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スモーク 2011年1月15日、恵比寿ガーデンシネマ「ベストセレクション」にて。 1995年度作品 監督:ウェイン・ワン 原作:ポール・オースター 脚本:ポール・オースター 出演:ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、ハロルド・ペリノー・ジュニア、ストッカード・チャニング、フォレスト・ウィテカー ニューヨーク、ブルックリンのタバコ屋に集まる人々の日常を、過去と現在、嘘と本当を織り交ぜながら描いた味わい深い人間ドラマ。14年間、毎朝同じ時刻に店の前で写真を撮り続けているタバコ屋の店長オーギーのなじみ客で作家のポールは、家に帰る途中、危うく事故に遭いそうなところを黒人少年ラシードに助けられる。その数日後、ラシードがポールの家にやって来る。彼を2、3日家に置くことにしたが、ラシードの語る自分の正体はどうやら嘘らしい。一方オーギーの店には18年前に別れた元恋人のルビーが現れ……。現代アメリカ文学を代表する作家P・オースターが、W・ワン監督のために書き下ろした作品。(eiga.com解説より) 東京の恵比寿ガーデンシネマが休館になるようです。 実は自分は5年前に東京に来たので、この映画館には2回しかお邪魔していません。 というか、昔の日本映画ばっかり観ていたので、お邪魔する機会がなかったのです。 観た映画は「おとなり」と「ミックマック」。 2本とも大好きな映画です♪ ニュースから抜粋。 恵比寿ガーデンプレイスのミニシアター「恵比寿ガーデンシネマ」が、来年1月28日に休館することを発表した。ドキュメンタリーやアート系フィルムを多数上映してきたが、運営会社である角川シネプレックスの撤退を理由に17年の歴史に幕を閉じる。現在、複合型映画館(=シネマコンプレックス)が日本の映画興行の主流となっており、様々なニーズに応えにくい単館系映画館は休館が相次いでいる。 同館を運営する角川シネプレックスによると、「シネコンでもインディーズ映画が上映されるようになり、独自性が出しづらくなった」としており、近年では観客動員が伸び悩んでいたようです。 1つのスクリーンの座席数は232人。 あまり洋画は観ていなかったので、偉そうなことは言えませんが、ミニシアター系ではちょっと大きく、観客確保が厳しかったのかもしれません。 ともあれ、映画館が一つなくなるのは、映画ファンにとっては、とても残念なことです。 休館ということなので、閉館ではないから、何かしら工夫をしてもらって、また復活してほしいです。 恵比寿ガーデンシネマのベストセレクションということで、その中の1本、「スモーク」です。 この映画、タイトルさえ、まったく知りませんでした。 味わい深い、実にいい映画でした。 派手なアクションシーンもなく、過激な映像もなく、静かに淡々と普通の生活をする人たちのちょっとしたお話です。 そんな些細な映画なのに、心に沁みる映画です。 う〜ん、この映画の良さを伝えるために、ことばにすることが難しいです。 なんかウソくさくなりそうなのです。 まあ、とにかく書いてみます。 大好きなシーンがあります。 タバコ屋の店長オーギー(ハーヴェイ・カイテル)は、1976年から14年間、毎朝7時の同じ時刻に店の前に立ち、カメラでそこから見える写真を撮り続けています。 4000枚にも及ぶモノクロームの写真。 横断歩道を歩く色んな人たちの姿が一枚ずつ画面に映し出されます。 この絵を観ているだけで、何故か感動します。 数年前に妻を強盗に銃で撃たれ、いまだにその傷を負っている店の常連で作家のポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)が、たまたま、その写真を見ます。 ポールはどんどんめくっていきます。 オーギー(ハーヴェイ・カイテル)は言います、「もっとゆっくり見ろ」と。 同じ写真は1枚もないみたいなことを言います。 同じ時間で撮っているのに、同じ写真はない。同じ人物もいない。 その4000枚の写真の中に、ポールの妻が映っているのを見つけます。 オーギー(ハーヴェイ・カイテル)は、ちょっと頭の弱い従業員に言います。 「分かったと思っていても、ほんとは分かっていないことがあるんだ。分かるか」。 その従業員は分かったと言いますが、実は分かっていませんでした。 その他にも、黒人少年と蒸発した父親との話、オーギーと18年前に別れた女とその子供の話。 ラストはオーギーのクリスマスストーリー。 本当の話なのか、ウソ話なのかもよく分からない。どっちでもいいのだ。 この時、オーギーは、その家のカメラをつい持って帰ってしまう。 いいことをしたテレ隠しでカメラを盗んだと思います。 人はいいことをした真逆のことを不思議に考えます。 だから、カメラを盗むことで、いいことと悪いことがイーブンになる。 人の複雑な感情を、さらりと描いています。 無理はしていない、押し付けもしない、ごく普通の生き方が、どこかで誰かと繋がっています。 その人は気がつかないけど、誰かを助けているかもしれない。 どこかで誰かに助けられているかもしれない。 そんなことをちょっと感じさせてくれる映画でした。 オーギーの「煙の重さって知ってるかい」もいいです。 ハーヴェイ・カイテルは、ちょい悪のおっさんで、またいい笑顔をしているんですね。 トム・ウェイツのエンディングの歌もハーヴェイ・カイテルにピッタリです。 まあ、とにかく観てください、お薦めです。 追記
