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黒澤明「天国と地獄」

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天国と地獄
2011年4月2日、新文芸坐「黒澤明を語り継ぐ新たな100年の始まり」にて、2回目の鑑賞。

1963年度作品
監督:黒澤明
原作:エド・マクベイン
脚本:小国英雄 / 菊島隆三 / 久板栄二郎 / 黒澤 明
音楽:佐藤 勝
出演:三船敏郎、山崎 努、香川京子、仲代達矢、木村 功、三橋達也、志村 喬、佐田豊、石山健二郎、加藤武、伊藤雄之助、中村伸郎、田崎潤、藤田進、土屋嘉男、三井弘次、千秋実、北村和夫、東野英治郎、藤原釜足、沢村いき雄、山茶花究、西村晃、大滝秀治、名古屋章、

横浜の高台に豪邸を構える製靴会社重役権藤(三船敏郎)の運転手の息子が、重役の息子と間違われて誘拐。犯人は3000万円を持って特急こだまに乗るよう命令するが…。
エド・マクベインのミステリ小説『キングの身代金』を、黒澤明監督が翻案して映画化した社会派サスペンス映画の金字塔。やがて人質は解放され、警察(仲代達矢ら)の必死の捜査が始まるにつれ、明らかになる誘拐犯(山崎努)の思想。地獄のような薄汚れた町から、天国のような高台の豪邸を見上げていた彼の屈折した思いが、とりかえしのつかない事件をうんでいくのだ。その意味では単なるサスペンス映画ではなく、人間の内面の業に鋭く迫った、黒澤映画ならではの味わいに満ち満ちている。モノクロ映像のなか、一瞬カラー着色がほどこされるショッキング・シーンは観てのお楽しみ。後に『踊る大捜査線』映画版で、このシーンがパロられていた。(的田也寸志)(amazon解説より)

映画が終わってから、仲代達矢さんと元・黒澤プロ プロダクションマネージャー野上照代さんとのトークショー。
楽しい裏話が聞けてラッキーでした。

戸倉警部のエリート性を出すがゆえに、監督から言われて少しおでこを広めにするために生え際を剃ったとのこと。
衣装合わせ、カメラテストなど1カ月もかかったらしい。
見た目からその役のイメージに拘った黒澤監督らしいエピソード。
ヘンリー・フォンダでやってくれと言われたともおっしゃっていました。
素朴な正義感のイメージでしょうか。

「椿三十郎」の室戸半兵衛のカツラは海坊主みたいなので嫌がっていたとか。
ラストシーン、血を出すポンプのせいで体が浮くので踏ん張った話。
特急こだまは映画のために走らせたんですね、知りませんでした。
失敗するとこだまを走らせるのにまた三千万円かかると脅かされ、俳優陣は必死だったようです。
無事撮影が終わり、三船敏郎さんの奢りで食堂でビールを飲んでいると、最後尾の8ミリ撮影がうまく撮れていないとかで、一瞬フリーズ状態になった話とか。

また、黒澤監督は普段でも「正義」の人だと。
なるほど、映画の主人公権藤と同じか。

有名な特急こだまでの身代金の受け渡しのアイデアが素晴らしい。
前半の権藤邸での舞台劇のような緊迫溢れるシーン。
ワンシーンを2台のカメラで撮って、ワンカットにせず、敢えて編集で繋ぎ、流れを切らさない方法。
車の泥から魚の成分を発見したり、電話のバックでかすかに聞こえるパンタグラフの擦れる音から江ノ電を発見したり。
犯人の黒メガネに光が当たるように見せたり。
カバンを燃やすと赤色のスモークが出たり。
横浜のダンスホール、ヤク街のモノクローム。
江の島の別荘に乗り込む緊張感溢れる時の南国ムードの緩いミュージックの使い方が憎い。
どこかで聴いたことがあると思ったら、岡本喜八監督の「殺人狂時代」にも使われていた。
もう、映画を作るための細部への拘りが嬉しくなります。

「誘拐するような悪いヤツは死刑だ」と戸倉警部(仲代達矢)の執念。
「権藤さん(三船敏郎)の気持ちを思って、捜査しろ」と。
権藤は会社の主導権を取るための株式取得に用意したお金を苦悩の末、運転手の息子の身代金に提供した。
権藤と戸倉警部は、黒澤監督の「正義」感溢れる性格設定の分身。

