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キャタピラー 2011年4月16日、新文芸坐「気になる日本映画達2010」にて。 2010年度作品 監督:若松孝二 脚本:黒沢久子、出口出 出演:寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、粕谷佳五、河原さぶ、篠原勝之、ARATA、地曵豪 第2次世界大戦中の日本。シゲ子(寺島しのぶ)の夫・久蔵(大西信満)にも赤紙が届き、勇ましく戦場へと向かったが、戦争から戻った久蔵の顔は無残にも焼けただれ、四肢を失っていた。村中から奇異の目で見られながらも、多くの勲章を得た久蔵は「生ける軍神」として崇められ、シゲ子は戸惑いながらも久蔵の尽きることのない食欲と性欲を埋めていく。やがて日本に敗戦の影が色濃く迫り、久蔵は自ら戦場で犯した悪行に苦しみ始める。(eiga.com解説より) 強烈な映画です。 なぜ、映画のタイトルは「キャタピラー」なんだろうかと疑問だった。 戦争に関係しているから戦車のことかと。 調べたら、「キャタピラー」には、「芋虫」という意味もあった。 なるほど、そういうことか。 ネタバレあります。 戦争で四肢を失い田舎に帰ってきた久蔵(大西信満)は「軍神」となった。 「生きる軍人の神さま」です。 勲章を3つと賞状、新聞にもその功績が記事になった。 勲章と賞状と新聞を眺める久蔵(大西信満)。 自分の価値観は褒めたたえられることだけ。 田舎の人たちは、立派な活躍に、崇め尊び拝んだ。 しかし、久蔵(大西信満)は四肢がないし、言葉もしゃべれない。 食べる、寝る、やる(セックス)の毎日。 食べる時、セックスの時の嬉しそうで貪欲な顔。 ああ、人間の本能だ。 軍神と呼ばれても、ただの普通の男にすぎない。 軍神ということばに踊らされている民衆。 妻のシゲ子(寺島しのぶ)は、戸惑い、苦しむ。 お国のためにこんな体にという反面、何故普通の体で帰ってくれなかったのか。 子供ができないことで役立たずと言われたことをお返しのように罵倒する。 軍神さまを見世物もようにリヤカーに乗せて凱旋する。 村人の拝む姿と貞節な妻を見せることでのストレス発散。 また、ある時は、これから毎日食べる、寝るという生活を2人でしましょと涙ぐむ。 これからの生きる希望が持てないシゲ子(寺島しのぶ)。 芋虫ゴロゴロ、軍神さまゴロゴロと歌う。 混乱するシゲ子(寺島しのぶ)。 軍神ということばに踊らされている主人公と妻。 その代わりに戦争の現実を背負わされた悲劇。 戦争が終わって、軍神さまは池に飛び込み自殺する。 戦争が終わって、軍神さまはどうなるのか、拝む村人はいなくなり、どういう生活をするのか、殺さずに敢えて、生かして戦後の軍神さまを見せてこそ、戦争批判の価値があったのではないかと、ふと思った。 それと、原爆投下の映像と元ちとせの「死んだ女の子」の歌が流れ、原爆での死者、アジアでの死者がテロップで流れるエンディングの唐突さはどうなんだろうか。 個人レベルからもっと大きな世界レベルの戦争批判、原爆批判を伝えたかったとは思いますが、私は最後まで、軍神にこだわり軍神で終ってほしかった。 個人レベルでの軍神さまを描くことで、戦争の愚かさは十分伝わったと思います。 寺島しのぶ、渾身です。
言葉にならないほど色んな表情を見せることのできる主役がはれる女優です。 すごい。 |

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寺島しのぶ、体を張っての演技。根っからの役者ですね。
2011/4/23(土) 午前 0:14
ほんとに強烈な映画でしたね。本編だけでなく、原爆映像、テロップなど、
すべてで戦争の悲惨さを訴えてきました。
そして寺島しのぶの熱演は、まさに女優魂でしたね♪。
2011/4/23(土) 午前 0:46
新聞で解説を読み、
ブログで色々な方のレビューを読み、
見に行くのは辛い…と思い、鑑賞しなかった作品です。
shirakansuさんの、思いが簡潔にまとまったレビュー、
とても参考になりました。戦争の悲惨は、戦場や戦中のみならず
あらゆる所にあったのだと思いました。
寺島さん、よくこの役を受けられましたね。
2011/4/23(土) 午前 8:02
もうなんと言うか、人間の本質を鋭く描きすぎていて、
単に"反戦映画"でくくれないないような気がしてしまいました。
私も敗戦以後の久蔵の姿を見てみたかったんですけどね。
それを描いてこそと思うのですが。
寺島しのぶの熱演は言うまでもありませんが、
「CGを使わず、頭を使った」という
「フォレスト・ガンプ」も真っ青な大西信満の苦労も
もっと報われてしかるべき?!
