原典聖書研究

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男女の服装

 今日は聖書から服装のお話をしたいと思います。と言っても聖書が言っているのは服装の事ではないのですが? 問題の聖書箇所で一般の邦訳(英訳もほぼ同じ)は以下の様になっています。

旧約聖書 申命記22章 5節 
  新改訳・女は男の衣装を身につけてはならない。また男は女の着物を着てはならない。すべてこのようなことをする者を、をあなたの神主は忌みきらわれる。

  新共同訳・女は男の着物を身に着けてはならない。男は女の着物を着てはならない。このようなことをする者をすべて、あなたの神、主はいとわれる。

  口語訳・女は男の着物を着てはならない。また男は女の着物を着てはならない。あなたの神、主はそのような事をする者を忌みきらわれるからである。

  なにか、随分と封建的でニューハーフを聖書が禁じているのだと思われそうな記述ですが、聖書がここで言っているのは見当違いの事なのです。(もちろん聖書が見当違いではなく翻訳が見当違いなのですが。)以下にこの部分のへブル語の原典をそのまま日本語にしたものとそれを紀元前3世紀にギリシャ語に訳出した物の直訳を掲載します。前後の文脈はこちらから申命記の章節をクリックしてご覧ください。
http://bible.co.jp/bible/

直訳・へブル語 05 ・ 無い 彼が存在する 備品の 強い男 上 女 そして無い 彼が着せる 強い男 外套(=寝具)の 女 として 憎悪の ヤハウエ 神らあなた  全ての 作るは これら

直訳・70人訳 05 ・  無い 彼が確かに存在する 備品は 男の 上に 女、無いも 無い 彼が着せた(為) 男は 長服を 女を、それは 嫌悪ら 主に その 神に あなたの 彼が確かに存在する 全ては 作るは これらを。  

  一般の翻訳と原典の相違が分かりますか? 

 原典直訳と一般の翻訳では随分と様子が違います。第一の相違点は男には服ではなく「備品」となっている事です。へブル語でも70人訳でも同じです。

 ★当時の備品とは第一に水汲み用の水瓶をさしました。

  と言う事はこの「男の備品を女の上に乗せてはならない」と言う聖書原典の主張は「男用の大きな水瓶で女性に水を汲ませる無理な労働を、奴隷の主人はさせてはならない。」と言っているのです。

ではもう一方の「女の服を男に着せる」はどうなのでしょうか。

 原典直訳を注意して見てください。女の「服」では無くへブル語は「外套」70人訳は「長い上着」と言う用語が使われている事です。

  ★当時の上着(外套=長い上着)は貧しい人々にとって布団=寝具を意味しました。聖書の世界である乾燥地域でしかも山地=バレスチナは昼間は酷暑ですが夜間はすごく冷えるのです。それゆえにこの言葉の意味は「女の服を男が着る=男は女装してはならない」ではなく、「奴隷=労働者の衣服=寝具=布団代をけちって寒い思いをさせて私腹を肥やすな」と言う意味になります。衣服を小さくした事で奴隷の主人が得る利得の為に、寒くて凍えるかわいそうな奴隷が起きない様に、他者の生存権を冒す様な卑劣な弱いものいじめを聖書は禁止しているのです。

  ★更に、この部分の文脈を見てみましょう。22章の1節から4節は迷子になった家畜や落とし物の外套の返却命令です。そしてこのあとの6節からは鳥の巣にいる母鳥と卵の両方は取らず親は逃がせ等と言う命令です。そのあと13節からは口実を構えて離婚させられる女性の身分と権利の擁護です。

明確です。この文脈で聖書が言っているのは「弱者の正当な権利の擁護」なのです。

  結論です。
  
この「男の服を女に着せるな、女を服を男に着せるな」と言う翻訳は間違いです。聖書がここで言っているのは、「強い立場の者(お金持ち=資本家=王様や貴族)は自分の利益の為に弱い立場の者(使用人や奴隷)の当然の権利を侵害して私腹を肥やしてはならない。」と言う事なのです。この箇所で聖書が言っているのは、聖書全体の重要で大切な主題である「弱者の権利の擁護」なのです。

ですから、この箇所の正しい翻訳は以上の理由で下の様になります。 

  男用の大きな水瓶(備品)を女奴隷にもたせて水汲みの労働をさせてはならない。そして、女用の小さな服や布団を、一人前の男奴隷にあてがってはならない。

  聖書は 弱者に無理な労働を強要して弱者の犠牲の上に自己の収益を構築する事や、体よりも小さな寝具(当然安い)をあてがって、経費を削減して当然支出するべき労働対価を搾取する事を禁じているのです。ここで言われているのは「強者が私利私欲の為に弱者に無き寝入りさせる事の禁止」なのです。