もしかしたら、カメラを盗んだというエピソードは、ポール・ベンジャミンに写真を見せた偉そうな自分への照れ隠しかもしれません。カメラを盗んだというのはウソなのです。偉そうな自分を物盗りに仕立てることで相手とイーブンにするための方便なのです。これは小説「悪人」の母親に対して主人公が金をせびることと同じ気持ちではないかなと勝手に思いました。(考えすぎかな?) |

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あきりんさん
いや〜、ほんと後からこの映画の奥深さを感じます。日本的な、きめ細かい感情の揺れ動きが垣間見えますね。この映画の原作のポール・オースターが監督している映画があるようですね。私も観てみたいです♪
2011/1/23(日) 午後 9:20
SYOWさん
コメントありがとうございます♪ 実にいい映画でした。後からじんわりくる映画です。表面的なセリフとは別にもっと奥深い気がしました。
2011/1/23(日) 午後 9:38
細かいところ忘れてますが、眼の見えないおばあちゃんと孫のかわりに過ごしたエピソードが良かったですね〜。
ラストの曲と二人頬を寄せあったモノクロの写真には言葉にならない感動を覚えました。
もう一度再見したい作品です。TBお返しさせてくださいね。
2011/1/24(月) 午前 6:30
pu−koさん
すいません、昔のレビューにコメントして、昔の映画の細かいところは忘れていますよね。ラストの孫になったシーンですね。モノクロの映像にトム・ウェイツの歌がこの映画の自然な感じや不器用さにピッタリでした。
2011/1/24(月) 午後 8:55
じんわりじんわり〜〜の映画でしたね。
私もまた見たくなりました。
あ・これってガーデンシネマで上映された作品だったのですか
私はあそこで一体何本見たことか・・
ほんと残念でなりません。
TBさせてくださいね。
2011/1/24(月) 午後 10:08
cartoucheさん
じんわり、ボディブローのように効いてきますよね〜、この映画。そうみたいですよ。御贔屓映画館だったんですね。東京のミニシアターが何件か閉館になっていますね、ほんと残念です。
2011/1/24(月) 午後 11:58
嘘なのか、本当なのか・・・わからないですけれど、私は父親が寝る前に話してくれるお話を思い出しておりました。
今思うと嘘の話もかなりあったのかもしれませんけれど、心を掴むお話は、心和むし、嬉しいんですよね ^^
トラバさせて下さいませ。関係ないこと書いてしまいました。。^^;
2011/1/25(火) 午後 10:47
ご訪問ありがとうございました。追記のとこ・・そそ、嘘かもしれません・・嘘?ほんと?どっち?と考えたけど観終えたときはどっちでもいいじゃんという気持ちになりました。でも優しい嘘ならいいですよね。いい映画ですよね。トム・ウェイツの曲がまたよくて・・。
この監督さんの映画は優しい作品ばかりです。TBお返ししますね
2011/1/25(火) 午後 11:52
恋さん
いいお父さんですね♪ 子供の頃に聞いた話は、刺激的で印象に残るものなんですよね。自分が子供たちに話したことと言えば「のろいの自転車」とか、「あくまの爪」とかしょうもない話ばかりでした。もう覚えてくれていないだろうな。
2011/1/26(水) 午後 8:58
らぐなさん
そう、どっちでも、この映画のよさに変わりはありませんよね。色んな「うそ」が人を元気にするなら、その方がいい。また観たくなる映画です。不思議ですね。あんまり知らないんですが、ダミ声を聴いてエンドロールを観て、やっぱりトム・ウェイツだと嬉しくなりました。ウェイン・ワンの他の映画も観てみたいです。
2011/1/26(水) 午後 9:14
初めまして。コメントとTBありがとうございました。
そうなんですよね、恵比寿ガーデンシネマが休館に・・・ちょうど昨日が最終日で最後の映画がこの「スモーク」だったんですよね。行きたかったんですけど仕事で無理だったので残念です。
この映画の良さは何とも言いがたいものがあります。私はこの映画をきっかけに原作のポールオースターにはまり、ほとんど彼の作品を読みました。
2011/1/29(土) 午後 8:03
beabeaさん
こちらこそコメントありがとうございます。昨日の「スモーク」ももう一度観ようか悩みましたが、この言いようのない感動が薄れるのがいやでやめました。自分も今、ポールオースターの「幽霊たち」を読み始めたところです。オススメは何でしょうか?
