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(画像1枚目:上司と部下、先輩と後輩など職場の上下関係から生まれるパワハラ。
どの職場にも起きる可能性がある。
2枚目:【図表】職場でのいじめについての相談内容)
新潟日報社
[職場が危ない 新潟パワハラリポート]1
傷つく心と体
厳しい叱責で健康被害
法整備進まず実態不透明
2008.11.13 生活A-10版 15頁 朝刊 (全1,571字)
地位や権限を利用した嫌がらせ、パワーハラスメント(パワハラ)が働く現場に影を落としている。
上司や先輩の暴力、暴言、行き過ぎた指導がもとで離職に追い込まれる人がいれば、
自殺する人までもいる。
職場環境を悪くし、家族や周囲に深い傷を残すパワハラに、一部の企業は対策に乗り出した。
だが「指導」と「嫌がらせ」の線引きは難しい。
パワハラと向き合う人々を県内で追うとともに、解決の糸口を探った。
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「何人もから一日中、責められたことしか覚えていない」
下越地方の食品メーカーに勤める男性(30)は記憶の断片をたどり、重い口を開いた。
四月に診察を受け、上司の厳しい叱責(しっせき)によるうつ病と診断された。
就職してわずか一年半だったが、治療のため休職した。
年かさの先輩四、五人と共に食品の下処理などを担当した。
経験が浅く一番年下だが、職場は「職人気質(かたぎ)」。
仕事の仕方を教えてもらったことはほとんどなかった。
昨冬の夜勤中、材料の扱いを誤った。
製造工程上の大きなミスだった。
顔を合わせるたび、上司や先輩が机をけり、怒声を上げた。
それは夜通し続いたという。
以降、仕事の重圧は再度のミスを招き、叱責もエスカレートした。
失敗におびえる日々が続き、心身に変調をきたした。
「ミスした自分が悪い。だが、ここまで追い詰めることはないのではないか」−。
男性は今も二週に一度通院する。
症状改善や職場復帰のめどは立たず、将来の不安は消えない。
◆ ◆
中越地方の情報技術系企業に勤める四十代の女性はこの四年間、自宅前での待ち伏せや、
休日にかかる電話などの嫌がらせを受けてきた。
相手は上司。
勇気を振り絞って会社幹部に
「上司のセクシュアルハラスメント(セクハラ)を止めてほしい」
と相談したが、
「お前にも原因がある」
と取り合ってもらえなかったという。
最終的に、女性と上司は今年の人事異動で別の部署に配属された。
最悪の状況は脱したが、女性は今も吐き気に襲われ、会社を休まざるを得ない日もある。
顔を会わすことはなくなったが、転属は意に沿わず、会社への信頼も揺らいだ。
「生活のためには辞められない。立場の弱い個人は会社と争っても勝てないので、
耐えるほかなく、泣き寝入り状態だった」
と彼女は振り返る。
同時に
「セクハラを止めるのは管理職の役目。放置はパワハラに当たる」
と憤る。
◆ ◆
職場の精神衛生改善に取り組む日本産業カウンセラー協会(東京)が二〇〇七年、
全国の産業カウンセラーを対象にしたアンケート調査がある。
日常の相談業務を通して、全体(四百四十人)の八割が職場にいじめが「ある」と回答。
いじめの内容では、パワハラを挙げた人が二百七十七人=複数回答=と突出していた。
セクハラと違って、パワハラ規制の法整備は遅れ、実態も
「ようやく調査に着手した段階」(同協会)
と不透明なまま。同じ叱責を受けても、パワハラと感じるかどうかの個人差もある。
しかし、厳しい叱責をパワハラだと感じ、体や心が傷つく人は現実に、県内にも存在している。
(次回は十七日掲載)
<パワーハラスメント(パワハラ)>
職場での地位など力の差を背景に、不適切な言葉や処遇などで人格を傷つけること。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)から派生した和製英語で、2001年から使われ始めた。
実態把握は進んでおらず、政府統計には登場しない。
暴力、侮辱のほか無視、業務外の命令、困難なノルマの強要なども繰り返せば該当する。
しかし、業務上必要な行為との線引きは難しく、セクハラと違って、
受け手の感じ方が判断基準になるとは限らない。
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