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例えば
さいはての世界には
さいはての世界に相応しい神があり
都会には都会に相応しい神があり
八百万もおられるのだ
さて
少年は生活の中で
神を感じたら即座に
謝意をあらわせるよう
五円玉を多量に持ち歩いている
神のおわすその場で
謝意をあらわせるよう
五円玉を多量に持ち歩いている
多量に持ち歩かねば間に合わぬほどに
神はおられるのだ
神といっても
自分にとって好ましいと感じうる神にのみ
祈りを捧げる
貧乏神が自分にはまとわりついている
と感じている
疫病神が自分にはまとわりついている
と感じている
が
彼らは黙殺します
のだがそれでもなお
多量に持ち歩かねば間に合わぬほどに
神はそこかしこに
日々の生活の中で
ふと
花の美しさに心惹かれたら
美しく花を咲かせてくれた神に
その花に出会わせてくれた神に
その美しさに気付かせてくれた神に
それぞれの神に謝意をあらわすため
花の根元に五円玉を三枚
賽銭は音を立て
自分の祈りに気付いてもらうために
という話を聞いてからは
音を立てぬよう そっと
おこがましい おこがましい と
音を立てぬよう そっと
神さまとそのようなお付き合いをするのに忙しく
既存の特定の宗教を持つに至っていない
同じように
美しい少女をみかけた際に手渡すように
「あなたは美しい ありがとう」と
書かれた名刺大の紙片を多量に
自分の連絡先なぞおこがましいと
「あなたは美しい ありがとう」と
書かれた名刺大の紙片を多量に
美しいと感じた少女にそっと
道行く美しい少女にそっと
美しい少女もそこかしこに
かつては少女にもそっと
五円玉を差し上げていたけれど
気持ち悪がられ
嫌がられ
謝意を
少女ともお付き合いに至らない
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