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ルイ・マル「鬼火」

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鬼火
2011年1月30日、ケイズシネマ「ルイ・マル特集」にて。

1963年度作品
監督:ルイ・マル
脚本:ルイ・マル
音楽:エリック・サティ
出演:モーリス・ロネ、ベルナール・ノエル、ジャンヌ・モロー、アレクサンドラ・スチュワルト

アルコール中毒で入院しているブルジョアの男アラン(モーリス・ロネ)。妻はニューヨークから帰ってこない。アランは病院を出てパリへ赴き、平凡な生活に満足している親友と再会し、エヴァ(ジャンヌ・モロー)ら芸術家グループが麻薬に安らぎを見出す姿などを空しく見送る。そして病院に帰ってきた彼は拳銃を取り出し…。ひとりの男が自殺するまでの48時間を克明につづった名匠ルイ・マル監督の傑作。「人生の歩みは緩慢すぎる。自分の手で早めねば」と死の選択をする彼の姿を非難するのは簡単だが、終始簡潔で冷徹、そのくせ心理的に緻密な演出タッチからは、それだけではすまされない人生の闇と空しさを凝視してしまった人間の悲劇と孤独を痛感させられてしまうのだ。1963年の作品で、ヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞受賞など各方面で評価を得ているが、題材がシリアスすぎたせいか、日本での公開は77年と大幅に遅れた。(増當竜也)

主人公は、何故自殺しようとするのか。
その理由こそがこの映画の最大の興味なのです。
歳をとった私が、この映画の30代の主人公を観てその理由を捜すのは苦難の道でした。

身勝手な推測です。
脚本を書いている当時31歳のルイ・マルは、もう若くもなく、無茶をしていた時代も過ぎて、倦怠の時期であり、虚脱感に苛まれていたのではないでしょうか。
年代の狭間に陥り、だから主人公に「生きていることは緩慢だ」という台詞を書いているような気がする。
平凡な生活に浸り情熱を失った友人への批判は、主人公の高慢さの表れか。
主人公はどこか鼻もちならない。
昔はすごかったのにと言う知り合いの噂話に、自尊心を傷つけられ、それでもハッタリのように、乱暴な行動に出る情けなさ。

金もなく、侮辱されていると考え、自尊心だけが強く、それでいて人からの愛に飢えている。
「あなたたちは私を愛していない。だから私もあなたたちを愛していない。」といった遺書に、本当に自分を愛している人はいないと考え、その孤独感、絶望感から銃を撃つ。

若い頃に観たのであれば、その心情に傾いたかもしれません。
しかし、物事が見えてしまい、純粋さを失った今の私には、そんな主人公の気持ちになかなか共感はできないのです。
映画はそのままその時代で止まっていて、私が歳をとり、過去の映画の若い主人公を観るのも、不思議でどこか残酷な気もする。

全編に流れるエリック・サティの音楽は、不安な主人公を落ち着かせる心地よい音でした。
個性の強いテーマや音の使い方など、自由で斬新な映画作りは、今までにない新しい波を感じさせます。

閉じる コメント(10)

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高校生の時に「死刑台のエレベーター」で衝撃を受けて以来、
ルイ・マル監督は、私にとっては特別な人です。
と言っても、そんなに作品を見ている訳ではありませんので、
もっともっと見ようと思っています。
本作も未見です。
簡潔な記事、作品にとても興味が湧きました。

2011/2/4(金) 午前 9:52 alf's mom

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alfmomさん
日本公開が1977年とは知りませんでした。地味な映画です。「死刑台のエレベーター」「恋人たち」と、この映画を観て、この監督のセンスを感じますね。

2011/2/4(金) 午後 10:44 シーラカンス

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「ヌーヴェル・ヴァーグ」と呼ぶに相応しい一作ですよね。(笑)
「負」のニオイが全編に立ち込めた傑作画と思います。
TBお返しいたします。(・ω・)bグッ

2011/2/13(日) 午後 1:52 Kaz.Log

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kazさん
当時考えられない斬新なテーマは、既存の映画作りに収まらない、まさに「ヌーヴェル・ヴァーグ」を代表する映画なのでしょう。

2011/2/13(日) 午後 11:16 シーラカンス

この作品の主人公の高慢さには共感出来ないものの、死に取り憑かれながら、心のどこかでは、救いの手を求めているような、それでいて、そんな自分を嫌悪する様子は、切なくもありました。
『死刑台のエレベーター』もそうでしたが、監督は独特の緊迫感と、さすらうような孤独感を上手く描く人ですね。
TBさせてくださいね。

2011/8/12(金) 午前 7:20 pu-ko

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pu−koさん
寂しいのに高慢で素直になれなくてわがままで、人間の色んな面を見たような気がします。この時代のルイ・マルには突き放したような切れがありましたね。

2011/8/12(金) 午後 9:26 シーラカンス

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映画はいつまでもそのままの状態でそこにありますが、わたしたちは歳をとって世界の見方も変わっていきますよね。この映画は若い時に見たらもっと共感したかもしれませんね(笑)

2012/2/8(水) 午前 9:36 瀧野川日録

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トリックスターさん
大林監督のことばを思い出します。映画は時間の芸術だと。ニュアンスは違いますが、自分の年代と映画と、ある意味残酷ではありますね

2012/2/8(水) 午後 10:34 シーラカンス

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確かに、ルイ・マルの初期作品は、意欲的に音楽と映画の関係性が濃厚な映画が多いですね。
私も、この映画を見た後に、サティの音楽が耳から離れなかったです。
TBしますね。

2012/4/22(日) 午前 9:58 [ ひろちゃん2001 ]

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ひろちゃんさん
まだサティがそんなに有名になっていなかった時代でしょうね。ルイ・マルは、マイルスといい、音楽への造詣が深い監督ですね。この映画は、青年の挫折と孤独でしょうか。死の恐怖をまだ分かっていない。

2012/4/25(水) 午前 0:01 シーラカンス

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