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告白 2010.8.11 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。(本の解説より) 一気に読めます。 この小説に関わった登場人物の一人称ですべてが、語られます。 映画「羅生門」を思いだした。 その登場人物は、自分勝手で都合のいいように考え、解釈し、行動する。 どれが真実か分からないいわゆる「藪の中」状態。 こういうことをするとあの人はどうなんだろうかとか、人の気持ちを考えない我儘な行動。 自分だけが可愛くて自分だけが優れていて、でも屈折していて、人の気持ちを考えられない。 人に頼ろうとしないし、相談だったり、話もしないし、できないのかもしれない。 この小説を読んで、悲しいかな、これが今の時代なのかもと思う。 老人の行方不明、子育て放棄、虐待、現実に起きていることが、この小説に当てはまる。 人の気持ちの複雑さは、今に始まった訳ではないはず。 何かが失われているのは間違いない。
悲しいラストです。 そこまでやる必要があるのか、この小説の問いかけが、すべてラストにあらわれているような気がします。 今回は、抽象的な感想になってしまいました。 |
読書
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2010.7.24 あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。――それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……シリーズ第3弾。(本の解説(上)より) ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど……ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ?(本の解説(下)より) ミステリーの謎解きとは別の謎解きが面白い。 連続放火事件の犯人が誰かという謎解きの面白さよりも、小佐内さんの行動を謎解きする方が面白い。 そして、こえ〜い。 くれぐれも、カバーデザインのかわいらしさに騙されてはいけません。 新聞部の1年生に告白されて、彼をサポートする小佐内さん。 しかし、彼女の行動は、犯人の行動と似通っていた。 彼女が連続放火事件の犯人なのか。 小鳩君も女の子に付き合ってほしいと言われ、つきあっていた。 やがて、連続放火事件で、2人は繋がってきた。 「小市民」になりたいと思っていた小鳩君と小佐内さんは、高校生になって、もうその面影もない。 特に、小佐内さんの復讐は、怖い。 小佐内さんのイメージは、青井優ちゃん。 NHK「龍馬伝」のお元を見ながら、ふと思った。 やさしい口ぶりのなかに潜む悪魔的な囁き。 「おいたは、もうだめ。何もしないのが、1番いいと思うの」 でも、高校生役はちょっときついかな。 一般的なミステリー(連続放火事件)の面白さを、違うミステリー(小佐内さんの行動)も重ねて変える新しい感じの小説。
面白かったです。 |
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2010.7.16 下関の大学生・翔太郎がひょんなことから知り合ったのは、門司を拠点とする暴力団花園組組長の娘・絵里香。彼女がお金を必要としていることを知り、冗談で狂言誘拐を提案したところ絵里香は大はりきり。こうしてひと夏の狂言誘拐がはじまった。 いっぽう、そんなこととはつゆ知らない組の面々。身代金を要求する電話を受け、「組長よりもヤクザらしく、組長よりも恐ろしい」絵里香の姉・皐月が妹を救うべく立ち上がる。キュートな姉妹、トボけた翔太郎、個性豊かなヤクザたちの活躍が楽しいユーモア誘拐ミステリー。(本の解説より) 「館島」「密室の鍵貸します」「密室に向かって撃て!」「完全犯罪に猫は何匹必要か?」 に続いて5作目。 やってくれますね。 お金の受け取り方法のトリック、ロープウェー方式だけだと思っていたら。 何の何の、時間軸の見事な騙し。 ユーモアミステリーだと思って、軽んじたら大間違いですよ。 この小説も、どうしてどうして本格的なミステリーです。 オトぼけユーモアも、セリフで笑わせるより今回はドタバタ調の笑い。 「烏賊川市シリーズ」と違うので、笑いの質を変えているのかも。 まあ、それはそれで、可笑しかったですけど。 ラストのワカメ男には、大笑いでした。 さらに下関と北九州市の地理のお勉強まで、できました。 烏賊(いか)の次は、たこ焼き屋。
