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昭和二十年五月一日 讀売新聞 [○○航空基地坂入報道班員發]
かえらざる翼
8-28、突入の寸前連絡絶つ
突入の寸前連絡絶つ 愁いの基地に矢継早や命中の飛電
沖縄周辺敵艦船群撃滅を期す豪壮な総攻撃が決行された二十八日、 この基地から総攻撃
の一翼を擔ふ神風特別攻撃隊の各隊員が、相次ぐ出撃をとげ人機諸共敵艦船に炸裂する
厳粛な瞬間が刻々と迫つたのである。
特有な金属音の中から特攻隊員の発信する電波を補捉しようと、全神経を打込んでゐた。
緊急作戦電報は次々と届けられてくる。暮色漸く深く、こゝ○○戦闘指揮所は息苦しい程
に張りつめた時を刻んでゐた。
全神経を傾けて電波と取組む電信員の左手は頻りとダイヤルを調節し、聴取り難い聲を
補捉しようとする努力に表情が蒼白んで見えた。
その時「突入」の電信が入つた。「発信機は」「○番機です」搭乗員桐畑小太郎上飛曹、
安達卓也少尉、 菅澤健二飛曹であることが次ぎ次ぎに判つた。よくぞやつてくれた。敵戦
艦を発見するや怒髪天を衝く必沈の気魄凄まじく、これが頭上に殺到して征つた崇高限り
ない機上神鷲の姿を想い、指揮所の誰もがふと瞑目した。
ところが同機から送られて来た電波は意外にも敵夜間戦闘機との遭遇であり、 そのまま
電波は後を絶つてしまつた。深い愁ひの影が誰もの顔を横切つた。あの邊りに多い夜間戦
闘機の執拗な追躡攻撃を受け、しかも一度これを受ければ殆ど攻撃続行の不能なことは餘
りにも判然としてゐたからだ。
幾時か経過した。また電波が入る。○○機下川正浪、上保茂両少尉、三島章二飛曹の搭
乗機である。電文は「空母に突入す」続いて「突入しつゝあり」「突入」と、傳はつた。
これを最後として同機からの無電は断つたのである。
私はこの日折柄の太陽のなかで、「最後の瞬間迄よく気を沈め十全の技倆をつくして敵
撃滅に當つて欲しい」との司令の壮行の訓示を受けてゐた隊員達の中から、この三人の姿
を思ひ浮べようとしたとき、一番機が離陸する頃機上から擧手の禮で父祖の地に永別を告
ぐる敬虔な姿が脳裡をかすめるのであつた。
引續いて山西富三郎二飛曹、生良景少尉、赤堀彰司二飛曹機から「戦艦躰當り」との凄
絶な無電があつた。ついで大石政則、清水吉一両少尉、犬童二飛曹機からまたしても敵戦
闘機と遭遇との無念な電信だつたが、それから更に○○分を経過した頃には敵夜間戦闘機
に撃墜されたと諦められていた安達卓也少尉機から、大型輸送船撃沈の無電が送られ沈着
果敢克く敵夜間戦闘機の追躡攻撃をかはして、大型輸送船一隻を屠り悠久の大義に生きた
経緯を明らかにした。
八幡神忠隊一番機(小野寺少尉は腹痛のため清水少尉と交替)の電信員として搭乗した
犬童二飛曹は、 一五三五離陸した。一九一三「ヒヒヒヒ(敵機ノ攻撃ヲ受ケツツアリ)」
を発信。次に、二〇〇九「敵艦船見ユ」を発信。その後、「ツ────── 」と長符が
十秒間続いて途絶えた。この発信音が途絶えた二〇一八が、即ち体当たりの時刻である。
また、百里原空で編成した「第一正気隊」一番機には、須賀芳宗少尉、岩崎久豊少尉そ
れに同期生の弥永光男二飛曹が搭乗して出撃、悠久の大義に殉じた。
聯合艦隊告示第一四五号
布 告
神風特別攻撃隊第三草薙隊、第二正統隊、八幡神忠隊、第一正気隊及白鷺赤忠隊員トシテ、
昭和二十年四月二十八日相続イテ勇躍出撃、敵ノ至厳ナル哨戒網並ニ猛烈ナル防禦砲火ヲ
