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  「クリスマス休戦」

 1914年・第一次世界大戦。冬の12月。
 ドイツ軍とフランス軍・英軍が、100メートルぐらいで隔てあう塹壕(ざんごう)戦は、砲撃の応酬で悲惨なものでした。
 その最前線のドイツ軍の塹壕に、クリスマスの日、一人の男が慰問に訪れます。彼の名は、ヴァルダー・キルヒホフ。
 当時、世界で最もチケットをとる事が困難といわれるバイロイト音楽祭に、1911〜14年にかけて4年連続出演するほどの高名なドイツのテノール歌手です。
 ドイツ軍の塹壕から、キルヒホフの美しい歌声が、凄惨な戦場に響きわたった。それは、100メートル先の敵国フランス軍の塹壕にまでとどいたのでした。すると、フランス軍の中から
 「この歌声は、パリのオペラ座で聞いた、ヴァルダー・キルヒホフのものだ」と叫ぶものがいた。
 その歌声に聞き覚えがあることに気付いたフランス将校は、ドイツ軍の塹壕に向かって大きな拍手をおくった。すろと、その拍手を聞いた、キルヒホフは、殺しあって憎むべき敵でありながら、自分の歌声に拍手を送ってくれた人がいることに感動する。彼は、相手の気持ちに応えるために、思わずドイツ軍の塹壕から飛び出して、笑顔でゆっくりと敵に向かって歩き出した。そして両軍の中間地帯(ノーマンズ・ランド)を横断し、拍手を送ってくれた、敵の将校に、深々と優雅に挨拶をしたのでした。その瞬間、戦場は、戦場でなくなってしまった。
 この様子を見ていた両軍の兵士たちが、塹壕から出て来て敵兵と交流してしまったからである。休戦というのは交戦国の上層部が取り決めるのが普通だが、現場の兵士から生じるのは稀なことであった。
 人々は、後にこの日の出来事を、「クリスマス休戦」と呼んだ。歌が、憎しみをこえた瞬間の出来事だった。この実話を基にして、2005年に映画が作られています。「戦場のアリア」(2005年のフランス観客動員第1位)です。私は観てはいませんが、映画では女性の歌声を戦場に響かせている感動ものという。

 検索している時に、クリスマス休戦に関する面白い「アディダスのCM」を見つけました。休戦のさなか、ある前線の中間地帯で実際にサッカーの試合さえ行われたという。イギリス軍VSドイツ軍で、結果は2−3でドイツ軍の勝利だったそうです。
 サッカーに興じていた瞬間、彼らは普通の若者たちに戻っていたのではないでしょうか。銃を持つことよりも、ボールを追いかけている方が似合う若者たちに。

 http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=oP-VBAD0yUM

 現場で勝手に交流されたら戦意が落ちるということで、両軍の休戦に合意した兵士たちは、上から厳重なる注意を受けたのだという。両軍の上層部は、翌年のクリスマスには砲撃を増強するよう命じたのだった。クリスマス休戦の後、第一次世界大戦はさらに3年も続き、2千万にのぼる人命を奪った。戦争の真っ只中で起きたこの清々(すがすが)しい平和の物語は、これからも生き続け、人は決して殺し合いなんか望んでいないんだ、友人になって欲しいのだということを、訴え続けていくことでしょう。

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「西部戦線異状なし」という第1次大戦を描いた名作映画ありました。どんな戦争もそうですが、悲惨なものですね。それだけに、この「クリスマス休戦」の話は、人間の醜さとは逆のやさしさを見せてくれて、ちょっぴり救われます。

2009/7/13(月) 午後 0:16 [ terutinn ] 返信する

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ずいぶん昔に見た映画ですが、忘れてしまいました。たしかドイツ人の作者による戦場体験小説の映画化ですね。小説ではあまりにも描写がすさまじので作者やその家族は危険を感じて亡命していますね。
休戦というのは上が決めるもので、現場で勝手に休戦されたらたまりませんね。勝手に休戦した部隊は両軍とも上に睨まれて、激戦区に投入されたそうです。

2009/7/13(月) 午後 10:32 勢蔵 返信する

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