東川 篤哉さんは、お魚系がお好き? 烏賊(いか)にも、フットワークの軽い楽しい小説でした。(ちょっと、ダジャレがくどい) |
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2010.7.11 五年前に愛を交わしながらも突然姿を消した女、瞭子と偶然の再会を果たした弁護士の栖本誠次は、翌朝、彼女の死を知った。事務所の留守電には、相談したいことがあるとの短い伝言が残されていた。手がかりを求めて彼女の故郷を訪ねると、そこには別の人間の少女時代が…。愛した女は誰だったのか。時を遡る執拗な調査は、やがて二十年前の産業誘致をめぐる巨大な陰謀と、政財界をも巻き込んで蠢く裏社会の不気味な構図に行き当たる。謎とサスペンスの中に孤独で真摯な愛の行方を描き切った第52回日本推理作家協会賞受賞の傑作、待望の文庫化。(本の解説より) 1998年作品。 実に王道のようなオーソドックスな作品。 700ページにも亘る直球勝負の醍醐味。 ミステリーというジャンルよりは、ハーボイルドに近い。 五年前に別れた女が突然死に、実は別の人物だと。 いったい彼女は誰なのか。 男のわがままとでも言いましょうか。 彼女をいまだに愛している。 弁護士の男は過去に父親が自殺している。 自分のせいで自殺したのではと。 また弁護した男の冤罪を晴らし無罪を勝ち取ったが、釈放後その男は女子高校生を殺した。 その2つの暗い過去を背負ってる。 悲しいことがあっても、涙を流したことがない。 実は、女も深い闇の中のような過去を背負っていた。 おじさんには、ラストの小林瞭子の手紙が辛い。 彼女の暗い過去、何故違う人間にならないといけなかったのか、主人公を愛していたことが余計に、主人公の気持ちを揺さぶる。 主人公は手紙を読んで涙を流した。いつからの涙か。 小林瞭子は、あえて悪い女であってほしかった。
刑事くずれの探偵が、この事件で主人公と心を通わせるくだりがいい。 丁寧で寄り道しないストレートな作風は、女の謎を探る主人公の気持ちと同調できる。 カバーデザインもいいです。 |
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2010.6.19 『招き寿司』チェーン社長・豪徳寺豊蔵が破格の金額で探偵・鵜飼杜夫に愛猫の捜索を依頼した。その直後、豊蔵は自宅のビニールハウスで殺害されてしまう。なぜか現場には巨大招き猫がおかれていて!?そこでは十年前に迷宮入りした殺人事件もおきていた。事件の鍵を握るのは“猫”?本格推理とユーモアの妙味が、新しいミステリーの世界に、読者を招く。(本の解説より) 東川篤哉さんは「館島」「密室の鍵貸します」「密室に向かって撃て!」に続いて4作目の読書。 相変わらず絶好調のユーモア。 今回は「猫」フルコースのミステリー。 一応断っておきますが、猫は食べないですから。 さしずめ、生カニを食べて、茹でたカニをしゃぶり、カニ鍋をして、最後にカニ雑炊をしたようなもの。 まあ、よくここまで、馬鹿馬鹿しく、いえ、真剣に猫づくしのトリックを考えたものだ。 招き猫、味噌汁、鰹節(おっと、あぶない)、そして最後は三毛猫は○○だった。というオチ。 それと日本映画ファンには嬉しい内容があります。 「丹下左膳餘(よ)話 百萬両の壺」のセリフが出てきます。 猫を捜すシーンで「さて10年かかるか20年かかるか、まるで仇撃ちだ」というセリフ。 わざわざ上記の映画の内容まで登場します。 「百万両の猫」語呂がいい。実際120万円の依頼で猫捜し。 東川篤哉さんは、結構マニアックな映画ファンかもしれない。 2人の刑事が殺された被害者の家に行き、ボケた大家との会話が笑ってしまう。 刑事が何度説明しても、また最初の会話に戻ってしまう循環系の可笑しさ。 こういうベタな笑いは好きです。 また「人間が猫を捜すという行為そのものが、無理なんじゃないですか」と探偵の助手が言うと、
探偵は「そんなことはない。猫が人間を捜すより可能性がある。諦めるのはまだ早い」と。 こういう切り返しの笑いも結構好きです。 「スパダ宮の柱廊」は知らなかったなあ〜。 |