冒シ沖縄周辺ニ蟠居セル敵艦船群ニ対シ、必死必中ノ軆当リ攻撃ヲ決行シ克ク其ノ精華ヲ
発揚シテ悠久ノ大義ニ殉ス、忠烈萬世ニ燦タリ、仍テ其ノ殊勲ヲ認メ全軍ニ布告ス
昭和二十年八月七日
聯合艦隊司令長官 海軍中将 小 澤 治 三 郎
資料によると、聯合艦隊告示第一四五号の対象となった「神風特別攻撃隊」は第十航空
艦隊で編成した次の諸隊である。[防衛研究所資料]
隊 名 航 空 隊 機 種 機 数 指 揮 官 戦死者 出撃基地
第三草薙隊 名古屋空 九九艦爆 14機 中 尉 永尾 博 28名 第二国分
第二正統隊 百里原空 九九艦爆 6機 中 尉 後藤 俊夫 12名 第二国分
八幡神忠隊 宇 佐 空 九七艦攻 3機 少 尉 清水 吉一 9名 串 良
第一正気隊 百里原空 九七艦攻 2機 少 尉 須賀 芳宗 6名 串 良
白鷺赤忠隊 姫 路 空 九七艦攻 1機 候補生 後藤 惇 3名 串 良
☆第二正統隊編成表(百里原航空隊)
一区隊一番機 操縦 中 尉 後藤 俊夫 (鹿児島・海兵73期)
偵察 少 尉 山下 久夫 (兵庫・予備14期・関大)
二番機 操縦 一飛曹 阿部 一之 (島根・乙飛17期)
偵察 二飛曹 漆谷 康夫 (福岡・甲飛12期)
二区隊一番機 操縦 少 尉 熊井 常郎 (群馬・予備14期・慶大)
偵察 二飛曹 福田 周幸 (福岡・甲飛12期)
二番機 操縦 一飛曹 片寄 従道 (福島・甲飛11期)
偵察 二飛曹 小野 義明 (福岡・甲飛12期)
三区隊一番機 操縦 上飛曹 緒方 忠幸 (福岡・丙飛10期)
偵察 少 尉 久保 強郎 (福岡・予備13期・明治専)
二番機 操縦 少 尉 小野 喜市 (東京・予備14期・慶大)
偵察 二飛曹 伊東 宣夫 (大分・甲飛12期)
☆八幡神忠隊編成表(宇佐航空隊)
一番機 操縦 少 尉 大石 政則 (佐賀・予備14期・東大)
偵察 少 尉 清水 吉一 (東京・予備13期・立大)
電信 二飛曹 犬童 憲太郎 (鹿児島・甲飛12期)
二番機 操縦 少 尉 十川 正澄 (大阪・予備14期・東農大)
偵察 少 尉 上保 茂 (東京・予備13期・明大)
電信 二飛曹 三島 昭 (香川・甲飛13期)
三番機 操縦 二飛曹 山西 富三郎 (岡山・乙飛18期)
偵察 少 尉 旗生 良景 (福岡・予備14期・京大)
電信 二飛曹 赤堀 彰司 (静岡・甲飛13期)
☆第一正気隊編成表(百里原航空隊)
一番機 操縦 少 尉 須賀 芳宗 (東京・予備14期・立大)
偵察 少 尉 岩崎 久豊 (山口・予備14期・中大)
電信 二飛曹 弥永 光男 (福岡・甲飛12期)
二番機 操縦 上飛曹 桐畑 小太郎 (大分・丙飛4期)
偵察 少 尉 安達 卓也 (兵庫・予備14期・東大)
電信 二飛曹 菅沢 健 (千葉・甲飛12期)
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艦を発見するや怒髪天を衝く必沈の気魄凄まじく、これが頭上に殺到して征つた崇高限りない機上神鷲の姿を想い>時代なのかも知れませんが、この表現には受け入れ難いものがあります。神だ鷲だと為政者の言葉を述べられても正直不愉快です。隊員達の思いも正直そうだったのですか?
2006/4/27(木) 午後 8:37
記者の作文としてお読みください。
2006/4/27(木) 午後 10:14
山本様
まず私のホームページ「 蒼空の果てに」をご一読ください。
http://www.warbirds.jp/senri/
2007/10/2(火) 午後 2:49