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浮雲 2009年7月25日、神保町シアター「没後40年成瀬巳喜男の世界」にて、2回目鑑賞。 1955度作品。 原作:林芙美子 監督:成瀬巳喜男 脚本: 水木洋子 撮影:玉井正夫 美術:中古智 出演:高峰秀子、森雅之、中北千枝子、岡田茉莉子、加東大介、山形勲 あらすじは(ネタバレあります)・・・ 戦時中、赴任先のインドシナで愛し合った妻ある男(森雅之)を追って引き揚げてきたゆき子(高峰秀子)は、戦後の日本に失意した森雅之が煮え切らないため、一人で生きていくために一時は外人相手の娼婦にまで身を落とすが、別れることができない。森雅之と高峰秀子は伊香保温泉に行く。そこで、森雅之は居酒屋の主人(加東大介)の若妻(岡田茉莉子)と関係を結ぶ。森雅之は女にだらしない。妊娠したゆき子が森雅之を訪ねると岡田茉莉子と同棲していた。その後中絶した高峰秀子がふと新聞を見ると、加東大介が岡田茉莉子を殺害したことがのっていた。森雅之は気持ちもあらたに屋久島で農林省の仕事をすることを決めた。高峰秀子は私も連れていってほしいと哀願する。二人で新しい生活を始めるべく旅立った屋久島への途中で高峰秀子は病気になる。屋久島の山に森雅之が入っている間に、高峰秀子が咳きこみ倒れ死ぬ。駆けつけたその枕元で森雅之が号泣する。 すさまじい男と女のドラマ。 ここまできたのか。 夫婦であったり、家族であったりしても、いままでの成瀬監督の映画は結論が出ない。 主人公一人、または夫婦、家族で歩いていく後ろ姿、もしくは何気ない普段の日常生活のシーンで終わる。 これからどうするんだろうか、どういう生き方をするんだろうかと不安になりながら映画を観終える。 しかし、この映画は結論まで辿りついてしまった。 結論に辿りつくしかこの映画からは逃げられないと成瀬監督は感じたのだろう。 高峰秀子が森雅之を罵倒する。 森雅之は女にだらしない。 それでも高峰秀子は離れられない。 もうこれ以上、どこへも行けない。 いや、もうどこへもいかなくてもいいかもと。 一人さみしく高峰秀子は死ぬ。 二人の生きざまに涙してしまう。 この映画でもかすかにチンドン屋は登場した。
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成瀬巳喜男監督
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女が階段を上る時 2009年7月25日、神保町シアター「没後40年成瀬巳喜男の世界」にて。 1960年度作品。 監督:成瀬巳喜男 脚本: 菊島隆三 音楽:黛敏郎 出演:高峰秀子、仲代達矢、森雅之、淡路恵子、中村鴈治郎、小沢栄太郎、賀原夏子、加東大介、
中北千枝子、菅井きん、団令子、織田政雄
菊島隆三プロデュース、脚本。菊島隆三脚本も成瀬監督との組み合わせは初めてかも。 いきなり高峰秀子自らナレーションをしている。 どこかドキュメントっぽい。 楽しかったです。 銀座の雇われマダム高峰秀子をとりまく男たち、バーの女たち、親兄弟が入り乱れて物語が展開する。 高峰秀子は柔軟な女優だ。 夫が亡くなって家族に寄りかかられているがしっかりもののバーのママもよく似合う。 森雅之は銀行の支店長で渋い男がピッタリ。 中村鴈治郎は大阪の社長さん、高峰秀子から団令子に移る変わり身の早さ。 コンサル会社の小沢栄太郎は計算高い男。 しかし、何と言っても鉄工所の中小企業の社長加東大介がとんでもない食わせもの。 精神的に参っていた高峰秀子にやさしい言葉をかけ、高峰秀子と結婚することに。 しかし、加東大介の奥さんから電話がかかってきて、一人身も社長の話もまったくのでたらめ、虚言癖があるという。 加東大介の奥さんの家の近くで奥さんと高峰秀子が話し合う。そのそばを奥さんの子供たちが動きまわる。 高峰秀子がバー勤めを辞め、ようやく落ち着けると思っていた鉄工所の妻。 そのショックをあざ笑うかのように子供たちの遊ぶ姿、見事な描写です。 高峰秀子のお兄さん役の織田政雄も、情けなくダメ男がいいです。
