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下町ロケット 2014.4.6 「お前には夢があるのか? オレにはある」 研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。 圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。 特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた――。 男たちの矜恃が激突する感動のエンターテインメント長編! 第145回直木賞受賞作。(解説) 会社の人に借りて、読みました。 よくできた話ですね。 面白いです。 見事なエンタティメント小説です。 TVしか観ていませんが、どこか「半沢直樹」にも通じるものがあります。 見事な構成で、それにもまして、熱いものが湧いてきて、感動しますよ。 研究者の頃にロケット開発に挫折して、今は会社の社長となった主人公佃は、ロケットの重要な部品を開発して、大手企業から特許を譲ってほしいと話を受ける。 大企業と中小企業の対比は、大企業への怒り。 単なる嫌がらせに対する勧善懲悪だけでなく、大企業の社員の中にも佃の会社の技術に尊敬する人もいる。 経営者と従業員の対比。 経営者は利益を出すことより自分の個人的な夢を追うことがいいのか、従業員は自分たちの生活のことを思っているのかと反発にあう。 このジレンマに社長は悩みます。 難しい問題です。 それでも、社長を慕う従業員がいたりして、サラリーマンの自分は熱い気持ちになり、感動するのです。 次から次へと問題が起きて、そしてまたそれを助けてくれる人が登場したりして、次第に会社の仲間の結束力が高まるうまい展開。 この小説は、映画化すると絶対面白いと思いますよ。
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読書
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山本幸久 ヤングアダルトパパ 2014.3.8 夏休みもあと数日。中学2年生の静男は、生後5ヶ月の赤ん坊を負ぶり保育所を探していた。10以上年の離れた花音と恋をして、優作が生まれた。しかし彼女は幼い父子を残し、消えてしまったのだ。もうすぐ二学期が始まる。急がなきゃ。しかし、中学生の保育所探しはどこからも相手にされない。途方に暮れながらそれでも、静男は優作を守ろうとするのだが…。14歳の父、5ヶ月の息子、幼い父子の、家族物語。(解説より) 山本幸久さんの小説はいつも、笑えて泣けるんです。 この小説は、いつもとちょっと趣が違います。 単純な人情ドラマとは違い、主人公の境遇は厳しく(でも両親はあっけらかん)、自分の力が試されているのです。 主人公は14歳の少年、しかも、年上の女性と、なんちゃらで、優作という赤ちゃんがいるところから始まる。 まあ、中学生ということで、自分の子供とは言えず、兄弟で通す。 子供の花音さんは、家出して行方不明。 夏休みももうすぐ終わるので、息子をどこかで預かってもらわないと困ってしまう。 父親は劇団で地方を巡業中、女にだらしがない。 母親は離婚して別の家族がいる。 そんな主人公は、過去の出来事を回想しながら、現実の優作の世話をどうしようか悩みます。 自業自得とはいえ、頑張っている主人公の少年に共感するのです。 頑張る主人公に応援したくなるのですね。 結局のところ、やっぱり、山本幸久ワールドでした。
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向田邦子 思い出トランプ 2013.12.1 ちょっとした感想です。 とても、怖いです。 ドキドキします。 穏やかな語り口から放たれる過激なことばが、突き刺さりますね。 次にどういう文字が出てくるのか予想がつかない。 凄いです。 こんな言葉を繋ぎ合わせるとは。 やっぱり、ただものじゃないです。 毒気と穏やかさが交互にやってくる感じで、それはそれで、両方ともに納得できる。 この感じは何だろう。 言い訳、後悔、人が天使と悪魔の心を持っている。 そうしないと、生きていけないから? 堅苦しく言えば、すべてが人の生きざま。 ただただ10数ページに濃い話が濃縮されていて、めっちゃ疲れる。 一気に読めない。 一遍を読むと一旦休憩してから、読まないと、息苦しくなる。 昭和の匂いがします。それは、明治かも、大正かもしれないが、平成でないことは明らかだ。 「かわうそ」「だらだら坂」「ほめ殺し窓」は好きです。 妻を模した「かわうそ」のタイトルなんて予想だにしない。 人の観察であったり、記憶であったり、自分の感性をことばに変える作者の力を感じます。
