老兵の繰り言

「特攻隊」の生き残りが後世に語り継ぐ鎮魂の記録です。続いて、自衛隊草創期のうら話などを紹介致します。

13想いで話

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            センピル大佐一行。

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        13-637、航空関係では英語が主流

航空揺籃の大正十年、海軍はセンピル大佐以下三十名をイギリスから
招聘してその指導を受けました。 だから、航空関係では、艦船以上に
英語が使用されていたのです。 飛行機の部品や工具など英語がその
まま使われていました。そのうえ、日本語と混用するので慣れるまでに
一苦労でした。

エルロン・フラップそれにラダーは一般化しています。スロットルレバー
にACレバー更にスチック、フットバー、 タブ、 カウリング、 スピンナー
など数え上げれば切りがありません。 ただし、 同じ品物を日本語と
カタカナを混用するので混乱するわけです。

チョークと云っても黒板に書く白墨のことではありません。 飛行機の
車輪止のことです。 九七艦攻は格納する際には主翼を折り畳みます。
飛行準備で主翼を上から落として延ばす際の掛け声は、 「レッコー」
でした。 ,


燃料積載の場合、燃料車から渡されたホースの筒先を、燃料タンクの
注入口に当てます。そして、燃料車の運転手に向かって、「ゴーヘー」
と指示します。 運転手は燃料ポンプを駆動させます。満タンになる前
に 「スロー、スロー、ストップ」 と指示します。 タイミングを失すると、
オーバーフローします。

エンジンの起動も英語と日本語の混用です。 操縦員がスイッチオフ
を確認して、 「スイッチオフ、 アッサーク」 と、 整備員に指示します。
整備員はプロペラを手で数回まわします。 次に「イナーシャー廻せ」と
指示します。 操縦員はイナーシャーの回転数を確認して「前離れ」と
指示します。整備員は前方の安全を確認して「前よーし」と復唱します。
これを聞いて「コンタクト」と呼称して、起動索を引っ張りプロペラ軸に
嵌合させるのです。

訓練用の九七艦攻は偵察席を改造して、 操縦席と連動の操縦装置
を設置していました。 この機体を「ダブル」でなく「デュアル」と呼んで
いました。

☆今日の一言☆  
呉越同舟

13-636、沢山な海軍用語

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             食器マッチ。

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        13-636、沢山な海軍用語

次に、日常生活に必要な用語も口移しで沢山習いました。デッキとか
テーブルはすぐに理解できました。 ところが、 テーブルマッチ、食器
マッチとなるともう分りません。 次に内舷マッチとくれば面食らうだけ
です。「マッチ」とは火を付ける道具のことではないらしいのです。

食器マッチとは布巾のことです。また内舷マッチとは雑巾のことです。
それなら、 テーブルマッチとはテーブルを拭く雑巾だと解釈しました。
ところが、テーブルクロスをこう呼んでいました。

オシタップやチンケースそれにソーフ?。各デッキには大中小一組に
なった大きな桶が備えられていました。 これをオシタップと呼びます。
それなら洗濯桶だと思いました。ところが、洗濯には使われず、朝夕
の甲板掃除の際に、ソーフや内舷マッチを濯ぐのに使用されました。

風呂をバスと呼ぶのは英語をかじっていれば理解できます。カワヤ? 
と云えば一瞬迷います。これは純粋の日本語です。洗濯ストップなる
物品も支給されました。ハンモック(釣床)は一般でも使います。

そもそも帝國海軍は、建軍当時イギリス海軍に範を求めました。だか
ら、用語をそのまま使ったとしても不思議ではありません。 ところが、
発音が日本式に訛って語源がハッキリしないのもありました。

☆今日の一言☆  
蓼食う虫もすきずき

13-635、僕と私について

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             予科練時代。

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        13-635、僕と私について

予科練に入隊して、教員連中から海軍独特の用語を始め箸の上げ下ろ
し(食事作法)までいろいろと教育をうけました。 先ず言葉使いからです。
海軍では一人称を「私」と云います。 対象語は「貴方」です。だから誰に
使っても失礼はないのです。 練習生は中学校の延長で「僕」を使ってい
ました。「僕」の対象語は「君」で友人間や目下の者にしか使ってはいけ
ないと教わりました。

