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飛行クラブの母体である本田航空の機材フリートが約25年ぶりに変更されました。 今までの機材は正式名称は「セスナ式172P型」といって1980年代製造の機材でしたが、25年前の飛行機でも私が訓練を始めてから今までハードな使用に耐え、何の問題もなくがんばっていました。飛行機の寿命が車と比べて長いのは、主な構成部品の使用時間が決められていて時間を超えた部品は故障していなくても交換されるし、一定の飛行時間ごとにオーバーホールをして常に不具合が起こらないように整備されているからに他なりません。 軽飛行機の代名詞となっている高翼、三輪式、4人乗りのセスナは、172型(通称スカイホーク)といい、1955年のオリジナル型から172A型、172B型とマイナーチェンジをして1998年に現行の172S型になりました。各172型は概観上はよく見ないと何型かわからないほど形状の変化はありませんが、空力的な性能やエンジンの性能がよくなっているので、全体のパフォーマンスや信頼性はかなり改善されてきています。総製造数が5万機に迫る航空機の世界ではベストセラーの機種になっています。 今回本田航空が導入したS型と今までのP型の主な違いですが、外観は塗装が赤いラインからホンダジェットと同様なブルーの波型の塗装になった以外、見た目の変更はほとんどありません。 灯火類が電球から流行の高輝度LEDに変更になっています。25年の間に安全基準が変わったので構造が強化されて重量が100lbほど増えましたがこれも見た目には分かりません。内装は今までの黒からベージュ系になり、シートも同系のレザーシートに、操縦桿やスイッチ類、エアフロー、インターコムなども高級車っぽい感じになりました。そして、不時着しても安心なエアバッグや救命無線機も搭載されています。 エンジンもキャブレター式から燃料噴射式になり、馬力も20馬力アップしています。 そして、何よりも大きな変更点はS型から標準になったデジタル式の計器です。いままで計器パネルにズラリと並んでいた針式のアナログ計器は、2つの大きなLCDディスプレイに集約されてしまいました。航空機ではこのようなデジタル計器搭載の操縦席をグラスコックピットと呼んでします。 姿勢儀、速度計、高度計、羅針盤などの飛行計器は左側のPFDに、エンジン計器と航法用の計器は右側のMFDに表示されます。2つのディスプレイ(ハードウエア)は全く同じもので、いずれかが故障しても相互に補完できるようになっていますし、電源系統も分かれています。 この最新式の機材を貸してもらうための移行訓練が先月から開始されました。丸二日のコースで、初日は構造やグラスコックピット(G1000)の機能の座学。二日目が実機での訓練になります。 G1000の操作自体は慣れの問題として、計器やエンジンの仕様が変わると全く別の飛行機のように感じます。 まず、チェックリストの手順がかなり増えました。PFDの起動、エンジン始動、MFDの起動から、故障時の対応など体に染み付くまでは少し時間がかかりそうです。 エンジン関係はインジェクションになって始動方法が少し複雑になったものの、キャブヒートというキャブレター凍結防止の操作が不要になりました。(まだ飛行中に何か手順を忘れたもやもやした気になる) 手順自体は暗唱したとしてもチャックリストに従って行うのが掟ですので問題ないのですが、実際の飛行において飛行計器の違いがどうなるのか気になるところでした。S型で慣熟飛行中の教官からも「むずかしいよ〜、グタグタになるよ〜」と聞いていたのです。 さて、何とか手順に従ってG1000も起動できたし、エンジンも始動したので、いよいよ出発です。 地上走行の間に感じたのは、やはり機体構造の強化とか静穏化が効いてガッチリした感じになりました。スロットルやステアリングのペダル類もだいぶ重くなったように思います。 今回は大人4人なので出発前に燃料を10ガロン降ろしてきましたが、ほぼ最大離陸重量でのフライトです。 滑走路にアラインしてフルパワーに入れます。いままではフルパワーで2400+くらいでしたが2700+まで回るので少し違和感を感じます。速度計は物差しのような数字の書かれたテープが上から下へと流れていきます。物差しの中央部に窓があり、そこに数値で速度が表示されます。滑走路の中心線を維持するためのラダー操作しますがかなり重く感じます。速度のテープ上の60の少し下にRという文字が流れていきました。ローテーションの速度を示しています。