|
野菊の如き君なりき 2013年6月2日、新文芸坐にて。 1955年度作品 監督:木下惠介 脚色:木下惠介 出演:有田紀子、田中晋二、笠智衆、杉村春子、浦辺粂子、田村高廣、小林トシ子、雪代敬子、山本和子 河の流れに秋のけしきが色濃い。渡し舟の客、斎藤政夫翁は老船頭に、遠くすぎ去った想い出を語った……。この渡し場に程近い村の旧家の次男として政夫は育った。十五歳の秋のこと、母が病弱のため、近くの町家の娘で母の姪に当る民子が政夫の家に手伝いにきていた。政夫は二つ年上の民子とは幼い頃から仲がよかった。それが嫂のさだや作女お増の口の端にのって、本人同志もいつか稚いながら恋といったものを意識するようになって行った。祭を明日に控えた日、母の吩咐で山の畑に綿を採りに出かけ二人は、このとき初めて相手の心に恋を感じ合ったが、同時にそれ以来、仲を裂かれなければならなかった。母の言葉で追われるように中学校の寮に入れられた政夫が、冬の休みに帰省すると、渡し場に迎えてくれるはずの民子の姿はなかった。お増の口から、民子がさだの中傷で実家へ追い帰されたと聞かされ、政夫は早々に学校へ帰った。二人の仲を心配した母や民子の両親のすすめで、民子は政夫への心をおさえて他家へ嫁いだ。ただ祖母だけが民子を不愍に思った。やがて授業中に電報で呼び戻された政夫は、民子の死を知った。彼女の祖父の話によると、民子は政夫の手紙を抱きしめながら息を引きとったという。政夫の名は一言もいわずに……。渡し船をおりた翁は民子が好きだった野菊の花を摘んで、墓前に供えるのであった。(映画com解説より) 純愛映画です。 最近この手の映画には滅法弱いです。 世間に揉まれた海千山千の男が、一瞬純粋な感情が芽生えるから不思議です。 さてさて、老化現象でしょうか。 涙が溢れてしかたありませんでした。 何といっても、この映画の魅力は、有田紀子でしょうね。 健気で一途な民子は、幼な馴染みの政夫のお嫁さんになりたかったのです。 政夫も民子が好きでした。 しかし、民子は政夫より2つ年上でした。 この時代、年上の嫁さんは許されないことだったのでしょうね。 貧富の差であれば、この明治時代からすると、まだしも納得できるかもしれませんが、男より年上であったことだけが不幸の原因だったのです。 正直、民子は「何故、政夫さんより2つ歳を取っているんでしょう」と嘆く。 政夫の母親は、他の人より理解のある人物でしたが、それでも、「不承知だ」と民子に断言します。 ここまで自分に思いを寄せてくれる人が、今、果たしているでしょうか。 その気持ちに、若かりし頃の自分の心情とダブって、心を揺さぶられるのです。 郷愁、男の理想。 政夫の母親から綿畑の綿取りを命じられた二人は、とやかく言う人の視線を気にして、それぞれ別の出口から出かける。 そして、畑を越え、山道を越え、次第に、二人は出会うことに。 その自然の美しさは言いようがありません。 さらに、政夫が学校の寮に入るため、朝早く舟に乗ります。 見送りに行った女中は手を振りますが、民子は、全く動きません。 靄がかかった舟着き場に、ただ見つめる後ろ姿の民子。 今生の別れを知っていたのかもしれません。 幻想的な美しさは、悲しみにも繋がっているのです。 喪服をきた政夫の母親が、よろめきながら、自宅について、車から降ります。 一体何が起きたのか。 民子の死に顔は見せません。 死ぬ間際の民子は、「私は死んだ方がいいのです」と。 主人公の母親から説得され、別の男に嫁いだ民子は、政夫に顔向けできないと思ったのでしょう。 年老いた政夫は、民子の墓を訪れます。
静かな余韻を残すラストシーンでした。 |

- >
- エンターテインメント
- >
- 映画
- >
- 映画レビュー






こんばんは。
政夫が民子の死を知るのは、家族での食事中、「民ちゃん、死んじゃったよ…!」とちょっとつっけんどんに言われたからじゃなかったでしたっけ…。
松田聖子の方だったのかな…。
画面の周辺をぼかした映像は、「エデンの東」のシネスコ画面を見た木下惠介が感動し、あんなのを撮りたいと思ったものの、当時は無理で、逆に画面を小さくしよう…という事だったみたいな事が淀川さんの本に書かれていました。
2013/6/12(水) 午後 11:27 [ - ]
子どもの頃、
雑誌で読んだ記憶があります。とても悲しい物語でした。
いい配役ですね…でも、主役の有田紀子の名前は初めて聞きました。
庶民の平和な暮らしと幸せを願い続けて、映画を制作してこられた木下監督。
今年は生誕百年であると、先ほど「ニュース23」で言っていました。
『二十四の瞳』の子役達は全て健在で、今も「瞳の会」と言う名前の会を作って
交流を続けておられるそう。
