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2010.10.3 私は最上俊平、私立探偵である。ハードボイルド小説を愛する私は、決してペット探偵ではないのだ。だが、着物姿も麗しい若い女性とヤクザから、立て続けに猫捜しの依頼が。しかも、どちらの猫もロシアンブルー!?なりゆきで雇うことになった秘書に、独自に習得した猫捜しの極意を伝授し、捜査は順調に進むはずが…。名作『ハードボイルド・エッグ』の続編、いよいよ文庫化。(本の解説より) 「ハードボイルド・エッグ」はよかったです。 助手のばあさんとのやりとりが可笑しくて、そしてラストは泣けました。 今回は猫を捜すくだりが長く、ちょっと間延びした感じ。 助手は、アメリカ帰りの若い姉妹?の2人の女の子。訳ありの助手だが、前作のばあさんの個性よりはちょっとおとなしめで予想内。 それでも、主人公とバーのオーナーJとのハードボイルド的な会話、ハードボイルド好きな刑事とのマニアックな浮いたやりとりが楽しい。 バーのオーナーJはハードボイルドなセリフを発しているのに、経営セミナーに参加して、冷麺をメニューにしたりして、可愛いところがある。 私立探偵でありながら、ペット捜索しか依頼がこない。 だからますますペット捜しのノウハウが蓄積されていく。 なんというジレンマ。 でも、どうしてどうして、なかなかの探偵なのです。
喧嘩が弱くても、ちゃんと事件を解決するのですから。 最後は荻原浩さんらしい、ちょっとしみじみとした、女の子とのハートウォーミングな終わり方でした。 |
読書
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2010.9.9 会社が突然倒産し、いきなり主夫になってしまったサラリーマン。内職先の若い担当を意識し始めた途端、変な夢を見るようになった主婦。急にロハスに凝り始めた妻と隣人たちに困惑する作家などなど。日々の暮らしの中、ちょっとした瞬間に、少しだけ心を揺るがす「明るい隙間」を感じた人たちは…。今そこに、あなたのそばにある、現代の家族の肖像をやさしくあったかい筆致で描く傑作短編集。(本の解説) 読む前のイメージは、タイトルとカバーデザインから和風テイストの本かなと。 古い日本の小津映画のような女性が出てくる話だと勝手に想像していた。 まあそんな些細なことはどうでもよくて、家庭の中に起きるエピソードを散りばめたストーリーです。 6話からなる短編集です。 「サニーディ」 一回インターネットオークションでピクニック用テーブルを売ったことで、それからインターネットオークションにはまっていく主婦。 別に売りたいものがあるわけではなく、売るための商品を捜す逆転現象。 旦那が大事にしていたレコード・プレイヤーも売り飛ばした。 このまま、エスカレートして深い泥沼にはまり家族崩壊へと思っていたら、旦那と子供からの誕生日プレゼントが彼女を救った。 踏みとどまった。 そうかもしれない、誰かが止めてくれているような気がする。 「ここが青山」 東京の青山の話かと。 恥ずかしながら、この諺を知らなかった。 「人間(じんかん)至るところ青山あり」 世の中、どこでも骨を埋める場所があるという意味らしい。人間(じんかん)とは世の中らしい。 「夫とカーテン」「妻と玄米御飯」も好きですね。 「夫とカーテン」のアイデアは面白い。 「妻と玄米御飯」は、主人公の慌てぶりがおかしい。 全体的には深刻な話というより、強い奥様と弱い旦那のユーモア溢れるやりとりが楽しいです。 家族のつながりと機微と、女性のちょっとした怖さも垣間見ることができます。 今回も、奥田英朗さんの語り口は、さすがです。うまいですね。
「ガール」の主婦版、旦那版といったところでしょうか。 サクサクっと読めます。 |