Rが中央から下に移動したところで操縦桿を少し引くとゆっくりと地上を離れました。無意識に右ラダーを踏んで単発プロペラ機特有の左への偏向を打ち消しますが、今までよりもグッと踏み込まないとすべりが出るようです。すべり計は今まではU型のガラス管に鉄球が入っている単純で合理的な計器でしたが、G1000では姿勢表示の中心の三角の底辺のバーが左右にずれて滑っていることを示します。あれよあれよという間に場周高度に近づいてきました。高度計も速度計と同じように、テープ状の物差しが上から下に流れています。レベルオフの数字が近づいて来たので機種下げ操作をしましたが、レベルオフ高度をオーバーシュートしてしまいました。今までは針の位置とか針の動く早さを見て、針の動きを止めるという操作で安定しましたが、どうもデジタル計器は数字を読んでから、対応すると操作が後手になってしまうようです。乗る前に数字を追いかけると安定しないよ、とアドバイスをもらいましたがまさにそのとおりになってしまいました。 突然ですがライカの話。 ふと、思ったことですがライカのM3が発表されたのがセスナ172の前年の54年です。M型ライカはその後M2、M4、M5、M6、M7と続き、M8、M9でついにデジタルになりました。 M型ライカもオリジナルのM型の基本構造やデザインを殆ど変えずに生産され続けているのは、セスナと共通するものがあります。セスナのちょっとクラシックな主翼を支えるストリンガーや板バネ式の主脚などは今の技術から見てもシンプルかつ信頼性の高い構造で、ライカの基本設計のよさに通じるものがあります。 飛行機も目的地に行くだけならグラスコックピットとフライトマネジメントシステムの組み合わせは大変便利ですが、趣味で楽しむのなら沢山のアナログ計器に囲まれて飛ぶほうが味があります。
ライカも20年前には夢だったM型デジカメが実現してしまうと、よりオリジナルのM3,M2に興味がいってしまうのも皮肉なことです。 |
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アナログとデジタルの比較は全く持ってその通り同感です。友人と共同で64年式のVWカルマンギアをいじっていますが、機械を操作している感があって運転が楽しいです。電気に頼らないのは金属系機械式写真機に通じますね。
セスナと言えば飛行機、飛行機と言えばセスナと幼少の頃から刷り込まれてきたので中身が近代化されても外観がそのままであるのは大変うれしくまたデザインが優れている証拠だと思います。
個人的にはセスナと鉄腕アトムは同列のなんと言ったらいいか価値観なのです。
2010/5/6(木) 午後 9:58 [ hama ]
セスナは、昔一度だけ龍ヶ崎飛行場で乗ったことがあります。
素人がライカは皆同じに見えるように、私もセスナは今も同じに見えてしまいますが、地道に改良がさせてきているのですね。でもエンジンは今までキャブレターだったのですか。バイクでもすでにスークターまでインジェクションです。航空機は寒い高度を飛びますから、インジェクションの方がヒーターを使わなくて良いし、気圧によって混合比も自動的に調整してくれるのでしょうから便利でしょうね。コクピットはまるでテレビゲームのようですね。何でも「趣味的」にはアナログメーターが良いですよね。私も車はわざと液晶メーターでななく、ま〜るいアナログメーターの車種を選びました。
2010/5/6(木) 午後 10:25
hamaさま
セスナのライカミング式発動機も空冷水平対向四気筒で、約6000ccありますが180hpと控えめです。VWと同じ味があるかもしれませんね。新型でインジェクションになったとはいえ電子制御ではなく混合気の調整は気筒温度などをみて手動調整ですよ(笑)。始動もコツがあって下手するとカブるので、まるで大昔のバイクとか車のようです。
2010/5/6(木) 午後 10:35 [ セナ・ロッソ ]
がたぱしゃさま
セスナもライカも詳しくない人にはみんな同じに見えるでしょうね。ちょうどhamaさんへのコメントでも書いたところですが、インジェクションでもミクスチャは手動なんです。以前は回転計のビミョーな上昇とか、エンジン音の変化で調整していましたが、グラスコックピットになって各気筒温度がグラフ表示されるようになったので、それを見ながらノブを回してリーニングします。故障する要素は入れない、故障したら故障したことが分かる設計になっているのはライカのようでしょ!
2010/5/6(木) 午後 10:43 [ セナ・ロッソ ]