様々な映画の場面が流れていくのを見ていると、目頭が熱くなりました。
鑑賞後に、もう一度読んでみたくなるような、丁寧なレヴューですね…
2013/6/12(水) 午後 11:50
舞台は、「寅さん」や「矢切の渡し」の歌で知られる千葉の松戸付近です。伊藤左千夫の小説「野菊の墓」が原作です。
背景は明治大正期でしょうかね。少年少女の悲恋が抒情的に描かれていました。
想い出の部分が、丸く囲われていたように思います。
シーラカンスさんも「海千山千」ですか。(笑)
私もいろいろな「修羅場」を潜ってきましたが、泣きました。
2013/6/13(木) 午前 8:09
二三度スクリーンで観ております。卵型の画面でぼかしがあるのは、消えかけている老人の思い出という感じがよく出ていたと思います。先ほど書かれたように原作の舞台は千葉県ですが、映画は信州あたりの風景に見えます。
ヒロインを演じた有田紀子はすぐに消えてしまいましたね。木下監督の次作「夕やけ雲」にも出ていますが、台詞がなくほんの数シーンの登場でした。
2013/6/13(木) 午後 4:19 [ SL-Mania ]
こんばんは〜☆彡
「野菊の墓」、ざっくりした原作のあらすじは読んだことがあり…
この映画もどこかで観た記憶があります。民さんが、切なくて(涙)
天窓のシーンがありましたかしら?記憶に残ってるんですが^^;
今からは想像つかないような悲恋ですよね。
2013/6/13(木) 午後 7:22
bigflyさん
その通りです。こういう残酷に見える演出方法は好きです。告げたのは兄さんですが、兄さんの嫁が、民子を避けるように仕向けたことを批判する。この兄さんが今頃批判することに自分は苛立ちを覚えました。兄さんは自分を正当化するためか、自分の反省かどちらかわかりませんでした。
2013/6/15(土) 午前 10:54
alfmomさん
木下監督を主人公にした映画が上映されていますね。色んな映画を作ってきた木下作品、あまり観ていないので、もっと観たいです。この映画の自然の風景と二人の純粋さに心打たれました。いい映画でした。
2013/6/15(土) 午後 1:08
ギャラさん
松戸あたりのようですね。日ロ戦争の話が出てきますからそれぐらいお時代でしょうね。まあ当時からすると社会も成長して、女性の地位も上がっていますね。ちょっと大袈裟で海百山百ぐらいでしょうか(笑)。
2013/6/15(土) 午後 9:15
SL-Maniaさん
現在は普通の画面、卵型の映像は過去と使いわけすることで、観客は今どちらかがわかるようになって、わかりやすいようになっていますね。有田紀子は可愛かったですね〜。この映画にぴったりでした。後はあまり活躍せず引退したようですね。この映画の印象があまりに強かったかも。
2013/6/15(土) 午後 9:29
ふぇいさん
う〜ん、天窓のシーンはなかったような。記憶間違いかもしれませんが。こんなに相手を想う気持ちが切なすぎます。男の理想かもしれません。主人公は結婚して孫がいることを口にします。郷愁であり忘れられない思い出となってしまっています。
2013/6/15(土) 午後 9:34
「はじまりのみち」を観たら、木下監督の映画を観たくなりまして・・・
こちらも是非観てみたい作品の一つですね。
上映記念で「カルメン故郷に帰る」と「楢山節考」を観ました。
来月「陸軍」を上映してくれます♪
「二十四の瞳」はタイミングが厳しくて諦めました。
以前観ていたこともあったので・・・でも勿体無かったです。
2013/6/20(木) 午前 1:37
エルザさん
木下監督はいいですね。もっと観たいと思っています。「二十四の瞳」は素晴らしかったですね。この映画も素直な映画で、お薦めです。「女の園」もまた違いタイプで凄い映画でした。
2013/6/20(木) 午後 11:55
改めて記事を読ませて頂き、
映画の素晴らしさを再び思うことができました。
純粋な二人の思い。胸がいっぱいになりました。
有田紀子、本当に愛らしかったです。
2016/6/28(火) 午前 7:35
> alf's momさん
何度もコメントありがとうございます。素晴らしい映画は何度観てもいいのですね。大袈裟かもしれませんがなにかに純粋であることはとても大事なことですね。
2016/6/28(火) 午後 11:15
民子の手に握られていたのは、政夫の手紙とりんどうの葉というのが泣かせました。女性が2歳年上というのが、今では考えられない障害だったようですね。
TBお返しさせてください。
2018/4/6(金) 午前 7:13
> fpdさん
見事に泣かされましたね、年上がダメという封建的な時代の悲劇ですね。
2018/4/7(土) 午後 9:25