誘拐犯だと懲役何年しかならないため、殺人を犯すまでおとり捜査をする。
悪いヤツは裁かれるという強引さ、死刑にするためのいやらしさ。
これが本当に「正義」なのか、疑問です。
ラスト、犯人が金網越しに叫ぶ憤りを写すシーンが感情をそそられて、よけいにこの映画を混乱させている気がします。
「正義」が、実は「正義」ではなくなった瞬間。
監督の「正義」が、不正に見えてくる。
もしかしたら、もうこの時代であっても正義を貫けない時代になりつつあるのかも。
だから次に理想郷のような「赤ひげ」を撮るしかなかったのでは、とは独り言。

閉じる コメント(22)

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ちょっと前の新文芸座で観ました。
8月は新幹線で静岡に往っており、酒匂川の鉄橋は今でも映画通りと思いながらみていました、今は工場が林立していますが。
江ノ島の別荘の夜、深夜放送の音楽は、いかにもあの時代の深夜音楽放送と言う感じでしたが、どうなのでしょうか。
それにしても、面白い映画ですよね。

2011/4/6(水) 午後 7:47 [ koukou ]

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周りの「騒音」も全く耳に入らず、映画に没頭して
見入った作品です。
日本映画って、こんなに面白かったんだと、再認識させた作品の代表格。
展開も、配役も最高〜でした。

トークショーが聞けて良かったですね。どれも面白いエピソードばかりです。
あの煙の場面、「パートカラー」だったと言うことにも気づかないほど
「心が映画に貼り付いた状態」で見ていました。

2011/4/6(水) 午後 8:17 alf's mom

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あきりんさん
通常の車内撮影でもできそうな気がしたんですが、国鉄が厳しかったんでしょうかね。1発撮りの緊張は凄かったでしょうね。

2011/4/6(水) 午後 10:23 シーラカンス

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ぴんじょんさん
サスペンスものとしては面白かったんですが、人物造形はどうなんでしょうか。良くも悪くも黒澤監督の「正義感」がポイントですね。『悪い奴ほどよく眠る』ももう一度見直したいです。

2011/4/6(水) 午後 10:27 シーラカンス

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初見は渋谷宝塚という映画館でのリバイバル上映でした。今はスターバックスが入っているビル(交差点にある)になってしまっています。手に汗握る映画でした。後で批評を見たら仲代達矢の警部が不気味とありました。罪状を決めつけ「これで死刑だ!」と言って逮捕するのは確かにそうではありますね。犯人役の山崎努もこれでブレイクしましたね。後年、海外でこれを観ざるをえない立場になって、反省することが多く、楽しめなかったと語っていたのを覚えています。最後の三船とのやりとりがオーディション課題だったそうです。

2011/4/6(水) 午後 10:33 [ SL-Mania ]

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koukouさん
誕生100年の新文芸座ですね。何故また黒澤監督の特集なのかがよくわからないんですが、とにかく観れてよかったです。酒匂川の鉄橋というところなんですか、こだまから見えないので他人の家を壊したという話は有名ですよね。すいません時代がちょっと違うので、オールナイトニッポンの軽快なミュージックは覚えているんですが。面白い映画には間違いないのですが。。。

2011/4/6(水) 午後 10:59 シーラカンス

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alfmomさん
見ごたえ十分でとても面白い映画でした。まあこれほどの細部までよく考えたもんだと思います。アイデアは抜群ですね。「心が映画に貼り付いた状態」とはalfmomさんが魅了されたお気持ちが伝わってくるようなコメントですね。「パートカラー」はかなり苦労されたと聞いています。

2011/4/6(水) 午後 11:06 シーラカンス

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黒澤監督の娯楽映画の真骨頂でした。

この映画をヒントに、誘拐事件が起き、戦後最大の事件となってしまいました(「吉展(よしのぶ)ちゃん」誘拐事件)。

この映画では、仲代(戸倉警部)が「権藤さんのために、それこそ鬼になっても犯人を捕らえるんだ」というセリフにしびれました(笑)。

TBお返しさせてください。

2011/4/7(木) 午前 0:39 fpd

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SL-Maniaさん
ツタヤが入っているビルですね。山崎努はあまり登場シーンは少ないですが、雰囲気がありました。ラストの熱演は凄かったです。照明のライトのせいで、金網が熱くなっていてヤケドをしたらしいですよ。

2011/4/7(木) 午後 10:44 シーラカンス

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fpdさん
アイデアは抜群に面白かったですね♪ 「吉展(よしのぶ)ちゃん」誘拐事件ってありましたね。この映画の模倣犯が多く出現したとか。正義派の仲代(戸倉警部)ですね。