お薦めです。 |
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福家警部補の再訪 2013.11.17 しがない探偵から転身し上昇気流に乗った警備会社社長、一世一代の大芝居を自作自演する脚本家、天才肌の相棒と袂を分かち再出発を目論む漫才師、フィギュア造型力がもたらす禍福に翻弄される玩具企画会社社長―犯人側から語られる犯行の経緯と実際。対するは、善意の第三者をして「あんなんに狙われたら、犯人もたまらんで」と言わしめる福家警部補。百戦不殆のシリーズ第二集。(amazon解説より) ちょっとした感想です。 福家警部補、お久しぶりです。 シリーズ2作目。 いや〜、面白いです。 倒叙形式の本格ミステリー。 刑事コロンボ、古畑任三郎の二番煎じと言われるかもしれないが、犯人に対する執拗な質問、ジワジワ、ネチネチと犯人のちょっとした間違いを逃さず追い詰める手際のよさと相まってスリリングな興奮。 そして、自分がまったく気がつかなかった点を致命的なダメ押しにして、最後の対決を挑むかっこよさ。 相手を追い詰める手法は、妻が夫を追い込む手法にも似て、もしかしたら、男性より女性の方が似合っているかもしれません。 刑事コロンボの汚い格好へのオマージュとも思える、いつも警察バッジをどこかへ失くしてしまうドジっぽい福家警部補。 のめり込むと、他のことは気にならないようで、徹夜もいとわない男っぽい福家警部補に共感します。 閉鎖された船の中の限られた情報で、陸地に着くまでの時間制限との戦い「マックス号事件」。 ちょっとした犯人の誤解を逆手にとり、その時間に被害者と出会っていることを証明する天才的な手腕「失われた灯」。 そして、トリックよりも悲しい人の結末を見せる「相棒」。 こちらも間違いが致命的となり、それをまた逃さないハイエナのようなしつこい福家警部補「プロジェクトブルー」。 古畑任三郎のように、犯人はじたばたしない。 その潔さがまた心地よいのです。 すべての犯人はスマートです。 小さくて、華奢な福家警部補はどこへ行っても、刑事とは思われない。 マニアックな趣味の幼く見える女性が、殺人事件を解決するギャップがまたたまらんです。 フィギュア好きで、寄席好きの作者が、福家警部補へ投影した愛情が感じられて、謎解き以上の、素敵ないい話になっています。 3作目「福家警部補の報告」を読みたいんで、ぜひ早く文庫本にしてほしいですね。 それと、最近御贔屓の谷村美月主演で深夜TV放送なんてのはどうでしょう。
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2013.10.22 愛は苦手 娘の行動は理解できず、マイペースな夫に頭を痛める彩子。勤続20年、一人で一戸建てを手に入れた可憐。義父との同居に戸惑いながらも心癒やされる真紀―主婦、会社員、漫画家、既婚、独身、元愛人…様々な境遇に生きる女性たちが繰り広げる紆余曲折。アラフォーという微妙でやっかいな世代の背中をそっと後押しする短編集。文庫書き下ろし「家出(嘘)」を含む9編を収録。(amazon解説) ちょっとした感想です。 クスっと可笑しくて、切なくて、ほのぼのとして、人の気持ちに暖かくなる。 そして、ちょっと前向きになれる。 いつもの山本幸久のまろやかな語り口に、ついつい乗せられてしまう。 大好きですね、山本幸久。 この小説は、アラフォーの女性たちのさりげない揺れる気持ちが綴られる。 大島真寿美さんの解説が、いかにも女性らしい的確なコメント(下記に書きます)で、男性からするととても新鮮で、複雑なんだなと感心しきりです。 アラフォー世代の年齢がいかに微妙で、やっかいな年齢だということ。 もう若くはない、若くはないが、枯れてもいない。 女には妊娠リミットがあり、その後閉経期を迎えるにあたっての更年期に突入する。 そういう境界線がそこにあることをいつ頃からか誰しもうっすらと、本能的に自覚しているものだ。 その線は絶えず見えている。焦りというほどではないにしろ、女たちはその境界線へ向かって歩いてきているから、いざそこに到達しつつある頃になると胸中は複雑だ。 そこに至るまで、何かを手に入れ、その代わりに何かを失くしてしまったことに、普段は忘れてしまっているのに、ふいに顕わになったりうろたえたりもする、そんな年齢なのである。
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