス抜群ですね。気弱な佐田啓二とのコンビがいい味出していましたね。
2011/2/18(金) 午前 0:05
同級生がかつぐシーンが実に面白かったですね。
東野英治郎が損な役柄を、上手に演じていて感激しました。
秋刀魚は、苦いが味わうと美味しい魚ですね。
秋刀魚のような映画だと思いました。
TBさせてください。
2012/11/20(火) 午前 9:34
ギャラさん
小津監督のほのぼのした独特のユーモアの味はなかなか出せるものではないですね。誰にもマネできない個性だと思います。東野英治郎の役は難しかったでしょうね。教え子たちなので、ほんとはもっと立派に振るまいたかったと思うのですが、あまり卑屈になってもいけないし、でも娘のことで後悔とか、経済的にもどうなのか、複雑な心境を醸し出していました。秋刀魚は苦くて大人になって美味しさがわかる魚のような気がしますね。
2012/11/20(火) 午後 11:17