淡路恵子が借金とりを追っ払うため狂言自殺をするが、ほんとうに死んでしまう。 生々しい話だった。 |
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夫婦 2009年7月25日、神保町シアター「没後40年成瀬巳喜男の世界」にて。 1953年度作品。 原作:林芙美子 監督:夫婦 脚本: 井手俊郎、水木洋子 出演:杉葉子、上原謙、三國連太郎、小林桂樹、藤原釜足、滝花久子、岡田茉莉子、豊島美智子、中北千枝子、中村是好、三好栄子 解説によると・・・ 結婚6年目で倦怠期を迎えた中原伊作(上原謙)・菊子(杉葉子)夫婦は、転勤で上京し貸間を探すことになった。二人は、妻を失って一人暮らしをしている男・良太(三國連太郎)の家に間借りする。一人の独身男と生活をともにする中で、夫婦は曲折を経て愛情を再確認していくのだった・・・。夫婦の日常を淡々と描きながらそこに愛情や哀感の機微を抽出して見せる成瀬監督得意の小市民ドラマの佳品。 まさに解説に書かれているそのものです。 これ以上書くことがないと寂しいので、ちょっとだけコメントします。 若い奥さんの杉葉子が、着物を畳む、料理をするといった夫の身の周りをかいがいしく世話をする。 なんともうらやましい限りです。 原節子のように微笑みながら怒る怖さもなく、高峰秀子のようにふてくされた厳しさもなく、怒っても裏がなくかわいく見えてしまうのは、杉葉子のアイドルっぽい表情のせいだろうか。 もともと原節子の予定が、体調が悪く、杉葉子に交代したようだ。 とても新鮮で、重くないのがいい。 うだつの上がらない上原は、三国連太郎が杉葉子を好きになり、気にかけることが気に入らない。 また、三国連太郎が軽くていい。 奥さんが亡くなってショックで会社を休んでいた三国連太郎が、杉葉子を見ていきなり元気になり好きになるといった変わり身の早さ。 途中までは、軽い三角関係で、微笑ましい展開だったが、いきなり重たい展開に。 杉葉子が赤ちゃんができたことを上原謙に報告すると「引っ越したばかりなのに」と喜ぶには程遠い渋い表情。 お金がないからだ。 普通の映画であれば、上原謙の喜ぶシーンにしたくなるところを、そうしないところがこの映画の脚本のすごいところ。 「産む」という杉葉子に、経済的に苦しいので生活ができないから「子供は諦めろ」といい、産婦人科に二人で行く。 公園の近くで、子供をおろすおろさないで深刻な状況に。 ベンチで二人が座っている。 しばらくたってようやく「帰ろう」と上原がいい、杉葉子は涙を流し、肩寄せ合って帰って行く。 解説による「愛情の再確認」ではなく、上原謙はしかたなくといったように見える。なんとかなるだろうという感じで、上原謙の杉葉子に対する愛情をあまり感じられなかった。 ベンチで二人が座っている時、風が強く木の枝が揺れているだけのシーンのカットがある。
心象風景か時間の経過か。 成瀬監督の映画で人物が入っていない自然の風景だけのカットはあまり見たことがない。 珍しいカットだった。 ちなみに、これまた予想どおり、チンドン屋は登場しました。 |
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2009年7月23日、神保町シアター「没後40年成瀬巳喜男の世界」にて。 1939年度作品。 原作: 石坂洋次郎 脚本:成瀬巳喜男 美術:中古智 出演:入江たか子、高田稔、悦ちゃん、加藤照子、村瀬幸子、清川荘司、藤間房子 子供たちの描写とか丁寧に作られてはいるが、戦争高揚映画としての制約がある印象があるため、いまいちの感じがする。 父を亡くした富子(加藤照子)は、母(入江たか子)と祖母(藤間房子)と三人暮らし。 父親は亡くなっているので、母が着物の仕立てで生活をしている。 