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2010.8.27 どこにでもいる善良な大学生・白戸修にとって東京の中野は鬼門である。殺人の容疑者が飛び込んで来たり、ピンチヒッターで行ったバイトが違法だったり、銀行で強盗に銃を突きつけられたり…。だが次々に事件を解決する彼を人は「巻き込まれ探偵」「お人好し探偵」と呼ぶようになる。小説推理新人賞受賞作を含む、ちょっと心が優しくなれる癒し系ミステリー。 第20回小説推理新人賞受賞「ツール&ストール」を含む連作短編集。主人公・白戸修がスリ、万引、ストーカー、銀行強盗など、次々と事件に巻き込まれる。手に汗握る展開でありながら、ユーモアがあり、ハートウォーミングな新しいタイプのミステリー。(本の解説より) 巻き込まれ型のミステリー。 それも発端は、東京の中野駅からすべてが始まる。 巻き込まれと言うのも納得、主人公はMっ気があるみたいで、頼まれたり強圧的な態度をとられると断れない優柔不断な性格。 と、一見ネガティブに見えるようで、何かに閃くとミステリー探偵よろしく、問題を解決していく。 短編の内容は、スリ、ステ看板(違法看板)貼り、銀行強盗と時効まじかの犯人、ストーカー、万引き。 それぞれの出だしは好調、どういう展開になるのかと思いつつ、でも途中から失速、「情」へと繋げて小さくおさまってしまっています。おしい。 短編の宿命なのか、短いページの中で、決着をつけないといけない苦慮のため、ワンパターンの結末に陥ってしまっているようです。 分類は、ほんわかミステリーでしょうか。
「福家警部補の挨拶」のスリリングな警部補vs犯人とは、まったく趣の異なる内容でした。 |
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2010.8.15 容疑者Xの献身 天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。(本の解説より) 信じられないような完全犯罪を400ページ弱の小説に凝縮させた読み応えがあり緊迫感のあるミステリー。 好きだといってもここまでやるのかと。 犯罪が「死」なら、完全犯罪を考えた理由も「死」。 ここまでやる理由も納得できるし、ここまでの理由づけがないと説得力がない。 ラストは涙してしまう。 人の良心に心が揺さぶられる。 湯川学が悪役に見えてくる。 生きるために人を傷つけ殺して生き延びた「白夜」「幻夜」。
逆に、生きるために懺悔し自白した「容疑者Xの献身」。 表と裏の関係。 理論派東野圭吾の真骨頂でしょう。 人は何のために「生きる」のか、そんなテーマも、この小説でちょこっと考えさせられましたね。 |
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2010.8.6 梨花は寮母、掃除婦、犬屋の女中まで経験してきた四十すぎの未亡人だが、教養もあり、気性もしっかりしている。没落しかかった芸者置屋に女中として住みこんだ彼女は、花柳界の風習や芸者たちの生態を台所の裏側からこまかく観察し、そこに起る事件に驚きの目を見張る……。華やかな生活の裏に流れる哀しさやはかなさ、浮き沈みの激しさを、繊細な感覚でとらえ、詩情豊かに描く。(本の解説より) 1956年の作品。 芸者置屋のことばを文章にしているので、自分のなかではとっつきにくく、読むのに結構時間がかかった。 それでも、読みなれてくると、なかなか味わい深い。 先に成瀬巳喜男監督の映画「流れる」を観ているので、そのシ−ンを思い出しながら読めた。 主人公である女中の梨花が置屋で見たこと、感じたことを描いている。 梨花のいう「くろうと(置屋)」と「しろうと」の違い。 映画ではあまり、女中の梨花の独白はなかったと思うが、小説では登場人物の所作を繊細に観察し、リアルでいやらしく女の心の中を吐きだしている。小姑の目線とも言えますが。 だから、映画よりも主人公の女中の梨花の感じたことが、より鮮明で強調されていて、読んでいて面白い。 梨花の名前が呼びにくいと主人は勝手に「春」と呼ぶことにする。 凋落しているのに見栄をはり、お金がないのに、「くろうと」の使いっぷり。 何気ない女主人の色っぽい所作(倒れ方)に「しろうと」にはできないゾクゾク感を覚える梨花。 このシーンが一番印象深いです。 飼い犬の死、鋸山事件、登場人物たちの人間模様。 梨花は夫も子供も亡くし、身寄りは従姉だけ。 せちがらい「しろうと」の世界より、愚痴をつぶやきながらも次第に「くろうと」の世界に魅力を感じて行く梨花。 「女」が見つめる「くろうと」の世界、面白かったです。
男(私)の感想ですが、はたして女性が読んでどう感じるものだろうか気になります。 |





