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あにいもうと
1953年度作品。
2009年1月25日、神保町シアター「男優・森雅之」特集にて。

監督:成瀬巳喜男
脚本:水木洋子
出演:京マチ子、森雅之、久我美子、山本礼三郎、浦辺粂子、船越英二

川師の親方赤座(山本禮三郎)には三人の子がいた。昔は名を売った彼も、今では落ち目。しかも、娘のもん(京マチ子)が、奉公先で小畑(船越英二)と関係し、身重で戻ってきたので機嫌が悪い。
末娘のさん(久我美子)は、もんの送金で看護学校へ行っているが、彼女の不始末が知れて、好きな鯛一とも一緒になれそうにない。兄の伊之吉(森雅之)はもんを可愛がっていただけに腹立たしく、つらくあたるのでもんは家を出てしまう。
もんが出て行ったあと、小畑が謝罪に訪れるが、妹が不憫でならない伊之吉は小畑に罵声を浴びせ殴りつけながら、妹可愛さの心情を吐露するのだった。
伊之吉が小畑を殴ったことを知ったもんは「卑怯だ」といって、伊之吉と殴り合いの大喧嘩になる。

いい映画だった。

娘のもん(京マチ子)もさん(久我美子)も、家を出ていくが、また家に帰ってくる。
家に帰るために道を歩いているシーン、そして家から出て道を歩いているシーンがやたら多く登場する。
その「道を歩くシーン」に、家を出て行っても「家」や「家族」というものがあるので必ず帰ってくることを象徴的にあらわしているのではと思う。
喧嘩をしても、「家族」からは離れられない。そんな気持ちが「道を歩くシーン」を見ながら伝わってくる。

伊之吉とさんはいつも喧嘩ばかりしている。
謝罪しにきた小畑を殴りながら、昔は可愛かった妹への思いを涙ながらに吐露する。
そしてお前のせいでこんな女になってしまったと訴える。
突然のこのシーンに兄が妹を鬼気迫るほどに愛情を持っていることがわかる。
穿った見方をすれば、それは妹への愛情ではなく、自分本位のわがままな愛情表現にすぎないのではないか。
そんな兄を森雅之が怖いほどの演技を見せている。
森雅之、圧巻の演技だった。

もんと伊之吉の殴り合いの大喧嘩のシーンも印象に残る。
母親役の浦辺粂子も、まったくものごとに動じない日本の母親を見事に演じている。
この家族の中では、久我美子が一番普通で、優柔不断の恋人とも別れる強さも持っている。

それにしても、男どものふがいないこと。
父親は昔、はぶりがよかったことを懐かしんでいるだけで、今を生きていないし、
伊之吉も仕事をしたりしなかったりと、あまりやる気が感じられない。
生きていくことに関して言えば、改めて女性のたくましさを実感させられた映画だった。

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