「キャタピラー」はもともと「芋虫」の意味なんですが、
日本語で「無限軌条」と訳される部分を使って動くさまが
芋虫に似ているので、その名前がつきました。
それにしても、新文芸座の企画、注目ですね。
時間があればぜひ行きたいと思っていたのでしたが。
2011/4/23(土) 午後 2:59 [ 鉄平ちゃん ]
若松映画は好きになれません、この映画も未見です。
映画の快楽がないような感じです若松映画は、楽しめましたか?
終戦まで、軍部は怪我人を返さずに、療養所に閉じ込めていたという話を聞いたことがあるのですが。
2011/4/23(土) 午後 4:34 [ koukou ]
もっさんさん
寺島しのぶのいくつもの表情、渾身そのものです。
2011/4/23(土) 午後 9:33
ふぁろうさん
強烈な映画でした。何故今この映画を撮ろうと考えたのかが気になります。寺島しのぶの女優魂、ぴったりですね。
2011/4/23(土) 午後 9:40
alfmonさん
戦争は色んな形で色んなところに、綺麗ごとではなく現実の生活に襲いかかっていたのだと。寺島しのぶのプロ根性ですね。
2011/4/23(土) 午後 10:00
鉄平ちゃんさん
自分が久蔵だったら、シゲ子だったらどうするだろうかと、まだ戦中であれば「軍神」の存在意義はありますが、戦後はまったく逆の立場になり、蔑まされるのではないかと。その時に二人はどう生きているんだろうかと考えてしまいます。戦争という国家と個人から見た戦争、そして人の本質を垣間見る映画だったように思います。
2011/4/23(土) 午後 10:17
koukouさん
若松映画は初見です。この映画、厳しい映画には間違いありませんが、表現方法は特に気難しいようには感じませんでした。もっと過激な予想をしていましたが、ラストもソフトタッチで終わりました。実際にはそうかもしれませんね。負けを知らしめないようにする軍部が考えそうなことです。
2011/4/23(土) 午後 10:23
ドルトン・トランボ「ジョニーは戦場へ行った」以上は出して欲しかった。軍神もいいけど、案外傷痍軍人で絡んでいた輩と余り変わりなかったところ示して欲しかった、、、これ川島雄三感覚ですね、すまそ。
2011/4/24(日) 午前 0:11 [ moemumu ]
moe*u*uさん
この感想では書かなかったですが、主人公はレイプをして殺しています。その人間が「軍神」として崇められて、自分自身が狂いそうになります。若松監督は神まで問うているのかもしれません。
2011/4/24(日) 午後 9:54
寺島しのぶは、ベルリンで賞を獲ったことで、この映画が、日本映画として映画史の記録に残ったことを喜んでいましたね。
女優根性が凄いですね。
2011/8/24(水) 午前 0:04
fpdさん
世界で何か賞を取らないと、低予算で宣伝費がかけられない個性の強い映画はなかなか一般には知ってもらえませんからね。寺島しのぶが女優賞を取った値打ちは十分あります。素晴らしい女優魂ですね。
2011/8/24(水) 午後 7:19
若松監督は、この「ダルマ」的男性主役を、猟奇的観点から描いている。しかし、そのプロットは、これより先立つ十数年前に、マンガで取り上げられていたものと記憶する。
寺島しのぶは、はっきり美形ではない。演技も、トッビュアルどまりである。
”生きる力”が、この映画では、日本映画の衰退を反映しており、僕には辛口ではあるが、上滑りで終始した映画である、と思う。
セックスは、実際の行為では表現するのは難しい、日本映画は、その点、ヘタクソである。
若松監督は、かなり辛口覚悟ではありますが、日本映画をダメにした一人だと思う。「人を怒鳴りつけている」だけで、「人を動かす」ことが最後までできなかった。
残念な作品であり、この監督は、よい死に方をした。ただそれだけだと思う。
2012/10/20(土) 午前 1:12 [ moemumu ]
moemumuさん
猟奇的な面から、死と生を浮き彫りにしたかったのではと思いますが。そして戦争がもたらす生と死。今の日本映画に必要なものはぬるま湯から熱湯で目覚める毒ではないかと思います。
2012/10/21(日) 午後 8:12