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わが青春に悔いなし 2018年9月10日、BSにて。 1946年度作品 監督:黒澤明 脚本:久板栄二郎 出演:原節子、藤田進、河野秋武、大河内伝次郎、杉村春子、高堂国典、三好栄子、志村喬、中北千枝子 黒澤明監督の戦後最初の監督作品。京大・滝川事件とゾルゲ・スパイ事件をモチーフに、ファシズムの吹き荒れる時代にあって自らの信念に基づいて強く生きる女性の姿を謳い上げたドラマ。国民的アイドル原節子が芯の強いヒロインを好演。昭和8年。京都帝国大学の教授・八木原の教え子たちにとって教授の一人娘、幸枝は憧れの的。野毛、糸川の二人の学生も幸枝に想いを寄せていた。秀才型で日和見的な糸川に対して実直で行動派の野毛。軍国主義が強まる中、野毛が左翼運動へと身を投じる一方、糸川はひたすらに法曹の道を目指していた。やがて、幸枝は信念を持って行動する野毛に魅力を感じ始めるのだったが……。<allcinema> いつも見ていた、小津作品の原節子ではない。 特に、印象深いシーンがあった。 結婚した夫が左翼運動のため捕まり獄死したことで、実家を訪れる。 富裕の家に育った原節子が、実家である農家の手伝いをしたいと哀願する。 自分の信念で、死に物狂いで母親と田植えをする。 昼間は蔑まされるので、夜の間だけ仕事をする。 リアリズム。 最初は、馬鹿にしていた夫の母親(杉村春子)も、原節子の頑張りに次第に心を許すようになる、この女は信頼できると。 あえて、昼間に仕事をする原節子。 ようやく終わった田植えのあくる日、母親が走って家に帰ってきた。 泣いているのだ。 田んぼに行くと、苦労して植えた稲がみんなひっくり返されていた。 スパイ、非国民、売国奴と書かれた紙ととともに。 原節子はその紙を破く。 そして、もう一度、田植えをするのだ。 決して負けない。 泥にまみれ、綺麗な上品な姿はそこにはない。 リアリズムの極致。 土と生きる覚悟を決めた女の表情。 さらに、女性運動にも力を注ぐ。 大学生の頃、二人の学生が好きだった。 一人は活動的で自己主張する左翼系の男(藤田進)、もう一人は母親を大事にする政治に距離を置く優柔不断の男(河野秋武)。 父は自由主義だという原節子。 河野秋武が農家の家を訪れ、墓参りをさせてほしいと告げると、雨に濡れた服を絞りながら、私はイヤと夫も喜ばないからお断りします。 自分の生き方は、藤田進、という結論を出す。 二人を並べておいて、明らかに藤田進の考え方を選択した。 自我に目覚めた。 いつ捕まるかもしれない不安からか、藤田進を愛する原節子は刹那的で可愛い。 戦後の民主主義を高揚する映画でもあります。 自由の裏には、苦しい犠牲と責任があると原節子の父親である教授(大河内伝次郎)は言う。 戦前の軍国主義があったからこそ、自由と戦った人々、戦後という時代から見た自由を謳い上げた映画なんでしょうね。 自分の考えで行動する積極的な原節子の魅力に溢れた映画です。 原節子はやっぱり凄いなと思いますね。 「白痴」でもそうですけど、黒澤映画の原節子は伸び伸びしているように見えて、面白い。 三好栄子が母親役でした。
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原節子さんの演じた、ナスターシヤ・フィリッポヴナ・バラシコーワ。
ドストエフスキーの「白痴」と相性がよかったというより、「伸び伸びしているように見えて、面白い」ということが正解だったのでしょう。
原作は「悲劇」そのものですから。。。
2018/9/30(日) 午後 11:07
私もこの映画は好きですが、黒澤明自身が、数年前までは、軍部に媚びた国策映画を撮っていた。なんか節操がないなあと思ってしまいます。
西洋なら許されないことですよね〜
2018/10/1(月) 午前 0:42
原節子さんも戦時中は、戦意高揚の国策映画に何本も出演していた訳です。その反省でもないでしょうが、原さんは自分の一番好きな出演作は「わが青春に悔いなし」(小津作品でなく)だと述べていますね。
2018/10/1(月) 午前 1:03
この映画はビデオ普及前には名画座でよく上映されていました。黒澤作品としてはやや生硬な感じがしないでもないです。印象に残っているのは志村喬の特高刑事。この人は実際に特高に捕まった経験があったそうで、その時の体験を生かしたとか。最後に大河内伝次郎扮する教授が大学に復帰して大学で講演するシーンには後年評論家になった荻昌弘が学生服姿で写っています。この映画は滝川事件とゾルゲ事件がモデル。後者に材を取った他の組合主導の作品があって、労組から筋の変更を強要されたそうです。
2018/10/1(月) 午前 8:25 [ SL-Mania ]
私の場合,この映画に対する評価はかなり低いのですが,シーラカンスさんの記事を読んで,そういう観方もアリかなと思いました。この映画が制作されたときの時代背景が大きく影響している作品だと思います。
TBお願いいたします。
2018/10/1(月) 午前 11:38 [ 飛行機雲 ]
> もすもすさん
小津作品と比較すると、とても自由で元気で自由奔放な印象を受けました。自己主張する女性。
2018/10/1(月) 午後 11:01
> 猫さん
一番美しくは未見です。黒澤監督自身が、一番美しくと、この映画をどう思って作ったかですよね。反省も込めて作ったのかも。人が虐げられても頑張る姿は、単純に勇気をもらえます。主張は揺るぎなく明確です。
2018/10/2(火) 午後 5:47
> ギャラさんさん
悔いはあったのでしょうね。負けない、主張する、確固たる自信の表情に満ち溢れていました。小津作品の原節子とは全く違いますね。
2018/10/2(火) 午後 8:34
> SL-Maniaさん
民主主義啓蒙によりすぎたのか、黒澤映画にしては、ちょっと真面目な描き方ですね、遊びがないというか。志村喬、特高役見事でした、そうでしたか。荻昌弘は気がつかなかった。
2018/10/2(火) 午後 9:05
> 飛行機雲さん
戦後すぐは、進駐軍の意向で、チャンバラもダメ、民主主義を高らかに謳い上げる内容が多かったと聞いています。中期の黒澤作品から見ると、ちょっと異質な印象です。
2018/10/2(火) 午後 9:17