「貴様と俺」「君と僕」「貴方と私」確かにそうです。 だから、 上級者や
同僚など誰に使っても無難な「私」を使うように指導されました。辞書に
よれば「僕」とは、
「男が同等 (以下) の相手に対して使う、砕けた自称。」 とありました。
また陸軍では、「自分」と言っていたそうです。

☆今日の一言☆  
桑田変じて海となる

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13-634、戦艦大和の出撃

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             戦艦大和。

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        13-634、戦艦大和の出撃

比島・硫黄島を席捲したアメリカ軍は、 遂に沖縄に進攻してきた。次は
本土への進攻も時間の問題となった。一部では「本土決戦」が叫ばれて
いたが、B29の爆撃に対しても有効な対策もなく、そのうえ地上戦闘と
もなれば全国土は焦土と化し、 国民の犠牲は更に増加することは明白
であった。

この事態を解決するには、速やかな講和以外に策はない。それには天皇
に戦力の枯渇を認識して頂く以外に道はない。そのためにも、レイテ海戦
の二の舞を踏んではならない。これが、高松宮及び米内海軍大臣を始め
とする海軍首脳陣の認識であった。

その手段として、戦艦大和以下の水上部隊を温存せず、早々に出撃させ
る決断となったのである。勿論、艦隊が無事沖縄に到着し、砲台となって
敵の上陸軍を撃破できるなら、 講和の条件を少しでも有利にできるとの
読みがあったことは否定できない。

しかし、 天皇は頑迷なる重臣達の言葉に惑わされ、天佑による「神風」を
ご期待された。 そして、廣島・長崎の原子爆弾による、あの想像を絶する
被害を受けて初めて和平の道を選らばれたのである。

☆今日の一言☆  
春宵一刻値千金

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            「修羅の翼」角田和男著。

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        13-634、大西長官特攻の真意

(参考図書:角田和男著「修羅の翼」今日の話題社。)
「修羅の翼」から、大西長官の特攻の真意について、参謀長小田原大佐
の話を紹介致します。

しばらく考えていた参謀長は、
「そうかそれではもう一度分かり易く私から話そう」と、言葉を選ぶよう
に静かに話し出した。

「皆も知っているかも知れないが、大西長官はここへ来る前は軍需省の
要職におられ、日本の戦力については誰よりも一番良く知っておられる。
各部長よりの報告は全部聞かれ、 大臣へは必要なことだけを報告して
いるので、 実情は大臣よりも各局長よりも一番詳しく分かっている訳で
ある。その長官が、『もう戦争は続けるべきではない』とおっしゃる。

『一日も早く講和を結ばなければならぬ。 マリアナを失った今日、敵は
すでにサイパン、成都にいつでも内地を爆撃して帰れる大型爆撃機を配
している。残念ながら、現在の日本の戦力ではこれを阻止することがで
きない。それに、もう重油、ガソリンが、あと半年分しか残っていない。
軍需工場の地下建設を進めているが、 実は飛行機を作る材料のアルミ
ニウムもあと半年分しかないのだ。 工場はできても、材料がなくては
生産を停止しなければならぬ。

燃料も、せっかく造った大型空母信濃を油槽船に改造してスマトラより
運ぶ計画を立てているが、とても間に合わぬ。半年後には、かりに敵が
関東平野に上陸してきても、工場も飛行機も戦車も軍艦も動けなくなる。

そうなってからでは遅い。動ける今のうちに講和しなければ大変なこと
になる。 しかし、ガダルカナル以来、押され通しで、 まだ一度も敵の
反抗を喰い止めたことがない。このまま講和したのでは、いかにも情け
ない。 一度で良いから敵をこのレイテから追い落とし、それを機会に
講和に入りたい。

敵を追い落とすことができれば、七分三分の講和ができるだろう。七、三
とは敵に七分味方に三分である。具体的には満州事変の昔に返ることで
ある。勝ってこの条件なのだ。残念ながら日本はここまで追いつめられ
ているのだ。

万一敵を本土に迎えるようなことになった場合、 アメリカは敵に回して
恐ろしい国である。 歴史に見るインデアンやハワイ民族のように、指揮
系統は寸断され、闘魂のある者は次々各個撃破され、残る者は女子供と、
意気地の無い男だけとなり、日本民族の再興の機会は永久に失われてし
まうだろう。このためにも特攻を行ってでもフィリッピンを最後の戦場に
しなければならない。

