原典聖書研究

ギリシャ語はギリシャ語の書庫や聖書関連記事は「無題」の書庫です。2018年5月29日より新投稿不能31日回復しました。

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神の意志

  今日は皆様とご一緒に大変難しいギリシャ語に取り組みましょう。他でもありません、第一ペテロの3章の17節です。原文と括弧内に単語の逐語訳を記します。

  κρειττον(よりよい) γαρ(何故なら) αγαθοπουνταs(善を行っているらは) ,ει(もし+現在時制=仮定条件を話者が認めている) θελοι(希求法現在形=彼が願えよ) το(その) θελημα(意志) του(その) θεοs(神) ,πασχειν(苦しみ続ける事) η(よりも) κακοποιουνταs(悪を行い続けている).

  これをギリシャ語を除いて日本語だけ(直訳)にしてみます。

  よりよい 何故なら 善を行っているらは、もし 彼が願えよ その意志 その神の 、苦しみ続ける事 よりも 悪を行い続けているらは。

  これを後置語などを前に置き変えてすこし日本語らしくしてみます。

  何故なら よりよいのです。善を行っているらが 神の意志なのです 苦しみ続ける事、悪を行い続けているよよりも。

  もう少し日本語にしてみます。

  何故なら、よりよい神の意志は 何時も善を行っている者が苦しみ続ける事です。悪を行い続けている者ではなく。

  これを、一般の翻訳と比較してみると聖書原文の大切な主張点が浮上します。 以下に一般の翻訳を記します。

  新改訳・もし、神の御心なら、善を行って苦しみを受けるのが、悪を行って苦しみを受けるより良いのです。
  新共訳・神の御心によるのであれば、善を行って苦しむ方が、悪を行って苦しむよりはよい。
  口語訳・善をおこなって苦しむことは―それが神の御旨であれば―悪をおこなって苦しむよりも、まさっている。
  岩波訳・神の意志(おもい)であれば、善を行って苦しむこと[もあるかもしれないが、それ]は悪を行っている為[に苦しむ]よりもよい。
  WEB・For it is better, if it is God’s will, that you suffer for doing well than for doing

   面白いですね。ギリシャ語の原文は明確に「善を行って苦しむ事が神の意志だ」と明言されているのにいずれの翻訳も 仮定を強調してあたかも善を行う物が苦しむ事もあり得るかのように訳出している事です。
  このような読み方の違いを議論してもきっとつまらないでしょうからこれ以上この部分関するギリシャ語や訳文に関するお話は止めて目を別の事に向けたいのです。

そう、この様な翻訳の微妙な、そして非常に大切な部分の理解にはこのペテロの手紙の著者の置かれている状況理解が大変大きな影響を持っている事を勘案する必要が在ります。

  ご存じのかたも多いかと思います。あのイタリヤのローマのバチカンの巨大なサントピエトロ大聖堂は何処に建てられているかご存じでしょうか? そう、この言葉を記したペテロの墓の上に建てられているのです。 どうしてペテロが死んだかご存じでしょうか? 有名な「クオバデス」をお読みになりましたか? 
  その真意の程は確かめようがありませんが、一つの事実は疑う事が出来ません。

  この言葉を語った使徒ペテロはローマ帝国の官憲によって捕縛されこの近くで逆さ十字架刑に処せられたのです。
  何か死刑に値する犯罪を犯したためでしょうか? 違います。ただ彼はイエスキリストの復活を伝えたのです。
  イエスキリストが良い事を行って十字架で処刑された様に彼も良い事をして十字架で処刑されたのです。神様の御心は何ですか? それがペテロがここで言っている事なのです。なぜならば使徒ペテロはローマでこの手紙を記し、そして期日うへずして処刑されたのですから。

  文字通りペテロは残された多くのキリスト者達に「善を行う者が苦しむ事が神の意志だ。だから私はローマ人の手によって処刑されるのだ。あなた方も私に倣って死に至るまで主に従え」というメッセージを記しての手紙を書き送ったのです。
  ですから、このペテロ記した手紙には明白にこの主題「世界は悪に支配され善が迫害されるのは当然だ」と幾度も記されているのです。ただ、残念な事いずれのその様なペテロの明確な主張も、ペテロを処刑した人々の子孫たち(ローマのキリスト教会)の手によって、全て「神の御心であれば『善を行って苦しむ事もあるかもしれない』でもそんな事はまず無いだろう」と訳出される様になったのです。

  使徒ペテロがこの様に訳出された翻訳を読む機会があったらきっとこういうに違いありません。「お前たちも先祖も、『もしかしたら本当に神様の恵みに預かる事があるかもしれない』でもそんな事はきっと無いだろう。」

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