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「応挙の幽霊」

     「応挙の幽霊」
 
 夏には、ちと早いですが、今日は、幽霊の話にお付き合い願います。
 
 「今人、幽霊といへるものは、足なきもののやうに思へり。しかるに、百年以前に描くところには、ことごとく足あり。さて、この足なき幽霊は、いつの頃より出来しといへるに、いと近く、円山応挙よりおこりし也」      (随筆『松の落葉』 文政12年・1829)
 
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 この文章によると、幽霊の絵で凄味があった応挙によって、腰から下がかすんだ幽霊のスタイルが生まれたというわけです。
 『応挙の幽霊』という落語があります。落語ですから、ちっとも怖くないんですが、はしょって話しますと、書画骨董屋が客に、「応挙の絵だと思うんですがね」と、勧める。客は「オウキョでもラッキョでもいい。気に入った。明日届けてくれ」と、内金を払う。仕入れ値の10倍以上で売れて、「これだから、この商売やめられねえ」 これも掛け軸の幽霊のおかげだと鰻と酒を供える。「かかあがいたら、喜ぶだろうなあ」と、歌を一節唄うと、あれ?その鰻と酒が減っている。 急にあたりが暗くなり、涼しくなった。三味線の音とともに掛け軸から女幽霊が出てきた。
「こんばんわ、私は幽霊です。久しぶりに酒と鰻をいただいて、あたしゃ、嬉しくて…、そばに行ってもいい?」と彼女は骨董屋の横に来て、「もう一杯ちょうだい」と酒をせがむ。
 彼女いわく、どこでも幽霊の絵は三日か四日は掛けて眺められても後は女子供に怖がられてお蔵入り、ここでは認められて嬉しいというわけだ。「もう一杯」と女幽霊は骨董屋と差しつ差されつ、幽霊のつま弾く三味線に合わせて都々逸など唄って酒酌み交わす。明るく色っぽい幽霊はやがて酔っぱらって掛け軸に戻ったが、手枕で向こう向いて眠り込んでしまった。
 「明日の朝までに、この酔いが醒めれば良いが…」
 という骨董屋の困ったつぶやきがサゲになる。
 
 
米国カリフォルニア州のカリフォルニア大学バークレー美術館の所蔵・応挙の落款あり
 
 幽霊というのは、昔から美人と決まっているようですね。美人以外は「化け物」と呼ぶんだそうです。これも落語のくすぐり。しかし幽霊は、腰から下がありません。
 江戸川柳に 「幽霊は あの世へぼぼを 置いて出る」 というバレ句があります。
「ボボ」は何ですか?なんて訊かないでくださいな。今でも九州で広く使われていますな。 以下4つの怪談小噺です。
 
 茶釜を煮立てて、茶袋を入れれば、むらむらと立つ湯気に中より、白無垢を着たやつが現れ出た。「ヤァ!幽霊ではないか、何しに出た」といえば「ほうじがたりませぬ」
 言うまでもなく、法事とほうじ茶をかけたものですね。
 
 お菊の亡霊が出るという古井戸へ、旅僧が来て「さてさて、不憫なり」と数珠を取り出して、経を唱える。「俗名お菊、頓生菩提(とんしょうぼだい)、なんまいだ、なんまいだ」と言えば、お菊の亡霊現れて、「どう勘定しても、九枚でございます」
 『皿屋敷』という噺がありますね。お菊が出るというので、怖いもの見たさで毎晩夜店が出るほどの賑わい。なんとその夜は18枚枚まで数える。「数を間違ってないか」、サゲが「風邪気味なので明日はお休みです」
 
 男が昼飯を食いかけていると白無垢着て、色青き女がドロドロと現れる。よく見れば、前に死んだ女房なり。「これカカア、死んで5、6年になるのに何故、幽霊になって出た」、「逢いたさのあまり、迷って来ましたわいナァ」、「幽霊ならば、夜に出そうなものだ。何と間抜けな」 と叱りつければ、幽霊、涙ぐみて 「夜は、気味が悪い」
 
 この頃、西寺町の墓地より幽霊が出ると聞いた男、「よし、俺が出ぬようにしてやろう」と一杯ひっかけ、大石塔の陰に隠れて待ちうける。案の定、夜中に「ヒュウ〜ドロドロ〜」と出て、南のほうに行く。男は持って来た粘土で幽霊の出てきた穴を埋め、踏み固めて、また隠れる。おっつけ幽霊戻って、元の穴へ入ろうとするのだが、どうしても入られず、幽霊、力を落とし「ああ、もはや、我が命もこれきりじゃ」
 
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やっぱり落語は面白いですねww
後ろ向いた幽霊の絵なんて売れませんねw
ポチ☆

2010/4/6(火) 午前 9:19 ASKAママ

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幽霊になってでも出てきて欲しい人もいる、あの世があるのなら、そこで会えればいいが、そんな思いがこもるのか、でも会いたくない人が幽霊になって出てきたらどうしようなんてつまらぬことしばし考え

2010/4/6(火) 午前 11:59 [ medaka842 ]

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確かに応挙の幽霊は怖いですね
それゆえに落語の幽霊はよけい面白いです

2010/4/6(火) 午後 2:32 [ a5215jp ]

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ASUKAママさんへ・落語は演じる人のうまさによって、どっぷりとそのバーチャルの世界に入ってしまいます。ナンセンスな噺が沢山ありますが、「そんな馬鹿な!」と思わせないのが演者の力量なのでしょう。ほろりとする人情噺や、大いに笑った噺の後は、日本人に生まれてよかったなあ、と至福を感じます。

2010/4/6(火) 午後 7:54 勢蔵

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めだかさんへ・返すコメントの言葉が見当たりません。
愛する人には幽霊になってでも、現れて欲しいものです。

2010/4/6(火) 午後 8:02 勢蔵

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コンタク亭さん、でいいのですよね。
夏になると怪談噺がよくかかります。講談の怪談話は怖いですが、落語は笑うだけですね。

2010/4/6(火) 午後 8:43 勢蔵


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