このことは、大西一人の判断で考え出したことではない。東京を出発す
るに際し、海軍大臣と高松宮様に状況を説明申し上げ、私の真意に対し
内諾を得たものと考えている。

宮様と大臣とが賛成された以上、これは海軍の総意とみて宜しいだろう。
ただし、今、東京で講和のことなど口に出そうものなら、たちまち憲兵に
捕まり、あるいは国賊として暗殺されてしまうだろう。死ぬことは恐れぬ
が、戦争の後始末は早くつけなければならぬ。

宮様といえでも講和の進言などされたことが分かったなら、命の保証は
できかねない状態なのである。もし、そのようなことになれば陸海軍の
抗争を起こし、強敵を前にして内乱ともなりかねない。

極めて難しい問題であるが、これは天皇陛下御自ら決められるべきこと
なのである。宮様や大臣や総長の進言によるものであってはならぬ』と
おっしゃるのだ。

では、果たしてこの特攻によって、レイテより敵を追い落とすことができ
るであろうか。これはまだ長官は誰にも言わない。同僚の福留長官にも、
一航艦の幕僚にも話していない。しかし、

『特攻を出すには、参謀長に反対されては、いかに私でもこれはできない。
他の幕僚の反対は押さえることができるが、私の参謀長だけは私の真意
を理解して賛成してもらいたい。他言は絶対に無用である』

として、私にだけ話されたことであるが、 私は長官ほど意志が強くない。
自分の教え子が(参謀長は少佐飛行隊長の頃、一時私たち飛行練習生の
教官だったことがあり、私の筑波空教員の頃は聯合練習航空隊先任参謀
で、戦闘機操縦員に計器飛行の指導に当たられた。当時、大西少将は
司令官だった)妻子まで捨てて特攻をかけてくれようとしているのに、
黙り続けることはできない。長官の真意を話そう。長官は特攻による
レイテ防衛について、

『これは、九分九厘成功の見込みはない、これが成功すると思うほど
大西は馬鹿ではない。では何故見込みのないのにこのような強行をする
のか、ここに信じてよいことが二つある。一つは万世一系仁慈をもって
国を統治され給う天皇陛下は、このことを聞かれたならば、必ず戦争を
止めろ、と仰せられるであろうこと。

二つはその結果が仮に、いかなる形の講和になろうとも、日本民族が将
に亡びんとする時に当たって、身をもってこれを防いだ若者たちがいた、
という事実と、これをお聞きになって、陛下御自らの御仁心によって
戦さを止めさせられたという歴史の残る限り、五百年後、千年後の世に、
必ずや日本民族は再興するであろう、ということである。

陛下が御自らのご意志によって戦争を止めろと仰せられたならば、いか
なる陸軍でも、青年将校でも、随わざるを得まい。日本民族を救う道が、
ほかにあるであろうか。戦況は明日にでも講和をしたいところまで来て
いるのである。

しかし、このことが万一外に洩れて、将兵の士気に影響をあたえてはな
らぬ。さらに敵に知れてはなお大事である。講和の時期を逃してしまう。
敵に対しては、飽くまで最後の一兵まで戦う気魄を見せておらねばなら
ぬ。敵を欺くには、まず味方よりせよ、という諺がある。

大西は、後世史家のいかなる批判を受けようとも、鬼となって前線に戦
う。講和のこと、陛下の大御心を動かし奉ることは、宮様と大臣とで
工作されるであろう。

天皇陛下が御自らのご意志によって戦争を止めろと仰せられた時、私は
それまで上、陛下を欺き奉り、 下、将兵を偽り続けた罪を謝し、日本
民族の将来を信じて必ず特攻隊員たちの後を追うであろう。もし、参謀
長にほかに国を救う道があるのならば、俺は参謀長の言うことを聞こう、
なければ俺に賛成してもらいたい』と仰っしゃった。私に策はないので
同意した。これが私の聞いた長官の真意である。

長官は、『私は生きて国の再建に勤める気はない。講和後、建て直しの
できる人はたくさんいるが、この難局を乗り切れる者は私だけである』と、
繰り返し、『大和、武蔵は敵に渡しても決して恥ずかしい艦ではない。
宮様は戦争を終結させるためには皇室のことは考えないで宜しいと仰せ
られた』とまで言われたのだ」

角田氏は小田原参謀長のこの話は、 自分たちのみではなく一言も口を
利かない上野少将に対する長官の伝言ではないか、また、小田原参謀長
も長官の後を追う気だと感じたとのことである。

☆今日の一言☆  
先憂後楽


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