富子は親友の信子と仲がいい。 そんな親友の信子の成績が10番に落ち、富子は1番になる。 信子の母親(村瀬幸子)は納得がいかず、父親(高田稔)に相談するが、父親は体が丈夫であればいいじゃないかという。 それでも、納得いかない母親は夫に内緒に先生に直談判する。 先生は富子は模範となる生徒で母親がきっちりしているからだと言う。 さらに先生はお父様にもそのことをちゃんと説明しますと言われて、そこまではとあたふたと取り下げる。 信子は昔父親と富子の母親(入江たか子)が若い頃に恋人同士であったことを知る。 だまっていられずに、信子は富子にも知らせる。 富子は複雑な気持ち。 自分の父親はどんな人だったか聞く。 入江たか子は立派な人だというが、祖母はそろそろ富子にも正直にいう必要があると酒飲みでひどい男だったという。 だから、お母さんを大事にしなさいという。 富子はまた複雑な気持ち。 ある時、富子が泳ぎに川にいくと、信子と父親が来ていた。 信子が足に怪我をしてしまい、富子が薬を家に取りに帰り、入江たか子と一緒に川にくる。 入江たか子は信子の父親も一緒だと思わなかったので、びっくりして、お互い久し振りですという。 父親におんぶしてもらい帰る信子を見て、富子も入江たか子におんぶをしてもらい帰る。 そのあくる日、信子の父親からお礼にとフランス人形が富子の家に届く。 入江たか子も祖母も困ってしまう。 富子はその複雑なことを気にして、信子の家に人形を返す。 信子の母親は、その人形のことで、夫に問いただす。 夫は「お前がそんなことを言っているからだめなんだ。召集通知がきたんだから、俺がいない間、家のことを頼むぞ」という。 信子の母親は「すいませんでした。私が悪かったです」という。 信子が人形を返しに富子の家に向かうことを聞いた母親は、「私も信子の後を追いかけ一緒に人形を返してきます」という。 信子の父親が列車で見送られるシーン。 信子と母親、富子と入江たか子が、仲良く信子の父親に手を振るところで終わり。 明らかに戦争高揚映画。 戦争に行く夫に心配させないように、妻は家庭をしっかり守るようにという訓示。 その限られた範囲で成瀬は、親たちの生活から子供たちの複雑な気持ちをさりげなく表す。 親友なのに、「信ちゃん」、「富ちゃん」と言わずに、「信子さん」「富子さん」と「さん」づけで言い合う。
当時はそういう時代だったんだろうか。 |
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2009年7月22日、神保町シアター「没後40年成瀬巳喜男の世界」にて。 1960年度作品。 製作:成瀬巳喜男 脚本:笠原良三 出演:大沢健三郎、一木双葉、乙羽信子、夏木陽介、藤原釜足、賀原夏子、原知佐子、加東大介、 河津清三郎、菅井きん、藤間紫 飽きもせず、成瀬映画をみています。 成瀬監督が珍しく製作も行っている。 この話に何か思い入れがあるのだろうか。 それとも、この頃の作品にあまり満足していなくて自ら作りたいものを作ったのかもしれない。 父親を亡くして長野から母の兄夫婦(藤原釜足、賀原夏子)の東京の実家に引きとられた少年と近所に住む妾の娘との淡い交流を描く。 母親(乙羽信子)は旅館の住み込み女中となるが、宿泊客(加東大介)とねんごろになり、子供をほったらかして失踪する。 その旅館の女将の娘は、妾の子であることで本宅の子供に無視される。 大人たちの自分勝手でわがままな行動に翻弄される子供たちのやるせない映画。 少年は少女にカブトムシを捕まえてあげることを約束するが見つからない。 ようやくカブトムシを捕まえ、喜び急いで少女の家に持っていくと、少女は引っ越ししてもうそこにはいなかった。 藤原釜足の息子役の夏木陽介が、少年をかわいがってバイクに乗せてカブトムシを探しに連れていってくれる人のいい兄ちゃんをやり、少年の味方になってくれる。
賀原夏子のちょっとイヤミなおばさんもいい味を出している。 |