2011/1/29(土) 午後 10:43
大好きな作品です
監督がウェイン・ワンで、舞台はNYのお話で確か日本が資本出してると思うんですが映画は国境を越えたと思える秀作です。
2011/1/30(日) 午後 10:50 [ きらきらくん ]
くろさわさん
起承転結の映画ではなく、市井の人たちのごく普通の生活に、なぜか感動してしまうんですよね。じわ〜と余韻が残る映画ですね。
2011/1/31(月) 午後 9:34
これまでずっとブログをお休みしていたにも関わらず、久々にふと戻ってきたところコメント&TB・・本当に嬉しかったです笑☆ありがとうございました!私もモノ写真のシーンは大好きです&シーラカンスさんの記事は凄く深く考えさせられました。「なるほど、そういった捉え方もあるんだ〜」と改めて実感&とても面白い内容でした☆他にもたくさんの記事を書かれていて、また色んな映画を見たくなりました笑。新たなキッカケ&この出会いに感謝☆また遊びに来ますね♪('v')/追伸:TB&ポチさせて頂きました;)
2011/2/14(月) 午後 7:47 [ - ]
ライさん
わざわざコメントいただいて、ホントにありがとうございます♪ 素直にそう言っていただくとめっちゃ嬉しいです(鼻高々)。自分は素直ではなくゆがんだ性格なので、こんなひねくれた感想になっています。それに拙いことばしか出てこないので反省しきりです。お暇な時に、また寄ってやってください。この映画、ボディブローのように効いてきますね。今ポール・オースターの本を読み始めています。
2011/2/14(月) 午後 11:02
恵比寿ガーデンシネマ最後の上映作品でしたねー
これが同映画館の歴代2位のヒット作。愛すべき映画♪
こんな映画をもっと世に出して欲しいですね〜
TB&ぽち
2011/4/7(木) 午後 3:35
ポニーさん
ほんと愛すべき映画ですね。静かに心に残るマイフェバリットシネマです。もう一度みたくなる映画です。
2011/4/8(金) 午前 1:00
「この映画の良さを伝えるために、ことばにすることが難しいです。
なんかウソくさくなりそうなのです。」
本当にその通りの映画でした。
でも、この記事は、その良さを十分に伝える素晴らしい記事、「傑作!」です。
「無理はしていない、押し付けもしない、ごく普通の生き方が、どこかで誰かと繋がっています」。
そんな普通の日々を、三人は力まずに、さりげなく演じていました。
脚本の完成度の高さを感じました。いい映画でした…
「追記」に書かれた内容、そうかもしれないと思わせます。
そういう心の「機微」を感じ取れるshirakansuさんの感性、
それが記事の中に滲むところが、shirakansuさんのブログのたまらない魅力です♪
「Smoke」を観て、記事にして、色々な方たちと気持ちが繋がって、
本当に良かったと思います。
2012/3/31(土) 午前 5:36
alfmomさん
さりげないけど、ちゃんと心に伝わってくる、ほんとにいい映画でした。この歳だからこそ、この映画の良さがわかることに感謝ですね。「Smoke」がお好きな方が多いので、同じ気持ちを共有できて嬉しく思っています。
2012/3/31(土) 午後 3:04