2011/4/8(金) 午前 0:44 シーラカンス

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これ、黒澤作品の良心的作品のラストだと思っています。
サスペンス、面白いですね。「7センチ四方のカバン(だったかな)の身代金をいれて、こだま…号にのれ」て山崎の仕掛けに反応する仲代、当時の2等車(今のグリーン車)で、誘拐した子供の無事を見せる代わりに身代金を三船に持参させろ」…仲代は、乗客に成なりすまして現行犯逮捕を試みるが、当時の車内電話で、「子供は今渡る橋梁の河川敷の上に”生きて”いる。それを確認したら、トイレの上部空き窓から車外へ投げろ」(そのサイズが、7センチ四方)。まんまと山崎にやられる仲代、よく出来たサスペンス仕立ですね。
黒澤は、このシーン(根府川橋梁)撮影に、民家が邪魔であったので、撮影のとき住人に一時退去させて、撮影後、民家を建て直したそうです。
煙突だけ(やったかな)カラーのは、ビックリものですね。

2011/4/10(日) 午前 3:07 [ moemumu ]

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追レスですがあ、、、。
「こだま」は特別仕立で走らせたのではなく、実際の時刻表で走行するこだま2等車全席を撮影の日のとき全席買い占めた、だったと思います。
身代金受け渡しのトリックは、黒澤組助監督に”発案”させたものだったと思います。
当時の国鉄に、こだま号の室内設計を”しつこく”聞きまくり、トイレのアイデア(全部エアコン電車だったので、走行中は車外と隔離されている、、、と思いきや、トイレ上部のみ外部とのやり取りできるスペースがあるのを”発見”して、トリックに使った。オモロイサスペンス仕立です)
国鉄からは、「何するねん」と疑義持たれ、家を取り壊された住民には、その”説得”にかなり時間かかった、堀川助監督(だったかな)らは大変だったと思います。ラストの山崎の演技、上手かったですね。

2011/4/10(日) 午前 3:29 [ moemumu ]

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moe*u*uさん
まあ、こだまの件は、よくぞ考えたと拍手ものですね。民家も壊すという話もすごい話ですよね。ラストの山崎努は最大の見せ場でしたね。

2011/4/11(月) 午後 8:17 シーラカンス

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moe*u*uさん
ほう、買い占めたのですか、これもまたすごい話だ。すべてに大胆でアイデアに満ちていて、それと黒澤さんの正義が絡まっているんですね。

2011/4/11(月) 午後 8:27 シーラカンス

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トークショーが聞けたとは素晴らしいです。
仲代さんもヘンリー・フォンダにさせられたとは大変だったでしょう。第二こだまの撮影に3000万円ですか。当時の値段ですからね。
久しぶりに、緊迫感を楽しみました。
TBさせてください。

2015/8/28(金) 午後 3:31 ギャラさん

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ギャラさん
久しぶりに読み返してみて、面白い裏話でした。おでこを剃った話もユニークでした。こだまの話も凄い。この映画も黒澤作品によく出てくる良心と悪魔の戦いの映画でした。

2015/8/30(日) 午後 1:32 シーラカンス

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この作品の仲代さんはヘンリー・フォンダのイメージだったのですか(笑)確かにあまり感情的にならず正義感の強いタイプのような気がしますね
煙突の煙だけがカラーの撮影は見事なアイディアだと思いました
犯人もあんな近所で鞄を燃やすことないのにね(笑)

トラバお願いします♪

2017/4/18(火) 午前 11:30 ベベ

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> ベベさん
なかなか楽しい裏話が聞けてよかったです、面白いですね。つい近場ですませてしまったのが運のなさでしょうかね。よく考えられた緻密な映画でした。

2017/4/19(水) 午前 0:27 シーラカンス

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黒沢監督は正義漢ですよね。ロマンチストでもあると思います。
「ハンニバル 羊たちの沈黙」や「セブン」のような映画は撮れませんでした。その点をミシマが「思想は中学生並み」と言ったんだと思います。

2018/10/11(木) 午後 8:31 瀧野川日録

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> 瀧野川日録さん
昔の時代ならそれでもよかったかもしれないですが、複雑な何が正義かわからない時代には、監督の良さは薄れてしまう。山本周五郎の世界は合っている気がします。

2018/10/11(木) 午後 10:14 シーラカンス

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