|
特攻の先駆者、関大尉。
航空自衛隊 http://www.warbirds.jp/senri/jasdf/
5-166、神風特別攻撃隊員の精神基盤について(4)
三、特攻隊員の心情について
先年まで航空自衛隊に在職されていた、中島正氏(当時海軍少佐)が「神風特別攻撃隊」
という本を出版されている。 フィリピンで「体当たり攻撃」を初めて採用した、二〇一空の
飛行長を勤め、以後第十航空艦隊及び第五航空艦隊の司令部付として、終始特攻作戦
を指導され、その間の状況がよく記述されている。
特に特別攻撃隊員の心情については、非常に鋭い観察をされている。 しかし、特別攻撃
隊員の心の底に秘められていた内面的なものについては、やはり理解できなかったので
はないだろうか。理解していても、立場上無視せざるを得なかったのかも知れない。
命令する側の者と、命令を受けて死を実行する者との立場の相違からくる物事の受け止
め方の差であろう。だから、特別攻撃隊員の心情については、体当たりを実行した当人と、
彼らと同じ境遇を体験した者にしか理解できない面があるのではなかろうか。
遺書一つを書くにしても、 男としての意地があり見栄もある。 だから、必ずしも本心を
そのまま書けるとは限らない。文面の裏に隠されているものを感じとることができるのは、
当時同じ立場にいた者だけではないだろうか。
数年前、十四期飛行予備学生出身者の手記をもとにしたテレビ映画「あゝ同期の桜」が
放映された。毎回のように女性との関係が題材となって戦争映画というよりも、恋愛映画
のように感じた人が多かったのではなかろうか。しかし私は、さすがに死んでいった者が
残した手記を忠実に映画化しただけあって、俳優の言動のぎここちなさは仕方がないとし
て、当人の心情をまざまざと感じとることができた。それは、彼らと心理的に共通の立場
を経験していたからである。
人間が死に直面して考えることは、最も身近かな人のことである。 即ち、親や兄弟など
肉親のことである。 自分が犠牲になることで、親や兄弟が無事に暮らせるならばという、
切羽詰まった考え方で自分の死を納得するのである。「あゝ同期の桜」における予備士官
は年齢的に最も身近な者が、最愛の女性であったのであのような手記となったのであろう。
近ごろ、特別攻撃隊関係者の手記や遺書などが整理保管され、または収録出版されてい
るので読む機会が多い。その大部分は予備学生出身者のもので、割合に思ったことがその
まま書かれていると思う。 これに反して、予科練出身者の手記などは非常に少ない。また
残っている遺書なども至って単純である。 これは表現力の問題もさることながら、 手紙や
日記などはすべて検閲されていた下士官、兵の生活では本心など書ける状態ではなかった
からである。その場に至って、遺書さえも書かなかった心理が理解されるであろう。
「雲流れる果てに」「あゝ同期の桜」 に続いて、予科練を主題とした映画を計画した東映が、
関係者の日記や遺書などがほとんどないために、 生存者の話を集めフィクションとして
「あゝ予科練」 のシナリオを書かざるを得なかったのも、 その間の事情を物語っている。
私自身も二度の特別攻撃隊編成に際して、遺書を書いた記憶がない。だからと言ってそ
れだけ立派な覚悟ができていたのでは決してない。人並み以上に生に対する執着もあり、
死に対する不安をもっていた。
近年同期生の会合で旧友と話す機会がある。同じ基地に居合わせて、出撃する同期生の
最期の面倒をみた者が、「身の回りのことは俺が片づけてやるから、 ご両親に手紙でも
書け」と、勧めても、「手紙など出すとかえって親に心配をかけそうだし、 またせっかくの
決心が乱れそうな気がする……」と言って、 何も書き残そうとせず、 万感の思いを胸に
秘めたまま出撃して征った様子を今にも泣き出しそうな顔をして話すのを聞き、また当時
の私自身の心境をかえりみて感慨深いものがあった。
昭和十九年十月二十五日、神風特別攻撃隊敷島隊の関行男大尉以下五名がスルアン
島沖のアメリカ空母に体当たり攻撃を実施したのを皮切りとして、終戦当日の八月十五日
までに海軍関係だけでも二、三六七機が出撃し、二、五二四名の貴い命がはかなくも消え
去ったのである。
彼ら特別攻撃隊員の大部分の者は、恐らく父母や弟妹など最も身近な人の無事を願うこ
とによって、自分の死を肯定し、未練を断ち切ったであろうと推察する。 関大尉の当時の
様子について中島少佐は、『……自室に戻った関大尉の思いはたゞ一人の母親へ、そして、
新婚間もない愛妻のもとへ幾度か去来したことであったろう……』と、記している。
そして、一握りの髪を副長玉井中佐に託して出撃したのである。
|
重い。想像を絶します。関係者本人でないと感じれない思い。
2006/10/17(火) 午前 10:58 [ さとる ]
ご来訪ありがとうございます。 今後とも宜しくお願い致します。
2006/10/17(火) 午後 0:56