となります。★ さて、そこで大切な問題が発生します。

  一体誰がこんな明確な聖書の主張をはぐらかして 、でたらめに訳出させたのでしょうか? それは簡単です、キリスト教会の歴史の中で常に聖書を翻訳しえたのは王様でした。最初はヒエロニムスによるラテン語ウルガタ訳です。彼が聖書を翻訳したのはローマ皇帝お命に因る物でした。

  以下はその経緯です。

 初代教会以来300年に渡ってキリスト教(当時は敗戦国ギリシャ語=ローマの植民地=被支配民族の宗教)を迫害していたローマ帝国は疲弊し、コンテタンチヌス帝は帝国の建て直す為に文化も経済もローマに勝っていたギリシャ人を味方にする為にキリスト教を公認しすぐに国教化します。そこで必要になったのがラテン語訳の聖書です。その当時は、ギリシャ語で書かれた新約聖書とへブル語の旧約聖書とギリシャ語に訳された70人訳旧約聖書しかなかったのです。コンタチヌス大帝の死後 、混迷するローマ帝国のヴアレンテイニアウス帝の要請で時のローマ教会のダマスス監督の命令でヒエロニムスはラテン語訳聖書の大改訳作業に取りかかりました。しかし名ばかりのクリスチャン政権であったローマ帝国側やローマ教会からの執拗な干渉を排除する術がありませんでした。聖典には含まれない外典や偽典も強引に含ませられてラテン語聖書(ウルガタ訳)を翻訳させられました。そればかりではありません、「皇帝や教会の監督の権能があたかも神から直接与えられたものである」という意向にそった翻訳となる様に、翻訳内容にまで沢山の介入を余儀なくされてしまいました。もし、逆らえば翻訳の承認はおろか下手をすると処刑ものでした。こうしてラテン語訳聖書は公にされたのです。それ以後ローマ帝国はこれ以外の翻訳を一切認めず、帝国の傀儡ラテン語教会(=今日のローマ教会の前進)と結託して悉く翻訳者は異端審問で処刑し訳された聖書は徹底的に焚(ふん)書されたのです。

 その次はルッターのドイツ語訳ですがご存じの通り彼は宗教改革の旗手となり、フリードリッヒ選定公の庇護の元に聖書翻訳を完成しました。当然、為政者=民衆の搾取者に都合の悪い翻訳など出来ようがありません。  
  その次は英国王ジェイムが命じて国教会の御用学者達に訳させた有名なキングジェイムズ訳です。もう説明は不要でしょう。

  当時の封建体制下においては、労働者や一般民衆の権利などを擁護する翻訳など出来ようはずはなかったのです。

  ですからこのようなとんでもない翻訳が現在までまかり通っているのです。 

と言う事で、聖書は今の時代に英訳を参考にせず日本語に訳し直される必要があるのです。

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閉じる コメント(6)

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これはおもしろかった

2006/9/25(月) 午後 9:04 [ 山崎 浩 ] 返信する

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ギリシャ語で確認したいなっと思って
gooleで「70人訳 インターネット」で検索したら
「初期の旧約聖書の翻訳」というページが出てきました。
そこで70人訳の原典と並んで、師匠の「セプトゥアギンタ訳聖書の日本語直訳」が見えました。
Online Greek OT (Septuagint/LXX) UTF8 Bible
と、師匠の直訳とを比べてみた
備品σκευηだと、わかりました

2010/11/6(土) 午後 7:06 [ め・め ] 返信する

数十年来の聖書に対する問題事項が解決しました。
助かりました。

2011/9/15(木) 午後 2:44 [ 美香 ] 返信する

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すてちゃん様

問題が解決して良かったですね!! でも他にもいっぱい翻訳の問題がありますのでそこもしっかり見て現実の教会や翻訳に疑問を持つ事を続けて下さいね!!

2011/9/15(木) 午後 3:16 [ 油食林間 ] 返信する

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大変興味深い記事を拝読させていただきました。私は欽定訳聖書を読んでいますが、もう少し以前にさかのぼり、これからジュネーブ聖書を読んでみようと思っています。感謝します。

2016/11/1(火) 午後 9:54 Tender_Loving_Care_of_God 返信する

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> Tender_Loving_Care_of_Godさん
出来ればへブル語や70人訳や新約ギリシャ語の原典に挑戦して見られませんか?
私に読めるぐらいですから実に簡単に物に出来ますよ。

2016/11/2(水) 午後 8:35 [ 油食林間 ] 返信する

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